相続税の税務調査

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相続税の課税については「申告納税」という制度を取っているため、「自分で納める税金を自分で計算して納付する」というやり方になっています。
しかし、申告された内容が適正かどうかということについては常に税務署が目を光らせており、かなりの件数の税務調査、申告漏れの指摘及び追徴課税が行われていることを知っておかなくてはなりません。

☆相続税の税務調査

相続税の申告について申告額を間違えている、また故意に税を免れるために隠ぺい工作を行っている疑いがある場合は、税務署職員が被相続人(亡くなった人)や相続人の自宅などを訪問し、調査を行うことがあります。税務署の職員数には限りがありますので、もちろんすべてのケースについて税務調査をすることは不可能なのですが、相続税は他の税金と比べて税務調査が入りやすいとも言われます。その理由としては、やはり元々扱う財産額が大きいため計算方法も複雑でミスが発生しやすいこと、また税務署にとっても追徴金という「収穫」が大きいことです。

☆税務調査が行われる確率

相続人の税務調査が行われる確率としては、申告数全体に対する3割程度になっています。そして実際に税務調査が入るとその8割から9割が何らかの申告漏れを指摘されるのが現状です。
国税庁が出している「平成26事務年度における相続税の調査の状況について」というデータを見ると相続税の調査実績については次のようになっています。

  • ・平成24事務年度については、「実地調査件数(相続人らへの訪問等で行われた税務調査の件数)12,210件」「申告漏れ等の非違件数(国税当局が申告ミス等を指摘した件数)9,959件」「非違割合(税務調査で申告ミス等を指摘された割合)81.6%」「重加算税賦課件数1,115件」「申告漏れ課税価額3,347億円」「追徴税額(最初の相続税額に対して追加で課せられた税額、加算税を含む)610億円」「実地調査1件あたりの申告漏れ課税価額2,741万円」「追徴税額500万円」となっています。
  • ・平成25事務年度については、「実地調査件数11,909件」「申告漏れ等の非違件数9,809件」「非違割合82.4%」「重加算税賦課件数1,061件」「申告漏れ課税価額3,087億円」「追徴税額539億円」「実地調査1件あたりの申告漏れ課税価額2,592万円」「追徴額452万円」となっています。
  • ・平成26事務年度については「実地調査件数12,406件」「申告漏れ等の非違件数10,151件」「非違割合81.8%」「重加算税賦課件数1,258件」「申告漏れ課税価額3,296億円」「追徴税額670億円」「実地調査1件あたりの申告漏れ課税価額2,657万円」「追徴額540万円」となっています。

このようにいったん調査が入った場合に何らかのミスや隠ぺいが発覚する可能性は例年、8割を超えています。基礎控除の引き下げなど、相続税については徴税を強化する流れになっているため、この傾向は今後も続くと考えるべきでしょう。

☆税務調査で指摘された場合の罰則

最初の申告における税額が少なすぎた場合、「過少申告加算税」が課せられます。もし自ら気付いて修正申告すれば加算税がかからないこともありますが、先に税務署から指摘を受けてしまえばもう手遅れです。指摘を受けてからの修正があった場合は、追加で納付した税額の10%の過少申告加算税が課せられることになります。また、追加納付金額が「期限内に申告した税金」または「50万円」のいずれか多い部分を超える金額に対しては15%が課せられます。
そして、申告するべき金額を期限までに納付していなかったことによる「延滞税」は相続税の納期限の翌日から2月を経過する日までは原則として年7.3%、納期限の翌日から2月を経過した日以後は原則として年14.6%となっています。

☆税務調査で指摘されやすいポイント

税務調査で申告漏れを指摘された遺産の内容としては、平成26年は「現金と預貯金」が全体の3分の1を超えており、最も大きな割合になっています。バブル崩壊以降、不動産価格は低迷し続けており、税務署の調査官も現金や預貯金に狙いを定めていることがうかがえる結果となっています。
資産を現金で持っておいてどこかに隠すケースは古典的なようですが、いまだ非常に多い財産隠しの手口です。被相続人(亡くなった人)本人の家ではなく、相続人やその他の親戚の家に隠し持っているケースも珍しくありません。
預金についても調査官はあの手この手で「申告漏れの預金口座がないか」をチェックしています。たとえば、被相続人の持っていた身の回りの手帳やボールペン、そして家にあるティッシュやカレンダーのような記念品に金融機関の名前が入っていることはよくありますが、調査官は家を訪れた際にこのようなものを逐一チェックしています。
よく、高齢者があまり深く考えずにせっせと孫などの口座に預金を移して相続税対策をしたつもりでいることがありますが、これは「名義預金」と呼ばれ、被相続人の財産としてカウントしなければならないことになります。よって、この分を最初に除外して申告していると、後から大変な追徴を受けることもあるのです。もし、子供や孫などに贈与税の非課税範囲内で贈与したい場合、その旨をきちんと契約書などに残して贈与の事実を認めてもらえるようにしておかなくてはなりません。たとえ海外の口座などに預金を移したとしても、他国との情報交換の制度もありますので「海外ならばれないというわけではない」ことも知っておきたいものです。
個人の預金口座は税務署であればそのお金の出入りを職権でチェックすることができますので、口座があること自体がわかればもう逃れようがないのです。
また、被相続人以外が契約者となっていて被相続人が保険料を負担していた保険契約や、家にある美術品なども目をつけられやすいポイントといえます。

☆税務調査が行われるタイミング

税務調査は季節的にいつ頃が多いのかといえば、7月から10月頃の「夏場」ではないでしょうか。この時期は、個人、法人ともに確定申告もおちついた時期であり、税務署としても税務調査に人員を割けるからです。そして、個々の相続税申告との関係で見ると、申告してから半年後から2年後くらいに入ることが多いようです。

☆ 税務調査を受ける時の流れ

税務調査が入る時は、だいたい1週間から10日後くらいに来る前提で日程調整の連絡が来ます。相続税申告はほとんどの場合、税理士が間に入っていますので税理士のところに連絡が来ることもあります。当日は調査官が2人1組で訪問しますが、調査自体は1日で終わることもあれば複雑なケースでは数カ月かかることもあります。相続人の立会は1人でよいのか、全員来なければならないのかは調査官からの求めによって決まるでしょう。調査の結果、調査官が申告内容について疑問を持ったり、修正を要求したりする場合は税理士と相続人代表にそれが伝えられます。その後、税理士の指導のもとで修正申告や追徴税額の納付を行います。

☆まとめ

相続税の税務調査では上記のように8割を超える申告ミス等が指摘されることが普通です。調査が入ることになったらある程度腹を括り、スムーズに手続きが進むように必要書類を準備しておくようにしたいものです。
家を訪れた調査官は雑談を装って被相続人に関する色々な質問をしてきますが、その回答によって隠し財産がばれてしまうこともしばしばです。ただ、質問に対して、その場を逃れるためのウソなどをついてもプロの手にかかればいずれ発覚してしまいますのでここは正直に受け答えしておくべきでしょう。

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