相続というのは、財産を引き継げる人の範囲とその取り分の基準が民法で決まっており、これを「法定相続人」、「法定相続分」といいます。これらの関係に該当する人が誰もいない場合もありうるわけですが、そのような時はどういった処理がされるのでしょうか?
相続人が誰もいないケースの具体例
法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)というのは、まず配偶者がいれば必ず配偶者が相続人となり、その他には第1順位が子供、第2順位が父母や祖父母(直系尊属)、第3順位が兄弟姉妹となっています。ただ、これらすべてがいない人もいます。
相続財産管理人を選任する
上記のように相続財産を法的に承継する立場の人がいない、相続人がいるのかどうかがわからないなどで行き場のなくなった相続財産は、「相続財産法人」と呼ばれる財産の集合体にされた上で管理処分されます。相続財産法人を管理する役割をつとめるのが「相続財産管理人」という役割の人です。
債権者に配当する
相続財産管理人の重要な仕事の一つが「債権者や受遺者への配当」です。被相続人に対して貸付をしていたと主張する人がいるかもしれないため、相続財産管理人が選任されるとその管理人は「2カ月を下らない期間を定めてその期間内に請求をするべきこと、および期間内に申出がない時には清算から外されるということを付記して公告をすること」と民法に定められています。
特別縁故者に配当する
債権者に債務を返済し、所定の期間内に相続人として申し出てくる者もいなかった場合は、「特別縁故者への財産分与」という制度が用意されています。特別縁故者とは、「被相続人と生計を同じくしていた者」「被相続人の療養看護に努めた者」「その他被相続人と特別の縁故があった者」といった人であり、遺産の分与を受けることができる場合があるのです。
残った財産が国庫に帰属する
これらの制度を利用してもなおかつ残ってしまう財産があった場合、最終的に国庫に帰属することになります。国庫とは、「財産権の主体としてとらえた場合の国」のことで、さらに簡単に言えば「国が所有する資産」ということです。
相続財産の行先がない場合、すぐに国の物になると考えている人もいるのですが、実際には相続財産管理人の選任から債権者や受遺者への公告を経て相続財産が国庫に帰属するまでに13カ月くらいを要することになります。さまざまな手続きで債権者や利害関係人にかなり手間を取らせることにもなりますので、あらかじめ自分に相続人がいないことがわかっている人は遺言書で親しい人に遺贈する、どこかの団体に寄附するなどの形で財産の行先を決めておくことをおすすめします。