この記事でわかること
- 相続税の修正申告とは何か
- 相続税の修正申告と更正の請求の違い
- 相続税の修正申告の流れ
相続税の申告をした場合、5件に1件の割合で税務調査が入るといわれています。
そして税務調査が入ったうちの80%は、相続税の申告に誤りが見つかり、追加の税金を請求されています。
また、税務調査で誤りが指摘されて修正申告を行った場合、ペナルティーとして加算税や延滞税が課されてしまうため注意が必要です。
相続税の修正申告には、上記のように税務調査で指摘されるケースと、提出後に相続税を少なく申告してしまったことに気づいて自ら修正するケースがあります。
この記事では、相続税の修正申告が必要になるケースや、その厳しいペナルティーについて解説します。
目次
相続税の修正申告とは
修正申告とは、税務署に申告書を提出した後に申告内容の誤りに気づき、その誤りを訂正するために行う申告のことです。
修正申告と似た手続きに「更正の請求」がありますが、両者には次のような違いがあります。
- 修正申告:納税額を過少に申告していた場合に行う
- 更正の請求:納税額を過大に申告していた場合に行う
修正申告を行う場合、追加で納税を求められます。
一方、更正の請求を行う場合は、過払い分の還付が受けられます。
修正申告
すでに申告している税額が実際より少なすぎた場合に行うのが、修正申告です。
修正申告の必要性に気づくパターンとして、以下の2つがあげられます。
- 自分で誤りに気づくパターン
- 税務調査が入る前に自分で誤りに気づいて修正した場合、過少申告加算税の課税はなく、延滞税のみの負担となります。
- 税務調査で誤りに気づくパターン
- 税務調査が入ったときに誤りが発覚して修正した場合は、延滞税に加えて過少申告加算税が課されます。
過少申告加算税とは、期限内に申告した納税額が実際より少なかった場合に課せられる税金です。
過少申告加算税は、本来支払うべきだった税額をもとに計算されます。税率は5~15%です。
隠ぺいまたは仮装といった不正な手口で相続税を逃れていた場合には、過少申告加算税に代えて重加算税が課されることもあります。重加算税の税率は35~40%です。
更正の請求
更正の請求は、申告時に多く納めすぎた税金を正しい額に訂正するための請求です。
更正の請求を行うことで、本来納付すべき税額と実際に支払った金額との差額分の還付が受けられます。
更正の請求ができる期間は、相続税の申告期限から5年以内です。
つまり、相続発生の翌日から5年10カ月以内であれば、更正の請求ができることになります。
相続税の修正申告が必要となる3つのケース
以下に該当するような場合には、相続税の修正申告が必要になります。
財産評価や税額計算に誤りがあった場合
相続税の計算は非常に複雑です。
相続人が複数いる場合には、相続に関する民法の規定も理解していないと正確な税額の計算はできません。
税金に詳しくない人が自ら相続税の申告を行った場合、税務署が申告の誤りを発見し、税務調査を行う確率が高くなります。
財産評価は難しい
相続税を計算する際にまず行うのは、遺産の相続税評価額の算定です。
すべての遺産が現金や預金で構成されていれば、財産評価は難しくありません。
一方、遺産のなかに不動産や株式、美術品などが含まれている場合、その評価には専門知識が必要です。
通常、相続財産の評価は、国税庁の「財産評価基本通達」に定められた方法で行います。
あとから遺産が見つかった場合
相続税の申告後に、相続人が気づかなかった財産が発見されることもあります。
この場合は修正申告をして、追加の税額を納めなければなりません。
あとから財産が見つかったことによる修正申告の場合、悪質と見なされることはありません。速やかに修正申告を行えば、不足分の追加納付と延滞税の納付だけで済みます。
申告期限内に遺産が未分割の場合
遺産分割協議に時間がかかり、相続税の申告期限が近づいてきても遺産分割が終了しそうにないケースもあります。
この場合は一度、未分割の状態で申告期限内に申告します。申告書には、法定相続分で相続したと仮定した額を記載します。
そして後日、遺産分割がまとまったときに修正申告または更正の請求を行うことが多いです。
未分割で申告する場合で、かつ後日分割が決まったときに「小規模宅地等の特例」や「配偶者の税額軽減」などを適用したい場合には、申告書に「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付します。
この手続きを経ていれば、遺産分割完了後に速やかに修正申告を行うことで特例の適用が可能です。
特例が適用できると、未分割で当初申告した額よりも納めるべき税金が少なくなることがあります。その場合、更正の請求をすることになります。
相続税の修正申告の期限
修正申告の申告期限は定められていませんが、税務署からの更正決定がなされる可能性がある期間は相続税の申告期限の翌日から5年(悪質な場合7年)です。
裏を返せば間違いを発見した場合、申告期限から5年以内であれば修正申告書を出した方がよいということになります。
払い過ぎた税額がある場合、申告期限から5年の間であれば更正の請求をすることができ、還付を受けることができますが、これ以降はできなくなります。
また、5年を経過した後でも税務署から指摘を受けた場合、指摘を受けた財産についての申告と納税は必要です。
相続税の申告期限内に再申告した場合、修正申告とはならない
相続税の申告期限は、被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10カ月です。
期限内に申告を修正したい場合、新しく提出したほうを正しい申告書として扱ってもらえるため修正申告にはあたりません。
申告期限後に誤りに気づいた場合、修正申告を行うことになります。
時期 | 対応 |
---|---|
期限内 | 正しい税額を計算した申告書を期限内に再提出する |
期限後 | 相続税の修正申告を行う |
相続税の修正申告の方法
相続税の申告後に納税額の誤りに気づいたら、速やかに修正申告の手続きが必要です。ここからは、相続税の修正申告の流れを見ていきましょう。
必要書類の準備
相続税の修正申告を行う場合は、主に以下の書類が必要となります。
- 相続税の修正申告書(第1表、第15表)
- その他の計算明細等
- 納付書
- 本人確認書類
修正申告書は、国税庁のWebサイトからダウンロードすることができるほか、税務署の窓口でも入手可能です。
その他の計算明細等には、配偶者の税額軽減額の計算書などの書類が該当します。
これらも国税庁のWebサイトや税務署の窓口で入手できます。
修正申告書の作成
修正申告を行う場合、修正内容を踏まえ、もう一度相続税額を計算します。
そして、当初の申告で計算された相続税額との差額を求め、修正申告書に記載します。
当初の申告内容を正しく把握していないと、修正申告書の作成は難しいでしょう。
なお、修正申告には2つのパターン(自主的に行う場合と税務調査の後に行う場合)がありますが、いずれも修正申告書の作成方法に違いはありません。
不足分の税額を納付
修正申告書を作成したら、不足分の税額を納付書に記載し、金融機関や税務署で納付します。
相続税の納付書には相続人と被相続人の両方の氏名や住所を記載しますが、修正申告書の場合も同様です。
また、修正申告を行うと延滞税や過少申告加算税が発生することがあります。
これらの税金は納付状況を確認した税務署が計算し、のちに納税者に納付書が送付されます。
まずは不足分の税額を確実に納付するようにしましょう。
税務署に修正申告書を提出
修正申告書の提出方法は、以下の2種類です。
- 書面を税務署に直接持参または郵送
- 電子申告
修正申告の場合に課される4つのペナルティー
修正申告を行った場合に課されるペナルティーは、以下の4つです。
- 過少申告加算税
- 延滞税
- 重加算税
- 刑事罰
下記の動画は、相続税の申告期限を過ぎた場合についての解説動画になります。修正申告にも触れているため、ぜひ参考にしてください。
過少申告加算税
過少申告加算税は、当初申告した税額が本来納付すべき税額より少なかったときに課されます。税率は、以下のとおりです。
- 税務調査の事前通知後から調査を受けるまでに修正申告した場合、追加納付額の5%
(期限内の申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は10%) - 税務調査を受けた後に修正申告した場合、追加納付額の10%
(期限内の申告税額と50万円のいずれか多い金額を超える部分は15%)
税務調査の事前通知が来る前に自主的に修正申告を行えば、過少申告加算税は課されません。
延滞税
延滞税は、納税が遅れたときに課される税金です。
申告期限の翌日から修正申告するまでの間と、修正申告書の提出日から修正申告に係る納税までの間に延滞税は発生します。
- 法定納付期限の翌日から2カ月を経過する日まで、7.3%と延滞税特例基準割合+1%のいずれか低い割合
- 法定納付期限の翌日から2カ月を経過した日以後、14.6%と延滞税特例基準割合+7.3%のいずれか低い割合
修正申告の法定納付期限は修正申告書の提出日であり、修正申告書と同時に追加税額を納めた場合には延滞税は課されません。
また、延滞税には「延滞税の計算期間の特例」という特例があります。詳しくは関連記事をご確認ください。
重加算税
悪意や詐欺、隠ぺいなどによって納税額を過少申告した場合、過少申告加算税に代えて重加算税が課税されます。
この場合の重加算税の税率は、追加で納付すべき税額の35%です。意図的な過少申告には重い罰則が科されます。
刑事罰
過少申告加算税、延滞税、重加算税は経済的なペナルティーです。
しかし、税額を過少に申告したことが不正行為による悪質な脱税と認定された場合には、刑事罰を科される可能性があります。
実際に、父の遺産を隠して相続税を約9,000万円脱税したとして、被相続人の子に、相続税法違反で懲役1年6カ月、執行猶予3年の刑が科された事例もありました。
不正行為による脱税には、5年以下の懲役もしくは500万円以下の罰金(支払うべき税額が500万円以上の場合は、500万円以上となる場合がある)またはその両方が科されることもあります。
相続税の修正申告で迷ったら税理士に相談しよう
相続税の申告は、法人税や所得税と比べて少々特殊であるといえます。
相続は人生でそう何度も経験することではありません。相続税の申告は、相続を専門に扱う税理士に依頼するのが得策です。
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