限定承認する場合の注意点と手続きをわかりやすく解説!

限定承認する場合の注意点と手続きをわかりやすく解説!

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相続放棄するべきかどうかの判断は時として非常に難しいことがあります。財産と負債のどちらが多いのかがはっきりしないことがあり、急いで放棄すると損になることもあるからです。こんな時に選択肢に挙がってくるのが「限定承認」という制度です。

限定承認とは?

「限定承認」とは、相続財産の範囲内でのみ借金を返すということを条件にして相続を承認する手続きです。もし借金が膨大だった場合でも、相続財産を超えていれば返さなくてよいわけですから、相続人自身が損になることはありません。逆に、もしプラスの財産が残った場合には相続人が取得することができます。
一見、とても良いところ取りの制度に見えるのですが、限定承認を利用するための手続きは非常に複雑、難解であり個人が自分ですることはほぼ不可能に近いものがあります。そして、弁護士に頼んだ場合は内容によっては百万円単位の報酬がかかることがあるのです。そのような理由から、便利な制度のように見えて実際に使われることはどのくらいかと考えるとかなりレアケースといえます。家庭裁判所のデータによると、平成20年から数年間の年間申立て件数としては、大体相続放棄が15万件から16万件台くらいで推移しているものの、それに対して限定承認は800件台から900件台程度になっています。いかに利用数が少ないかということがこのデータからも読み取ることができます。

限定承認の期限

限定承認は、相続人が自分のために相続が開始したことを知った時から3カ月以内に、相続財産の目録を作って家庭裁判所に提出し、「限定承認をする旨の申述」を行わなくてはなりません。具体的には、被相続人(亡くなった人)の最後の住所地または相続が開始した地(つまり亡くなった場所)の家庭裁判所が管轄となります。
相続開始を「知った時」とされているので、長年音信不通になっていた親子などであれば被相続人が死亡して1年、2年とその事実を知らない可能性があり、そこからカウントされることもあります。
なお、この「相続開始を知ってから3カ月以内に」というのは「熟慮期間」と呼ばれますが、熟慮期間は法定相続人が数人いる場合は各人別々に進行します。よって、Aさんはもう過ぎてしまったがBさんはまだ熟慮期間内ということもあるのです。

注意!限定承認は「全員一緒」で!

相続放棄は相続人各人が自分の判断により、自分だけで手続きすることもできます。それに対して、限定承認は「法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)全員が共同して」行わなければなりません。もし法定相続人の一部が行方不明であれば、「不在者の財産管理人」という役割の人を家庭裁判所に選んでもらった上でその人と一緒に限定承認の手続きをします。
もし上記のように、Aさんが熟慮期間を過ぎておりBさんがいまだ熟慮期間内であればもはや限定承認ができないのか?という疑問も出てきますが、そのようなことはありません。この点については東京地裁の過去の裁判例で「法定相続人のいずれかについて熟慮期間を過ぎていても、まだ経過していない人がいれば全員で限定承認することができる」というものがあります。

限定承認のデメリット

限定承認にはもちろん、「損をしない範囲でのみ借金を返済すればよい」という大きなメリットはありますが、デメリットもあります。
上記のように(相続放棄と違って)全員が合意して協力しなければ手続き自体ができないこと、家庭裁判所の手続きが非常に煩雑で面倒であり、時間もお金もかかる可能性があることです。
また、税務上のことを考えてもデメリットが大きくなる可能性があります。もし、単純承認相続(普通に相続で財産を引き継ぐこと)された場合、相続税が課税される可能性はあるものの、所得税が課税されることはありません。これは、被相続人から相続人に対して「すべての財産と負債」が引き継がれることを理由とするものです。しかし、限定承認の場合は財産と負債を丸ごと引き継ぐわけではないので「相続開始の日に被相続人から相続人に相続財産が時価で売られたものとみなす」という扱いになり、それにより「みなし譲渡所得税(譲渡によって利益が出たものと同じ扱いになることによってかけられる所得税)」がかかってしまうのです。具体的状況としては、被相続人が相続人に売ったとされる時価から財産の取得費などを差し引いて利益が出ている(所得がある)とみられる場合にかかることになります。これは相続人ではなく「被相続人に」かかる所得税ですので、「準確定申告(被相続人が本来申告するべきだった所得税の申告)」を相続人がするという形になります。
限定承認の結果、プラス財産が多かったとしてもこの所得税分を差し引くと大したメリットがなくなってしまう可能性もあるため、そのことが限定承認の利用を妨げている要因の一つにもなっているのです。
一般的にこのように時間とお金をかけてまで限定承認しようとする家庭は、もともと相続財産と負債どちらも膨大であるが、プラスになった場合はメリットが大きいことが期待できる状況ということが多いでしょう。

限定承認の手続き方法

では、限定承認の流れを見てみましょう。まず、上記で説明した管轄の家庭裁判所に「限定承認の申述」を行います。そして家庭裁判所が要件を満たしていると判断すれば「限定承認申述受理」の審判が下されます。
次に、限定承認手続きの中で非常に大切な「相続債権者等に対する公告・催告」が行われます。「公告」というのは、「官報」という政府が出している機関紙に会社や個人の法律や権利に関する重要事項を載せて利害関係人に知らせることです。公告は、限定承認後5日以内に、すべての相続債権者や受遺者(被相続人から遺言で財産の全部または一部を譲るとされている者)に対し、「このたび誰々の相続につき限定承認をしました。権利があるなら申し出てください」という内容で行われます。申出の期間は2カ月以上に設定しなければなりません。また、知っている債権者に対しては個別に催告(通知を出すこと)を行います。
ここで設けた期間内に権利を主張してきた者や、すでに知っている債権者に対しては、「配当弁済」といって限定承認した人が売った被相続人の財産によって弁済がされます。基本的に財産は競売されることになりますが、任意売却(裁判所を通じない私的な売買)であってもよいとされています。一般的に、競売であれば市価の6割程度でしか売れないこともありますが、任意売却であれば7割8割といった価格で売れることもあり、結果的に債権者の利益にもなるからです。配当は各債権者の債権額の割合によって公平になるように行われますが、それでもなお財産が余った場合は、受遺者に対しても同様に弁済されます。
このような一通りの弁済の手続きが終わり、それでもなお余りが出た場合には限定承認した相続人に対して配当されることになります。

ここまで見てきたように限定承認については公告や財産の換価(=お金に換える)、配当などでかなりの期間や費用を要しますので、簡単にすることはできません。
上記の所得税の問題なども絡んできますので、するべきかどうかを自分で判断することも難しい場合が多いでしょう。3カ月という期間は思ったよりも早く過ぎてしまいますので、限定承認でプラスになる可能性があると考える人は少しでも早く税理士に相談することをおすすめします。