相続財産に不動産がある場合、特に土地に関しては評価額がいくらになるかが気になります。
土地価格が高騰したいわゆるバブルの時期は相続税の納税額も非常に多くなりました。
相続税のことだけを考えれば、土地の評価はできるだけ下がってほしいものです。
ここでは土地の評価を下げることを可能とする「不整形地補正率」について説明します。
不整形地とは
住宅地には道路沿いに家が並んでおり、一見どの家もきれいな長方形に区分された土地の上に家が建っているように思えます。
しかし、実は完全な長方形でなく、多角形になっていたり、四角形でも微妙に歪んでいたりという土地が結構あるのです。
このような土地を不整形地といいます。
道路に面しているところを一辺とした時にきれいな長方形(あるいは正方形)になる土地が整形地です。
不整形地だと評価が低くなる?
不整形地は整形地に比べ、利用価値が低いとされ、その分土地としての評価が下がります。
ちなみに相続税を計算するときの土地の評価は「路線価×面積」で算出します(相続登記の際の登録免許税の計算は固定資産税評価額に基づきますのでご注意下さい)。
路線価は基準となる道路に面している土地がきれいな長方形、すなわち整形地であると仮定した価額なので、不整形地は、その不整形の程度に応じて路線価より評価額を下げることができるのです。
評価をどの程度減じるかの判断に使われるのが「不整形地補正率表」です。
不整形地補正率とは、国税庁が定めたもので、不整地の評価額を算出するときに活用します。
土地の奥行距離・かげ地の割合を計算して、該当する補正率を算出します。
自分の土地に対応する補正率が分かれば、土地の評価額に補正率をかけて、最終的な土地の値段を確定させます。
補正率の算出・評価額の確定は非常に難しいため、プロである税理士への依頼がおすすめです。
不整形地の評価方法
国税庁によると、不整形地の価額の計算方法は4つあります。
- (1)不整形地を区分して求めた整形地を基として計算する方法
- (2)不整形地の地積を間口距離で除して算出した計算上の奥行距離を基として求めた整形地により計算する方法
- (3)不整形地に近似する整形地(以下「近似整形地」という。)を求め、その設定した近似整形地を基として計算する方法
- (4)近似整形地を求め、隣接する整形地と合わせて全体の整形地の価額の計算をしてから、隣接する整形地の価額を差し引いた価額を基として計算する方法
参考:国税庁 「https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/hyoka_new/02/03.htm#a-20」
言葉だけだとなかなか分かりづらいですが、(1)から(4)までのそれぞれの方法で計算し、一番評価額が下がる方法を採れば良いのです。
※国税庁のホームページに載っている(1)の例です。
凹型の土地は不整形地ですが、図のように縦3区分に分けるとそれぞれは整形地になります。
不整形地補正率の求め方
不整形地補正率を調べる2つのポイントは「地積区分」と「かげ地割合」です。
①地積区分
地積区分とは、対象土地がどのような場所にあるか、また対象土地の面積がどれほどかという2つの地区区分によって導き出されるA、B、Cの3段階評価のことです。
たとえば「普通住宅地区」であれば面積が500平方メートル未満はA、500から750平方メートル未満はB、それ以上はCとされます。
②かげ地割合
かげ地というのは聞きなれない言葉です。
同じく国税庁のホームページが上記(2)の例で挙げている図で説明します。
上部の道路に面しているかなりいびつな形の不整形地が実線で表されている部分です。
この土地を全て囲むことができる最小面積の、道路に対して垂直の長方形を設定します。
点線で表されている部分ですが、これを想定整形地といいます。
想定整形地のうち、実線の不整形地以外の部分をかげ地といいます。
そしてかげ地割合は想定整形地面積の中でかげ地面積が占める割合のことです。
計算式は下のようになります。
(想定整形地の面積-不整形地の面積)÷想定整形地の面積=かげ地割合
かげ地割合を土地評価の調整率表に当てはめて評価額を算定します。
土地補正率の計算方法の具体例
上記(2)の図に具体的な数値を当てはめて土地評価額を計算してみましょう。
仮に、
不整形地(実際の土地)の面積…400平方メートル
不整形地が道路に面している長さ(間口)…20メートル
想定整形地の短辺(道路と垂直の辺)…22メートル
普通住宅地内の土地
路線価…20万円
とします。
第一段階として、まず奥行価格補正率を計算します。
図の土地の奥行で一番長いところを計ると22メートルになりますが、奥行が短い部分もあるのである程度バランスを考えるため、計算上の奥行距離を算出します。
計算式は、不整形地の面積÷間口距離です。
当てはめると400÷20=20となり、計算上の奥行距離は20メートルとなります。
計算上の奥行距離と実際の奥行距離が違う場合はより短い方に合わせます。
図の場合はそのまま20メートルが計算上の奥行距離です。
これを「奥行価格補正率表」に当てはめます。
奥行価格補正率表は国税庁ホームページに載っています。
参考:国税庁 「不整形地補正率表(平成30年分以降用)」
表によれば、普通住宅で計算上の奥行が20メートルの場合の奥行補正率は1.00となります。
これで図の土地を整形地であるとした場合の価額を計算できます。
計算式は、路線価×奥行補正率です。
つまり20万円×1.00=20万円が1平方メートルあたりの額となります。
出た面積を地積区分表に当てはめます。
普通住宅地区の500平方メートル未満ですから区分はAです。
(上記リンクに地質区分表も載っています)
次にかげ地割合を計算します。
先ほど示した計算式に当てはめます。
(600平方メートル-400平方メートル)÷600平方メートル≒33.3%がかげ地割合です。
普通住宅地区、地質区分A、かげ地割合33,3%を、不整形地補正率表(上記リンクにあります)で見てみると、「0.9」となっています。
最後に、整形地であるとして計算した1平方メートルあたりの価額に不整形地の土地面積をかけ、不整形地補正率である0.9をかけた額が本例の土地評価額です。
20万円×400平方メートル×0.9=7,200万円
土地の相続で悩んだら税理士に相談しよう
土地の相続で悩んでいるなら、税理士への相談がおすすめです。
下記では、税理士に相談するメリットを紹介します。
適切な評価額を算出できる
不整形地の適切な評価額を算出するのは難しいです。
まず土地の評価額を算出する方法は複数あり、どの方法がもっとも適切なのか判断しなければいけません。
さらに土地の評価額を算出するには、算出方法に合わせて補正率も計算して、最終的な評価額を確定させます。
専門的な知識が必要になるため、知識のない人が独断で進めてしまうと、間違った評価額を出してしまうかもしれません。
そこで税理士に依頼すれば、土地を見て適切な方法で評価額を算出してくれます。
不整形地の相続を経験したことのある税理士であれば、評価額の算出・相続の手続きなどを任せられます。
評価額の算出で分からないことがあれば、プロである税理士への依頼がおすすめです。
特例を活用して相続税を抑えられる
税理士に依頼すると、土地の評価だけでなく、相続税の対策もしてくれます。
相続では、控除金額を増やして節税に繋がるような「特例」という仕組みがあります。
特例をうまく活用することで、大きな節税効果も期待できます。
ただし特例は適用するための条件が複雑だったり、そもそも特例の存在を知らないと活用できません。
相続に慣れている税理士であれば、相続の状況を見て、活用できそうな特例を教えてくれます。
相続で余計な税金を支払わないためにも、税理士への相談はおすすめです。
スムーズな手続きができる
相続では相続開始から10ヶ月が手続きの期限となっています。
相続が発生したら、相続人を確定させて、財産の分配を決めて、手続きをしなければいけません。
葬儀などの手配も同時並行で行うため、相続人は非常に忙しくなります。
さらに相続で特例を活用する場合は、税務署に対して別途申告が必要になり、手間もかかります。
そこで税理士に依頼すれば、手続きをスムーズに進めるためのアドバイスをもらえます。
自分たちだけで手続きを進めてしまいミスをするぐらいなら、税理士へ相談した方がいいでしょう。
おわりに
このように、不整形地については評価額を下げることで相続税を少なくすることが可能です。
不整形地はその土地の形状により、上記よりさらに評価額を下げる計算方法を採ることができる場合もあります。
まず相続人側に土地補正率に対する知識がないと、相続人だけで税金の処理をする場合に本来節約できる額まで納めることになりかねないので、注意が必要です。
分からない場合は専門家へ相談しましょう。