遺産分割の方法ともめやすいポイント、トラブル解決法

  1. 遺産分割とは
  2. 遺産分割が必要ない場合
    1. 遺言書がある場合
    2. 相続人が一人の場合
    3. 相続人が誰もいない場合
  3. 遺産分割の目安となる法定相続分
  4. 遺産分割協議の準備
  5. 遺産分割協議を行う
  6. 遺産分割の方法
    1. ① 現物分割
    2. ② 換価分割
    3. ③ 代償分割
  7. 相続財産の管理方法
  8. 遺産分割協議書の作成
    1. ポイント
  9. 申告期限までに遺産分割協議が間に合わないとき
  1. 10.平等に遺産分割すれば争いなど起きないのでは?
    1. 1.遺産分割協議は「法」より「理解」
    2. 2.法で割り切れないからこそ話し合いが大切
    3. 3.遺産分割のポイント
    4. 4.平等に遺産分割すれば争いなど起きないのでは・まとめ
  2. 11.生前の贈与・援助は遺産分割にどう関わる?
    1. 1.生前に受けていた援助が平等とは限らない
    2. 2.過去の不満が爆発することも!
    3. 3.生前贈与と遺産分割
  3. 12.同居していた家族は遺産分割で尊重される?
    1. 1.介護した人は遺産を多くもらえる?
    2. 2.過法で保証されない「貢献」は相続人同士の情でカバー
    3. 3.同居家族の介護・家事手伝いをどう考えるか
    4. 4.遺言書は絶対・まとめ
  4. 13.遺言書は絶対?
    1. 1.遺言書を開けたらとんでもない記載が!
    2. 2.不当な遺言書でも最低限の権利の主張を
    3. 3.遺言書の内容に不当を感じたら
    4. 4.遺言書は絶対・まとめ
  5. 14.建物や土地はどうやって遺産分割する?
    1. 1.家を分けるといったって……
    2. 2.分割できない相続は「代償金」を活用する
    3. 3.相続できる遺産が実家住居のみの場合
  6. 15.遺産分割で家業を継承するには?
    1. 1.「家業」によって対処はまるで変ってくる
    2. 2.「家業」も家と同じく分割できない遺産
    3. 3.「家業」を引き継ぐには
    4. 4.家業を継承するには・まとめ
  7. 16.遺産分割でもめるとどうなるの?
    1. 1.相続人同士で意見が合わない場合はどうする?
    2. 2.終わらない協議を専門家にゆだねるのも手
    3. 3.遺産分割調停・審判の流れ
  8. 17.遺産分割調停・審判になったらどうなる?
    1. 1.遺産分割調停とは
    2. 2.調停が始まればひと安心?長引くとデメリットも
    3. 3.遺産分割調停のメリット・デメリット
    4. 4.遺産分割調停・審判になったらどうするの・まとめ
  9. 18.まとめ
  10. 19.遺産相続は弁護士に依頼が本当にベスト?
  11. 20.弁護士に依頼するメリット
    1. 1.交渉の煩わしさから解放される
    2. 2.手続きの煩わしさから解放される。
    3. 3.知らないと損をする可能性を減らす
    4. 4.そもそもトラブルが発生しないようにまとめてくれる
  12. 21.弁護士に依頼するデメリット
    1. 1.金銭的負担が必要
    2. 2.弁護士のスタンスによる違い
  13. 22.司法書士や税理士、行政書士との違いとは?
    1. 1.司法書士
    2. 2.税理士
    3. 3.行政書士
  14. 23.遺産分割をスムーズに完了させることが重要ならば税理士や司法書士に
  15. 24.遺産相続・遺産分割の弁護士費用の相場
遺産分割の方法

遺産分割とは

まず、「遺産分割」とは何か?について確認してきましょう。
被相続人(亡くなった人)の遺言が無かった場合には、相続が発生すると、遺産は一旦、相続人全員の共有財産となります。
ここから被相続人が残した遺産の分配について相続人間(民法で定める法定相続人)で協議を行い(これを「遺産分割協議」といいます。)、相続人全員の同意で個々の遺産につき誰が何を取得していくかを確定させていきます。この手続きを「遺産分割」といいます。
相続人には、民法で定められている法定相続分がありますが、相続人同士の合意があれば、必ずしも法定相続分通りに分ける必要はなく、自由に分割することが可能です。また、相続財産が債務が多ければ、相続開始を知ったときから3ヶ月以内に相続放棄をすることができます。

※民法では親族関係の近い順に相続分を多く定めており、子供が複数いれば均等にという配分になっているのですが、多くの家庭ではこの通りに相続することは適当とはいえないのです。よって、その相続人ごとの被相続人への貢献度や、過去に被相続人から受けた援助などを考慮して足したり引いたりといった調整をしているのです。

 

参考:遺産分割ってどう行うの?

遺産分割が必要ない場合

相続が発生すれば遺産分割が必ず必要とはいうわけではなく、遺産分割を必要としない場合もあります。そのケースを見ていきましょう。

遺言書がある場合

遺言書があれば、遺言書に記載通りの分割が行われるため、相続時に問題となる遺産分割協議をする必要がありません。遺産分割協議がまとまらず「相続が争続に発展する」といったトラブルを未然に回避することができます。ただし、相続発生後に遺言書に記載の無い遺産が見つかれば、その遺産については遺産分割協議を行っていく必要があります。

相続人が一人の場合

遺相続人が一人の場合にも遺産分割は不要です。全ての遺産についてその相続人が相続していきます。

相続人が誰もいない場合

誰も相続人が居ない場合にも遺産分割は不要です。この場合の相続財産は「相続財産法人」と呼ばれる財産の集合体にされた上で管理処分され、債権者や受遺者に対して弁済等を行い、最終的な残財産については国庫に帰属することになります。

参考:相続人が誰もいない場合、財産はどうなるの?

遺産分割の目安となる法定相続分

遺産分割は相続人間の話し合いで決めていくことになりますが、法定相続人が相続する目安として「法定相続分」という割合を定めています。
相続人が配偶者だけならば、すべての遺産を相続しますが、子どもがいる場合は、配偶者と子どもで2分の1ずつ分けます。子どもが複数いる場合は、2分の1を子どもたちの数で均等に割ります。
その他主な法定割合は下図をご参照ください。

ケース1ケース2

※ケース1ケース2


ケース3ケース4

※ケース3ケース4


ケース5

※ケース5

ケース5のように、第一順位の子どもが亡くなっている場合は、相続権が孫に移ります。これを「代襲相続」といいます。 また、被相続人が特定の相続人に虐待を受けたなどで、遺産を相続させたくないという場合、相続権をはく奪する「廃除」を行うことができます。


上記のように、法定相続分は相続人の順位や組み合わせによって割合が変わります。


法定相続分は遺産分割の目安であって、法定相続分で分割を求められるものではありません。


遺産分割をスムーズに進めるために、民法で定めた遺産分割の目安となる割合になりますので、相続の際には法定相続分を確認していきましょう。

※知っておきたいキーワード
代襲相続とは

死亡または廃除などの理由により、相続権を失った人に代わって、直系卑属である子が同一順位で相続人となること

廃除とは

被相続人が、虐待を受けたり、著しい非行があったなど、その人に相続権を与えたくない場合に、相続権をはく奪すること。廃除するには、被相続人が家庭裁判所に申し立てをするか、遺言書に意思表明し、認められることが必要

参考:法定相続分とその割合を詳細に解説!

遺産分割協議の準備

遺産分割協議は一般的には被相続人(亡くなった人)の遺言書がなく、かつ相続人が自分たちで自由に遺産の分け方を決めたい場合に行うものです。遺産分割協議が有効に成立するためには法定相続人全員がその内容に合意する必要があり、できればすべての相続財産につき一度に済ませた方がよいため、協議を始める前にはそれなりの準備が必要になります。

遺言書の確認

相続では、亡くなった方が遺言書を残している場合にはその内容が法律に優先することになります(遺言書がある場合、遺産分割協議は基本的に必要ないということになります)。相続に関するルールは民法という法律で決まっていますが、法律の内容はあくまでも遺言書がない場合に適用されるものという扱いになっているため、何よりもまず遺言書の内容の確認から行わなくてはなりません。

遺言書が後から見つかったらやり直しになることも

もし遺産分割協議を行った後になって「実は遺言書が残されていた…」ということになるとせっかく行った遺産分割がやり直しということになってしまいますから注意しておきましょう。
自筆証書遺言は亡くなった方が自分で保存しているのが普通ですから、家族が探さなくてはなりません。
一方で、公正証書遺言や秘密証書遺言は公証役場のデータベースに登録されていますから、問い合わせをすることによって遺言書の有無を確認することができます。

公正証書以外の遺言書は家庭裁判所の検認が必要

遺言書の作成方法については公正証書で行う方法と自筆証書で行う方法、秘密証書で行う方法の3つがありますが、公正証書以外の方法で行われた遺言書がある場合には、その内容を家庭裁判所で検認してもらわなくてはなりません。
なお、遺言書で遺言執行人(遺言の内容を実現する義務と権限を持っている人)が指定されている場合、相続人は遺言執行人の指示に従って遺産分割を受けなくてはなりません。

法定相続人の確定

遺言書の有無を確認したら、誰が相続人なのか?つまり法定相続人の確定をしていきます。相続人は3人しかいない、などと思い込んでいても、たまに自分たち兄弟の知らない異母、異父兄弟などが出てくることもあるのです。中には結婚前の子供の存在や前妻との子供の存在を隠している親もおり、「まさか父に自分たち以外の子供がいるなんて思わなかった」と驚く人もいます。相続手続き全般において、戸籍によって法定相続人をもれなく確認するという作業は欠かせないものであり、全部の手続きに先だって行うべきものです。
具体的にどのように戸籍を集めるのかというと、最初に「被相続人の最後の戸籍謄本(つまり死亡の事実とその年月日が記載されているもの)」を本籍地の市区町村役場で取得します。そして、ここから過去に向かって遡るという作業をするのですが、「出生から死亡までのすべての戸籍」というと「現在のものを取ったら生年月日も死亡日も書かれているからこれで足りる」と思い込んでしまう人もいます。しかし、戸籍を遡るという意味は、役所による戸籍の改製(たとえばコンピュータ化や法律改正などを原因として作り直されること)、結婚、転籍、養子縁組などさまざまな要素で移動している被相続人の戸籍の変遷をすべて追いかけて出生までたどり着くということです。80代くらいで亡くなった人であれば平均で5、6種類程度は出てくることが普通です。
これらの戸籍を確認し、法定相続人全員の確定を行いましょう。

参考:遺産相続が起こったら相続人の確定が重要!

参考:相続手続きで必要な戸籍の取得の仕方

相続財産の調査と財産目録の作成

法定相続人全員が確定したら次に(もしくは戸籍収集と同時並行で)行わなければならないのが相続財産の調査と財産目録の作成です。遺産分割協議の後でまた被相続人名義の財産が出てきた場合は再度遺産分割協議をしなければならなくなりますから、最初の段階でなるべく漏れなく探し出しておかなければならないのです。
相続財産の調査も具体的にはどのようにしてよいのかわからない人が多いことでしょう。では代表的な財産の捜索、特定方法を見てみましょう。
まず相続財産の中で大きな比重を占めることが多い不動産について説明します。不動産の特定方法として一番確実なのが、被相続人名義の不動産所在地の市区町村役場の税務課で「固定資産税評価証明書」または「名寄台帳」を取得することです。基本的にこういった書類は所有者本人でなくては取得することができませんが、相続が発生している場合、相続人が戸籍でその立場を証明すれば請求することができます。これらを取得すると被相続人名義の不動産につき「固定資産税評価額」や「正しい地番」などを調べることができます。ちなみに、そのようにして調べた不動産の地番をもとに法務局で「登記事項証明書(登記簿謄本)」を取得し、権利関係がどのようになっているのかを確認することも大切です。被相続人の単有か(1人で所有している)もしくは共有か(他人と一緒に所有している)、債務を返済済みの抵当権がついたままになっていないか(ついていれば相続人が抹消登記もする)など、そこには重要な情報が詰まっています。登記簿の読み方がわからないという人は、法務局か司法書士に相談して現在の状態を説明してもらう方がよいでしょう。
ただこの方法の難点は、相続人が知らないような場所に被相続人名義の不動産がある場合はどうしても漏れてしまうことです。そこで、自宅などから出てきた不動産関係書類もくまなく見て、関係しそうな市区町村にはすべて同じ請求を行うことをおすすめします。
次に預貯金です。これも被相続人が取引をしていたと思われる銀行に「被相続人名義の全口座」の照会をかける形で行います。具体的には相続発生日(死亡日)現在の残高証明書を出してもらうとよいでしょう。銀行が被相続人の死亡を知ったタイミングが遅く、死亡後しばらく口座を凍結していなかったケースでは、死亡日以降で相続人によりお金がおろされていることもあります。そのような場合には通帳を記帳してみた残額と上記の残高証明書の金額が食い違うことになりますので、葬儀費用など明らかに相続人全員の共通の利益のために使われたもの以外はその分を戻して相続財産を計算する必要があります。
口座についてもやはり相続人が把握していた分以外のものが出てくることがあります。自宅のカレンダーやボールペン、タオルなどで銀行名の入ったものがないかをチェックし(定期預金など契約するともらえる粗品から口座が発見されることがある)、ネット銀行などを使っていないかどうかをパソコンの履歴検索などで調べるといった方法で慎重に特定していきたいものです。
株式や投資信託をやっていた人の場合は自宅に定期的に運用報告書や株主総会関係書類などが来ていることもありますので、郵便物も見逃さないようにしたいものです。
このようにして捜索した被相続人の財産についてすべてリストアップして財産目録を作っておくと、いざ遺産分割協議を始めた時にも全体が把握しやすくなるでしょう。

参考:財産目録の作成で相続の負担減!トラブルも防ぐ方法とは?

遺産分割協議を行う

遺産の内容が確認でき、相続人となる人が確定したら、遺産分割協議を行います(遺言書がない場合)。
法定相続人全員が参加して行わなくてはなりません。たとえ1人でも認知症で意思表示ができなかったり、行方不明になっていたりする人がいればその時点で成り立たないことになるのです(このような場合は成年後見人や不在者財産管理人など、代理人を立てる手続きが準備されています)。遺産分割協議書には相続人全員が実印を押して印鑑証明書をつけなければ各相続手続きができませんので、兄弟が音信不通になっているような状況であっても連絡を取ることが第一歩となります。
ただし、遺産分割協議では必ずしも全員が顔を合わせて協議を行わなくてはならないというわけではなく、分割案を郵送等のやりとりで書面によって意思表示をしてもらうことも問題はありません。
遺産分割協議では、互いの譲歩や自重がとても重要です。
相続財産をめぐっては被相続人の生前は仲の良かった親族同士で骨肉の争いに発展する…というようなケースも決して珍しいことではないためです。
親族同士では感情のもつれがあってどうしても協議が先に進まない…というような場合には、弁護士に間に入ってもらうことも検討してみると良いでしょう。

遺産分割の方法

遺産に現金などが豊富にある場合は、比較的スムーズに分けることが出来るでしょう。しかし、そういうケースばかりではありません。遺産分割では、いかに公平に遺産を分割出来るかが重要になります。
遺産分割の方法として、次の3つの方法があります。

① 現物分割

土地建物は妻に、現預金は息子にというように、現物のまま分割する方法です。わかりやすい方法ですが、必ずしも公平になるとは限りませんので、争いになる可能性があります。また、現物分割の一種として、共有分割もあります。
分割が難しい場合などに、複数の相続人が遺産を共有する方法です。ただし、将来的に権利関係が複雑になる可能性があるため、あまりお勧めは出来ません。

② 換価分割

遺産の一部または全部を売却し、お金に換えて分割する方法です。公平な分割が可能ですが、時間や費用がかかります。

③ 代償分割

不動産や事業用資産などを、特定の相続人が相続分を超えて取得する代わりに、超過した分をお金で他の相続人に支払う方法です。現物資産を残すことができますが、超過分を取得する相続人に支払能力があることが前提となります。以上のように、現物分割が原則ですが、相続人の意向や、相続財産によっては換価分割や代償分割を活用して、公平な遺産分割を考えていきましょう。

相続財産の管理方法

相続人が複数おり共同相続した場合、遺産分割されるまでは、すべての遺産は相続人で共有していることになります。相続人のそれぞれの所有権は、相続分に従って持分として各相続人に帰属します。
遺産分割までの相続財産の管理には、①共同で管理する方法、②相続人間の合意の上、相続人の1人を管理者とする方法、③家庭裁判所により相続人以外の第三者を選任し管理する方法などがあります。
仮に相続人の1人が他の相続人の合意なく不動産を処分してしまった場合には、他の相続人の持分は保護され、第3者が移転登記をしたとしても、その登記の抹消登記することが出来ます。
また、金融資産の様な分割が可能な遺産でも相続人全員の同意がない限り、自分の持分の請求をすることは出来ません。

遺産分割協議書の作成

遺産分割協議書に必ず書いておきたいのは、「被相続人の氏名、死亡日、最後の本籍」、「被相続人が死亡したので相続が発生し、法定相続人全員で話し合った旨」、「財産の内容と相続する人の氏名、続柄」、「協議の成立した日付」です。そして最後に各相続人が署名と実印での押印を行います。
財産の特定方法ですが、なるべく疑義が生じないように明確に記載しなければなりません。不動産であれば登記簿を見ながら書く方がよいでしょう。土地の場合は「所在」「地番」「地目」「地積」を、建物の場合は「所在」「家屋番号」「種類」「構造」「床面積」を記載します。預貯金の場合は「銀行名」「支店名」「口座の種類(普通、当座など)」「口座番号」を記載します。残高は記載しなくてもかまいません。他の財産も同様に証券などに書いてある情報をなるべくしっかり記載して特定できるようにしましょう。
どの財産かはっきりわからないような書き方をしてしまうと、相続手続の関係先から作り直しを要求されるおそれもありますので、いったん作成したものをしっかりチェックしてから署名と押印に移りたいものです。遺産分割協議書には法定相続人全員の実印押印が必要となります。

※遺産分割協議書サンプル

ポイント

遺言書がないとき、または一部の財産しか記載されていない場合に作成する
書式は特に決まっていない。手書きでもパソコンでもOK被相続人の名前、相続日(死亡日)、協議した相続人を明記相続財産について具体的に記載する

代償金が発生していた場合は、支払期限を明確に

相続人の名前・住所・実印が必要

相続人の人数分作成し、各自が保管する

どんなときに必要?

不動産等の相続登記、銀行預貯金の払い戻し、名義変更
法定相続分とは異なる割合で相続する場合、これがないと手続きができない
相続税の更生請求
相続税の還付を受ける 際の書類として使用

※遺産分割協議書と知らずに署名させられる?

特定の相続人だけが有利となる内容が書かれている遺産分割協議書などには、そう簡単に他の相続人が署名や押印などしないと思われる方は多いと思います。
しかし、元々の親族間の信頼があるためか、「手続きを進めるために必要な書類」などと説明され、それが遺産分割協議書と認識しないまま署名、押印してしまうことは実際に多く見られるケースです。

いったん作成された遺産分割協議書の効力を後から争うのは、とても困難な場合が多いため、遺産分割協議書の作成はもちろん、署名押印を求められた際にその内容が妥当かについても弁護士などの専門家に相談してみるのがよいでしょう。

申告期限までに遺産分割協議が間に合わないとき

申告期限までに遺産分割協議が間に合わないときは、未分割という形で申告します。未分割で申告する場合、小規模宅地等の特例や配偶者の税額軽減などの各種特例を適用せずに申告することとなります。
つまり、内容的には特例を適用できるはずなのに、未分割であることが原因で当初の申告で多めに税金を支払わなくてはいけないということが起こります。
そして、申告時に所定の書類を提出し、申告期限から3年以内に遺産分割協議を確定させ、改めて申告することではじめて特例が適用されます。
そこで、当初申告で納めすぎていた税金が戻ってきます。

遺産分割で揉めやすいポイント、トラブル解決法

平等に遺産分割すれば争いなど起きないのでは?

遺産分割協議は「法」より「理解」

遺産分割協議

※遺産分割協議

法で割り切れないからこそ話し合いが大切

「遺産相続争いなんて、お金持ちだけの話でしょう?」なんて思っている方、多いのではないでしょうか。平成27年の法改正によって、実は一般家庭にも「相続税」は身近なものになっています。現代は「長子が家を継ぐ」という風習も薄れ、価値観も多様化しました。核家族化、配偶者の有無、介護等々、一人ひとりを取り巻く環境が異なるため、考え方も人それぞれ。きっちり「法定相続分どおりに分けよう」という人もいれば、「すでに持ち家があるから、土地を相続するより現金がいい」という人もいるでしょう。もちろん、遺言書があればそれに従うのが一番ですが、実際に遺言書が残されているのは全体の1割程度と言われています。血族といえども、別々の生活を営んでいて、事情は人それぞれです。法に厳格になるよりも、各々の状況を考え、譲り合いと思いやりを持って協議に臨みましょう。

遺産分割のポイント

生前贈与・援助

生前に行われた贈与や金銭的な援助、また数値にできない教育や世話といった「愛情」に関する対応の差は、感情的になりやすいため、もめる原因に

生前贈与

※生前贈与

介護・同居家族の配慮

高齢化社会で大きな問題となっている「介護」。同居はもちろん、介護のために実家に通うなど、こうした負担は経験しないとわかりにくいものです

介護・同居家族の配慮

※介護・同居家族の配慮

遺言書の内容

基本的には遺言書どおりにすればいい……と思いきや、その内容が突飛であったり、そもそも有効な内容でなかったりと、意外と問題が隠れています

遺言書の内容

※遺言書の内容

建物・土地の有無

「建物」や「土地」というのは意外と厄介で、お金と違って単純に割ることができません。ある程度の規模を相続するとなると、代償金が必要になることも

建物・土地の有無

※>建物・土地の有無

家業の有無

ひとことで「家業」と言っても、事業形態はお家それぞれ。特に自営業の場合、「親から継ぐ」という志ももちろん、金銭的にも「大きな相続」になります

家業の有無

※家業の有無

専門家からのアドバイス

渡邉 祐介

弁護士:渡邉 祐介

遺産分割協議は「人」と「人」が行うもの

人はそれぞれ価値観や考え方が違うことがあり、それは血を分けた家族であっても同様です。遺産分割協議は人と人が行うもの。「法律に従ってきっちり財産を分けよう」と頑なになるより、「完璧な平等はありえない」と相続人全員が知ったうえで、相続人それぞれの実情に合わせて柔軟に話し合って決めることが大切です。そのうえで、相続人だけで協議を進めようとしている一方でも、「プロに一任する」ことを視野に入れておくのが良いでしょう。第三者の専門家を挟むことによって、互いの意見を取り交わしやすくなるほか、後の紛争防止の意味合いでもその効果は大きいものです。時間にも余裕ができますし、不備がなくスムーズな協議を行えるでしょう。

平等に遺産分割すれば争いなど起きないのでは・まとめ

完璧な「平等」はありえない

協議が長引くときは専門家へ!

生前の贈与・援助は遺産分割にどう関わる?

生前に受けていた援助が平等とは限らない

生前に受ける援助まとめ

※生前に受ける援助まとめ

過去の不満が爆発することも!

昨今は一人っ子の家庭が増えていますが、今相続に関わる世代は兄弟がいる人も多いでしょう。長子相続の意識が薄れ、価値観が多様化、そこに法改正……今の世代は特に「争族」が起こりやすいと言っても過言ではありません。兄弟間で起こりやすい相続問題として「生前に受けた贈与・援助・対応の差」があります。特に数値化できる「お金」に関しては、誰がいくらもらったのかを明確にしておくのも大事です。また、生前贈与は相続財産に含まれます。贈与を受けていた、また子ども時代に優遇された自覚があるなら、率先して他の兄弟に譲るようにするのもよいでしょう。相続をきっかけに「お前は末っ子だからと甘やかされていた」「ほかの兄弟はみんな私立に行ったのに、私だけが公立の学校だった」などなど、当時言えなかった不平不満が爆発し、「兄弟げんか」に発展することも稀ではないのです。

生前贈与と遺産分割

※法定相続分どおりに相続した場合

生前贈与と遺産分割イメージ図

※生前贈与と遺産分割イメージ図

「教育」「愛情」などは主観になるので推し量るのが難しいですが、せめて明確に出る金額だけは相続の際に加味すると良いでしょう。また、生前に資金援助などを受けていた場合は隠さないのが無難。万が一裁判になって発覚すると、不利になることがあります。

専門家からのアドバイス

渡邉 祐介

弁護士:渡邉 祐介

兄弟でも「お金」が絡むと人が変わる?

遺産分割協議は多くの場合、各相続人の意見が一致せず決裂します。もともと仲の良かった兄弟であっても、月日の経過とともに生活上の背景からお金が必要になり、お互いにより多くもらいたいという主張をすることもあります。また、子どもの頃からくすぶっていた不満が相続を機に噴出することも珍しくありません。「長男だから全部もらって当然」という考え方は現代では通用しません。さらに「遺産などいらない」と言っていた兄弟の言葉を信じていたら、いざ相続が始まるとまったく別のことを言い出すこともあります。「実は親父はこの土地を俺にくれると言っていたんだ」などと言われても「死人に口なし」ですから、こうなると泥沼化は避けられません。

同居していた家族は遺産分割で尊重される?

介護した人は遺産を多くもらえる?

介護した人は遺産を多くもらえる?

※介護した人は遺産を多くもらえる?

法で保証されない「貢献」は相続人同士の情でカバー

政府の方針で、家庭での介護が推奨されている今日。高齢社会において「介護」は、様々な面で大きな問題になっています。施設に入れればまだマシなほうで、実家で介護を行うとなった場合、どうしても同居家族に負担がかかります。同居家族がいない場合は、介護のために実家に通う、また転居せざるを得ない人も出てくるでしょう。こうした「親への貢献度」も「親からの愛情」同様、数値に表しにくく、本人以外には推し量るのが難しい事柄です。そして法的には「介護をしたか否か」は相続にはなんら影響を与えません。さらに言えば、お嫁さんなど直属の血縁でない人が介護を行っていた場合、相続人ではないので相続することすらできないのです。法で貢献が保証されないのなら、情で労うのが円満相続の道。介護を担った相続人へ多く相続できるよう、話し合いをし、遺言書を作成してもらうとよいでしょう。

同居家族の介護・家事手伝いをどう考えるか

相続人が同居していた場合

相続人が同居していた場合

※相続人が同居していた場合

貢献度を考えて割合を変えるのもあり

介護・同居の負担は、外から量るのが難しいもの。普段から様子を尋ねるなどしておくと、お互いに状況がわかりやすく、話し合いもしやすいでしょう。

相続人でない人が介護をしていたら?

相続人でない人が介護していた場合

※相続人でない人が介護していた場合

法的には遺産を相続することはできない

法律上、遺産を相続できるのは血族のみとなります。義父母の介護をいくら熱心にやろうと、「お嫁さん」が遺産を相続することはできないのです。

遺言に記されていればOK!

介護してくれた子どもに多めの遺産を残してあげたいわ

法定相続分よりも多く相続させたいなら、その旨を遺言書に明記しておけばOK。遺贈(無償で遺産を譲ること)として相続人でない人に残すことも可能です。

専門家からのアドバイス

渡邉 祐介

弁護士:渡邉 祐介

「介護の貢献度」をどう考えるか

兄弟間の争族でよくあるパターンとして、親の介護を一手に引き受けた兄弟が取り分を多く主張するも、ほかの兄弟がそれを認めないというものがあります。「兄弟のなかで誰かだけが同居した、または介護をした」というケースでは、「介護の貢献分」という金額で折り合いがつかないのも珍しいことではありません。このような事態になったら、長期化する前に弁護士や裁判所の手を借りることが早期解決への道です。介護を受けている親の側も「うちは子どもたちの仲が良いから大丈夫」などと思わずに、生前に専門家に相談し遺言を残しておくことが大切です。

同居していた家族は尊重される・まとめ

「労働」は法的には相続分に加味されない

苦労を労う思いやりは忘れずに!

遺言書は絶対?

遺言書を開けたらとんでもない記載が!

私の遺産はすべて妻に相続する息子には一銭も渡さないように

不当な遺言書でも最低限の権利の主張を

遺産分割協議でもめないために、被相続人の意思である「遺言書」を残すのはとても有効な手段といえます。基本的に相続において、亡くなった被相続人の意志は何よりも尊重されるものであり、優先すべきという考えがあるためです。専門家の下でつくる「公正証書遺言」であればほぼ問題はないでしょうが、被相続人が個人で作成する「自筆証書遺言」では、ときに驚きの記述がなされていることも。法定相続分から逸脱した内容に「こんなの不当だ!」と思っても、有効な遺言書を覆すことは難しいのが現状。ただし、最低限の権利を主張することは可能です。遺言書自体は普通でも、実際に残っている遺産とかけ離れているときもあります。考えたくはありませんが、同居家族などによって使い込みや財産隠しが行われている場合もありますので、そのときは「お金の動き」を調べる必要があります。

遺言書の内容に不当を感じたら

前提として「有効な遺言書」は覆せない。ただし……

遺産分割の割合が極端に多い・少ない

請求

いくら有効な遺言書であれ、遺産分割の内容が法定相続分よりも少ない場合、法定相続分の1/2までは「遺留分」として他の相続人に請求することができます。

書いてある内容より遺産が少ない

遺言書が書かれた日から目減りした分は考慮されず、相続時点のもので計算します。ただし、不自然なほど減っている場合、他相続人による財産隠しや使い込みの可能性があります。

生前に聞いていた内容と違う

口約束ではなんの根拠もないため、遺言書が有効となります。書面で残しておけば、遺言書の日付よりあとの場合、新しい書面が有効となります。

書いてない遺産が出てきた!

遺言書にない通帳や金券が出てきた……ということも時にあり得ます。書かれている分は遺言書通りに分割し、新たに見つかった分はまた別に遺産分割協議を行います。

まず遺言書が有効か否かを確認しよう

専門家からのアドバイス

渡邉 祐介

弁護士:渡邉 祐介

確実な遺言書が円満相続のカギに

遺言書を残す方法として多く使われているのが「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2つです。ただ、自筆証書遺言は保管場所が自宅などになるため、隠匿や改ざんなどがなされるおそれがあります。確実に保存するには公証役場で作成する「公正証書遺言」がおすすめです。遺言書を残すことは、確実な被相続人の意思の実現や紛争の防止を中心にメリットがたくさんあります。もし後で気が変わってもつくり直しができますので、最初の遺言書作成は早いに越したことはありません。とはいえ、突飛な内容は逆に相続人同士の紛争の種となりますので、税理士、司法書士、弁護士といった専門家のアドバイスの下で、法的にも内容的にも妥当なものをつくることが大切です。

遺言書は絶対・まとめ

遺留分(法定相続分の1/2)の請求は可能

書面と実情の不自然な差異は調査が必要

建物や土地はどうやって遺産分割する?

家を分けるといったって……

いつかは戻りたいと思ってるけど今はタイミングが悪いかな

分割できない相続は「代償金」を活用する

相続できる遺産が持ち家しかない場合、まさか「家」を分解するわけにはいきません。遺産が分けることのできない「物」のときはどうすればよいのでしょうか。同居親族がいる、または賃貸で暮らしていた人が戻ってきて居住する場合、ケースによっては「小規模住宅地等の特例」が適用されます。しかしそうすると、居住する人が遺産である住宅をすべて相続することになります。家に限らず、遺産の多くを相続した人は他の相続人に「代償金」を支払うことで、不公平を解消することができます。多くを相続した相続人が、その分を相続とは別にお金で支払うということです。住居の相続については、二次相続のことまで考えておくのがよいでしょう。また各々の事情があって、誰も不動産を相続できないときは、住居を売却して現金化し、分割するのもまたひとつの手となります。

相続できる遺産が実家住居のみの場合

住居に住み続ける人がいる場合

ひとり暮らしの相続人が死亡した場合

※ひとり暮らしの相続人が死亡した場合

住居に住む人がおらず、空き家になる場合

被相続人と同居、その後も住み続ける場合

※被相続人と同居、その後も住み続ける場合

専門家からのアドバイス

渡邉 祐介

弁護士:渡邉 祐介

事情があって偏りが出るときは準備を怠らない

何か特別な理由があって、誰かひとりにだけ相続させるという場合、紛争の要因をなくすために生前から「遺言書による遺産分割方法の指定」をしておくとよいでしょう。また、誰かひとりにだけ不動産を相続させるといった事情があれば、他の相続人に対して不公平にならないよう、死亡保険金をかけ、死亡した時にすぐ代償金として使える現金を準備しておくというのもひとつの方法です。最低限、遺留分の代償金が支払えるだけの額を残せると安心です。親の側が全員に対して、はっきりとした意思表示をしておくことは紛争の予防策となります。もちろん、遺言書だけでなく、口頭で説明しておくのも大切です。

遺産分割で家業を継承するには?

「家業」によって対処はまるで変ってくる

家業の実態を調べる

※家業の実態を調べる

「家業」も家と同じく分割できない遺産

被相続人の行っていた「家業」を相続するというのは、家の歴史を継ぐことでもあります。責任はもちろんですが、金額の面でもとても大きな相続となります。法人の役員といった職は、あくまで本人と会社との契約のため継ぐことはできません。ただ、株主やオーナーなどの「経営者」としての役割りや、自営業は財産として継ぐことができます。しかしどちらにも共通するのですが、これらは「ある程度まとめて相続しないと意味がない」ものでもあります。株なら経営権を保てるだけの額、自営業なら「店」に関わるすべての財産。つまり、相続人がひとりであるとか、他にも遺産があれば問題ありませんが、そうでなかった場合、遺産分割が大変難しくなってくるのです。「家業を継がせたい」と思うのであれば、生前から贈与や遺言書の作成、名義変更などの準備を進めておくとよいでしょう。

「家業」を引き継ぐには

法人

家業(法人)の継承

※家業(法人)の継承

個人事業

家業(個人事業)の継承

※家業(個人事業)の継承

つまり・・・他の相続人に代償金を支払う可能性が高い生前贈与や遺言書などで対策が必要

専門家からのアドバイス

渡邉 祐介

弁護士:渡邉 祐介

「代償金」は裁判のタネになりやすい

ひとりの相続人が大きな遺産を受け取る場合、「代償金」が発生することがままあります。しかし、親族間の債権・債務関係は甘えが生まれやすく、紛争のきっかけになることも多いのです。代償金は分割払いにすることも可能ですが、そのために滞納する者も多く、そのまま不払いになることもあります。差し押さえや競売を行うこともできますが、これでは草葉の陰の被相続人も悲しむことでしょう。推定被相続人が生前に取れる対策としては、生前に代償金を支払うであろう相続人を、生命保険の受取人にしておくのがおすすめです。生命保険は相続財産にはならないので、全額受取人の財産となり、代償金の支払いに充てることができるのです。

家業を継承するには・まとめ

ひとまとめに相続しないと「家業」を保てない

生前贈与か遺言書を用意してもらうのが◎

遺産分割でもめるとどうなるの?

相続人同士で意見が合わない場合はどうする?

遺産分割調停・審判

※遺産分割調停・審判

終わらない協議を専門家にゆだねるのも手

遺産の分割内容は、まず相続人同士による「遺産分割協議」で話し合われます。これで全員が納得できれば一番なのですが、遺産の内容や各々の家庭環境、その他事情によって成立しないことも多々あります。当事者同士で結論を出すのが難しい場合、また成立した内容に納得がいかないときは、家庭裁判所へ申し立てることによって専門家が仲立ちをしてくれます。相続人の申し立てに応じて「遺産分割調停委員会」が作られます。調停委員は相続人全員の意見や経済状況などを聞き取り、分割内容を提案します。ただし、あくまで「提案」のため、強制力はありません。不服があれば次は「審判」へと移ります。審判では、裁判官によって最終的な判断が下されます。応じない相続人には「履行勧告」が出されることも。「裁判所」というと構えてしまいがちですが、第三者の目を通して相続を見つめ直す手段として活用されています。

遺産分割調停・審判の流れ

1.家庭裁判所に申し立て

家庭裁判所への申し立て

※家庭裁判所への申し立て

2.調停委員会の聞き取り

調停委員会の聞き取り

※調停委員会の聞き取り

3.調停

調停

※調停

専門家からのアドバイス

渡邉 祐介

弁護士:渡邉 祐介

調停は審判に入る前の準備期間

遺産分割協議は当事者だけでは感情的になりがち。こじれそうになったら、冷静な第三者である家庭裁判所に委ねてしまうほうがよい場合もありあます。そして調停を少しでも有利に進めるためにも、あらかじめ法律家に主張方法などを相談しておくのもよいでしょう。さて、通常遺産分割は協議、調停、審判と段階的な制度が存在しますが、最初から審判を申し立てることも制度上は可能です。ただ、実務では「調停で解決できればそのほうが望ましい」と考えられています。そのため、こじれた内容でいきなり裁判を申し立てたとしても、まずは、職権で調停に付されることになるのが通常です。

遺産分割調停・審判になったらどうなる?

遺産分割調停とは

家庭裁判所

調停が始まればひと安心?長引くとデメリットも

遺産分割協議がにっちもさっちもいかない…ヒートアップした議論を落ち着かせるためにも、専門機関による「調停・審判」はとても有効な手段です。冷静に状況を判断してくれますし、専門家が出した提案ならと、意地になっていた人も聞き入れやすくなります。ただし、調停・審判にはいくつか覚悟しておかねばならないことがあります。まず調停期間中は遺産の使用が制限されるため、これらを使うことはできません。また審議は短くても2~3カ月、基本的に平日に行われます。勤めている人はその都度休みを取らねばならず、度重なる審議に精神的な疲労も大きいでしょう。長引けば相続税の申告期間である10カ月以内に終わらないこともあります。調停を乗り切るために、弁護士などに依頼して代理人となってもらい、相続に関する調査や、審議での主張方法の助言を受けるなどの助力を得るのもよいでしょう。

遺産分割調停のメリット・デメリット

○ 調停期間中の制限

・預金・土地など、遺産の使用が禁止・制限される
・審議は基本的に平日に行われる

通帳

○ 調停にかかる期間

・早くて2~3カ月、長いと1年以上かかる
→相続税申告期限(10ヶ月)に間に合わないことも!

時計

○ 審判

・拘束力のある審判書が発行される
・取り決めに従わないと「履行勧告」が出される

ただし …… 結局法定相続分で審判されることが多いため、
労力に見合わないことがほとんど

専門家からのアドバイス

渡邉 祐介

弁護士:渡邉 祐介

意外と重要な「担当調停員」の良し悪し

調停では、2名の調停員が間に入って話し合いを整理してくれます。調停とは「和解の場」であり、調停員は中立の立場から話し合いの手助けを行うだけで、最終的に「どこで折り合いをつけるか」は当事者に委ねられています。あくまで「話し合い」なので、全てを法で解決するわけではありません。調停員が人間関係のバランス感覚に優れた人、社会常識がある人、魅力的な人に当たると、話し合いがスムーズにまとまることは多いです。弁護士としては、「どんな調停員にあたるか」ということは調停における大きな関心事の一つです。

遺産分割調停・審判になったらどうするの・まとめ

遺産使用や拘束時間などの制限が発生

円滑に進めるため、専門家への相談も◎

まとめ

以上、遺産分割の大まかな流れと、遺産分割協議をスムーズに進めるために知っておくと役立つポイントについて解説させていただきました。

普段から仲の良い親族同士だから、遺産分割協議もすぐに済むだろうと考えていたら、想像以上にこじれてしまった…ということはよくあることです。

亡くなった人との感情的な関わりが強かった人ほど、遺産分割についてもこだわりを捨てるのが難しいものであることは理解しておきましょう。

親族同士だけではうまくいかなった話し合いであっても、他人である専門家に間に入ってもらうことがスムーズにまとまるという側面があります。

遺産分割でもめることが予想される場合には、弁護士や司法書士といった法律の専門家にアドバイスを求めることをおすすめします。

専門家の事務所では初回の相談料は無料で受け付けてもらえることが多いですから、相続人の人数やおおまかな遺産の内容をまとめた上で相談してみると良いでしょう。

遺産相続は弁護士に依頼が本当にベスト?

遺産相続が発生した場合に、弁護士に依頼した方が良いのかについては、非常に判断に迷うところです。

自分ですべてを行う場合に比べて、また、他の専門家に依頼する場合に比べてどのようなメリットやデメリットが存在するのかをしっかりと検討して判断しましょう。

弁護士に依頼するメリット

交渉の煩わしさから解放される

突然に家族の不幸が訪れ、遺産相続の話し合いをしなければなくなった場合の精神的負荷はかなりのものです。
ただでさえ親族が亡くなって悲しみに暮れる中、普段の仕事等も並行して行わなければならないわけです。

これに加えて、遺産相続に関する話し合いの煩わしさは大変大きなものです。 この煩わしい作業を、専門家に安心して依頼できることは非常に大きなメリットであります。

また、今まで親しくしてきた身内と突然お金の話をしなければならない状況に陥ります。 例えば、兄弟同士で父親の財産を分ける場合など、お互いの利益は相反することになります。

今後の関係性なども考えて、言いにくいようなことも多くあると思います。
このようなことに思いを巡らせること自体が大変に煩わしいことです。 弁護士に遺産相続を依頼した場合には、代理人として言いにくいことも言ってくれますので、非常に大きなメリットとなります。

手続きの煩わしさから解放される。

相続が発生して、自ら手続きを行おうとすると、その量の多さに驚きます。 戸籍謄本を一つとるだけでも、平日の仕事を休んで市役所へいく時間などないと考えてしまう人は少なくありません。

亡くなった人の代わりにお財産に関する証明書類も取得しなければなりません。
すでに本人はなくなっているわけですから、どこにどんな財産があるのかを把握するのも一苦労です。

例えば、銀行残高を確認するためには、それぞれの金融機関の窓口に赴き残高証明書を取得する必要があります。

また、生前の口座の動きに調整すべき項目があるかどうかを確認するために取引履歴を照会しなければなりません。 これらをすべての金融機関の種類ごとに行う必要があります。 最も財産の状況の確認作業が容易な銀行口座の預貯金でさえ、このように面倒な手続きが生じます。 不動産であれば謄本や権利書の確認等も必要になります。 また、金額において現在の相場を調べる必要があります。

非常に専門的な作業になりますので、普通の人が取り組もうとすると煩雑極まりない作業になります。

また、手続きの代行に関しては他の専門家と連携しているかも非常に重要なポイントです。

公証役場などの行政機関とのやりとりに関する書類の代理作成の専門家として行政書士があります。

また、不動産などの相続を受けた場合には、法務局へ登記を行う必要がありますが、この領域の専門家は司法書士になります。

この様な他の専門家とやり取りをする際に、いちいち事情を一から伝えるのは手間になります。

また、各手続きは複雑に関係していますから、他の専門家と連携している弁護士に依頼することによって、依頼者にとって総合的にもっとも有利な内容で外部と連携し手続きを進めることができるのです。

弁護士に依頼する際には、外部専門家との連携体制について確認するとよいでしょう。

知らないと損をする可能性を減らす

相続の局面においては、期限や取り扱いが非常に複雑なルールが多くあります。 財産の分割の方法や申告の期限の問題、相続税の支払方法等、数をあげればきりがありません。 しかも、金額が比較的大きなものになることが多く、うっかりミスをしてしまった場合の被害も大きくなりがちです。
弁護士は法律の専門家ですから、専門知識を駆使して、依頼者の利益が最大になるように提案・調整をしてくれます。

また、遺留分の考え方一つをとってみても、関係者の人数が多い場合や亡くなっている場合、離婚再婚などがあった場合は非常に複雑になります。

自分がもらう権利がある財産についても、ルールを知らないがゆえに主張する機会を逸してしまい、損をしてしまうというようなことにもなりかねません。 だれでも身内とあえてもめるようなことしたくはないはずです。 しかしながら、正当な権利があるのならば主張すべきと考えている人も多いのではないでしょうか。 相続はそのケースに応じて、まったく内容が違うものになります。 相続の事例を解説本などで調べてみても、まったくもって同じ状況ではないとうことがほとんどだと思います。
それぞれの家族にはいろいろな歴史があり、人間関係も異なります。

亡くなった方が築きあげてきた財産の内容もそれぞれ異なります。

すべての財産が銀行の預金であれば、相続に人で分けるのは簡単かもしれません。
しかし、現実には自宅などの不動産も財産として存在するケースも多くあります。

誰が相続して、だれが済み続けるのによって相続税法上の評価が異なることが多くあります。 不動産を相続した場合においては、お金は一銭ももらっていないのにもかかわらず、莫大な金額の相続税が発生することもあります。 この様なときの納税方法などの相談にも乗ってくれるはずです。

遺産相続の専門家である弁護士に依頼することによって、自分の状況にあった最適なプランを提案してくれるはずです。
相続の得意な弁護士に依頼すれば、知らずに損したというようなことはありません。

一生のうちに、多くても数回ていどしか直面しないのが相続です。是非、専門家に依頼するとよいでしょう。

そもそもトラブルが発生しないようにまとめてくれる

お金が絡むと誰でも欲が出て、感情的になってしまうことがあるものです。 時には、感情に任せて常識を外れた主張をしてしまうこともあるかもしれません。

そのようなことで、一度関係性に溝が入ると修復が難しいこともあります。 今まで仲の良かった兄弟同士にもかかわらず、相続をきっかけに絶縁状態になるなどといった話も残念ながら良く聞きます。 法律に熟知した弁護士を通して話し合いをすることによって、話し合いも自然と法律にのっとった建設的な内容になっていくものです。
この結果、スムーズに話し合いが進行し、トラブルが発生することなく無事に完了することもあります。

また、結果として正しいことを主張していたとしても、それが感情的になっている局面で話したことであれば、相手に受け入れてもらえないこともあります。

また、主張された相手側にとっても、それは本当に法的に正しいことなのかの判断がつかず、話し合いがうまくまとまらないこともあります。

こんな時、傍らに法律の専門家である弁護士がいた場合、すぐにその場で法律的な解釈を補ってくれます。

法律に詳しくない一般の人が発言した内容よりも、弁護士という裏付けのある人が発言することによってその信憑性は非常に高くなります。 特に、相続に関する話し合いを行う時は、緊張感が高まりますから、法律的に正しいという裏付けをもって話し合いを進めることができるというのは非常に大きなメリットになります。

相続にトラブルが生じた時に裁判の代理のため弁護士を依頼するという方法の他に、話し合いに一緒に参加してもらい、冷静な立場での交渉のまとめ役としても機能します。

話し合いがもつれる前から弁護士に依頼することにより、よりスムーズに話がまとまる可能性があります。 トラブルの予防のために弁護士に依頼することは、非常に大きなメリットです。

弁護士に依頼するデメリット

金銭的負担が必要

弁護士に遺産相続を依頼するときに、一番のデメリットとして思い浮かぶのが依頼費用ではないでしょうか。

一般の人が普通に生活するうえで、弁護士にお仕事を依頼する機会などはまずありません。

いざ、遺産相続について弁護士に依頼しようとすると高額の報酬を請求されるかもと、二の足を踏んでしまう人も多いのではないでしょうか。

大まかに分けると活動費と報酬に分けることができます。

活動経費

弁護士が依頼された遺産相続の案件について手続きを行う際の移動費が代表的なものです。

管轄の裁判所などに赴いて行う必要のある手続きも多く存在します。

また、資料作成の過程で、どうしても必要になる戸籍や謄本を取得する際にも、印紙代などの費用が掛かります。

また、土地の評価額の計算など、他の専門家に手続きを一部依頼する必要がある場合もあります。その場合には、不動産鑑定士への報酬費用などが発生します。

報酬

基本的に、弁護士費用の中心となるのが依頼報酬です。 多くの場合、導入時の相談料金、正式に手続きを依頼した際の着手金、完全に業務が完了した段階で支払う最終報酬に分かれます。

それぞれの弁護士事務所により異なりますが、まずは初回の相談料を無料としているところも最近は多いようです。
実際に案件に着手する際に支払う着手金についての計算方法は様々です。

全体の見積もり報酬額の2割と計算するところもあれば、一律に10万円等とするところも少なくないようです。

最終報酬については、成功報酬とする場合も多いようです。依頼した手続きが、完全に遂行された際に請求することが多いようです。

弁護士のスタンスによる違い

法律の世界と私たちの日常生活の感覚が異なることは多くあります。 たとえば、人間関係において、相手の性格や関係性に斟酌して、法律論に従って厳密に得られた結論とは違う内容で合意することはよくあることです。

ビジネスの世界において、取引先との関係上、この様な場面は多くあります。

それが親族の間となると、今までの関係性もあり、また、これから先も長く付き合うことを考えて、法律論とは違った合意がなされることがさらに多くあります。
相続の局面でも、まさに、金額の重要性や、相手の立場に配慮して、また、トラブルに発展するのを嫌って、この様な取引がされることが非常に多くあります。

外部の目から見れば、多少不自然に感じる部分があっても、当人同士では非常に整合性の高い結論であることもあるのです。

人間らしい話し合いがされることは決して悪いことではありません。

一方、弁護士は法律に関する豊富な知識を武器に、依頼者の利益を守る職業です。

また、弁護士によっては、法律的に正しいことが、正義であるとの信念を持ったひともいます。 遺産分割を円滑に進めるために弁護士に依頼したのにもかかわらず、当人同士が問題としていないような些細な点について、検討を始め、反対に話し合いがもつれる原因を作るということもあります。 もちろん、この様な弁護士ばかりではありませんが、個人の性格によるところも少なからずあることは確かです。

また、遺産分割について話し合いがこじれて裁判等になり、期間が長引くとそれ相応の追加報酬が発生します。

この意味においては、依頼者と利益が一致しない場合もあるでしょう。

司法書士や税理士、行政書士との違いとは?


弁護士以外で私たちが遺産相続について相談しようとした時に思い浮かぶ専門家として、司法書士、税理士、行政書士があります。

それぞれ専門分野が異なり下記のような特徴があります。

司法書士

司法書士も法律の専門家です。 不動産登記や遺言書の作成、遺産分割協議書の作成等が専門業務です。 これらは、弁護士も行える業務になります。

ただし、遺産分割協議や、調停等において代理人となることはできない点がポイントです。法律問題に対して代理人として対応できるのは弁護士だけです。

税理士

相続税の申告、準確定申告、相続財産の評価、節税スキームの提案等を行うことができます。

相続を考えたときに、実際の納税額が少しでも少なくなるような手法の提案を受けることができる点においては、非常に頼もしい専門家ということができます。 ただし、相続が実際に発生してしまった場合には、取るべき対策も限られます。

節税対策の手法は、基本的に数年単位の事前計画に基づくものが多いです。

行政書士

遺言書の作成や、遺産分割協議書の作成を依頼することができます。

ただし、これらについては弁護士や司法書士にも依頼することのできる業務になります。

しかも、遺産分割の過程において問題が発生した際には、弁護士や司法書士に依頼することになります。

従って、よほど単純な案件で費用を安価に抑えたい場合以外は、相談しにくいというのが実情です。

遺産分割をスムーズに完了させることが重要ならば税理士や司法書士に


遺産相続を相談する専門家には税理士や司法書士も当てはまりますが、彼らにとって、相続を長引かせても良いことはりません。

確定した内容に基づいて相続税の申告を代理で行うことや、遺産分割協議の結論に基づいて各種登記等を行うことが業務になります。
そのため、遺産分割をスムーズに完了させることが重要になります。 この意味においては、弁護士と比較した場合に、スムーズに遺産相続を完了させたい相続人とより利益が一致するのかもしれません。

遺産相続・遺産分割の弁護士費用の相場

上記のメリットやデメリットを考慮して弁護士に遺産相続を依頼する場合、具体的にいくらの金額が必要になるのでしょうか。

遺産相続・遺産分割の弁護士費用の相場を確認していきましょう。

相続の案件の特徴として、個別に内容が全く異なるということが挙げられます。

相続する財産についても、評価の簡単な現預金だけである場合や、多くの不動産や取引相場のない株式等、金額的評価を算定するのにも手間を有する財産を保有している場合があります。

相続人同士で、おおむね内容がまとまっているような場合や、完全にお互いが対立していて弁護士同士の交渉が必要な場合もあります。

また、弁護士報酬については、具体的な法律による規定が存在しません。

各弁護士が自由に報酬を決定しています。

しかも、上記のように案件ごとにも内容は様々ですから、一律に相場を決めることはもともと難しい問題があります。

遺産相続に関して報酬を決定する際には、上記のような相続案件の特殊性を理解した上で、考慮すべき事項があります。

それは、「経済的利益」の概念です。

言葉にすると少々かたくるしくなりますが、要は依頼者が、その弁護士に依頼することによっていくら(現金の形だけでなくその他の財産の形式を含めて)得をしたのかということです。

この経済的利益の金額が大きいほど、報酬の金額も大きくなると考えられます。

この点、現在撤廃されていますが、弁護士費用の報酬規定を参考までに記載いたします。

これによれば、

300万円以下の部分については、着手金と報酬金を合わせて24%と規定されていました。

300万円から3,000万円の部分については15%+27万円です。

3,000万円から3億円までの部分については9%+207万円、それ以上の部分については6%+1,107万円です。

金額が大きくなると、報酬も同様に比例して大きくなるのは実情に合いませんので、相対的に金額が大きい場合は報酬の割合は小さくなります。

それでも、この金額については現在の感覚のなじまないとの考え方もあって、2/3くらいのラインで決定しているところが多いようです。

報酬の金額について具体的に交渉する際には、上記の計算結果と比べてみると、交渉がスムーズに進むでしょう。