遺言(いごん)?遺言(ゆいごん)?読み方について

相続や遺産分割について調べている方の中には、「遺言」という言葉の読み方について、「いごん」と「ゆいごん」の2つのパターンがあることに気づいた方も多いのではないでしょうか。

この2つの言葉の使い分けには、実はきちんと根拠があるのです。

以下では、遺言の読み方の2つの意味について解説させていただきます。

法律上の遺言は「いごん」

ごく大まかに説明すると、「いごん」は「ゆいごん」よりも狭い意味でつかわれる言葉です。

具体的に言うと、法律上の効力がある遺言について話をするときには、遺言は「いごん」と読みます。

それよりももっと広い意味、つまり「遺言をする人が家族に対して残す言葉」という意味で使う場合には、「ゆいごん」という呼び方をすることが多いです。

世間一般で遺言について言及するときには、「ゆいごん」という読み方をするのが普通ですね。

これに対して、弁護士や司法書士などの法律の実務家は仕事で遺言について言及するときは「いごん」で統一しています。

法律について勉強する人は、勉強をし始めたかなり早い時点でこの言葉の使い分けについて勉強することが多いのです。

法律上の遺言には厳格な形式がある

法律上の遺言は厳格に形式が定められており、法律上の形式を満たさない遺言は無効となってしまうことが知られています。

具体的には、自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があり、それぞれで書き方のルールが決まっています。

例えば、自筆証書遺言は遺言者が手書きで残すことが必要で、もしパソコン印刷などで作成すると無効になってしまいます。

加筆や訂正などについても厳しくルールが決まっており、もしこのルールに沿わない形で行ってしまうと、その部分について遺言が無効となってしまうこともあり得ます。

遺言には、法律上非常に大きな効力が与えられている分、遺言を残すときの形式についても厳しくルールが定められているというわけですね。

次の項目では、遺言の法律上の効力について、より具体的に見ておきましょう。

遺言(いごん)の法律上の効力

相続に関するルールは、民法という法律で決められていることがよく知られています。

相続人となる人の順位や、それぞれの人が相続する遺産の割合などについて、とても細かく規定があります。

しかし、相続が発生した時に、亡くなった人が遺言を残していた場合には、原則として民法のルールは無視して遺言の内容を優先することになります。

民法では「配偶者の遺産相続割合は2分の1、子供は2分の1」というように決まっていますが、遺言を使えば「配偶者に4分の3、子供には4分の1を与える」というように自由に遺産分割の割合を決めることが可能です。

日本の法律では「自分の財産は自分で処分できる」というのが大原則ですから、自分の死後に財産をどのように使うかについても、原則として自由に決められるようになっています。

もちろん、死んだ後には言葉や行動で意思表示をすることができませんから、その手段として遺言を残すことが認められているというわけですね。

「愛人に全財産を相続させる」という遺言は有効?

財産の所有者は、遺言によって自分の死後の財産の使い道を自由に決められるという話をさせていただきました。

そうすると、例えば「自分の死後には、全財産を愛人に相続させる。妻や子供には1銭も渡さない」という遺言が残されている場合にはどうなるでしょうか。

結論から言うと、このような遺言も一応は有効です。

しかし、妻や子供には「遺留分」という権利が認められていますので、遺産相続が完了した後で「自分たちにも最低限の財産を分けてほしい」という訴えを起こすことができます。

遺留分とは何か

遺留分とは、妻や子供、両親といった、亡くなった人とごく近しい親族関係にあった人が求めることができる最低限の遺産を相続する権利のことです。

こうした人々は、一定額以上の遺産を、亡くなった人から引き継ぐことを期待する権利があると社会通念上考えられていますから、法律上もその権利を認められているわけですね。

具体的には、配偶者や子供が相続人となる場合は遺産全体の2分の1、両親や祖父母などが相続人となる場合は遺産全体の3分の1が遺留分となります。

遺留分請求の具体的なケース

例えば、遺族として妻と子供1人がいる場合に、「愛人に全財産である1億円すべてを相続させる」という遺言がある場合を考えましょう。

この場合、妻と子供は遺留分として遺産の2分の1を要求する権利がありますから、1億円×2分の1=5000万円を愛人に対して渡すように請求することができます。

なお、妻と子供は遺留分として得た2分の1を、民法で決まっている相続割合で分け合うことになりますので、それぞれ2分の1×2分の1=4分の1である1250万円ずつ相続することになります(配偶者と子の法定相続割合は2分の1ずつです)

遺留分請求の注意点

遺留分を請求する際の注意点としては、上でも少し説明させていただいたように「遺留分を侵害する形の遺言も、いったんは有効として扱われる」ことです。

つまり、遺留分は、それを認められる権利者(配偶者や子など)が、実際に遺言の内容によって相続人となる人(愛人など)に対して請求を行わないことには実現しないのです。

なので、遺産分割協議の段階では遺言の内容に従って愛人が全額を相続し、そのあとになって配偶者や子が提起する遺留分の訴訟(遺留分減殺請求といいます)を待って、初めて遺留分に基づく遺産分割が行われることになるのです。

もっとも、このような処理方法は二度手間でもありますから、実際には遺産分割協議の段階で遺留分があることを示して交渉を行うことにより、配偶者や子も遺産分割を受けることが多いでしょう。

まとめ

今回は、遺言という言葉の2つの読み方について解説させていただきました。

本文でも説明しましたが、相続や遺産分割についての話をするときには、「いごん」という読み方をすることが多くなります

また、遺言は法律上の効力が実際の相続の場で問題となるケースが多いので、近い将来に相続にかかわる可能性がある方は理解しておきましょう。