相続税申告でチェックすべき4つの項目

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相続税の申告にかかわる手続きは、人生のうちでそう何度もあることではありませんよね。

普段から相続に関する仕事をしているという人でない限り、「相続税の申告をしないといけないけれど、何から始めたら良いのかさっぱりわからない…」という方もひょっとしたら多いのではないでしょうか。

相続税の申告を行うにあたっては、次の4つのポイントを押さえておくと具体的な手続きの意味が理解しやすくなります。

以下、順番に解説させていただきます。

相続税の申告が必要な場合と、必要ない場合

相続税の申告は、遺産として残されている財産が一定額以上のときに必要になります。

逆にいうと、遺産の金額が少ない場合には相続税の申告や税金の負担はしないで良いということですね。

相続税の税率は最大で55%ですから、半分以上を国に税金として持っていかれてしまうこともありますし、もし期限内に税金を納めないと延滞税を負担しなくてはならないこともあります。

どのような場合に相続税の申告と納付が必要になるのか?については正確に理解しておきましょう。

相続税が発生する場合

相続税は「遺産総額−基礎控除額」で計算する金額が1円以上である時に発生します。

基礎控除額は「3000万円+600万円×法定相続人数」で計算し、例えば法定相続人が3人である場合には4800万円(3000万円+600万円×3人)ということになります。

この場合、遺産の総額が4800万円未満であれば、相続税の負担は発生しないことになります。

相続税申告の手続きは誰がやる?

相続税の申告は、相続によって財産をひきつぐ人が行う義務があります。

相続によって財産を受け取るのですから、それに付随する税金の手続きもやらなくてはならないということですね。

相続税の申告を行うためには複雑な税法の知識が必要になりますから、税理士などの専門家のアドバイスを受けるようにしましょう。

一方で、遺産の金額が少ないために相続税が発生しないケース(「遺産総額<基礎控除額」となるケース)では、相続税の申告は基本的に行う必要がありません。

「過去に親族が亡くなって相続があったけど、そのときは相続税の手続きなんて何もしなかったけど?」という方の場合、相続財産が基礎控除額の範囲内であったために相続税の負担が必要なかったものと思われます。

しかし、相続税の負担が発生しないケースでも例外的に相続税の申告手続きが必要になることがあります。

相続税の負担額がゼロでも例外的に申告手続きが必要になるのは以下のような場合です。

「相続税の配偶者控除」を使う場合

亡くなった方の配偶者の場合、「実際に受け取った遺産の金額」が法定相続分の範囲内である場合には税金がかからないというルールがあります。

実際に遺産をいくら受け取るか?は亡くなった方が遺言を残している場合には遺言が法律上ルールよりも優先されますから、実際に受け取る金額と法定相続分が異なるケースがあるのです。

この配偶者控除を使う場合には、相続税の申告期限までに、配偶者の方の相続分を計算した上で申告書を提出する必要があります。

「小規模住宅等の特例」を使う場合

亡くなった方が居住していた住宅等を相続した場合には、その住宅の遺産としての評価額を大幅に小さくしてもらえる(80%〜50%)という法律上のルールがあります。

例えば、本来は5000万円の価値がある住宅を相続したけれど、小規模住宅等の特例を使うことによってこの住宅の遺産としての評価額を1000万円としてもらうことができるケースがあるのです。

遺産としての評価額を小さくしてもらうことができれば、相続税の負担額も小さくなりますから、結果として相続税の負担が必要なくなることもあります。

この小規模住宅等の特例を使うためには相続税の申告を行う必要がありますから、結果として相続税の負担が0円となる場合にも、期限までに相続税の申告手続きだけは行わなくてはならないことになります。

相続税の申告期限

相続税の申告は、相続があったことを知った日の翌日から計算して10ヵ月以内に、管轄の税務署に対して行わなくてはなりません。

「相続があったことを知った」というのは、簡単にいうと親族が亡くなったことを知った日のことです。

遠方に住んでいたり、疎遠となっていたりする場合には、親族が亡くなってかなりの期間がたってから相続の発生を知るということも決して珍しいことではありません。

その場合、お葬式の通知や相続財産の分割協議を行う旨の通知を受けた日の翌日から相続税の申告期限についての日数計算がスタートすることになります。

なお、税金の納付期限も申告期限と同じ日となります。

期限をすぎたらどうなる?

相続税の申告期限を過ぎても申告手続きを完了できない場合、「期限後申告書」を提出する義務があるとともに、状況に応じて延滞税や加算税などのペナルティを課せられる可能性があります。

申告期限を過ぎた場合や、申告額に誤りがあった場合のペナルティは具体的には以下のようなものです。

延滞税

申告期限までに申告と納付を行わない場合、日割り計算で延滞税を負担しなくてはなりません。

延滞税の利率は申告期限から2ヶ月以内であれば7.3%、それ以降は14.6%となります。

例えば、100万円の相続税を支払わなくてはならないときに、申告期限から5ヶ月(仮に60日間+90日間=150日間とします)が経過してから相続税の申告と納付を行なった場合の延滞税の負担額は以下のようになります。

2ヶ月間分の延滞税(60日間) :100万円×7.3%÷365日×60日間=1万2000円
2ヶ月以降の延滞税(90日間) :100万円×14.6%÷365日×90日間=3万6000円
5ヶ月(150日)の延滞税合計 :1万2000円+3万6000円=4万8000円

延滞税以外のペナルティ

期限内に申告と納付を行えない場合、上の延滞税以外にも追加のペナルティとしての納税が必要になることがあります。

具体的な税目としては過少申告加算税、無申告加算税、重加算税の3つあります。

延滞税以外のペナルティとしてどの税金が課されるかについては、税務署の調査を受けたときの申告義務がある人の具体的な状況から判断されます。

例えば、単に申告期限を過ぎてしまっただけで税額は正しく計算して納めたという時には比較的負担が小さい無申告加算税(税率5%〜10%)という税金が課せられます。

一方で、本来は相続財産に含めなくてはならない財産を隠していたというような事実が発覚した場合には最も重い重加算税(税率40%)が課されることがありますので注意が必要です。

相続人が複数いる場合の相続税の負担割合

相続人が亡くなった方の奥さん1人だけ、というような場合には1人で相続税を負担することになります。

一方で、相続人の数が複数である場合(例えば、亡くなった人に奥さんと子供3人がいるというような場合)には、だれがどれだけの相続税を負担するのかという問題が生じます。

相続税の納付は期限までに行わないと延滞税などのペナルティが発生しますから、相続が発生したらすみやかに遺産分割の協議を行って相続人それぞれの相続分を確定するとともに、それぞれの相続税の負担額を計算しなくてはなりません。

相続税の負担割合の計算方法

結論からいうと、相続税の負担割合は、相続する財産の割合(法定相続分)に応じて計算することになります。

相続する財産の割合は、亡くなった方との続柄に応じて以下のように決まっています。

配偶者と子供が相続人となる場合:配偶者2分の1、子供2分の1
 

配偶者と尊属が相続人となる場合:配偶者3分の2、尊属3分の1

 

配偶者と兄弟が相続人となる場合:配偶者4分の3、兄弟4分の1

  

なお、子供や尊属(父母や祖父母)、兄弟姉妹が複数人いる場合には上の割合をさらに人数分で割った割合をそれぞれ負担することになります。

例えば、相続人が配偶者と子供3人である場合には配偶者の負担割合は2分の1、子供3人はそれぞれ6分の1(2分の1÷3人)を負担することになります。

相続税計算の具体例

相続税は、亡くなった方が残したプラスの財産(資産)とマイナスの財産(借金)を差し引きして「正味の遺産総額」を計算し、「基礎控除額」を差し引きして「課税遺産総額」を計算します。

そこに課税遺産総額の金額によって決まっている相続税の税率をかけ、控除額を差し引きすることで相続税の金額を計算することなります。

相続税の計算方法については別の記事でも紹介していますが、法定相続分の具体例を理解する上で重要ですので簡単に確認しておきましょう。

相続税の計算は以下の5ステップで行います。


(1)正味の遺産総額

プラスの財産(資産)からマイナスの財産(借金)を差し引きして「正味の遺産総額」を計算します。

(2)基礎控除額を計算する

相続税の基礎控除額は、「3000万円+600万円×法定相続人数」で計算します。

(3)課税遺産総額を計算する

「正味の遺産総額」から「基礎控除額」を差し引きして「課税遺産総額」を計算します。

(4)相続税率をかける

相続税の税率は課税遺産総額の金額によって10%〜55%と決まっています。

例えば、課税遺産総額の金額が5000万円超〜1億円以下の場合は税率は30%となります。

(5)控除額を差し引きする

課税遺産総額に相続税率をかけた後に、一定の控除額を差し引きして最終的な相続税の金額を計算します。

控除額も相続税率と同じように課税遺産総額の金額によって差し引きする額が決まっています。

課税遺産総額が5000万円超〜1億円以下の場合には控除額は200万円となります。


相続人が妻と子供2人の場合の相続税の負担額

相続人が妻と子供2人(長男と次男)の合計3人で、遺産として残された財産が2億円、借金が3000万円あるという場合には、相続人それぞれが負担する相続税の金額は以下のように計算します(上の相続税の計算方法を参考にしてください)

課税遺産総額を計算する

正味の遺産総額 :2億円−3000万円=1億7000万円
基礎控除額 :3000万円+600万円×3人=4800万円
課税遺産総額 :1億7000万円−4800万円=1億2200万円

各相続人の負担分を計算する

妻の負担分 :1億2200万円×2分の1=6100万円
長男の負担分:1億2200万円×2分の1×2分の1=3050万円
次男の負担分:1億2200万円×2分の1×2分の1=3050万円

相続税の金額を計算する(速算表から計算)

妻の相続税 :6100万円×20%−200万円=1020万円
長男の相続税:3050万円×20%−200万円=410万円
次男の相続税:3050万円×20%−200万円=410万円

配偶者には「相続税の配偶者控除」がある

長男と次男については上のように410万円の相続税を負担することになりますが、亡くなった方の配偶者である妻については「相続税の配偶者控除」を適用できます。

相続税の配偶者控除というのは、実際に受け取った正味の遺産総額が、法定相続分の範囲内であれば税金がかからないというものです(法定相続分を超える場合でも、1億6000万円までであれば税金がかかりません)

上の場合であれば、1020万円全額が控除の対象となりますので、妻の相続税は0円ということになります。

このように、亡くなった方の配偶者が相続税の計算で優遇されているのには理由があります。

亡くなった方(夫)とその奥さん年齢的に近い場合、夫の相続税を納めた後にすぐ奥さんの相続が発生する(つまり奥さんが亡くなる)ということも珍しくありません。

そうなると短期間に2回の相続税の納税が発生することとなり、遺族の負担が大きくなってしまう可能性があるためです。

相続人となるのが配偶者のみの場合、配偶者控除を利用すると相続税の負担はゼロとなる可能性が高いですが、その場合にも税務署への申告書の提出だけは必要になりますので注意しておきましょう。

相続税申告を依頼する税理士の選び方

ひとくちに「税理士」といっても、いろんな仕事をしている人がいます。

お医者さんにも外科医や内科医、眼科医や産婦人科医…といったようにいろんな専門分野がありますよね。

これと同じように、税理士にもそれぞれ専門で扱っている分野というものがあるのです。

特に、相続税に関する実務は専門性が極めて高く、1件の依頼ごとにかける必要がある時間と労力が大きいという特徴があります。

このような専門性が高い相続税の申告については、相続税の分野に特化した税理士に依頼をするのが適切です。

相続税の分野に特化した税理士とは?

とはいえ、これまで税理士と関わったことなんてない…という方にとっては、どのような税理士が相続税を専門にしているのか?は外部から見てもよくわからないというのが実際のところですよね。

相続税申告についての依頼をするときには、具体的には以下のような点を見ながら税理士を選ぶようにすると良いでしょう。

年間で処理している相続税申告の数

相続税に関する分野を得意にしている税理士事務所の場合、年間で処理している相続税申告の依頼数が多いという特徴があります。

年間の処理件数でいえば少なくとも50件以上、できれば100件以上の処理件数を売りにしている税理士事務所を選択すると大きな間違いはないでしょう。

他業種との連携ができているか

相続に関する実務は他業種との連携が特に重要となる分野です。

相続財産に含まれる不動産の評価や、家族についての法律知識も必要となるため、弁護士や司法書士、不動産鑑定士といった別業種の人たちとも連携していることをアピールしている税理士事務所は、相続税に関する依頼を多く処理してきている可能性が高いです。

土地や建物、非上場の株式など相続財産としての評価が難しい遺産が多くある場合には、どの税理士事務所に依頼をするかをしっかりと吟味する必要があります。

相続税申告に関する費用

相続税に関する事務をを依頼した時の費用についても事前にチェックしておきましょう(その事務所のホームページなどで確認できます)

相続税申告に関する費用については、遺産の金額と相続人の人数から基本的な料金を設定し、その他の手続きが発生するごとに追加料金が発生するという形をとっている税理士事務所が多いです。

相続税に関する実務実績が浅い税理士事務所の場合、相続税申告の依頼をした場合の料金設定がそもそも画一的でないことがあります。

一方で、相続事務に関する料金設定が画一的でシンプルなものになっている税理士事務所なら、相続税に関する依頼を多く受けている可能性が高いといえるでしょう。

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