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遺言書の書き方・種類・効力・保管方法を完全解説|遺言書パーフェクトガイド

遺言書を作成しよう!|種類・書き方・効力・手続き|遺言書パーフェクトガイド
遺言書が必要なのは金持ちの家庭だけという認識は誤りです。裁判所の統計を見ても、財産が5千万円未満の家庭の遺産争いが全体の7割以上を占めています。自分が亡くなった後も良好な家族関係を望む親ならぜひ「遺言書の作成」を検討してみてください。

とはいえ、遺言書を書くのはとても難しい・ハードルが高いと考える方が多いようです。そこで、これを読めば遺言書のことがすべて分かるように専門家が解説しました。特に注意すべきポイントを強調してお伝えしていますので、遺言書を書く前には必ずご一読ください。

この記事の監修者

税理士 桑原弾

目次

遺言書とは

自分が亡くなった後の財産について、誰に何を分配するかの意思を表示するのが遺言書です。

遺言書を残す一番の効果は、自分の相続によって起こる相続争いを未然に防ぐことです。

ただし、民法で定められた形式を守らなければ無効となってしまいますので細心の注意が必要です。

遺言書を作ろうかどうかお悩みの方は、ぜひ下記動画から見ていただけると、「なぜ遺言書を作ったほうがいいのか?」がよく分かると思います。

遺言書は勝手に開けてはいけない

自筆証書遺言は、相続発生後も勝手に開封してはならず、必ず家庭裁判所による検認の手続きを経て開封しなくてはなりません。

しかし、勝手に開封してしまった遺言についても効力そのものは有効であることを覚えておいてください。

遺言書は法定相続よりも優先される

民法では「法定相続分」といって、各相続人の取り分として法律上定められた割合がありますが、遺言書が残されている場合はこの法定相続分を無視して遺言の内容どおりに遺産分割が行なわれます。

遺言書が無い場合にはどうなる?

遺言が無い場合にはどうなる?

もし遺言が残されていなかった場合には、民法という法律のルールに従って遺産が分割されることになります。

民法のルールも一応は平等な分割となるように配慮がされていますが、例えば「配偶者は2分の1、子はそれぞれ4分の1…」というように、ごく大まかな規定があるにすぎません。
そのため、遺言がない場合には遺族同士が集まって具体的な分割の方法を細かく話し合いで決める必要が生じます。
利害関係を持つ当事者どうしが財産をめぐって話し合いを行うわけですから、どうしてもトラブルになる可能性が高くなるのが現実です。
仲の良い親族が相続協議をきっかけにいがみ合うようになる…というのは、決してドラマの中だけの話ではないのです。
遺言書は、残された遺族が相続をめぐる話し合いを解決する際の心強い指針となります。財産を所有している人は、遺産分割の具体的な方法について遺言書を残しておくことが望ましいでしょう。

遺言書の効力

遺言書で自由に財産の分配ができる

遺言では、だれに財産を渡すかを自由に決めることができます。
法定相続人ではない第三者に財産を譲り渡すことも可能ですし、企業や慈善団体などの組織に財産を寄付することもできます。

また、誰に渡すかを決められるだけでなく、どの財産をいくら渡すかまで自由に決められます。

ただし、一点注意しなければならないのが「遺留分」という法定相続人の権利です。これについては 5.遺留分についてで解説します。

遺言書で相続させない人を決められる

遺言では「この人には相続する権利を認めない」という内容を残すこともできます。これを相続廃除と言いますが、ひどい虐待をされたケース等、廃除するだけの理由がなければ家庭裁判所で認められないこともあり、利用されることはかなり稀です。

遺言書で自分の子供だと認知できる

自分の子であると認める「認知」は普通生きている間に行いますが、遺言によって行うこともできます。

平成25年の法改正以前は「非嫡出子(認知された子)の相続分は、嫡出子の2分の1」というルールがありましたが、現在このルールは削除されています。

つまり、遺言によって認知された非嫡出子は、嫡出子と同様に相続人の順位や遺産分割の権利を有することになります。

遺言執行者を指定できる

遺言の内容が確実に実現されるように、遺言執行者を遺言の中で指名しておくことも可能です。

遺言執行者に指定された人は、遺言の内容どおりに預貯金口座を解約したり、不動産の名義変更を行ったりといった事務を行う権限が与えられます。

遺言執行者には、相続人または弁護士・行政書士などの専門家が指定されることが多いです。

遺言書が無効になる場合

遺言書が無効になるケースってどんなとき?

正しい記載方法で書けば、遺言書を有効に残すことができます。

しかし、一見有効な形であったとしても、内容的な不備や修正加筆の方法のミスで遺言が無効となってしまう場合は少なくありません。

以下、遺言が無効となってしまう代表的なケースについて、具体的に解説させていただきます。

① 加筆や修正方法の間違い

自筆証書遺言の説明でも触れましたが、遺言の加筆や修正は法律上の要件を満たしていない場合には無効となってしまう可能性があります。

不安のある方は公正証書遺言の形で遺言を残すか、いったん作成した自筆証書遺言は破棄して新しく書き直すことをおすすめします。

また、公正証書遺言の形で残した遺言の修正や加筆をしたい場合には、原則として一から作成をやり直すことになります。

公正証書や補充証書といった形で修正加筆を行うことも考えられますが、基本的には作り直しが望ましいでしょう。

なお、作成要件として有効な複数の遺言が残されている場合には、遺言の作成日付が新しいものが優先されます。

② 内容が不明確な遺言

遺言の内容は当事者が後からみて判断ができる必要があるだけでなく、金融機関や役所の手続きでも使用する必要があるので、内容は正確に記さなくてはなりません。

財産目録に記す銀行預金などは支店や口座種類、口座番号まで記し、不動産については登記簿謄本を参照しながら正確な情報を記載するようにしましょう。

不動産については遺産相続が行われた後、前の所有者から相続人への名義変更(相続登記)を行う必要があります。

その際、法務局で「遺言に基づく移転登記」であることを認めてもらうためには、遺言の内容が登記簿謄本の内容と一致していなくてはなりません。

③ 利害関係者が書かせたと思われる内容

遺言は、遺言者が自分の判断のもとに自書しなくてはなりません。

利害関係のある相続人の一部などが手を添えて書かせたなどの疑いが生じた場合には、その遺言は無効となってしまう可能性があります。

このような場合、筆跡鑑定などを通して厳密に調査が行われることもありますから、トラブルとならないためにも遺言者が自分で自筆することが必要です。

もし自筆するのが難しい場合には、公正証書遺言の形式を選択するようにしましょう。

公正証書遺言では公証人があなたの遺言内容を聞き取り、文書作成については代行してくれます。

④ 遺言能力が認められないケース

遺言は、15歳以上の人であれば単独で行うことが可能になります。

ただし、精神上の障害や認知症などによって正常な判断能力がない状態で作成されたと判断された場合には、その遺言書は無効となってしまう可能性があります。

例えば、遺言を作成した時に認知症の症状があったかどうかが争われるケースでは医師の診断書やカルテなどをもとに裁判所が判断するといったようなことが行われます。

また、認知症などを原因に家庭裁判所の審判によって成年被後見人とされた人であっても、遺言そのものは有効に行うことが可能です。

ただし、成年被後見人が遺言をするためには、医師2名以上の立会いと事理弁識能力の保証のもと行う必要があります。

被保佐人や被補助人の審判を受けた人は、こうした制約を受けることなく遺言書を残すことが可能です。

⑤ 複数人が共同で遺言している場合

法律上、遺言は単独の意思表示として行わなければならないとされています。

理由としては、共同で遺言をした複数人のうち、相続の発生が前後した場合に、まだ生きている人の相続の権利がどうなるのかといった問題が生じることが挙げられます。

「両親から息子へ」といったように、複数人が共同で遺言を残してもそれは無効となってしまいますから注意が必要です。

遺言書が無効とされた実際の判例

まずは、遺言書が無効となってしまう具体的なケースについて、実際の判例をもとに見ていきましょう。

実際に多いのは形式を満たさない形の自筆証書遺言のケースですが、公正証書遺言についても遺言が無効となった判例があります。

① 自筆証書遺言が無効とされた判例

以下で紹介するのは、高松高等裁判所の平成25年7月16日付の判例で、自筆証書遺言の有効性が問題となった裁判の判決です。

自筆証書遺言は遺言者本人が手書きする必要がありますが、遺言者が過去に脳梗塞を患っており、自筆できる状態であったかどうかが問題となりました。

事実の概要
遺言者は昭和43年に脳梗塞を発症し、17年後の昭和60年に80歳で死亡しました。

残されていた遺言の日付は昭和53年であり、遺族の証言によると遺言者は脳梗塞発症後右半身まひの状態で、文字を書くことが難しい状態であることから「自分で書いたものではないのでは」という疑問が持たれていたという事案です。

判決内容
結論的には、一審判決では遺言は有効、二審判決では遺言は無効とされ確定しています。

一審判決で遺言が有効とされた理由としては、遺言書に押印されていた印鑑が遺言者本人のものであることや、筆跡鑑定の結果、遺言書が偽造であることが明確に証明できなかったことが挙げられます。

一方、二審判決では遺言書は遺言者が自筆したものではないとして遺言書の内容を無効としています。

その理由としては、遺言書が作成された当時に遺言者本人が親族にあてて書いていた年賀状の筆跡と比較し、親族の名前をひらがなで書いていたのに遺言書では漢字で書いているなどの事実から、遺言書は遺言者の妻が書いた疑いがあるとしています。

また、遺言者本人が、右半身がまひしていることを年賀状で記載していることなどからみて、同時期に作成された遺言書の内容は遺言者本人が書いたものと認めることはできないと判断しています。

このように、自筆証書遺言が本人が自筆したものであるかどうかが争われる場合には、筆跡鑑定その他の方法で厳密に証拠調べが行われることになります。

② 公正証書遺言が無効とされた判例

公正証書遺言は、公証人という法律の専門家にアドバイスを受けながら遺言書を作成する方法ですから、遺言が無効となってしまうケースは通常考えられません。

しかし、過去の判例では公正証書の形で作成されたのにもかかわらず、遺言書の有効性が問題となった判例があります。

以下では、公正証書遺言の有効性が問題となった、東京地方裁判所の平成28年3月4日付判決を紹介します。

事実の概要
遺言者(遺言作成時94歳)は、自分の孫に会社の経営を継がせたいと考えていたことが周囲の証言から確認されていたものの、遺言書の内容では他家に嫁いだ相続人にすべての遺産を相続させるとされていました。

遺言書は公正証書遺言の形で残されていたものの、遺言者が公証人と面談した当時において、正常な判断能力を有していたかどうかが問題となりました。

判決内容
結論的には、遺言者は公正証書遺言を作成した時点では正常な判断能力を有していなかったとして、遺言は無効であると判断されています。

その理由としては、遺言者自身の要望についての周囲の証言(孫に会社を継がせたいと考えていたことや、一方でそれ以外の財産については相続人全体で平等に分配したいと漏らしていたなど)と、遺言者が遺言書を作成した12日後にせん妄状態に陥っていた事実などに照らし、遺言作成時において遺言者には遺言能力はなかったことを挙げています。

公正証書遺言は公証人が遺言書式を作成するものですから、遺言の形式については不備があることは通常考えられません。

しかし、公証人と面談した当時において遺言者に遺言能力がそもそもなかったと判断された場合には、公正証書遺言でも無効となってしまう可能性があるのです。

遺言書をめぐって生じる可能性があるトラブルの内容

法律上の要件を満たすように注意し、厳重に保管していた遺言書であっても、分割協議の場でトラブルの原因となるケースは少なくありません。遺言書の内容や扱いをめぐって生じる可能性があるトラブルの具体的な事例についても知っておきましょう。

いざ相続が発生した後になると、遺言は強力な効力を持つため、内容に不備があった時にその解釈をめぐって争いになることも少なくありません。
どのようなトラブルが生じる可能性があるのかを知り、遺言作成時にトラブルを未然に防ぐ手立てを考慮しておくことが大切です。

① 遺言書を遺族が勝手に開封してしまった

自筆証書遺言の場合、相続発生後も遺言は勝手に開封してはならず、必ず家庭裁判所による検認の手続きを経て開封しなくてはなりません。

もし家庭裁判所の検認を経ずに勝手に開封した場合には、5万円以下の過料が課せられる可能性がありますので注意してください。

なお、勝手に開封してしまっても遺言書の効力そのものは有効です。しかし、内容に手が加えられていないか? など、遺産分割協議の場でトラブルとなる可能性がありますので、遺言書は勝手に開封してはいけません。

公正証書遺言や秘密証書遺言の場合には、公証役場で原本が保管されていますから、開封時に家庭裁判所の検認は必要ありません。

② 遺言書が後になって出てきた

意外に多いのが、遺産分割協議が終わった後になって、遺言がひょっこり出てくるケースです。

この場合の解決方法としては2種類あり、1つは遺言の内容を実現するためにいったん遺産分割協議を白紙に戻すことです。

もう1つは、遺産分割協議に参加した相続人全員が共同で、遺言の内容は無視して完了した遺産分割協議の内容を維持することを決定することです。

ただし、遺言の中で、すでに行った遺産分割協議の相続人以外の利害関係人がいることが明らかになった場合(遺言で認知がされている場合や、法定相続人以外の人が相続人に指定されているような場合)には、その人たちの申し立てがあった場合には、遺産分割協議は無効となってしまいます。

遺言が後から出てきた場合には、遺産分割協議に参加した人だけでなく、利害関係人となる人全員に声をかけ、善後策を検討することが後のトラブル回避につながります。

③ 隠し子の発覚

生前には秘密にしていたけれど、遺言で隠し子(非嫡出子)の存在が告白され、認知もされている…というケースは少なくありません。

残された家族としては裏切られた気持ちになることもあるかもしれませんが、認知がされている以上、その非嫡出子の人には法律上嫡出子とまったく同じ相続の権利が認められます。

もし非嫡出子の人を排除して遺産分割協議を行ってしまうと、その非嫡出子には遺留分が当然認められますから、後から遺留分侵害額請求などの形で遺産の分割をやり直すことにもなりかねません。

遺言で隠し子の存在が発覚した場合には、冷静に遺産分割協議を進めていくことが必要です。

場合によっては弁護士などの第三者の専門家に間に入ってもらうことが遺産分割協議をスムーズに進めるために役立つこともありますから、検討してみるとよいかもしれません。

④ 遺言に記載されている財産がない

遺言には記載されているものの、実際にはその財産がないという場合も問題になりがちです。

例えば、遺言に「○銀行の定期預金については長男に全額相続させる」というような記載があったけれど、実際に相続が発生した後に調査してみたら、その口座は解約されてお金は使い込まれていた…というケースが考えられます。

重要なのは、遺言に記載されている財産を誰が使ったのか?です。

もし遺言を残した本人(亡くなった人)がその財産を自分で使ったのだとしたら、遺言の内容はその部分について単に無効になるだけです(その部分について取り消したとみなされます:民法1023条第2項に規定があります)

遺言をした本人は遺言の内容に拘束されることはありませんから、遺言を作成した時点では存在した財産を、相続発生時までに使い切ってしまったとしてもそれは仕方のないことです。

相続人の一部が遺産に手を付けていた場合
相続人の誰かが勝手に相続財産に手を付けていたような場合には問題となります。

この場合、実際にお金を使い込んだ相続人に対して、それ以外の相続人が不当利得の返還請求を行ったり、不法行為に基づく損害賠償請求を行ったりすることが考えられます。

(厳密に言うと、亡くなった人が行使できるこれらの権利を、相続人となる人が相続したという扱いになります)
多くは裁判で争うことになりますから、このような事例に遭遇した場合には弁護士に相談するようにしましょう。

遺言無効確認の訴えとは

上のように、遺言の有効性が問題となるケースでは、最終的には遺言無効確認の訴えを裁判所に提起することが必要になります。

もちろん、裁判まで進まなくとも、遺産分割協議の場で相続人同士の話し合いで遺言の内容について合意ができるのであれば問題ありません。

遺産分割協議では解決できない場合にも、訴訟の前段階として裁判所に間に入ってもらう調停を利用するという方法もあります。

しかし、これらの事前の方法でも遺言の内容について相続人の間で合意を形成できない場合には、遺言無効確認訴訟を裁判所に対して提起し、裁判官の判決という形で決着する必要があります。

「どのような内容をもとに裁判で争うか」のことを、法律上請求の趣旨と呼びます。

遺言の有効性が問題となる裁判における請求の趣旨として多いのは、以下のようなものです。

① 遺言者の遺言能力の有無

法律上、遺言を残すためには「遺言能力」が必要です。

15歳以上の人であれば遺言は有効に残すことができますが、逆に言うと14歳以下の人の場合には遺言を残していても無効ということになります。

また、15歳以上の人が遺言を残す際には、遺言を作成した時点において正常な精神状態であったことが必要です。

病気やけがなどによって、正常な精神状態になかったことが証明された場合には、様式を備えた遺言であっても無効となる可能性があります。

この点、問題となるのは認知症などを原因として、家庭裁判所から成年被後見人の審判を受けている人の場合です。

成年被後見人も遺言を残すことが可能ですが、その際には医師の立ち合いのもとに行うことが必要とされています。

② 公正証書遺言の証人の要件が満たされているか

公正証書遺言を残すためには、2人以上の証人の立ち合いが必要となります。

この証人となるためには、未成年でないことや相続人と利害関係である人(さらにその人の親族等)ではあってはなりません。

証人の適格を欠く人が公正証書遺言作成時の証人となっている場合には、その遺言は無効とされる可能性があります。

③ 自筆証書遺言について、必要な様式が満たされているか

自筆証書遺言は、法律上作成のルールが厳格に定められています。

遺言者本人による手書きである必要があるほか、加筆や訂正についてもルールが決まっています。

また、遺言の日付や、財産目録に記載されている遺産の内容が正確でない場合には、遺言の一部や全部が無効となってしまう可能性があります。

④ 遺言の撤回

遺言者が複数の遺言を残している場合には、日付の古い遺言は撤回したものとみなされます。

複数の遺言がなくとも、いったん作成した遺言について、遺言者が撤回の意思表示をしたときには、すでに作成した遺言は無効となります。

ただし、遺言を撤回する意思表示をした後、さらにその撤回の意思表示を撤回した場合(つまり「撤回の撤回」です)には、具体的な状況に応じて裁判所の判断は分かれる可能性があります。

⑤ 第三者による遺言の強制の有無

遺言者に対して、遺言者以外の人により詐欺や脅迫が行われた場合には、当該遺言は無効となる可能性があります。

⑥ 遺言者による遺言内容の錯誤

遺言者が遺言の重要な内容について事実誤認をしていたことが明らかな場合には、この遺言は無効となる可能性があります。

⑦ 公序良俗に反する内容の遺言

社会通念上認められないような遺言の内容は、公序良俗に反するために無効とされる可能性があります。

問題となるケースとしては「愛人に全額遺産を相続させる」といった内容の遺言です。

こうした遺言内容は具体的な状況に即して無効とされる可能性があります。

遺言書の3つの種類

遺言書には大きく3つの形式が認められています。それぞれの特徴について解説します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言は遺言者が自分で手書きをして実印を押すだけで完成する、もっとも簡単な遺言の形式です。

デメリットは「記載不備による無効」「遺言書が無くなる」「遺言書が発見されない」等です。中途半端な知識で書いた自筆証書遺言は、逆に相続争いを誘発することすらあります。

自筆証書遺言のルールを確認してみましょう。

  • 自筆証書遺言は必ず手書きでなくてはなりません。自分以外の人に書いてもらって本人がサインする、というような形もとることができません。
  • 遺言を作成した日付が明確にわかるような記載にしておかなくてはなりません。
  • 自筆証書遺言で遺産分割の方法を指定する財産は、正確に特定できるようにしなくてはなりません。
  • いったん作成した自筆証書遺言を、後から加筆したり訂正したりするときにも、厳密にルールが決められています。
    元の文章内容がわかる形で二重線を引いて消し、新しい内容を書いたうえで、遺言で使っているものと同じ印鑑で訂正印を押します。
  • 自筆証書遺言には本人の署名と印鑑がないと無効になってしまいます。
  • 法律上、遺言は2人以上の人が共同で残すことができません。
  • 遺言にはあなたの死後に遺言の内容を実現する役割を持った「遺言執行者」を決めておくことができます。(必須ではありません)
関連動画

公正証書遺言

公正証書遺言は手数料こそかかりますが、公証役場において公証人の面前で作成するため、意思どおりの内容を確実に残すことのできるお薦めの遺言形式です。

2名の証人の立ち会いが必要ですが、適任者が見つからなければ公証役場が有料で手配してくれます。

ただ、公証人は遺言の中身が相続人全体に対して公平なのかといったことについて保証しているわけではありませんので、遺言内容の有効性は別の問題になってきます。しかし、遺言書自体が本物であるという保証が得られることは相続手続き全体がスムーズに進むためには非常に重大な事柄ですから、特に争いの危険がある家庭では公正証書遺言作成は必須事項といえるでしょう。

公正証書遺言を作成する手続き
公正証書遺言は、おおまかな遺言内容を決めておいて、公証役場で公証人と相談しながら作成していくことになります(事前に電話でアポイントをとります)
遺言で実現したい内容さえ決めておけば、必要書類などは公証人が教えてくれます。
また、以下のような書類は公正証書遺言を作成するために必ず必要になりますから、事前に役所で取得しておきましょう。

  • ・遺言者の印鑑証明
  • ・遺言者の戸籍謄本
  • ・相続人として指定する人の住民票
  • ・遺産に不動産がある場合には、登記簿謄本と固定資産税の明細
  • ・証人2名の職業や名前、住所や生年月日がわかるもの

遺言の原案が固まった段階で、証人となってもらう人2名を決め、あらためて公証役場に出向きます。
その場で遺言内容を確認し、遺言者と公証人、証人2名が署名押印して遺言が完成します。
完成した公正証書遺言の正本を渡してくれますので、手数料を渡して手続きは完了ということになります。

公正証書遺言を作成するときの注意点
公正証書遺言を作成する際には、以下のような点にも注意しておきましょう。

遺言執行者を指定する

遺言の内容をより確実に実現するためには、遺言の中で遺言執行者を指定しておくことが望ましいです。
遺言執行者は、その名の通り相続が発生した後に遺言の内容を執行するべく事務を行ってくれる人です。
遺産として残された銀行口座の管理を行ったり、不動産の名義変更などの事務を行ってもらったりする人ですので、法律的な実務知識がある人を指名するのが良いでしょう。
遺言執行者に必要な資格などはありませんが、司法書士や弁護士といった法律の専門家に依頼するケースが多いです。

証人になってもらう人の選び方

公正証書遺言を作成するためには、2名の証人が必要になります。
その際、証人となる人に次のような資格を満たしているかを確認しておいてください。

  • ・未成年者は不可
  • ・遺言に利害関係のある人や、その親族や配偶者は不可
  • ・遺言書の内容を確認できない人は不可
  • ・公証人の関係者や役場の職員は不可

こちらについても、法律家に遺言執行を依頼した場合には証人2名を準備してくれることが多いです。

公正証書遺言を作成するための費用
公正証書遺言を作成するためには、公証人に対して手数料を支払う必要があります。
この手数料の金額は、遺言の対象となる財産の金額によって決まります。
具体的な手数料の金額は以下の通りです。

遺言の対象となる財産の金額 手数料
100万円まで 5000円
200万円まで 7000円
500万円まで 1万1000円
1000万円まで 1万7000円
3000万円まで 2万3000円
5000万円まで 2万9000円
1億円まで 4万3000円
1億円を超える場合には、5000万円増えるごとに手数料が1万3000円ずつ(3億円を超える場合は1万1000円ずつ、10億円を超える場合は8000円ずつ)増えます。

公証人は法律知識を持った専門家ですので、遺言の方式や作成内容について心配がある方は自筆証書遺言よりも、公正証書遺言を選択するのが良いでしょう。

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秘密証書遺言

秘密証書遺言は、公証人と証人2名に「遺言の存在」だけを証明してもらい、遺言内容は秘密にしておく遺言の形式です。

手数料がかかる上に自筆証書遺言のデメリットを解消できないため、あまりお薦めできない方法で、現に全国で年間100件程度しか利用がありません。

3つの遺言のメリットデメリット

以上3つの遺言の特徴を図にまとめてみます。
メリット デメリット
自筆証書遺言 費用がかからない
・自分一人ですぐ書ける
・書き方の不備で無効になることがある
・他人による改ざん・紛失の可能性がある
・遺言の存在を気づかれないことがある
・開封時に検認の手続きが必要
公正証書遺言 確実に有効なものが作れる
改ざん、紛失の心配がない
・遺言を自筆しなくてもよい
・遺言の存在の有無を確認できる
・開封時の検認が不要
・29,000円以上の費用がかかる
・公証役場とのやりとりに手間がかかる
・証人2名(他人)が必要
秘密証書遺言 内容を秘密にしておける
・遺言を自筆しなくてもよい
・改ざんの心配がない
・遺言の存在の有無を確認できる
・書き方の不備で無効になることがある
・11,000円以上の費用がかかる
紛失することがある
・公証役場とのやりとりに手間がかかる
・証人2名(他人)が必要
・開封時に検認の手続きが必要
近年の、自筆証書遺言と公正証書遺言が利用されている数は下記の表のとおりです。(日本公証人連合会および司法統計を参照)

自筆証書遺言は、誰もが自由に作成できるため作成数を公に把握することができないので、家庭裁判所に持ち込まれた「検認」の数を掲載しています。

遺言書の作成状況

遺言書の作成状況

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遺留分について

配偶者や子供などの法定相続人には「遺留分」と呼ばれる相続権が保証されています。この権利を侵害する内容の遺言も残すことができますが、侵害された相続人から争いに発展してしまうと、そもそも相続争いを無くすためという目的が果たせず遺言が失敗に終わってしまいます。遺言を書く段階で配慮しておきましょう。

遺留分の割合は一部の例外を除いて法定相続分の半分です。たとえば配偶者と子供1人が法定相続人で財産が1億円ある場合、配偶者の法定相続分は2分の1の5000万円、遺留分は4分の1の2500万円と計算します。

遺留分を主張できる親族

遺留分を主張できる親族は、兄弟姉妹以外の法定相続人です。

具体的には、亡くなった人の配偶者と直系尊属(父母や祖父母)、直系卑属(子や孫)だけが遺留分を主張することができます。

亡くなった人の兄弟姉妹には遺留分が認められないので、例えば、法定相続人となるのが兄弟姉妹だけという状態で、遺言書に「全財産を愛人に相続させる」とあった場合には、愛人が全財産を取得することになります。

主張できる遺留分割合

遺留分とは、ごく簡単にいうと「最低限これだけの割合は遺産を分けてもらえる」という権利のことです。

これは、亡くなった人が残した遺言書でも侵すことができない非常に強い権利なので、亡くなった人とごく近い関係にあった人にだけ認められる権利です。

認められる遺留分の割合は、次のようになります。

相続人 遺留分
配偶者のみ 遺産全体の2分の1
子供のみ 法定相続分の2分の1
父母のみ 法定相続分の3分の1
配偶者と子供 法定相続分の2分の1
配偶者と父母 法定相続分の2分の1
子供と父母 法定相続分の2分の1

父母(直系尊属)だけが相続人となる場合だけ、認められる遺留分は3分の1となります。

具体的には、遺留分は亡くなった人の配偶者と子供(直系卑属)、父母(直系尊属)にだけ認められ、遺留分を侵害された場合には遺留分侵害額請求という形で裁判所を通した請求ができます。
こうなれば相続人同士が仲違いになることは避けられないでしょう。
特定の人に遺産が多めに相続されないよう、特に遺留分については十分に配慮することが大切です。

遺留分は「遺留分侵害額請求」がされて初めて問題となる

家族には法律上遺留分という相続割合が認められますが、実際には「遺留分侵害額請求」という手続きを行わないと自分の遺留分を確保することはできません。

遺留分侵害額請求では遺言書等で相続人とされた人を相手として話し合いを行いますが、相手が話し合いに応じない場合や主張が食い違う場合には家庭裁判所に対して調停を申し立てることができます。

遺言書での失敗事例

認知症が進行している場合の遺言書

遺言書を作成する時点で本人に正常な認識能力がなければ有効な遺言とはなりませんから、認知症の場合には注意が必要です

作成時点での遺言者の認識能力については過去に裁判で争われたことも少なくなく、医師の診断書やカルテなどをもとに裁判所が判断するといったことが行われます。

認知症の進行を隠して遺言を作成するのは最悪の方法ですので、確実に有効な遺言が残せるうちに専門家に相談することをお薦めします。

記載内容に不備がある遺言書

遺言書の記載内容の失敗としてもっとも多いのが、相続財産が特定できないケースです。たとえば「土地は妻に相続させる」という書き方をしたとしても、複数の土地がある場合はどこにあるどの土地かを特定できません。

不動産であれば物件の正確な所在地を記入しておきましょう。預貯金なら支店名、口座番号、普通・定期の種別まですべて記入しておきます。

その他に多い失敗例が、加筆や修正方法の間違いです。訂正箇所に二重線を引いて訂正印を押し、その近くに加えたり削除した文字数を書いて署名するのが正しい方法です。ただし加筆修正が多くなった場合は、新しい自筆証書遺言を書き直してしまうか、記載内容不備の心配がない公正証書遺言を残すようにしたほうが良いでしょう。

死後に発見されない遺言書

せっかく残した遺言も、あなたが亡くなった後に遺族が発見してくれないと何の意味もありません。

公正証書遺言や秘密証書遺言を残した場合は、遺言が発見されずに放置される可能性はありませんが、自筆証書遺言の場合は注意が必要です。

不動産の権利証や預貯金通帳・実印などとともに金庫にしまっておくなど家族が確実に発見できる場所に保管しておきましょう。

なお法改正によって2020年7月以降は、自筆証書遺言も法務局で保管してもらえることになりましたので活用を検討してみるとよいでしょう。

遺言書の書き方

自筆証書遺言を書く場合、自分で文章を考えるのではなく既に正しい書式で書かれた遺言書の中から、自分の家族構成や財産分配の内容が近い文章例を参考にして、一部を書き換える方法がよいでしょう。

一般的な内容の自筆証書遺言のサンプルを掲載します。Word形式でダウンロードすることも可能ですのでぜひご自由にお使いください。

 

遺  言  書

 
遺言者 銀座 大見は、以下の通り遺言する。

  1. 遺言者は、遺言者の有する次の財産を、遺言者の妻 銀座 丸子(1962年1月2日生)に相続させる。
    1. 土地
      所在/東京都中央区銀座1丁目
      地番/23番45
      地目/宅地
      地籍/84.22平方メートル
    2. 建物
      所在/東京都中央区銀座1丁目
      家屋番号/23番45
      種類/居宅
      構造/鉄筋コンクリート造
      床面積/1階 75.12平方メートル 2階 55.89平方メートル
  2. 遺言者の死亡以前に妻 銀座丸子が死亡している場合には、遺言者は同人に相続するとした前条の不動産を長男 銀座丸一郎(1985年2月3日生)に相続させる。
  3. 遺言者は、遺言者の有する次の財産(株式、債券を含む金融資産)を長男 銀座丸一郎(1985年2月3日生)、次男の銀座丸次郎(1987年3月4日生)に相続させる。相続割合はそれぞれ二分の一ずつとする。
    1. 遺言者名義の預貯金および債券
      ①三菱UFJ銀行 銀座支店(口座番号1122330)
      ②みずほ銀行 銀座支店(口座番号4455660)
  4. 遺言者は、遺言執行者に次の者を指定する。
     東京都渋谷区渋谷1丁目15番21号 ポーラ渋谷ビル8階
     ベンチャーサポート行政書士法人
  5. 付言事項
     丸子、丸一郎、丸次郎と一緒に過ごせた日々は幸せでした。どうもありがとう。
     丸一郎、丸次郎、お母さんのことを守ってやってくれよ。
  6. 令和2年1月31日
     住所 東京都中央区銀座3丁目7番地3
     遺言者 銀座 大見  

つづいて公正証書遺言のサンプルを見てみましょう。公正証書遺言は、公証人との口頭のやり取りを交わした後、公証人が作成することが一般的です。

公正証書遺言サンプル1

公正証書遺言サンプル2

公正証書遺言サンプル3

公正証書遺言サンプル4

公正証書遺言サンプル5

公正証書遺言サンプル6

公正証書遺言サンプル7

公正証書遺言サンプル8

その他の遺言書の書き方・文例・見本・サンプル集もご覧いただけます。

遺言書は遺産の分配について具体的に記載していくことがメインとなってきます。家族の今の生活を守れる内容を考え、家族が後で揉めずに納得できる分配になるようにとしなければなりません。
その際に注意するポイントは、相続人による不動産の共有はなるべく避けることです。

相続財産に土地等の不動産が含まれる場合には相続で揉める可能性があります。不動産を共有にするデメリットとしては、第一に不動産の活用や処分がやりづらくなることです。共有となっている不動産は、変更を加えたり、売却したりするときには共有者全員の同意が必要です。
賃貸物件として貸し出すようなときにも共有者全体の過半数の同意が必要となりますから、共有持ち分が平等となっているようなときには、結局は全員一致でないと何もできないという事態にもなりかねません。

また、共有者の1人に相続が発生したときには、その共有持ち分がさらに細かく分けられる形で相続されることになります。

こうなると1つの不動産の上に何人もの共有者がいることになり、法律関係が世代を重ねるごとに複雑になっていってしまいます。

共有による分割はなるべく避けるのが賢明といえるでしょう。

これを避けるためには、不動産を相続させる代わりに、他の相続人に対しては現預金の分配を多くしたり、自宅以外の不動産の場合には売却して現金化した上で分配することも検討したほうがよいでしょう。

遺言書の検認(開封について)

遺言書開封の正しい流れ

遺言書を開封するときの正しい流れについて確認しておきましょう。
自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合

遺言書を発見!

相続人立会いのもと家庭裁判所で開封

家庭裁判所で検認

遺言執行者の選任

相続手続きへ

まず、遺言書を発見したら、開封することなくそのまま家庭裁判所に対して「検認」の申し立てを行わなくてはなりません。

検認とは、その名の通り相続人全員が裁判所の指定する日時に集まり、遺言書の内容について確認しあう手続きのことです。

後で説明する「検認の申立書」が家庭裁判所に正式に受理された後、1か月ほどで相続人となる人全員に対して検認を行う期日を知らせる通知が届きます。

相続人全員が指定された日付に出席しなかったとしても検認手続きは有効ですが、申し立てをした本人は必ず出席しなくてはなりません。

検認の手続き

① 家庭裁判所に検認の申し立てをする

遺言書を預かっている人、または遺言書を発見した相続人が、遺言者(故人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをする

② 検認に必要な費用

検認の申し立てには、遺言書1通につき収入印紙800円が必要。また、家庭裁判所との連絡用に郵便切手が必要になるので、切手代は各家庭裁判所で確認を

③ 必要な書類を準備する

  • ・申立書
  • ・遺言者の戸籍謄本(出生から死亡までの全ての戸籍)
  • ・相続人全員の戸籍謄本
① 家庭裁判所に遺言書検認の申立書を提出
検認の手続きは、管轄の家庭裁判所に対して「検認の申立書」を提出する形で行います。

通常、遺言書の中で遺言執行者が指定されている場合には、その人は遺言書の存在や保管場所を知っているでしょうから、その人が遺言書検認の申し立てを行うことになります。

遺言執行者がいない場合には、遺言書を発見した相続人が遺言書検認の申し立てを行っても問題ありません。

家庭裁判所の検認の流れ

① 家庭裁判所から検認を行う日が郵便で通達

申立書や提出書類に不備がなければ、申し立てから約1カ月後に家庭裁判所から相続人全員に検認の期日が郵送される

② 指定期日に家庭裁判所で遺言書の検認を受ける

検認をうける遺言書、印鑑、その他指定物を持参

③ 裁判官が出席した相続人立会いのもと、遺言書を開封

遺言書の状態や筆跡、内容などを確認する

④ 遺言書の内容を執行するために「検認済証明書」の発行を申請する

申請には遺言書1通につき収入印紙150円と申立人の印鑑が必要

② 遺言書の検認を受けるために必要な書類
遺言書検認の申立のためには、次のような書類を家庭裁判所に対して提出する必要があります。

  • 検認申立書
  • 亡くなった人の戸籍謄本
  • 相続人となる人全員分の戸籍謄本

検認申立書は裁判所のホームページで書式をダウンロードできます。

収入印紙800円が必要になりますので注意してください。

戸籍謄本については市役所や区役所で取得できますので、相続に影響がある方全員分のものを取得して添付しましょう。

③ 検認しても遺言書が有効とは限らない!
検認手続きが済んだからもう遺言書で揉めることはないのかというと、残念ながらそのようなものではありません。

検認はあくまで遺言書がその状態で存在したということを証明するだけのことであり、その後の改ざんを防ぐ効果しかありません。

つまり、遺言書の内容の適切さについては検認を受けたからといって保証してもらえるわけではなく、相続人がその内容を受け入れるか、納得がいかないようであれば話し合いや調停、裁判などで解決するしかないということになります。

検認そのものは遺言書の有効、無効を決定づけるものではありません。

しかし、不動産の名義変更の手続きに自筆証書遺言を使う場合、検認がされていないものは却下されるなど、実務的には極めて重要な手続きとなっていますので忘れずに行わなければなりません。

遺言書を開封してしまったら?

遺言書を誤って開封してしまったときには、①遺言の効力と、②開封してしまった人へのペナルティの2点が問題になります。

以下、順番に説明します。

① 遺言の効力
まず、遺言書を誤って開封してしまった場合にも、遺言の効力そのものには影響がありません。

ただし、開封した遺言書を他の相続人から隠したり、内容を書き換えたりといった行動をとってしまった場合には、相続人となる権利を失ってしまう可能性があります。

もちろん、自分から「私が遺言書を書き換えました」と正直に申告する人は普通いませんよね。

なので、後から遺言書の内容が問題となった場合には、「この人は遺言書を勝手に開封したことなどからかんがみて、遺言書を書き換えた可能性が高い」と裁判所などから判断される場合があります。

② 開封してしまった人へのペナルティ
遺言書を正式な手続き(後で説明する家庭裁判所による検認のことです)を経ずに開封してしまった場合、5万円以下の過料が課せられる可能性があります。

ただし、実際には遺言書開封によりこの過料が課せられるケースは非常にまれです。

遺言書を専門家に相談する

遺言書は書き方や保管・開封のルールが複雑で分かりづらいものです。たとえ遺言者が詳しくても、第一発見者となる相続人が扱いを一歩間違えてしまうと無効になる可能性もあります。

自筆証書遺言の場合は無効な内容にしないためにも弁護士や税理士など遺言に詳しい専門家に相談すべきですが、公正証書遺言を作成する際でも専門家に相談することをお薦めします。

公正証書遺言で公証人が確認してくれるのは、書式などの手続き面での不備がないかのチェックだけです。財産分割についての一般的なアドバイスをもらえることもありますが、相続税の対策や将来の2次相続のことまでシミュレーションまでしてくれることはありません。

遺産相続については、相続税対策を行うかどうかによって税金の負担額が大きく変わることがあるほか、遺産トラブルを避けるために作成した遺言書が、かえって相続人どうしの感情的な対立を引き起こしてしまう事もあり得ます。

遺産相続トラブルに適切に備えるためには、できるだけ早いタイミングで各分野の専門家の助言を受けるのが適切と言えるでしょう。

この記事の監修者 税理士 桑原弾

税理士 桑原弾

相続サポートセンター(ベンチャーサポート相続税理士法人) 昭和55年生まれ、兵庫県出身。
大学卒業後、税務署に就職し国税専門官として税務調査に従事。税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した知識」と「元国税調査官としての経験」の両輪を活かして相続税申告を実践している。

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