生前贈与の基礎知識 知らないと損する8のポイント

生前贈与は相続税の節税対策に非常に有効な方法です。

生前贈与の制度を利用すれば、非常に大きな金額の節税ができる可能性があります。

効果の高い対策である反面、注意点も多くあります。

せっかく相続対策として生前贈与をおこなったのに、のちの税務調査で否認され追徴課税となっては元も子ありません。

生前贈与の制度についてしっかりと理解をして実行することが重要です。

生前贈与とはただの贈与

実は、法律用語として生前贈与という言葉はありません。

そもそも贈与を行う際には、お互いの合意が必要です。

なので、両者とも当然に生きていることが必要です。

この意味では、すべての贈与は生前に行うことになります。

では、生前贈与とはどのような贈与を示すのでしょうか。

生前贈与とは、相続の発生を考えて計画の一部として、生きているうちに贈与を行うことです。

遺贈および死因贈与とは

生前贈与を理解するためには遺贈と死因贈与についても知っておく必要があります。

遺贈とは、生前贈与の反対で死後の贈与のことを言います。

被相続人が亡くなったあとに、遺言によって指定した人に財産を贈与することです。

死因贈与とは、被相続人の死亡を契機として相手に財産を贈与することを言います。

両者の違いは、相手の了承を得ているのかどうかです。

遺贈については、一方的に遺言にて特定の誰かに贈与することを指定するのに対して、死因贈与は相手と死を契機として贈与することについて、お互いに生前に合意する必要があります。

3年以内の加算ルールに注意

相続税と贈与税は非常に近い関係にありますので、相続税対策として贈与を組み合わせることはよくあります。

それでも、あまりに贈与の時点と相続の時点が近い場合には強制的に調整計算をすることとなってしまいます。

具体的には、亡くなる3年以内に行った贈与については、該当する財産について相続税の計算に含めて計算する必要があります。

このため、亡くなる直前に急に生前贈与により節税を行いたいと思い立っても難しい場合があります。

生前贈与のメリット

節税効果が期待できる

生前贈与のメリットの一つに節税効果があります。

相続により引き継ぐことが予定されている財産について一部を生前贈与することによって、相続税額が減少する可能性があります。

非課税枠を利用し、暦年課税や累進課税の特徴を考慮して計画的に生前贈与を行うことによって節税効果が期待できます。

非課税枠の利用

相続と贈与の違いは、生きている間に財産を渡すか、それとも亡くなった後に渡すかの違いです。

すべての財産を相続のときに渡した場合には当然、相続税の計算の対象となります。

これに対して、一定の要件のもとで、亡くなる前に財産を贈与することによって相続税の計算の対象から外すことができます。

相続税の税率と贈与税の税率はどちらも非常に高い税率が設定されています。

生前に相続する予定の財産を一部贈与することによって、贈与税の計算対象となった場合には贈与税の非課税枠が利用できます。

したがって、結果として相続した場合には利用できない非課税枠を利用できるということになります。

生前贈与が節税対策になる理由の一つがこの非課税枠の利用です。

自分の意思が反映しやすい

法定相続人の権利として、遺留分減殺請求権が認められています。

たとえば、被相続人がすべての財産を愛人に相続させたいといっても、親族には一定割合の財産を請求する権利が与えられているのです。

この権利が認められているのは、配偶者やその子などになります。

残された家族には、被相続人が亡くなったあとも引き続き生活を続けていく必要があり、この点が保護されています。

これに対して、生前贈与であれば本人の自由に贈与をすることができます。

すべての財産を他人に贈与することも可能です。

そもそも、本人が生きているうちに自分の意志で贈与するので、基本的に配偶者や子どもに止める権利はありません。

遺留分減債請求権は、たとえ関係の悪化した身内にも認められている権利です。

このようなときには、自分の財産を一切相続させたくないと思う気持ちも理解できます。

法定相続人は、相続が発生した場合には一定割合について財産を引き継ぐ権利がありますが、生前贈与によってすべての財産を特定の人に渡してしまい自分の意思を反映することも可能です。

このように、自分の意思を自由に反映することができるのが生前贈与の特徴です。

遺産相続でのトラブルを未然に防ぐことができる

遺産相続により財産を引き継ぐ場合は、本人の意思を遺言などで示すことになります。

しかし、実際の協議については本人不在での話し合いになります。

このため、遺産分割の内容についてトラブルになる可能性があります。

しかも、その内容が相続人の遺留分を侵害する内容であればなおさらです。

このような内容の相続を希望する場合、また、確実に自分の意思を反映させて遺産を引き継ぎたいときに生前贈与の方法は有効です。

本人が生前に贈与する分には特に内容の制約は受けません。

生前贈与のやり方

ポイント1 契約は書面で

基本的に契約は口頭でも成立するものです。

贈与した人が亡くなった後では、契約を立証することが困難になる場合がありますので、生前贈与を行う際には書面によることが必須です。

たとえば、生前に贈与税の非課税の枠内で一部現金を贈与したような場合、生前贈与の有無によって相続税の金額が変動することになります。

税務調査になった場合、当然に生前の贈与契約の存在について質問されることとなります。

このような場合に備えて、贈与契約は書面により残しておくことをお勧めします。

さらに心配な場合には、公証役場を利用して確定日付の押印をもらうことも検討してもよいかもしれません。

相続については、お金をめぐって身内同士でトラブルに発展しがちです。

トラブル防止の対策はやりすぎるくらいがちょうどよいのかもしれません。

また、贈与するものが不動産の場合には、合わせて登記も必要です。

登記がなくとも所有権は移るとされていますが、第3者への対抗手段として登記は非常に重要です。

トラブル防止の観点から登記を必ず入れるようにしてください。

ポイント2 計算期間は暦年

贈与税の計算の特徴に、計算期間は暦年であるという点があります。

暦年とは、1月1日を起算日として1年を数えて計算を区切るということです。

たとえば、事情によりある財産を12月に贈与して、その翌月の1月に別の財産を贈与した場合には、それぞれ別の計算期間に含まれることとなります。

贈与税の計算には、基礎控除があります。

これは、計算期間ごと、つまり毎年認められる控除になります。

したがって、上記の取引の場合、110万円の基礎控除を2回使用できることになります。

また、贈与税の税額の計算については累進課税の方式が採用されています。

累進課税制度とは金額の高い人ほど高い税率で課税されるしくみのことを言います。

上記の例の場合、2件の贈与が合算されて贈与税が課税された場合に比較して、それぞれの贈与ごとに累進課税の仕組みにより課税されると金額が大きく減少します。

これら暦年課税と累進課税の仕組みを上手に利用して税額を圧縮しましょう。

ポイント3 形式的な贈与ではダメ

将来に備えて親から子に現金を贈与するケースもあると思います。

このようなときに、子の知らない間に預金通帳を作成して現金を移動しておく、というような方法をとることがあります。

このような取引は、贈与として認められない可能性があるので注意が必要です。

贈与も契約の一つですので、お互いの合意が必要です。

一方が、財産を渡したいと申し出てもそれをもらう側が承知しなければ取引は成立しません。

この意味においては、本人の知らない間に勝手に本人名義の預金口座に入金する方法にはリスクがあります。

また、形式な贈与の一つに、本人が知らない場合のほかに、自由に財産を使用できる状態になっていないということがあります。

現金を贈与する契約を取り交わしたとしても、実際にその現金が引き渡されない限り贈与契約は成立しないことになります。

ポイント4 連年贈与を避ける

ポイント2で暦年課税の利用を解説しました。

暦年課税の仕組みを利用して、基礎控除等を毎年使用して、さらに累進課税の仕組みにより適用される税率も低くするということです。

ただし、これには注意すべきことがあります。

それは、連年贈与に該当しないようにするということです。

連年贈与とは、あらかじめ取引の全貌や贈与を行う合計額が決まっている場合において、贈与税額を不当に圧縮するために、複数年度にまたがって取引を行うことです。

ただし、連年贈与かどうかを判定するには非常に難しい問題があります。

例えば、結果としてたまたま同じ金額の現金が連続して贈与されたとしても、それが当初からの予定された契約であるのか、それとも、随時発生した契約になるのかは判断が難しいからです。

ポイント5 相続時精算課税制度も検討する

生前贈与を検討する際には、相続時精算課税制度も合わせて検討する必要があります。

相続時精算課税制度とは、相続発生を待たずして先に財産を贈与することができる制度です。

この制度を利用することによって節税できる可能性があります。

この制度を利用すれば、2,500万円までの贈与について贈与税を払う必要がありません。

贈与する人の年齢等の一定の要件がありますが、非常に有効な制度です。

ただし、贈与税が免除されるわけではありません。

贈与されるときにはいったん税金を保留しておいて、相続時にこの分の税金を合わせて計算することになります。

具体的には、相続財産に対象の財産を加算して相続税を計算します。

つまり、親から子へと相続財産の先払いを認める制度ということです。

基本的には納税のタイミングが変わるだけで、税額に変動はありません。

ただし、この制度の特徴は贈与したタイミングでの財産の評価金額によって税金を計算することになるので、財産の価格が変動するような場合には節税対策となる場合があります。

たとえば、土地の時価が毎年上昇するような場合には、贈与時の時価で相続税額を計算することになるので、相続の場合と比較して時価の上昇分だけ相続税を節税することができます。

また、相続財産の金額がそもそも基礎控除の範囲内である場合のように、相続税の納税がそもそも予定されてない場合については有効に利用できる可能性が高いです。

また、詳細はポイント6で説明しますが、贈与された財産が毎年多額の収益を生み出すような場合は、非常に有効な方法です。

不動産を相続時精算課税により贈与するか、相続して相続税を支払うか検討するときに、一つの問題があります。

意外に見落としがちなのが不動産取得税についてです。

不動産を相続により取得した場合には不動産取得税について非課税とされています。

ところが、贈与により取得した場合には免除の規定はありませんので、通常通り課税されます。

不動産に関する取引は金額が大きくなりがちです。

当然、不動産取得税についても比例して大きくなります。

たとえば固定資産評価額2,000万円の不動産を贈与した場合には不動産取得税が6万円ほどかかります。

生前贈与による納税の圧縮額が比較的小さい場合には、不動産取得税のようなその他の公租公課により簡単に有利不利が逆転してしまう可能性があります。

このように、判断を誤ると思う通りの効果が得られない可能性があります。

相続税の対策を検討する際には、幅広い視点で総合的に判断する必要があります。

ポイント6 賃貸物件を贈与するときは特に慎重に検討する

賃貸物件を相続により引き継ぐ予定の場合は、特に慎重な検討が必要です。

生前贈与を行うと、場合によっては非常に有効な節税対策となる可能性があります。

賃貸物件を贈与または相続する場合の評価は、その時の物件自体の評価額によります。

基本的にその物件から得られる将来の収益について加算することはありません。

賃貸物件から得られる収益についてはその時の所有者に帰属します。

たとえば、毎年100万円の収益を生み出す物件を10年後に相続した場合、10年間の利益の合計収益1,000万円も合わせて相続財産になります。

これに対して、生前贈与や相続時精算課税制度を利用して、相続財産の「前借り」を行った場合、その時点から発生した収益は当然に贈与を受けた人に帰属します。

つまり、10年後に相続する場合に含まれる1,000万円の将来の利益部分について自動的に無税で引き継ぎ完了となるのです。

ただし、10年間の不動産の時価の変動や収益の状況によっては必ずしも有利になるとはかぎらないので、この点についても慎重に検討する必要があります。

ポイント7 非課税枠を有効活用

生前贈与により贈与税を計算する場合に利用できる非課税枠については、これを行わない場合には当然に消滅します。

せっかくなら、有効に贈与税の非課税枠を有効活用して税金を節約しましょう。

贈与税の非課税枠としては次のようなものがあります。

特に知られているものが、生活費や教育費の贈与です。

子や孫の学費を負担する場合には、条件を満たせば非課税となります。

特に教育費は必ず発生する費用で、しかも高額な項目です。

親が亡くなって、現金を相続により受け取り相続税を負担後、そのなかから子供の教育費を支出する場合と、孫の教育資金として生前に贈与することは全く税負担が異なります。

また、金額としてはあまり大きなものではないので節税効果もそれなりですが、社会通念上相当な範囲の香典や見舞金も非課税とされています。

結婚式の祝儀や香典は無税で贈与することができます。

ポイント8 相続税と組み合わせて活用する

生前贈与を検討する際には、相続税と組み合わせての計画が必須です。

生前贈与のみを利用する場合や、反対に相続によってのみ財産を引き継ぐ場合に比べて、両者を組み合わせて活用した場合には合計での納税額が安くなる可能性があります。

ただし、相続開始3年前の贈与についての加算ルールなど、計画を誤ると思わぬ結果となる場合もあります、また、相続時精算課税についても相続財産の時価の変動の見込みを誤った場合など、場合によっては結果として税負担が増加してしまうことも考えられます。

まとめ

生前贈与はしっかりと計画的に活用できれば、非常に有効な節税対策になります。

相続税の金額を圧縮できるだけにとどまらず、本人の意向を確実に反映させる手段として利用することもできます。

また、残された親族や関係者のトラブルを未然に防ぐこともできます。

相続は誰にでも訪れる問題です。

実際に相続が発生してからでは、取れる対策は限られています。

将来の相続に備えて、今から生前贈与を含めた相続対策を検討することは非常に重要なことです。