遺産相続の順位|様々なケースでの相続順位の全てを解説!

財産を所有していた人が亡くなった場合、その財産は親族が相続人として引き継ぐことになります。

相続人が1人である場合には問題は生じませんが、相続人が複数人いる場合には「誰がどれだけの遺産を相続するのか」を巡って相続トラブルが生じる場合がありますので、注意しておきましょう。

それまでは仲が良かった親族同士が、相続をきっかけとしていがみ合うようになる…というのはドラマの中だけの話ではなく、実際によくあることなのです。

相続に関するルールを理解する上では、「誰が相続人となるのか」と「それぞれの相続人がどれだけの割合を相続するのか」の2点を押さえることが大切です。

この記事では、この2つの点について実際に問題となりやすい状況も含めてくわしく解説します。

遺産相続順位の原則的ルール

まずは、「誰が相続人となるのか」の問題からみていきましょう。

大まかに言うと、相続人となるのは「配偶者+血縁関係にある人」が原則の形で、血縁関係によって相続人となる人にはそれぞれ順位が決まっています。

相続人の範囲と優先順位図

相続人のパターン


※相続人パターン図1

被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者が常に相続人になります。配偶者に子どもがいれば、子どもも相続人になります。


※相続人パターン図2

被相続人が独身で子どももいない場合は、第2順位の親が相続人となります。両親が死亡している場合は、祖父母が相続人になります。

※相続人パターン図3

被相続人が独身で子どももなく、両親も祖父母も死亡している場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。

相続人についての法律のルールをさらに詳しく分類すると、次の4つを挙げることができます。

  • 配偶者は常に相続人となる
  • 配偶者以外の相続人には順位がある
  • 同じ順位の人は全員が相続人となり、相続割合は平等
  • 遺言がある場合には遺言内容が優先する

以下、順番に説明します。

配偶者は常に相続人となる

亡くなった人の配偶者(夫または妻)は、常に相続人となります。

ただし、ここでいう配偶者とは法律上の妻または夫のことで、簡単にいうと婚姻届けを役所に提出して受理された婚姻関係でなくてはなりません。

法律上の婚姻関係にないいわゆる「内縁の妻」「内縁の夫」は、法律上は相続人となれません。

内縁関係の夫や妻に遺産を相続させるためには、遺言を残す必要があります。

なお、遺言によって死後に離婚や結婚をすることができませんので注意しておきましょう。

配偶者以外の相続人には順位がある

亡くなった人の子供や親、兄弟姉妹は、「上の相続順位の人がいる場合には、下の相続順位の人は相続人にならない」というルールがあります。

具体的には、次のように相続順位が決まっています。

  • 第1順位:子供や孫(直系卑属といいます)
  • 第2順位:父母や祖父母(直系尊属といいます)
  • 第3順位:兄弟姉妹

例えば、亡くなった人の遺族として父と子供がいる場合には、第1順位である子供が相続人となり、第2順位である父は相続人とはなりません。

同様に、亡くなった人の遺族に弟と母がいる場合には、第2順位の母が相続人となり、第3順位の弟は相続人となりません。

なお、1-1.配偶者は常に相続人となるで見たように配偶者は常に相続人となりますから、②によって相続人となる人と配偶者は共同で相続人になります。

例えば、亡くなった人の遺族に妻と子供と父がいる場合には、第1順位の子供と配偶者の2名が共同で相続人となります。

同じ順位の人は全員が相続人となり、相続割合は平等

上で見た相続順位に従って、同じ順位の人が複数人いる場合は、その人たちは全員が相続人となります。

例えば、亡くなった人に子供2人(長男と次男)がいる場合には、この2人はどちらも相続人となります。

相続割合については後でくわしくみますが、先に説明しておくと同順位の相続人は同じ割合で遺産を相続するのが原則となります。

また、亡くなった人に子供と孫がいる場合には、子供だけが相続人となり、孫は相続人となりません。

ただし、相続が発生した時点ですでに被相続人の子供が亡くなっており、孫だけがいるという場合には、孫が相続人となります。

このようなケースを代襲相続といいます(後でくわしく説明します)

遺言がある場合には遺言内容が優先する

ここまで見てき1-1~1-3のルールは、あくまでも「遺言がないので、法律のルールによって相続人を決める場合」のルールです。

亡くなった人がもし遺言を残している場合には、上で見たルールはいったん度外視して、その遺言の内容を最優先に相続人を決定します。

例えば、亡くなった人に妻と子供が3人いるというような場合でも、全くの他人を相続人として遺言で指名している場合には、その全くの他人が相続人となります。

日本では「自分の財産は自分の自由に処分できる」のが大原則ですから、自分の死後の財産の処分の仕方についても、基本的には自分で決められるようになっているわけですね。

遺留分について

ただし、亡くなった人とごく近しい親族関係にある人(妻・子供・親)には「遺留分」という権利が認められていますので、一定割合の遺産は受け取ることが可能です。

なので、例えば「自分の死後は全財産を慈善団体に寄付する」というように遺言が残されている場合にも、亡くなった人の妻や子供は「自分には遺留分があるので、最低限の割合は自分たちに分けてほしい」と求めることができます。

どのぐらいの割合の財産を分けてもらえるのかについては、後でくわしく説明します。

遺産相続順位に関するイレギュラーな例

ここまで、遺産相続の順位に関する原則的なルールを説明しましたが、実際の相続では相続順位が複雑になるケースもあります。

以下では相続順位が問題となりやすいイレギュラーな場合について説明させていただきます。

代襲相続のケース

上でも少し説明しましたが、亡くなった人に子供と孫がいて、相続発生時には子供はすでに亡くなっているという場合には、孫が相続人となります。

このようなケースを代襲相続といい、上の例では孫は子供がもし生きていた場合と全く同じ立場で相続人となります(つまり、第1順位の相続人となります)

同様に、亡くなった人に子供と孫とひ孫がおり、相続発生時に子供と孫がすでに亡くなっている場合にはひ孫が相続人となります(再代襲相続といいます)

代襲相続の権利は兄弟姉妹の子(つまり亡くなった人から見て甥っ子、姪っ子)にもあります。

子供が相続放棄した場合の孫の立場は?

法律上、相続人となる権利がある人でも、「自分は相続にはいっさいかかわりたくない」と考えた場合には、相続放棄という形で相続にかかわらないことができます。

相続放棄をした人がいる場合には、その人の子供(亡くなった人から見て孫)も相続人となる権利を失うことになります。

法律上、相続放棄をした人は最初からその相続に関する権利が無かったものとして扱われますので、相続放棄をした人の子(亡くなった人から見て孫)も最初から相続人ではなかったとみなされるからです。

子供が相続欠格や廃除された場合の孫の立場は?

似たようなケースで結論が異なる例として、相続欠格や廃除された人の子供の代襲相続があります。

相続欠格とは、亡くなった人を虐待したり、殺害にかかわったりしたような場合に相続人となる権利を失うことを言い、廃除とは遺言によって相続人となる権利を失うことです。

相続欠格や廃除に該当する人に子供(亡くなった人から見て孫)がいた場合には、代襲相続が発生します。

例えば、亡くなった人の子供は遺言によって「相続人とはさせない」とされた場合にも、その廃除された人の子供は代襲相続によって相続人となります。

胎児がいるケース

相続が発生した時点ではまだ生まれていなかった胎児は、すでに生まれている子供とまったく同じように扱われます。

ただし、死産であった場合にはその胎児はさかのぼって相続人ではなかったものとみなされます。

なので、相続発生時に妻と母親、妻のお腹の胎児がいたというような場合には、妻と胎児(第1順位)が相続人となり、母親(第2順位)は相続人となりません。

一方で、胎児が残念ながら死産となった場合には、妻と母親が相続人となります。

このように、相続人の中に胎児がいる場合は、その子が生まれてくるまで「誰が相続人となるか」が確定しませんから、通常は胎児が生まれてから遺産分割協議に入るのが一般的です。

生まれたばかりの子供の母親は代理人となれない

もちろん、この場合に生まれた直後の子供には判断能力がありませんので、だれかがその子に代わって遺産分割協議に参加しなくてはなりません。

相続以外の場面では親がその子の代理人となりますが、相続に関しては妻と生まれたばかりの子供は法律上利害が対立していることになります。

例えば、妻が子供に代わって相続放棄を行ったとすると、妻がすべての遺産を相続することになるからです。

なので、遺産分割協議に当たっては生まれたばかりの子供のために特別代理人を選任しなくてはなりません。

特別代理人とは、親権者とその子の利害が対立する場合に、家庭裁判所が専任する代理人のことです。

特別代理人となるために特に資格は必要ありませんが、申し立て時に候補者の情報を裁判所に伝え、裁判所が具体的な状況を見ながら適格性を判断することになります。

認知された子がいるケース

実際の相続で問題になることが多いのが、相続にあたって亡くなった人に非嫡出子(いわゆる隠し子)がいたことが判明するケースです。

法律上夫婦と認められた相手との子供のことを嫡出子、法律上の夫婦でない相手との間に生まれた子供のことを非嫡出子と呼びます。

相続においては、この嫡出子と非嫡出子はまったく同じ立場として扱われます(相続人としての順位や遺産相続の割合がまったく同じです)

以前は、非嫡出子の遺産相続割合は嫡出子の半分とする法律がありましたが、平成25年に憲法違反として削除されました。

認知について

非嫡出子を自分の子供と認めることを認知といいますが、この認知は生前の意思表示によって行うほか、遺言によっても行うことができます。

さらに、非嫡出子自身は裁判所に訴えて強制的に認知させる「強制認知」を求めることも可能で、これは父親の生前、死後問わず行えます。

ただし、死後に強制認知を認めてもらうための訴えは、父親の相続発生後3年以内に行わなくてはなりません。

逆に言うと、相続が発生してから3年が経つまでは隠し子が現れて自分にも遺産を分け与えるように求めてくる可能性は常にあるということです。

なお、父親が生前において手切れ金などを渡して認知しないことを母親や非嫡出子本人と約束していたような場合にも、そのような約束は無効です。

前妻(前夫)との子がいるケース

亡くなった人が離婚や再婚を経験しており、以前に婚姻関係にあった人(前妻や前夫)との間に子がおり、前妻や前夫も別の人と再婚している場合にはどうなるでしょうか。

この場合、子供の立場からみると親が再婚している、していないは関係なく、実の親が亡くなったのであれば相続人となる権利があります。

親の離婚や再婚によって子供が相続人となる権利を失うことはないということですね。

ただし、別れた夫や妻との間の子が、別の再婚相手との間で養子縁組を行っている場合には、話がやや複雑になります。

結論から言うと、養子縁組には「普通養子縁組」と「特別養子縁組」の2種類があり、特別養子縁組を行っている場合には、実親との相続関係が断ち切られることになります。

特別養子縁組と普通養子縁組

前妻前夫との子が、前妻前夫との再婚相手との間で養子縁組をしている場合で、その養子縁組が「特別養子縁組」である場合には結論が異なります。

特別養子縁組とは、簡単にいえば実親との関係性を断ち切る形の養子縁組ですから、特別養子縁組をした子は実親の相続人となる権利を失うことになります。

よって、特別養子縁組に出した子に相続人となる権利を与えるためには、遺言によって相続人に指定しなくてはなりません。

一方で、この場合の養子縁組が特別養子縁組ではない「普通養子縁組」である場合には、子供は実親の相続権は失いません。

普通養子縁組の場合は、子供は実親と養親の両方の相続権を持つことになります。

実子と養子がいるケース

亡くなった人に、養子縁組をした子供と血のつながった子供の両方がいる場合、養子と実子は相続上まったく同じように扱われます。

相続人の順位は同じ(第1順位)ですし、相続割合も同じです。

例えば、亡くなった人の遺族として妻と子供2人(養子と実子)がいる場合には、この3人は全員が相続人となり、遺産分割割合は妻が2分の1、養子と実子がそれぞれ4分の1となります。

養子の子の代襲相続

養子と実子とで扱いが異なる可能性があるのは、養子にした子にさらに子供がいる場合(亡くなった人から見て孫)の代襲相続です。

この場合、養子の子が生まれたのが、養子縁組の後であるか先であるかによって結論が決まります。

養子縁組の前に生まれた子は代襲相続の権利は持ちませんが、養子縁組の後に生まれた子は代襲相続の権利を持ちます。

代襲相続は亡くなった人の直系卑属に対して生じますが、養子縁組の前にすでに生まれていた養子の子は亡くなった人の直系卑属とはみなされないためです。

養子縁組を行う前にすでに生まれていた養子の子に相続の権利を与えるためには、その子とあらためて養子縁組を行うか、遺言によって相続人に指定しておく必要があります。

行方不明者がいるケース

相続人が複数いる場合には、相続が発生した後に遺産分割協議を行い、それぞれの遺産相続割合を決めます。

この遺産分割協議には相続人となる資格を持つ人全員が参加して行わなくてはなりません。

相続人の1人が行方不明だからといって、その人を除いて遺産分割協議を行っても、その遺産分割協議は後から覆されてしまう可能性があります。

なので、相続が発生した時点で行方不明者がいる場合には、その人と連絡を取るべくあらゆる手段を講じる必要があります。

行方不明者と連絡をとる

行方不明者の住所や、戸籍からわかる本籍地などからその人の居場所をなんとか割り出しましょう(本籍地の市区町村が発行する附票という書類を確認すると、その人の住所を確認できることがあります)

居場所がわかったら口頭や書面で相続が発生した旨を知らせ、遺産分割協議に参加してほしいことを伝えます。

とはいえ、行方不明者との連絡がどうしても取れず、現れるまで待ち続けることもできない場合には、何らかの手段を講じることになります。

考えられる方法としては、家庭裁判所に申し立てを行い、①不在者財産管理人を選任してもらうか、②失踪宣告を行ってもらうかの2つが考えられます。

①不在者財産管理人の選任

不在者財産管理人とは、その名の通り行方不明となっている人に代わって、その人の財産を管理する人のことです。

不在者財産管理人を家庭裁判所に選任してもらえば、有効に遺産分割協議を完了して遺産分割を行うことができます。

不在者財産管理人を選任してもらうには、利害関係のある相続人などが、家庭裁判所に対して「不在者財産管理人の申立書」を提出する必要があります。

この申立書には行方不明となっている人の戸籍謄本を添付するとともに、その人と連絡を取りたいのにどうしても取れない経緯を説明する書類も添付します。

家庭裁判所は申し立て書類に不備がないことが確認されると、不在者財産管理人を選任してくれます。

不在者財産管理人は行方不明者と利害が対立する人であってはなりませんので、通常は利害関係のない弁護士や司法書士に依頼することになります。

なお、不在者財産管理人が行方不明者に代わって遺産分割協議に参加する場合には、原則としてその行方不明者の法定相続分を下回る形で遺産分割を行うことができないことにも注意を要します。

②失踪宣告

行方不明者がいる場合に遺産分割協議を有効に行うための手段として、失踪宣告という方法もあります。

失踪宣告とは、家庭裁判所に申し立てを行い、行方不明となっている人を法律上死亡したものとみなしてもらう方法のことです。

ただし、家庭裁判所に失踪宣告を出してもらうためには、その行方不明となっている人が7年間以上(災害などをきっかけとして行方不明となった場合は、その災害から1年間以上)音信不通であることが必要です。

また、失踪宣告は申し立てをしたらすぐに手続きが完了するわけではなく、1年~1年半ぐらいはかかります(この間に、裁判所は不在者捜索の公告などを出し、連絡を待つことになります)

相続が発生してから10か月後には相続税の申告期限がきますし、1年以上にわたって相続財産を放置しておくことは適切ではありませんから、通常は不在者財産管理人を選任するのが適切です。

相続人廃除のケース

上でも少し説明しましたが、相続人の中に、亡くなった人の遺言によって「この人は相続人としない」と定められている人がいる場合には、その人は相続人となる権利を失います。

これを相続人の廃除と呼びます。

厳密に言うと、遺言で相続人の廃除を記すだけでは足りず、相続執行者が遺言の内容に従ってさらに家庭裁判所に対して相続人廃除の請求を行う必要があります(生前に廃除を行う場合には、遺言を残す人が自分で相続人廃除の請求を行います)

実際には相続人の廃除はレアケース

相続人廃除の請求を受けた家庭裁判所は、その廃除を受けた人の具体的な行跡を見ながら廃除を認めるかどうかの判断を行います。

例えば、亡くなった人を虐待していた事実があるとか、重大な侮辱や著しい非行、罪を犯して服役しているとかいった事情がある場合には、相続人の廃除が認められることがあります。

相続人廃除が認められた場合は、戸籍にその情報が記載されますので、その人を除いて遺産分割協議を進めることが可能です。

ただし、実際には家庭裁判所は相続人の廃除についてかなり慎重に判断を行っており、よほどのことがない限りは相続人の廃除は認めていません。

現実に相続廃除の判断がされるのは、利害関係人の一人によって相続廃除の申し立てが行われ、家庭裁判所によって相続廃除の判断をした際に、その廃除された人によって不服申し立てが何ら行われなかったり、その人が服役中であったりする場合に限られます。

また、相続人の廃除を受けた人の子や孫は代襲相続する権利を失いません。

代襲相続について次で説明する「相続放棄」と、相続人の廃除とでは結論が異なり、混同しやすいので注意してください。

相続放棄のケース

法律上相続人となる人でも、必ず実際に相続にかかわらなくてはならないというわけではありません。

相続財産にはプラスの財産(現預金や不動産などの資産)だけでなく、借金などのマイナスの財産が含まれることがあります。

これらを強制的に引き継がなくてはならないとすると、その人の人生が親族の行動によって決定づけられることにもなりかねないためです。

相続にかかわりたくない相続人は、自分のために相続が発生したことを知った時点から数えて3か月以内に相続放棄の意思表示をする必要があります。

相続放棄は家庭裁判所に対して申述という手続きで行い、実際に相続放棄をしたい人が単独で行うことが可能です。

相続放棄をした人は相続人となる権利を失い、相続放棄をした人の子や孫も代襲相続や再代襲相続をする権利を失うことになります。

限定承認

相続放棄の1つのバリエーションとして、限定承認という方法も認められています。

限定承認とは、簡単にいうと「プラスの財産の範囲内で、マイナスの財産の相続を認める」というものです。

例えば、遺産として3000万円の資産があるけれど、借金が4000万円あるという場合に、限定承認をすると3000万円までの借金だけを引き継ぐことになります。

限定承認は、どれだけの遺産があるかはっきりとわからない場合や、借金は負いたくないけれど先祖代々の土地はできれば手放したくないというような場合に使うメリットがあります。

ただし、限定承認は相続人となる人全員が共同で行う必要があります。

法律上相続人となる人がいないケース

身内がいない人、相続人が誰もいない人が財産を残して亡くなった場合、その財産は最終的には国庫に帰属することになります(つまり、国の財産となります)

相続人がいない状態とは、単に親族がいない場合だけでなく、本来相続人となる人はいるけれど全員が相続放棄をしているような場合も含みます。

相続人がいないことが分かった時点で、その財産は民法上の法人という扱いになり、相続財産管理人が選任されてその人が管理を行うことになります。

一定期間は相続財産管理人が相続人の調査などを行いますが、相続人がいないことが確定した場合には、国庫に財産が納められることになります。

なお、血のつながった親族や身内がいない人であっても、遺言を残せば相続人を指定することができますから、ここでいう相続人がいない状態とは「親族がおらず、遺言もない場合」ということです。

本来は相続人となれる人が相続人となる資格を失う場合

上で見てきたように、亡くなった人の配偶者や子供といった人たちは、法律上相続人となる権利が認められています(遺言によって外された場合には遺留分があります)

一方で、亡くなった人に対して、相続人となる人が一定の行為をした場合には、相続人となる権利をはく奪されることがあります。

これを相続欠格といい、具体的には次のようなケースが該当します。

以下で順番に説明します。

亡くなった人の殺害に関与した相続人

故意に親族等(被相続人)を殺害し、刑に処せられた人は相続人としての地位を失います。

殺害が既遂となった場合だけでなく、未遂に終わった場合も含みます。

例えば、子供が資産家の親を殺して相続を受けようとした場合には、その子供は相続人としての地位を失うことになるのです。

関連する事例として、以下のような場合にも相続人としての地位を失うことになります。

  • 自分の先順位の相続人を故意に殺害したか、未遂に終わった場合
  • 自分と同順位の相続人を故意に殺害したか、未遂に終わった場合

例えば、遺族として配偶者と子供、さらに被相続人の父がいる場合に、第2順位の相続人である父が第1順位の子供を殺害した場合が該当します。

また、遺族として被相続人の子供2人(長男・次男)がいる場合に、次男が長男を殺害したような場合にも相続欠格に該当します。

亡くなった人の殺害を告発しなかった相続人

被相続人が他人から殺害されたのを知りながら、これを警察などに告発しなかった人も相続人としての地位を失う可能性があります。

ただし、殺害に関与したのがその告発をしなかった人の配偶者や直系の血族である場合には、相続欠格とはなりません。

自分の妻や子供が殺害に関与した場合に、それを警察に訴えないことは人情として考えられないことではないため、このようなルールが設けられています。

詐欺や強迫によって遺言に影響を与えた相続人

被相続人を詐欺にかけたり、強迫したりすることによって遺言内容に影響を与えた人は、相続人としての地位を失います。

単純に遺言を無理やり書かせたとか、だまして書かせた場合に限らず、撤回や内容の変更などについて影響を与える場合も含みます。

なお、このような詐欺や強迫によって作成された遺言は、遺言としての効力そのものも認められない可能性があります。

遺言は被相続人による一種の法律上の意思表示ですが、法律上の意思表示をするときには、正常な判断能力を備えていることが大前提となるためです。

そのため、遺言を作成した際に内容に重大な錯誤があったり、認知症などによって意思能力が欠如していたと判断されたりした場合には、その遺言の一部または全部が無効となる可能性があります。

なお、こうした遺言の有効性については、利害関係を持つ相続人などの申し立てによる遺言無効確認の訴えによって争われます。

遺言無効確認の訴えによる裁判では、亡くなった人が実際に遺言を作成した時点の事理弁識能力の状態などを証拠となる事実を提出して争い、最終的に裁判官が遺言の効力の有無について判断することになります。

まとめ

今回は、複数の相続人がいる場合に「だれがどのような順番で相続人となり、どのぐらいの割合をそれぞれ相続するのか」について解説しました。

本文でも説明した通り、民法では相続に関するルールが事細かに定められています。

その一方で、遺言が残されている場合には、民法のルールよりも遺言の内容が優先されることには注意を要します。

相続に関するルールについて疑問点がある方は、遺産相続の問題にくしい弁護士や司法書士といった法律家に相談することも検討してみてくださいね。