不動産取得税は不動産を取得した人が支払うことになる税金ですが、一体どれくらいの金額を支払わなければいけないのでしょうか?
今回は、初めての人でも不動産取得税の計算方法について理解し、また実際の事例を通して一人で計算をすることが出来るように分かりやすく解説をしていきたいと思います。
更に、不動産取得税を少しでもお得に納めるための免税・減税制度をご紹介させて頂きます。
不動産取得税の特徴をしっかりと押さえて、賢く納税の準備をして頂ければと思います。
目次
不動産取得税について
不動産取得税というのは、土地や建物の不動産を取得した際に支払いが求められる税金です。
ここで、不動産を取得する原因が問題となるのですが、すぐ思いつきそうな売買や贈与以外にも、建物を新築したこと、建物を改築・増築した際にも不動産を「取得した」ということになり、税金を納めなければいけないことになっています。
不動産取得税は不動産に関するということで、固定資産税と比較されることがあります。
固定資産税は不動産を保有していることにより毎年納めなければいけませんが、不動産取得税は「取得した」という一回の行為に対して課税されるので、納税をするのも一度で足りることになります。
一方で、相続により不動産を取得する場合には不動産取得税を支払わなくても問題ありません。
相続により不動産を取得する場合には、法的効果として前の所有者の権利義務をそのまま承継するという扱いになるため、改めて別の所有者の不動産を取得したということにはならないわけです。
不動産取得税は、各都道府県によって課せられる税金であるため、都道府県によっては他の都道府県とは扱いが異なることも当然考えられます。
納税通知書に記載された内容等を確認して、所定の方法によりきっちりと納めることが必要です。
不動産取得税の算出方法を解説します
それでは、不動産取得税を算出する算出方法について解説していきます。
不動産取得税 = 固定資産評価額 × 税率
ここで、固定資産評価額と税率はどのような数字が入ってくるか気になってくるかと思います。
「固定資産評価額」を確認する方法は3つあります。
(1)課税明細書、(2)固定資産課税台帳、(3)固定資産評価証明書のいずれかによる方法です。
固定資産税を支払ったことのある方であれば、(1)納税通知書が届いているかと思いますので、馴染みがあるかもしれません。
次に、「税率」について見ていきましょう。
現在では、不動産取得税に掛かる税率は4%であると指定されています。
よって、原則として4%の税率を支払わなければいけませんが、現在特例措置が設けられており、これよりも安い税率を掛ければ済むことになっています。
不動産取得税の税額を少なくする方法がコチラ
不動産取得税というと、普通の税金と比べて多くの税金を納めなければいけないというイメージはありませんか?実は、不動産取得税を安く納めるためのコツがあります。
また。
不動産取得税を一切かからないで済む方法まで、お得に抑える方法について是非見ていきましょう。
不動産取得税を支払わなくても良い場合
まずオススメしたいのが不動産取得税を一切支払わないで済むパターンです。
以下の一つでも該当する場合には、不動産取得税は免税扱いとなります。
- (1)建物の固定資産評価額が12万円以下である場合
- (2)土地の固定資産評価額が10万円以下である場合
- (3)新築・改築・増築をした建物の固定資産評価額が23万円以下である場合
支払うはずの不動産取得税が0円になる基準ということで、上記3パターンについては覚えておきましょう。
税率が軽減される特例
次に、税率が軽減される措置について簡単に説明させて頂きます。
上記で不動産取得税の算出の際に用いられる税率は4%であるとお伝えしましたが、現在では特例が適用されていることにより、3%で計算されるようになっています。
ただし、最新の計算式については、管轄の都道府県により確認するようにしてください。
宅地の評価の特例
土地の中でも宅地の場合には、固定資産評価額に1/2をかけて計算しても良いことになっています。
したがって、宅地の不動産取得税を計算する式は以下のようになっています。
不動産取得税 = (固定資産評価額 × 1/2) ×税率
宅地とこれから解説します新築住宅の不動産取得税は一緒に計算されることが多いので、一緒に覚えておくと良いでしょう。
新築住宅の軽減方法
新築建物の不動産取得税を軽減するための手続きについて見ていきましょう。
新築建物の場合、所定の条件を満たすことで1,200万円の控除を受けることが出来ます。
新築住宅の軽減措置が適用された場合の計算式はこのようになります。
不動産取得税 = (固定資産評価額-1,200万円) × 3%
この軽減措置を適用させるための条件は以下のようになります。
- (1)建物が建てられたばかりであること(新築性)
- (2)建物の延べ床面積が50㎡以上かつ240㎡以内であること
それでは、実際に新築住宅の軽減措置を利用して算出してみましょう。
ケース:先日購入した建てられたばかりの不動産は3階建てで、1階が100㎡、2階が60㎡、3階が60㎡となっていました。
固定資産評価額は、1,300万円となっていました。
この時、
不動産取得税 = 固定資産評価額 × 税率
= 1,300万円 × 3%
= 39万円
となります。
しかしながら、今回の場合には、不動産の床面積は220㎡となり、「建物の延べ床面積が50㎡以上かつ240㎡以内であること」の条件を満たすことになります。
よって、今回の新築建物には軽減措置を適用することが出来ると考えられます。
従って、
不動産取得税 = (固定資産評価額-1,200万円) × 3%
= (1,300万円-1,200万円) × 3%
= 3万円
もし、不動産取得税の軽減措置を利用していなければ支払う税金は、36万円(=39万円-3万円)も多く支払うことになります。
中古住宅の軽減方法
次に中古住宅について見ていきましょう。
中古住宅も計算の際に用いられる控除がありますが、新築された年月日により控除額に違いがみられます。
一目で判断しやすいように、<中古住宅において適用される控除額早見表>を作成致しました。
<中古住宅において適用される控除額早見表>
新築年 | 控除される金額 |
---|---|
1997年4月1日~現在 | 1,200万円 |
1989年4月1日~1997年3月31日 | 1,000万円 |
1985年7月1日~1989年3月31日 | 450万円 |
1981年7月1日~1985年6月30日 | 420万円 |
1976年1月1日~1981年6月30日 | 350万円 |
1973年1月1日~1975年12月31日 | 230万円 |
1964年1月1日~1972年12月31日 | 150万円 |
1954年7月1日~1963年12月31日 | 100万円 |
このとき、
不動産取得税 = {固定資産評価額-(100万円~1,200万円)}×税率
となります。
中古住宅で不動産取得税の控除を受けるための条件は、以下にあるものを満たす必要があります。
- (1)取得者が居住目的で取得した場合
- (2)建物の延べ床面積が50㎡以上かつ240㎡以内であること
- (3)昭和57年以降に新築された住宅であること
- (4)昭和57年以前に建てられた住宅で、新耐震基準を満たすものであること
- (5)現在新耐震基準を満たさない場合で、居住前に新耐震基準を満たすリフォーム等を行うものであること
中古住宅の取得により控除を受ける場合には、新築住宅よりも厳しい要件が必要となりそうというイメージを持つかもしれません。
床面積にのみ着目すればよかった新築住宅の場合とは異なり、中古住宅の場合では取得の目的・耐震基準などの要素を検討しなければいけない分手間がかかってしまいます。
中古住宅を取得する場合には、なるべく最近に新築されたものを検討すると、その分受けられる控除分が大きくなるということを理解しておきましょう。
それでは、実際に中古住宅の軽減措置のケースより算出してみましょう。
ケース:先日知人より譲り受けた一軒家の住宅は、床面積は1階が90㎡、2階が70㎡となっています。
この住宅については、現在居住用として主に使用しており、木造式のこの家は築年数が少し古く、1975年7月5日となっていました。
また、納税通知書が届き、固定資産評価額を確認すると、1,000万円となっていました。
この地域は何度か地震が発生しており、新しい耐震基準等を満たしていないことを危惧して、新耐震基準に適合するための改修工事を業者に依頼することにしました。
今回のケースでは、
不動産取得税 = 1,000万円 × 3%= 30万円
となるところ、与えられた情報より軽減措置が適用されないか検討すると、居住用で床面積の要件を満たし、昭和57年以前に建てられた建物ではあるが新耐震基準に適合するように改修工事をするように準備がなされていることから、条件を満たし軽減措置が適合出来ることが分かります。
よって、計算式は以下のようになります。
不動産取得税 = (1,000万円-230万円) × 3%
= 770万円 × 3%
= 23.1万円
ここから軽減措置を利用していなければ、不動産取得税は約7万円程度多く支払わなければいけないことが分かります。
土地の軽減方法
土地の不動産取得税の控除は次のような式で表されます。
不動産取得税 = (固定資産評価額 × 1/2 × 3%)-控除額
固定資産評価額の後に1/2が掛かっているのは、上記「宅地の評価の特例」でお伝えした軽減措置が適用されているためです。
建物を建てるための土地の地目は宅地となるため、このような計算となる訳です。
ここで、控除額は以下の2つのうち大きい方の金額を当てはめることになります。
(1)45,000円
(2)(土地1㎡当たりの固定資産評価額×1/2 )×(建物の延べ床面積×2)×3%
この条件を適合させるには、以下の条件を満たす必要があります。
- (1)宅地の上に建つ住宅の床延べ面積が50㎡から240㎡であること
- (2)土地を取得した後に新築建物を建てる場合は、土地取得後3年以内であること
- (3)土地を賃貸しており、その上に新築建物を建てる場合は、新築建物建築後1年以内にその賃貸している土地の名義を取得すること
さて、それでは実際に土地のケースで確認してみましょう。
ケース:先日建物が建てられた土地の固定資産評価額は、1,200万円です。
面積300㎡の土地の上には、1年前に建築された建物があり、延べ床面積は合計190㎡となっていました。
このときは、
不動産取得税 = 1,200万円 × 1/2 × 3% - 控除額
= 18万円 - 控除
今回の場合は、床面積及び取得の時期の条件を満たしているため、軽減措置を利用することが出来ると考えられます。
控除について計算すると、
(1,200万円/300㎡ × 1/2)×(建物の延べ床面積×2)×3%
=2 × 380 × 3%
=760 × 3%
=22.8万円
よって、
不動産取得税 = 18万円 - 22.8万円
= 0円(マイナスとなるため)
この場合、軽減措置を活用することで18万円も得をすることが分かります。
不動産取得税について気を付けておかなければいけないこと
不動産取得税は不動産を取得した一度のみ納める税金ではありますが、取得直後に納めるのではなく、しばらくブランクが空いた後に支払いをすることが求められますので、急な出費に慌てることがないように可能であれば、お金を用意しておくのが望ましいです。
不動産取得税は、上記でも確認した通り軽減措置を利用するのとしないのとでは、10万円程度支払額が変わってくることもありますので、忘れずに申告手続きを行うようにしましょう。
もし、忘れてしまい余分な税金を支払ってしまった場合には、早期であれば還付手続きにより払いすぎた税金を取り戻すことが出来ますので豆知識として覚えておきましょう。
また、今回ご紹介した情報は執筆当初の情報によるものです。
最新の軽減措置の内容については、管轄する都道府県に問い合わせを行うなどして、ご自身で確認をするようにしてください。
それでも難しい場合には、税理士等の専門家に相談することも検討してみましょう。
まとめ
不動産取得税の計算方法は慣れるまでは大変な作業です。
どのような条件があれば特例で軽減措置を利用することが出来るのか、しっかりと整理をして、事前に十分な準備をしておきましょう。
今回のケースを参考にして頂けますと、ご自身でも計算が出来るようになっていると思います。
本記事をお読み頂いて、皆様の不動産取得税の理解に少しでもお役に立てられれば幸いです。