相続放棄に必要な申請書類について

 

この記事では、相続放棄の申述に当たり家庭裁判所に提出すべき書類等について、時系列的な手続きの流れに沿って解説します。

同時に、各書類に関する収集・作成上のポイントやその難易度、時間的な労力についても触れ、自力でやってしまうか・それとも専門家に頼むべきかについても考察します。

相続放棄の手続きの流れ

相続放棄は3か月以内に申し立てる

相続放棄の※申述期限は3か月以内とされています。

※「申述」とは司法界でよく使われる用語で「申立てと陳述」つまり裁判所に対して「こうしてください」と要求すると同時にその理由を表明することを意味します。

日数にして余裕があるように感じますが、弔辞の後、特に自分の親が亡くなった直後となると、四十九日までさまざまな手続きに忙殺されますし、もろもろの決め事を裁かなければなりません。

通夜・告別式・火葬に向けての打ち合わせ・近親者や会社関係者への連絡、死亡届・死亡診断書の提出、香典返しの手配、初七日法要の準備、自治体・官公庁等への届け出、ガス・水道などの停止、銀行口座の解約、墓地・墓石の購入など四十九日法要まではあっという間です。

これに相続放棄の手続きが乗ってくるのですから、大変です。

それでも毎日暇なら何とかなるでしょうが、仕事で忙しいとなると話は別です。平日にお役所に出向かざるを得ないケースも少なくないのです。

一方で相続放棄の申述手続きは、段取りや必要書類だけ事前に確認しておけば、ある意味拍子抜けするほどスムーズに進むケースも少なくありません(あくまでご家庭やご親族が抱えている事情によってケースバイケースですが)。

まずはきちんと下調べして、カレンダーや手帳にびっしりとスケジュールを書き込みましょう。

スケジュール

3か月のスケジュールとしては、まず前半45日で相続放棄するかしないか意思決定する、後半45日で相続放棄の手続きを進めるといったイメージです。

そもそも相続放棄の理由が、他の相続人に家業を継がせる、被相続人と同居していた相続人に持ち家を相続させる、または遺産なんていらない(少額だから)といったケースでは、迷うことも少ないでしょう。

最近は、地方暮らしの老親が亡くなって、家の処分に困るという理由も耳にします。

一方で年間20万件近くある相続放棄申述のうち、大部分は債務超過といわれています。この場合は、相続放棄の手続きに入る前に、まず被相続人の財産または債務の状況を丹念に調べなければなりません。

とくに債務については債権者が申し出れば別ですが(相続放棄させないためあえて3か月間は何も言ってこないケースもあります)、そうでなければ郵便物に交じっている督促状や、通帳の払い出し先(〇●ファイナンス)などから痕跡を洗っていくしかありません。

相続放棄申述に必要な資料①-3か月以内に申述する場合なら自力で対応可能

次に、相続放棄申述にステップを移し、必要資料について解説します。

結論から申し上げると、一般的なケースすなわち被相続人の死亡から3か月以内に相続放棄申述する場合なら、自力でも充分に対応できます。

相続放棄の申述

配偶者やお子さんの場合、相続放棄申述に必要な資料は以下の通りです。

  • 相続放棄申述書
  • 被相続人の住民票除票(本籍地記載)又は戸籍附表、戸籍謄本
  • 申述人の戸籍謄本

申述書の記載事項は以下の通りで、回答の多くは選択式です。

  • 申述人の氏名・住所・電話番号・生年月日・職業・被相続人との関係(未成年者の場合は法定代理人の氏名・住所・電話番号)
  • 被相続人の本籍地・氏名・職業・最後の住所・死亡年月日
  • 申述の理由(相続の開始があったことを知った日・放棄の理由・財産負債の概略等)
  • 住所・氏名などの属性さえ記述すれば、あとは殆どが選択項目なので、専門家でなくても充分記入可能です。

裁判所ウエブでフォーマットをダウンロードできます。

http://www.courts.go.jp/vcms_lf/10m-souzokuhouki.pdf

記入例も以下のサイトから確認できます。

http://www.courts.go.jp/vcms_lf/7427souzokuhouki-seizin.pdf

以上、きわめてシンプルです。一方でお子さん(相続第1順位)が相続を放棄すると、(生きていれば)個人の父母や祖父母(相続第2順位)、さらには兄弟や亡くなっている場合には甥っ子や姪っ子(相続第3順位)へ相続権が移転します。

つまり相続放棄はお子さんだけにとどまらず、被相続人の兄弟や甥・姪にまで及ぶのです。

そして相続順位が下がると、戸籍謄本の範囲がぐんと拡がります。ただし被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人の戸籍謄本は、相続分割協議や銀行口座解約さらには不動産の所有権移転登記にも必要です。

確かに取り寄せるのは手間がかかりますが、相続の放棄をしなくてもいずれにせよ必要になるものなんです。

ちなみに、被相続人の甥が相続の放棄を申述する場合の戸籍謄本は以下の通りです。

  • 被相続人の出生から死亡までのすべての戸籍謄本
  • 被相続人の子(またはその子・孫等)が死亡している場合にはその死亡が記載された戸籍謄本
  • 被相続人直系尊属の死亡が記載された戸籍謄本
  • 本来の相続人(被相続人の兄弟)の死亡が記載された戸籍謄本

先順位の申述人が提出した戸籍謄本は省略可

裁判所からの質問と回答

相続放棄を申述してから1週間、遅くても1か月以内には家庭裁判所から質問状(照会書)が送付されてきます。

質問事項は形式的質問(相続放棄申述は自分で手続したか・被相続人の死亡を知ったのはいつか・相続放棄は自分の意思か)に続いて、相続放棄の理由(選択式)、財産の隠匿処分の有無(選択式)に答えます。

いかがでしょうか、決して難しい質問ではありません。ご自身でも充分に回答できる内容です。

相続放棄申述に必要な資料②-3か月を超えての申述はハードルが上がる?

相続開始を知った日から3か月以内なら問題なし

相続放棄の期限は「被相続人死亡の日」ではなく「相続の開始があったことを知った日」から3か月ですが、両者は一般的に同一日とみなされます。

では、「後から死亡を知った」ケースはどうでしょう。例えば被相続人とは付き合いもなく、亡くなったのを人づてに聞いたといったような場合もありえます。

あるいは先順位の相続人が相続放棄をしたために、相続権が移転されたケースも死亡日と相続開始日はずれてきます。

この結果、相続放棄申述は死亡日から3か月経過後になる可能性もありますが、あくまで「相続を開始した日から3か月」以内に入っていれば問題ありません。

相続開始を知った日から3か月経過後に申述する場合

これが本当に3か月を超えたとなると、話は厄介です。

相続財産や債務の調査に時間がかかったなどの事情があれば期限延長を家裁が認めることはありますが、そのための審査はグッとハードルが上がります。

延長の申立て

まず期間延長を求めるには家事審判申立書(相続の承認又は放棄の期間延長)を提出します。

ここで延長の趣旨と理由をきっちり記述しなければなりません。

照会書も厳しくなる

申立てすると照会書が送られてくるのは相続放棄申述と同じですが、内容は全く異なります。

家庭裁判所も下手に延長による相続放棄を認め、後々債権者による訴訟(相続放棄無効)が起こるのを恐れているのです。

まず「相続開始があったことを知った日がいつか」については、より細かく質問してきます。

債権者からの催告通知により知ったのであれば、催告書の有無についても尋ね添付を要求してきます。

その他、被相続人との同居の有無・過去における同居や被相続人との日ごろの付き合いも聞いてきます。さらに被相続人の暮らしぶりや借金の噂、先順位者の相続放棄日を知っていたか等を質問してきます。

裁判所は、3か月を過ぎてしまったことに合理的な理由があるかを確認したいのです。

微妙な問題だけに記入にも慎重を要し、専門家でない人が書くのは難しそうです。

上申書の提出

さらに裁判所は、付帯資料として上申書の提出を求められることがあります。

上申書には、相続の開始があることを如何にして知ったかを細かく記載します。

例えば、30年前に家を出て行方知れずだった父が亡くなり、金融業者からの催告通知で知ることになった等、個別の事情を丁寧に伝えるための資料です。

通知書の受理

相続放棄がようやく認められると、家庭裁判所は「相続放棄申述受理通知書」を送付します。

この通知書を受領して、相続放棄手続きは完了です。

その他-自分が相続人であるかどうかを知る申請書類

ご兄弟が亡くなられた場合には、通常はそのお子さん(甥っ子や姪っ子)が相続人になります。

このケースで、本来の相続人が相続放棄し、その事実を伝えられなかったらどうでしょう。

知らない間に、被相続人の債務を背負い込むことになりかねません。

こうした場合は、相続放棄申述の有無を裁判所に確認できます。

手続きとしては「相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会申請書」に「被相続人目録(被相続人と相続放棄申述人の目録)」を添付して家裁に提出します。

裁判所は、申述がある場合には事件番号と受理年月日を通知し、無い場合には「当庁に該当なし」と回答してきます。

弁護士・司法書士に頼めば当然手続きも楽ですが、コストはかかります。

特に相続放棄の場合は充当する財産が入ってこないので、コストはすべて自腹を切ることになります。

できれば自力でやりたいところですが、分水嶺はどうやら3か月のようです。

もし3か月を超えているなら専門家へのご相談をお勧めします。