この記事でわかること
- 相続とは何か
- 相続発生時に法定相続人が誰になるのか
- 相続税の計算方法
遺産相続とは亡くなった人(被相続人)から預貯金や不動産などの財産を引き継ぐことをいいます。
相続が発生した場合、期限内に手続きや相続税の納付を行う必要があり、なるべく早めに行動を起こさなければなりません。
この記事では、相続放棄や相続税申告をはじめとする相続に関する手続きを詳しく解説していきますので、相続でお困りの方はぜひ参考にしてください。
また、相続手続き中に遺産トラブルが発生する可能性もあるため、事前に相続対策をしておくことも検討しましょう。
目次
2022年(令和4年)の相続税改正内容
毎年年末に税制改正大綱として、翌年度以降の税制改正や新しい税制制度の方針が公表されます。
2022年度の税制改正大綱では、公表前から相続税と贈与税の一体化が注目されていました。
これは、生前贈与を行うことで結果的に相続税の税額を減らすような節税対策を行えなくしようとするものです。
多額の相続税が発生すると見込まれる人には改正の影響が大きいため、その動向が非常に注目されていたのです。
しかし、この2022年度の税制改正大綱での改正は見送りとなりました。
贈与税の暦年課制度を廃止してしまうような改正は影響が大きく、簡単にはできないのでしょう。
ただし、翌年度以降に向けて持ち越して検討されるため、将来的に改正が行われる可能性はあります。
それ以外には、下記のような改正点が2022年度税制改正大綱に明記されています。
住宅取得資金に係る贈与税の非課税制度
一般住宅の場合500万円まで、省エネ等の住宅の場合は1,000万円までに縮減されます。
非上場株式に係る相続税・贈与税の納税猶予制度
特例承継計画の提出時期が、当初の2023年3月31日までから2024年3月31日までに1年延長されます。
このほか、農地や特定の美術品に関する納税猶予制度の改正点も公表されています。
相続人とは?
相続によって財産や権利義務を引き継ぐときにまず最初に確認が必要なことは、誰が相続人になるのかです。
相続では、亡くなった人を「被相続人」、財産を受け取る人を「法定相続人(または相続人)」といいます。法定相続人になれるのは、被相続人の配偶者のほか、子ども(直系卑属)、父母(直系尊属)、兄弟姉妹(傍系血族)です。
ただし、すべての血縁関係者が相続人になれるわけではなく、優先順位もしっかり決められています。
被相続人の配偶者は順位に関係なく、常に相続人になります。それ以外は、第1順位が子ども(直系卑属)、第2順位が父母(直系尊属)、第3順位が兄弟姉妹(傍系血族)という順番で相続人が決まります。上位の相続人がいる場合は、下位の人は相続人にはなれません。
ちなみに、被相続人に配偶者も特別縁故者もなく、遺言もない場合、財産は国庫に入ります。
第1順位 | 配偶者の法定相続分は1/2、残りは子(子が既に死亡しているときは孫)で均等に法定相続分を有します。 |
---|---|
第2順位 | 第1順位の法定相続人がいない場合、配偶者の法定相続分は2/3、残りは父母(父母がすでに死亡している時は祖父母)で均等に法定相続分を有します。 |
第3順位 | 第1・2順位の法定相続人がいない場合、配偶者の法定相続分は3/4、残りは兄弟姉妹で均等に法定相続分を有します。 |
相続人のパターン
被相続人に配偶者がいる場合は、配偶者が常に相続人になります。配偶者に子どもがいれば、子どもも相続人になります。
被相続人が独身で子どももいない場合は、第2順位の親が相続人となります。両親が死亡している場合は、祖父母が相続人になります。
被相続人が独身で子どももなく、両親も祖父母も死亡している場合は、被相続人の兄弟姉妹が相続人となります。
法定相続人以外の人に財産を残したい場合には、遺言書を書いて第三者へ遺贈する必要があります。
遺贈とは、遺言で財産の全部又は一部を、相続人又は相続人以外の人に無償で贈与することをいいます。
つまり、生前に遺言書を作成して財産を渡したい人を指定しておけば相続人以外の人でも相続することができます。
遺言の効力は、遺言者が死亡した時に発生します。
遺産相続の対象財産
つぎに確認が必要になることは、遺産相続の対象となる財産がどのくらいか?ということでしょう。
遺産相続の対象となる財産は、被相続人が所有していた財産的価値のある資産や負債、権利義務関係などです。
まず、プラスの資産は相続の対象になります。
具体的には、現金や預貯金、不動産や株券などの有価証券、投資信託、各種の積立金やゴルフ会員権などがあります。
逆に被相続人が借金をしていた場合には借金も相続の対象になりますし、買掛金などの債務を負っていた場合にはその債務も相続の対象になります。
反対に、相続財産にならないものもあります。
たとえば、ほとんど財産的な価値のない被相続人の着古した衣類や古びた自転車などがあります。
墓地や墓石、仏具、神具などの祭祀関係の財産も相続財産には含まれません。
また、権利義務関係の中でも被相続人に一身専属的なものは相続の対象になりません。
たとえば、被相続人が前妻の子どもに養育費を支払っていた場合、養育費支払い義務は「子供の父親」という立場から発生する一身専属的な債務なので、「父親」ではない相続人に相続されることはありません。他人の身元保証人になっている場合の債務なども同様です。
生命保険金・死亡退職金はみなし相続財産になる
生命保険金や死亡退職金の財産は、法律的には、受取人の固有の財産と評価されるので、基本的には相続の対象になりません。
たとえば、生命保険金の受取人が配偶者と指定されている場合、配偶者は生命保険金を受け取ることができますが、これについては遺産分割の対象にする必要がなく、配偶者が全部取得することができます。
ただ、遺産全体の金額などからして、これを受取人固有の財産にすると著しく他の相続人との間で不公平になるケースでは、例外的に生命保険金を特別受益と評価して、相続財産に入れて遺産分割が行われることもあります。
死亡退職金についてもこれと同様で、基本的には受取人固有の財産として取り扱われますが、その原則を貫くと他の相続人との間で著しく不公平になるケースでは、例外的に特別受益として計算されることもあります。
遺産相続の3つの方法(単純承認/限定承認/相続放棄)
相続が起こったとき、相続人は3種類の対応を選ぶことができます。
それは、単純承認と相続放棄、限定承認です。
遺産相続の3つの方法 | ||
---|---|---|
選択肢 | 説明 | |
単純承認:相続する | 被相続人のすべての財産・債務を受け継ぐ。 | |
相続放棄:相続しない | すべての財産・債務を受け継がない。 | |
限定承認:条件付きで相続する | 受け継いだ財産の範囲内で、被相続人の債務を引き受ける |
それぞれの対応方法によって効果が全く異なってきますし、期間制限がある対応方法もあるので、相続が起こったときにはどの対応をとるか、しっかり検討することが大切です。そこで、以下ではこの3種類の相続への対応方法について、個別に解説します。
単純承認とは?
単純承認とは、相続に限定をつけず、権利も義務もすべて承継する相続方法です。
単純承認するときには、被相続人のプラスの資産だけでなく、マイナスの負債も承継します。
通常のケースでは、相続人全員が単純承認をして、そのまま相続人同士が集まって遺産分割協議をします。
ただ、借金などの負債も相続の対象になるので、被相続人が借金をしていた場合に単純承認してしまうと、相続人は被相続人の代わりに借金返済をしなければなりません。
相続人が借金返済できないなら、相続人が自己破産しなければならなくなるので注意が必要です。
相続放棄とは?
相続放棄とは、遺産相続の一切をせずに放棄することです。
この場合、プラスの資産もマイナスの負債も相続することがないので、被相続人に借金がある場合には相続する必要がなくなり、返済の義務を負うことはありません。
ただ、相続放棄をすると、プラスの資産も相続することができなくなるので、被相続人に資産がある場合には、それも相続できなくなってしまいます。
被相続人の遺産に資産と負債の両方があって、差し引きすると資産価値が負債を上回っている場合に相続放棄をすると、損をしてしまうおそれがあります。
また、被相続人の遺産内容に実家の不動産などの守りたい財産がある場合、相続放棄をするとその不動産の相続をすることもできません。
兄弟が単純承認をしてくれて、実家を引き継いでくれるなら不動産がなくなることはないですが、誰も相続しない場合には、実家は最終的に国のものになり、失われてしまうことになります。
限定承認とは?
限定承認とは、遺産内容を調査して、プラスの資産がマイナスの負債を上回っている場合、そのプラス部分のみを相続する方法です。
負債が資産を上回っている場合には相続は起こりません。
先述のように、相続放棄すると、借金を相続せずに済みますが、プラスの資産まで受け取れなくなるのでプラスの資産が上回る場合に損をする可能性があります。
これに対し、限定承認をすると、プラスの資産が上回る場合にはその上回ったプラス分は受け取ることができるので、そのようなリスクを避けられます。
ただし、限定承認をするためには共同相続人全員でする必要があります。
相続人のうちひとりでも単純承認をしたり相続放棄をしたりすると、1人で限定承認することはできないので注意しましょう。
相続人・相続割合の決め方
遺言書があった場合 ⇒ 遺言書の内容で遺産分割
相続においては故人の意思としての遺言である「遺言書」が最優先されるため、遺言書があった場合には、遺言の内容に沿って遺産を分割していきます。
ただし、相続人全員の同意があれば、遺言書どおりの分割でなく、遺産分割協議による分割をすることも可能です。
遺言書がなかった場合は遺産分割協議を行います
遺言書がない場合には、法律によって定められた法定相続人全員で各人の遺産の取り分を話し合いで決めることになります。これを遺産分割協議といいます。
遺産分割は法定相続分(民法で定められている相続できる割合)を基本に話し合いを進めていきます。
法定相続分は遺産分割協議をする上での目安として定められており、必ずしも法定相続分に従う必要はありません。
遺産分割協議により自由な割合で遺産分割をすることが可能ですが、相続トラブルを避けるためにはいかに遺産分割協議における紛争を避けるか、ということが大きな問題となってきます。
遺産相続の手続き
いざ相続が発生したときに慌てないよう、「いつまでにどんな手続きを行えばよいのか」「必要な書類はなにか」などを確認しておきましょう。
遺産相続手続きの流れ
遺産相続手続きの流れは下記の表をご参照ください。期限はあくまで目安ですが、遅くなりすぎてしまうとトラブルになる場合がありますので、できるだけ早いタイミングで手続きを済ませましょう。
ご臨終より | 手続き |
---|---|
7日以内 | ・死亡診断書の取得 ・死体埋葬火葬許可証の取得 ・死亡届の提出 |
10~14日以内 | ・年金受給停止の手続き ・年金受給権者死亡届の提出 ・国民健康保険証の返却 ・介護保険の資格喪失届 ・住民票の抹消届・住民票の除票の申請 ・世帯主の変更届 |
なるべく早く | ・健康保険証の返却 ・遺言書の調査・検認 ・相続人の確定 ・故人の財産調査 ▲ ・遺産分割協議の開始 |
3ヶ月以内 | ・相続放棄または限定承認 ・相続の承認又は放棄の期間の伸長 ▲ |
4ヶ月以内 | ・故人の所得税の確定申告(準確定申告) ▲ |
速やかに | ・遺産分割協議書の作成 ▲ ・不動産の名義変更登記 ▲ |
10ヶ月以内 | ・相続税の申告 ▲ |
1年以内 | ・遺留分減殺請求 ▲ |
2年以内 | ・葬祭費 ・埋葬料の請求 ・高額医療費の請求 |
3年以内 | ・生命保険金の請求 |
5年以内 | ・遺族年金の受給申請 ・相続税の税務調査 ▲ |
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▲ … 専門知識が無いと難しい手続き(専門家にご依頼されることをお勧めします)
※ … 亡くなった方が対象者の場合、しなければなからない手続き
相続税の課税の仕組み|基礎控除内なら相続税はかからない
遺産相続が起こったとき、相続税が課税されるケースがあります。
ただ、すべての相続事案で相続税の課税が行われるわけではありません。
相続税には基礎控除が認められるので、遺産の相続が基礎控除額を超える場合にのみ相続税が課税されるのです。
相続税の基礎控除は、以下のとおりとなっています。
基礎控除額
3,000万円+600万円×法定相続人の数
たとえば、父親が亡くなって、母親と子ども3人が相続人になるケースでは、法定相続人は、4人です。
そこで、基礎控除は、3000万円+600万円×4人=5400万円になります。
よって、この事案では、遺産総額が5400万円以下なら相続税はかかりませんが、それを超える場合には、超える部分に対して相続税が課税されます。
相続税の計算
1.課税遺産の総額を算出する
STEP1
プラスの財産を算出(遺産総額+みなし相続財産+相続時精算課税の対象となる贈与)
プラスの財産 | ||
遺産総額 | みなし相続財産 | 相続時精算課税の対象となる贈与 |
STEP2
マイナスの財産を算出する(債務+葬式費用+非課税財産)
マイナスの財産 | |
債務 | 葬式費用 |
STEP3
遺産額を算出する(プラスの財産-マイナスの財産)
プラスの財産 | マイナスの財産 |
STEP4
正味の遺産額を算出する(遺産額+3年以内の贈与)
正味相続財産 | 3年以内の贈与 |
STEP5
課税遺産総額を算出する(正味の遺産額-基礎控除)
課税遺産総額 | 基礎控除 |
■法定相続人の人数と控除額
人数 | 基礎控除額 |
---|---|
1人 | 3600万円 |
2人 | 4200万円 |
3人 | 4800万円 |
4人 | 5400万円 |
5人 | 6000万円 |
2.相続税額を算出する
課税遺産総額に法定相続分をかけるのが相続税計算のポイント!
相続税は実際の相続割合に関わらず、法定相続分で計算します。
具体的には、課税遺産総額に法定相続人の法定相続分をかけて取得価格を算出(STEP1)し、税率をかけて各相続人の税額を算出(STEP2)します。
最後に各相続人の税額を合計(STEP3)し「相続税の総額」が決まります。
■相続税の速算表(平成27年1月1日以降の相続開始)
取得金額 | 税率 | 控除額 |
---|---|---|
1000万円以下 | 10% | – |
3000万円以下 | 15% | 50万円 |
5000万円以下 | 20% | 200万円 |
1億円以下 | 30% | 700万円 |
2億円以下 | 40% | 1700万円 |
3億円以下 | 45% | 2700万円 |
6億円以下 | 50% | 4200万円 |
6億円超 | 55% | 7200万円 |
3.各相続人の納税額を算出する
納税額は各相続人が取得した割合をもとに算出
相続税の総額が決まったら、今度は実際の相続割合に応じて納税額を計算します(STEP1)。最後に各種控除を適用(STEP2)し、各相続人の納税額が決まります。
税額控除 | |
---|---|
配偶者の税額軽減 | 被相続人の配偶者は、1億6000万円または配偶者の法定相続分のどちらか多い金額までの取得財産について相続税が免除されます。 |
贈与税額控除 | 「相続開始前3年以内に贈与された財産」に対する支払い済みの贈与税は相続税から控除されます。 |
未成年者控除 | 相続人が未成年者のとき、その相続人が満18歳になるまでの年数1年につき10万円が控除されます。なお、1年未満の端数は切り上げて1年として計算します。 ※2022年3月31日以前は満20歳未満 |
障害者控除 | 相続人が85歳未満の障害者のとき、その相続人が満85歳になるまでの年数1年につき10万円(特別障害者の場合は20万円)が控除されます。 |
配偶者は1億6000万円までは無税
- 実際の取得金額が1億6000万円、または法定相続分以下なら相続税はゼロ
- 実際の取得金額が1億6000万円、及び法定相続分以上の場合は差額部分に対して相続税が発生
相続税の申告方法と期限
基礎控除を超える遺産があり、相続税が課税される場合には、相続税の申告と納税をする必要があります。相続税の申告の際には、相続税申告書を作成して税務署に提出します。
相続税の申告及び納付の期限は相続開始後10カ月以内とされており、これを超えると税務署から申告と納税の督促が来るので気をつけましょう。
相続税の申告期限:相続開始の日から10ヶ月以内(原則)
新型コロナウィルス感染症の影響に伴い、4/14付けで国税庁から「相続税の申告・納付期限に係る個別指定による期限延長手続きに関するFAQ」が更新されました。
相続開始後10カ月以内に納税をしないと、延滞税が課税されて、最終的には相続人自身の財産が差し押さえられてしまうこともあるので、そのようなことのないよう十分に注意が必要です。
相続税の計算方法も、素人にはわかりにくいこともあります。
相続税の申告と納税のことでわからないことがあれば、税理士に相談してみると良いでしょう。
税理士には、相続税申告の手続きを全面的に任せることも可能です。
相続税が払えないときの対処法
相続税がかかる場合、支払えないケースがあります。
相続税は現金によって納付するので、遺産内容が現金や預貯金ならあまり問題になりません。
これに対し、不動産をたくさん相続した場合には、財産評価額は高くても手元に相続税の支払い資金がない、ということが起こります。
不動産を売却して現金化すれば良いのですが、相続した土地を守りたいという思いから不動産は売却できず、かといってお金はない、というジレンマに陥る人もいるでしょう。
また、不動産は急に売ろうとしても売れるものではなく、現金化そのものが難しいケースもあります。
延納
このように、相続税を支払えない場合には、相続税の延納や物納という方法をとることができます。
延納とは、相続税を分割払いで支払う方法です。延納をする場合には、延納期間中に利子税という税金が課税されるので総支払額は増えますし、延納が認められるためには担保も必要になります。
物納
相続税を支払えない場合に利用できる手続きとしては、物納もあります。
物納とは、不動産などの物をもって相続税の支払いに充てる方法です。
物納を利用できるのは、延納を利用してもなお相続税の支払いが困難なケースです。
また、物納する場合、納税に宛てる不動産などの財産は、相続税評価額になってしまいます。
不動産は、相続税評価額よりも実勢価格の方が高くなることが普通なので、物納すると同じ土地を処分したにもかかわらず、売却して現金を納めるより評価が低くなることが多いです。
そのため、自分で売却し現金で相続税を納められるなら、そのように手続きした方が結果的に得になることが多いでしょう。
遺産相続でトラブルを避ける方法
遺産相続はもめやすく、相続人同士のトラブルは非常によく発生します。
特にトラブルにつながりやすいのは、相続財産に不動産が含まれる場合や被相続人に隠し子がいる場合です。
遺産相続はお金が絡むため、財産の分割方法や思わぬ相続人の登場などで相続内容に納得できず、もめてしまうことが多いのです。
こういった相続トラブルを避けるためには、被相続人が生前から準備をしておくことが大切です。
以下では相続トラブルを回避するための対処法を紹介していきますので、できる限り事前に対策しておきましょう。
生前から相続人を交えて話し合う
遺産トラブルを避けるためには、被相続人の生前から相続人を交えて遺産の分配方法について話し合っておくことをおすすめします。
たとえば、被相続人が相続人予定者に対し「誰に何をあげる予定だ」ということを、全員の相続人がいる場所で話しておきます。
そうすると、全員が同じことを聞いているので、後になって「僕はその話を聞いていない」「自分が聞いた話と違う」と言ってトラブルになることを防げます。
また、そうやって相続人の共通認識にした内容で遺言書を作成していれば、死後に遺産トラブルになる可能性はほとんどなくなるでしょう。
遺産内容を明らかにする
遺産相続トラブルが起こる原因のひとつとして、遺産の内容が明らかになっていない事が挙げられます。
遺産内容がわからないので、「もっと他にもあるのではないか」などという疑いが発生して、相続人間でもめてしまうのです。
そのトラブルを防ぐためには、被相続人の生前から、遺産内容を明確にしておくことです。
相続人に対して「遺産は〇と〇と〇がある」というように言っておいてもよいですし、遺産目録を作成して相続人らに示しておくのも良いでしょう。
遺言書を作成する際にもその目録通りの内容になっていれば、相続人が「もっと他に遺産があるはず」と言い出してトラブルになることもありません。
相続人を隠さない
被相続人の死後、実は被相続人に前妻との子どもがいたり、認知している子どもや養子縁組している子どもがいたりする場合、今の家族は「隠し子がいた」というだけでもかなりのショックを受けますが、それに足してなおかつその隠し子にも遺産を分け与えないといけないということになるので、精神的なダメージが大きくなり、到底冷静に遺産分割協議を進めることなどできなくなります。
そこで、被相続人に、今の家族に言っていない子どもがいる場合には、その事実を生前から今の家族に言っておくべきです。
生前に本人から告げられていれば、死後の遺産分割にもある程度冷静に臨むことができるものです。
また、隠し子がいる場合に今の家族にダメージを与えないためには、今の家族に多くの遺産を取得させる内容の遺言書を書いておくことが効果的です。
遺言をする
相続トラブルを防ぐ有効な方法として、遺言があります。
たとえば、遺産内容に不動産があって相続トラブルが予測されるケースでも、遺言によって誰に相続させるかが決まっていたら、トラブルを防ぐことができます。
また、生前贈与をした相続人の取得分を減らし、寄与分のある相続人の取得分を増やしておけば、死後に相続人らが不満を持って特別受益や寄与分についてのトラブルが起きることも防ぐことができます。
生前贈与をした相続人にも同じように遺産を相続させたい場合には、特別受益の持ち戻し免除をしておけば、特別受益の持ち戻し計算なしにその相続人にも平等に遺産を取得させることができます。
遺言の内容にも注意する
遺言によって遺産相続トラブルを避けたい場合には、遺言の内容にも注意が必要です。
遺言によって、法定相続分の遺留分を侵害してしまったら、遺留分減殺請求が起こってかえってトラブル原因になってしまうことがあるからです。
遺言をする場合には、法定相続人の遺留分にも配慮しながら、各相続人の遺留分を侵害しない程度にそれぞれの取得分を認めておくことが大切です。
自分では適切な取得分がわからない場合には、専門家に相談してみると良いでしょう。
以上のように、遺産トラブルを避ける方法はいろいろありますので、今後相続対策をしようと考えている方は、参考にしてみてください。
相続手続き・相続申告を依頼する際の専門家の選び方
相続手続きや相続税申告はやるべきことが多く専門知識が必要になるため、個人で行うのは非常に大変です。
遺言書の取り扱いや遺産分割協議の進め方、不動産の登記方法など専門家にアドバイスをもらわないと対処が難しい手続きも多くあります。
手続きや相談の内容によって依頼すべき専門家の種類が異なるため、アドバイスをもらう場合は各分野に適した専門家を選ぶことが大切です。
今、相続にまつわる問題でお悩みの場合、まずは一度適切な専門家の事務所を訪ねて相談してみることをおすすめします。