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最終更新日:2021/11/4

不動産の基礎控除額・評価額の計算方法|相続で損をしないための対策方法も解説

桑原 弾 (税理士・元国税調査官)

この記事の執筆者 元国税調査官・税理士 桑原弾

ベンチャーサポート相続税理士法人/社員税理士

大卒後、大阪国税局に採用。国税専門官として税務調査に従事した後、税理士としても10年を超えるキャリアを積み、現在は「相続に精通した税理士としての知識」と「元税務調査官としての経験」を両輪として活かした相続税申告を実践中。

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書籍:親子で知っておきたい はじめての相続と遺言

この記事でわかること

  • 不動産の評価額の計算方法について
  • 不動産の基礎控除の計算方法について
  • 不動産に使える節税対策とは?

相続が開始され遺言書や遺産分割協議に従い、相続人それぞれに遺産が分与されます。

しかし、遺産を取得した場合は相続税が課されることもあります。

被相続人が住んでいた土地・家屋、または経営していたマンション等を相続するなら、どんな評価額になるのでしょう?

実は不動産の立地、使用目的、形状によって評価額が異なってきます。

この評価額を出すのは非常に面倒と言えます。

しかし、後々の相続トラブルを避けるため、正確な遺産総額を出し、納税の有無を把握するのは必要不可欠な作業です。

そこで今回は、不動産評価額の計算、相続税の基礎控除の方法、節税対策やその注意点等を解説していきます。

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不動産の評価額の計算方法

被相続人がのこした現金や預貯金、有価証券などは、確かに相続人にとっては分与しやすい遺産と言えます。

その一方、被相続人の所有していた土地や家屋は、相続人がたくさんいれば分けにくく、立地等の関係で誰も取得したくないという事態が想定されます。

よほどの需要・価値が無ければ、重宝がられることのない不動産資産ではあります。

この不動産資産は相続開始時の状況で評価が左右されます。

つまり、不動産価値が時価で評価されるわけではありません。

また、いろいろな特例も存在し、金融資産を相続するより税金が軽減されるケースもあります。

土地の算定額はこうする

土地の場合、単に所有している面積が広いからその分だけ評価が高くなる、というわけではありません。

土地の評価額は、「路線価方式」または「倍率方式」によって算出します。

なお、相続の場合の土地評価額は、この両方式で算出された金額の8割程度の評価額となる場合が多いです。

こちらでは、どのような基準で土地が評価されるか、評価額の算出方法を解説しましょう。

路線価方式とは?

路線価が定められている地域の土地を評価する方法です。

この路線価とは、道路に面する標準的な宅地の1平方メートル当たりの価額のことです。

土地の相続税評価を求める際、その土地の形・奥行きの長さ・間口の広さ等に応じ評価額を算出します。

なお、間口が小さく狭い、奥行きが長い、宅地が未整形、騒音・日照不足が目立つ等、特殊な宅地ならば補正が行われます。

これらを踏まえ相続の際、土地の評価は「路線価×土地の面積×補正率」で計算します。

具体例をあげて計算してみましょう。

(例)

  • ・路線価:30万円
  • ・面積:350㎡
  • ・補正率:1.0

路線価30万円×面積350㎡×補正率1.0=10,500万円

相続税の土地評価額を80%とすると

10,500万円×80%=8,400万円

評価額は8,400万円となります。

倍率方式とは?

路線価が定められていない地域の土地を評価する方法です。

倍率方式の土地の価額は、土地の固定資産税評価額へ一定の倍率を乗じ計算することで評価します。

なお、この倍率は国税局長が地域ごとに定める形となり、倍率は毎年改定されます。

土地の評価は「固定資産税評価額 × 倍率」で計算します。

具体例をあげて計算してみましょう。

(例)

  • ・固定資産税評価額:2,100万円
  • ・倍率:1.1

固定資産税評価額2,100万円×倍率1.1=2,310万円

相続税の土地評価額を80%とすると

2,310万円×80%=1,848万円

評価額は1,848万円となります。

建物の算定額はこうする

建物の場合も、単に所有している建物が大きいからその分だけ評価も高くなる、というわけではありません。

相続の対象となる建物を、被相続人がどのような目的で活用していたのかで、相続税評価額の計算式はそれぞれ異なります。

こちらでは、「被相続人が利用していたケース」「他人に貸していたケース」「賃貸アパートのケース」に分け、評価額の算出方法を解説しましょう。

被相続人が利用していたケース

被相続人が居住していたり、事業のために使用していたりした家屋が該当します。

こちらの家屋を算定する場合は、「固定資産税評価額×1.0」で計算します。

たとえば、対象家屋が固定資産税評価額2,300万円ならば、相続税評価額も同様に2,300万円となります。

しかし、問題なのは居住や、事業ために使用するつもりで家屋を建築中に、被相続人が亡くなってしまった場合です。

建築中の建物は、固定資産税評価額が定められていないため、どう評価して良いか戸惑うことでしょう。

こちらのケースについては後述します。

他人に貸していたケース

こちらは、他人へ借家として貸していた家屋が該当します。

実際に被相続人本人が居住していたわけではありません。

そのため、被相続人が勝手に利用できない分、相続税評価額は軽減されることになります。

こちらの家屋を算定する場合は、「固定資産税評価額×(1-借家権割合)」で計算します。

この借家権割合は評価額の30%と決められています。

借家権割合を固定資産税評価額から差し引きます。

①前述の例を同じく、対象家屋が固定資産税評価額2,300万円ならば、借家権評価額は次のようになります。

固定資産税評価額2,300万円×0.3=690万円

②次に固定資産税評価額2,300万円から借家権評価額を差し引きます。

固定資産税評価額2,300万円-借家権評価額690万円=1,610万円

相続税評価額は1,610万円となります。

賃貸アパートのケース

賃貸アパート経営をしていた建物が該当します。

こちらの建物を算定する場合は、「固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」で計算します。

なお、賃貸割合とは、賃借人への賃貸料ではなく貸している床面積の割合を指します。

具体例をあげて計算してみましょう。

(例)賃貸アパート

  • ・固定資産税評価額:1億2,600万円
  • ・部屋の床面積合計:400㎡
  • ・貸している部屋の床面積合計:200㎡

①まずは賃貸割合を出します。

貸している部屋の床面積合計÷部屋の床面積合計なので

200㎡÷400㎡=0.5(50%)

②固定資産税評価額1億2,600万円に(1-借家権割合×賃貸割合)をかけます。

1億2,600万円×(1-0.3×0.5)=1億710万円

相続税評価額は1億710万円となります。

建築が終わっていない建物の場合

すでに完成している建物の相続税の評価方法は前述した通りです。

一方、未完成の家屋が遺産となった場合は、「費用現価×70%」という計算式で評価額を算定することになります。

具体例をあげて計算してみましょう。

(例)賃貸アパート

  • ・総工費:6,000万円
  • ・進歩率:40%

①まずは総工費に進歩率をかけて計算します。

総工費6,000万円×進歩率40%=2,400万円

②この2,400万円が費用現価となります。

こちらに70%をかけます。

費用現価2,400万円×70%=1,680万円

まだ未完成の家屋を相続した方が、進歩状況によって、かなり相続税の評価額を下げることはできます。

ただし、進歩率が100%近いと、大幅な節税効果にはならないので注意しましょう。

相続した不動産の基礎控除の計算方法

建物や土地を評価したら、不動産資産(現金、債券等)と合わせてプラスの遺産にカウントされます。

まずはその遺産を債務や葬儀費用、非課税財産を差し引いた後、正味の遺産額から基礎控除額を差し引いた金額(課税遺産相続)に相続税が課せられます。

相続税の基礎控除とは

相続税を軽減するための措置として、どなたでも利用できる控除制度です。

正味の遺産額が基礎控除額以下の場合、相続税が課されることはなく申告も不要となります。

基礎控除額は「3,000万円+600万円 × 法定相続人の数」で計算します。

こちらでは具体例をあげて基礎控除額を算定しましょう。

(例)法定相続人3人

  • ・配偶者(妻)
  • ・子(兄・弟)

3,000万円+600万円 × 3人=4,800万円

基礎控除額は4,800万円となり、この金額以下で正味の遺産額が収まるなら、納税も申告も不要です。

法定相続人とは

法定相続人とは、民法で法定された相続人を指します。

その範囲としては配偶者や血族が該当します。

配偶者は常に法定相続人となりますが、血族で法定相続人となる人は次のような順番で決まります。

  • ・第一順位:被相続人の子、その子の代襲相続人(孫・ひ孫等)
  • ・第二順位:被相続人の直系尊属(父母・祖父母)
  • ・第三順位:被相続人の兄弟姉妹、兄弟姉妹の代襲相続人(甥・姪)

先順位者がそもそもいないか、亡くなっていた場合に次順位者へ法定相続人がまわってきます。

また、先順位者が生存していても相続放棄をした場合、次順位者が法定相続人となります。

法定相続人はたくさんいた方がお得?

前述した計算式をみれば、法定相続人が多ければ多いほど基礎控除で有利となります。

納税の負担や申告の手間を考えるなら、なるべく基礎控除額以内に正味の遺産額を抑えたいものです。

とするなら、被相続人からしてみれば自分の配偶者や子等が、相続税で頭を抱えないよう、法定相続人を増やせば良いと考えれるかもしれません。

この場合には養子縁組を行い、法定相続人を増やすという方法が想定されます。

この方法は有効ではあるものの、養子縁組を何人もの方々と行えば良いというわけではありません。

このようなケースを想定し、法定相続人としてカウントできる養子の数は制限されることになります。

被相続人に実子がいるならば1人まで、実子がいなければ2人まで、法定相続人にカウントできる養子の数は定められています。

相続税の税率はこちら

課税遺産総額を算定したら、どのくらいの相続税が課されるのか計算します。

下表を参考にして下さい(2015年1月1日以後の場合)。

法定相続分に応じた取得金額 税率 控除額
~1,000万円以下 10% 0円
~3,000万円以下 15% 50万円
~5,000万円以下 20% 200万円
~1億円以下 30% 700万円
~2億円以下 40% 1,700万円
~3億円以下 45% 2,700万円
~6億円以下 50% 4,200万円
6億円超~ 55% 7,200万円

被相続人の遺産やそれを引き継ぐ法定相続人の数にもよりますが、取得金額が大きくなればなるほど、相続税も高額化します。

法定相続人の方々は、後述する節税対策をとることも大切です。

一方、被相続人は生前の内に多額の遺産を処分しておくことも考えておきましょう。

たとえば、余裕資金等の金融資産がある場合、そのお金を生命保険の保険料として払い込むことも有効です。

この方法を取れば、ご自分が亡くなった場合に、相続人(遺族)へ死亡保険金が下ります。

こちらには非課税枠が適用され、「500万円×法定相続人の数」から保険金額を差し引けます。

この差し引いて残った金額が遺産額へカウントされます。

つまり、現金・預貯金等で金融資産をそのままのこすより、はるかに節税効果を高めることができるのです。

具体例をあげ計算してみる!

こちらでは具体例をあげ、相続した不動産を含めた遺産総額から相続税を計算してみましょう。

(例)法定相続人3人(配偶者・子2人)

[遺産その1.土地]

  • ・路線価:35万円
  • ・面積:600㎡
  • ・補正率:1.0

[遺産その2.賃貸アパート]

  • ・賃貸アパート:1棟
  • ・固定資産税評価額:7,600万円
  • ・部屋の床面積合計:360㎡
  • ・貸している部屋の床面積合計:180㎡

[遺産その3.被相続人自宅]

  • ・固定資産税評価額:2,300万円

[遺産その4.金融資産]

  • ・現金・預貯金等:総額2,500万円

[負債その他]

  • ・借金:600万円
  • ・葬儀費用:1,200万円

※その他、生命保険契約や非課税財産、相続開始前3年以内の贈与財産いずれも無し。

土地・建物の相続税評価額を計算

まずは[遺産その1]~[遺産その3]までを計算していきましょう。

①[遺産その1.土地]

路線価35万円×面積600㎡×補正率1.0=21,000万円

そのため、相続税評価額ではその80%の1億7,500万円となります。

②[遺産その2.賃貸アパート]

賃貸割合を計算すると

180㎡÷360㎡=0.5(50%)

固定資産税評価額は7,600万円なので

7,600万円×(1-0.3×0.5)=6,460万円

相続税評価額は6,460万円となります。

③[遺産その3.被相続人自宅]

こちらは、2,300万円へ1.0をかけるだけなので、同額の2,300万円となります。

④[遺産その1]+[遺産その2]+[遺産その3]

17,500万円+6,460万円+2,300万円=26,260万円

不動産資産の相続税評価額は2億6,260万円となります。

金融資産を加え、債務等から差し引く

計算した不動産資産へ、更に金融資産分(総額2,500万円)を加えます。

26,260万円+2,500万円=28,760万円

また、借金(600万円)や葬儀費用(1,200万円)がかかっているので

28,760万円-600万円-1,200万円=26,960万円

事例の正味の遺産額は2億6,960万円となります。

正味の遺産額から、基礎控除額を差し引く

基礎控除額は法定相続人が3人なので

3,000万円+600万円 × 3人=4,800万円

差し引くと、

26,960万円-4,800万=22,160万円

2億2,160万円が課税遺産総額となります。

課税遺産総額から、相続税を算定する

課税遺産総額が2億2,160万円とわかったので、まずは法定相続分で相続人で分けます。

すると、

  • ・配偶者:1億1,080万円(法定相続分1/2)
  • ・子1人:5,540万円(法定相続分1/4・1/4)

となります。

それぞれの法定相続分に応じた取得金額へ、前述した相続税の税率を乗じます。

  • ・配偶者の取得金額:11,080万円×40%-1,700万円=2,732万円
  • ・子1人の取得金額:5,540万円×30%-700万円=962万円

3人の相続人の分を合算します。

2,732万円+962万円+962万円=4,656万円

相続税の総額は4,656万円となります。

これを実際の相続割合で分けます。

法定相続分で分けるならば

  • ・配偶者の納める税額:4,656万円×1/2=2,328万円
  • ・子1人の納める税額:4,656万円×1/4=1,164万円

配偶者の納める税額は2,328万円、子1人の納める税額1,164万円となります。

課税遺産総額が多額だと、法定相続人へ課される相続税も1,000万円単位に上ってしまうことがあります。

相続税の納付の際は、それぞれの法定相続人が申告時、その金額を原則として現金で一括納付することになります(ただし、延納制度、物納制度あり)。

なお、配偶者に関しては相続税を軽減する制度が設けられており、その利用で非課税となります。

こちらの相続税軽減制度に関しては後述します。

不動産に使える4つの節税対策とシミュレーション

被相続人の遺産総額が多いと、課される相続税も相続人の生活に影響が出てしまう金額となることはおわかりのことでしょう。

そんな大きな負担となり得る相続税を軽減するため、節税対策に活用できる制度がいろいろと存在します。

ただし、便利な制度であっても利用できる対象者、不動産に関して条件が付されています。

利用したい制度にご自分が該当するか、不動産の面積等は対象外とならないか十分チェックする必要があります。

こちらでは、そんな相続人に頼りとなる相続税の軽減対策を解説しましょう。

配偶者の税額の軽減

こちらは、被相続人の配偶者であれば相続で取得した正味の遺産額が、次の定められた金額までなら非課税となる制度です。

    • ・1億6,000万円

 

    ・法定相続分相当額

この制度は配偶者に対してとても有利な制度であり、1億6,000万円という上限も高く設定されていますが、法定相続分相当額が何十億円に達しても、やはり相続税は0円です。

事例でシミュレーション

前述した例に本制度を当てはめれば次のようになります。

  • ・配偶者の納める税額:4,656万円×1/2=2,328万円→本制度適用0円
  • ・子1人の納める税額:4,656万円×1/4=1,164万円

子達からすれば一見不公平なようにも思えます。

しかし、長年、被相続人と共にその財産を増やしてきた配偶者へ、より有利となる措置を設けることは税の公平性に反するとまで言えないはずです。

本制度の利用方法

ただし、本制度は配偶者であるだけで自動的に軽減措置として機能しません。

活用するには申告が必要です。

税額軽減を受けるための相続税申告時に次の書類が必要です。

  • ・税額軽減の明細を記載した相続税申告書または更正の請求書
  • ・戸籍謄本等
  • ・配偶者の取得財産がわかる書類:遺言書の写しまたは遺産分割協議書の写し
  • ・印鑑証明書:遺産分割協議をした場合

上記の書類を、相続税申告期限(被相続人が死亡したことを知った日の翌日から10か月以内)に、被相続人の住所地を管轄する税務署へ提出します。

なお、ケースによっては税務署から追加の書類を要求されることもあります。

相続税申告期限内の分割が難しい場合

つまり、この制度を利用したいなら、原則として相続税申告前に遺産分割が決まっていなければいけません。

なかなか遺産分割協議が決まらず申告期限も迫ってきたなら、法定相続分で遺産分割して相続税の申告・納税を行いましょう。

その場合は、申告と共に「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署へ提出します。

ようやく協議がまとまったら、遺産分割した翌日から4ヵ月以内に更正の請求をしましょう。

そうすれば納付した税金が戻ってきます。

小規模宅地等の特例

この特例は宅地を相続した際、被相続人の所有で

  • ・居住の用に供されていた土地
  • ・事業の用に供されていた宅地
  • ・不動産貸付業・駐車場業等の貸付事業の用に供されていた宅地

として利用され、適用要件を満せば評価額を5割~8割減額できる制度です。

こちらの制度は宅地がどんな利用のされ方をしていたかで、減額措置が適用される面積、減額割合が異なります。

限度面積と減額割合

次のケースで、本特例が適用される面積・減額割合が異なっていきます。

(1)貸付事業以外の事業用の宅地等

不動産貸付業や駐車場業、自転車駐車場業及び準事業を除いた事業が該当します。

特例が適用される限度面積は400㎡まで、減額割合80%となります。

(2)貸付事業用の宅地等

3つの種類があります。

①一定の法人に貸し付けて、その法人の事業(貸付事業除く)用の宅地等

  • ・特定同族会社事業用宅地等の場合→限度面積400㎡・減額割合80%
  • ・貸付事業用宅地等の場合→限度面積200㎡・減額割合50%

②一定の法人に貸し付けて、その法人の貸付事業用の宅地等→限度面積200㎡・減額割合50%

③被相続人等の貸付事業用の宅地等→限度面積200㎡・減額割合50%

(3)被相続人等の居住の用に供されていた宅地等

いわゆる被相続人が居住するために使っていた宅地を指します。

特例が適用される限度面積は330㎡まで、減額割合80%となります。

事例でシミュレーション

具体例をあげて宅地の相続税評価額を計算してみましょう。

(例)宅地利用:居住用

  • ・面積:310㎡
  • ・相続税の課税価格に算入すべき価額:6,200万円
  • ・減額割合減額割合:80%

限度面積310㎡で、前述の「被相続人等の居住の用に供されていた宅地等」に該当し、減額割合80%の小規模宅地等の特例が適用されるので

6,200万円×(1-0.8)=1,240万円

評価額は1,240万円となります。

本特例の利用方法

こちらも相続税申告期限内に、被相続人の住所地を管轄する税務署へ必要書類を提出します。

必要書類は次の通りです。

  • ・相続税申告書
  • ・小規模宅地等に関係する計算の明細書
  • ・遺産分割協議書の写し
  • ・印鑑証明書 等

なお、ケースによっては税務署から追加の書類を要求されることもあります。

また、前述した「配偶者の税額の軽減」制度と同様、なかなか遺産分割協議が決まらない場合、相続税申告と共に「申告期限後3年以内の分割見込書」を税務署へ提出します。

そうすれば期限を経過しても本特例を利用できます。

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生前贈与を活用する

被相続人自身であまり利用していない土地等があれば、売却する等して現金化するのも良い方法です。

そうすれば、誰も土地・建物を相続したがらず、相続人間で揉めるという事態も避けることができます。

ただし、現金化して残しても、やはり相続税の対象となり得ることは否定できません。

この場合には、不動産の売却で得たお金を生前贈与する方が良いでしょう。

暦年贈与を利用してみる

生前贈与の手軽な方法として「暦年贈与」があげられます。

こちらは、贈与税の基礎控除(110万円以内)の範囲で子等へ贈与をする方法です。

受け取る側が1年間で基礎控除の範囲内に、土地を現金化した分も含めた贈与財産が収まるなら贈与税は課税されません。

毎年110万円以内に収まるよう贈与を繰り返せば、相続税として課税され得る財産も減っていくことになります。

利用には注意点も

税務署へ制度の利用を申告することもなく気軽にできる節税対策ですが、気を付けるべき点もあります。

それは、たとえば毎年110万円を10年間で贈与した場合、最初から1,100万円の贈与をする手筈だったと税務署から指摘される場合もあります。

そうなると最初の年に1,100万円を受け取る権利が贈与されたとされ、課税対象となる場合もあります。

事例でシミュレーション

そのため、贈与をする度に契約書を作成し、目的・金額を明確化して、銀行振込等で贈与したお金の流れを記録した方が良いでしょう。

その上で、次のように暦年贈与を活用します。

(例)11年間にわたり贈与

  • ・土地の売却額:1,200万円
  • ・受贈者:子1人

このように他の贈与分も踏まえ、年間110万円以内で抑える必要があります。

  • ・1年目:土地の売却分70万円+他の贈与分30万円=贈与金額100万円
  • ・2年目:土地の売却分80万円+他の贈与分10万円=贈与金額90万円
  • ・3年目:土地の売却分100万円+他の贈与分0円=贈与金額100万円
  • ・4年目:土地の売却分60万円+他の贈与分45万円=贈与金額105万円
  • ・5~10年目:略
  • ・11年目:土地の売却分90万円+他の贈与分11万円=贈与金額101万円

相続時精算課税制度を活用する

こちらも生前贈与ですが、親から子への資産移転を円滑に行うため導入され、2,500万円の限度額に達するまで何度も控除可能な制度です。

控除しきれなかった金額には一律20%の贈与税が課せられます。

贈与する財産の種類や金額、贈与回数に制限のない便利な制度と言えます。

相続時精算課税の適用を受ける贈与財産は、本制度を選択した年以後、相続時精算課税に関する贈与者以外の者からの贈与財産と分け、1年間に贈与を受けた財産価額合計額を基に、贈与税額を計算します。

相続時精算課税制度を事例でシミュレーション

具体例をあげて相続時精算課税制度を計算してみましょう。

(例)贈与額3,500万円×1年

①まず贈与額から特別控除額2,500万円を差し引きます。

贈与額3,500万円-特別控除額2,500万円=1,000万円

②次に税率をかけます。

1,000万円×税率20%=200万円

相続時精算課税制度の利用条件・方法

利用条件としては、贈与者の①直系卑属で推定相続人、②子または孫に当たる、③贈与を受けた年の1月1日現在で20歳以上、そして④贈与者は、贈与した年の1月1日で60歳以上の親または祖父母、この4つ全てに該当する必要があります。

また、制度を利用する場合、受贈者が最初の贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日までの間に、納税地の所轄税務署へ次の書類を提出しなければいけません。

  • ・贈与税申告書
  • ・戸籍謄本等
  • ・相続時精算課税選択届出書

なお、ケースによっては税務署から追加の書類を要求されることもあります。

相続時精算課税制度の注意点

相続時精算課税制度を一度選択してしまうと、もはや撤回ができず暦年贈与を利用できなくなります。

ただし、相続時精算課税を選択した贈与者以外の贈与者から贈与された場合、暦年贈与が利用できます。

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まとめ

相続税は多額の負担となる場合もあります。

しかし、土地・建物等に関する控除制度、各特例制度を有効に活用し、負担を軽減することが可能です。

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古尾谷 裕昭

税理士:古尾谷 裕昭

ベンチャーサポート相続税理士法人 代表税理士。
昭和50年生まれ、東京都浅草出身。
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三ツ本 純

税理士:三ツ本 純

ベンチャーサポート相続税理士法人税理士。
昭和56年生まれ、神奈川県出身。
相続税の仕事に携わって13年。相続税が最も安く、かつ、税務署に指摘されない申告が出来るよう、知識と経験を総動員してお手伝いさせていただきます。
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プロフィール

行政書士:本間 剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。
昭和55年生まれ、山形県出身。
はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。
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司法書士:田中 千尋

ベンチャーサポート司法書士法人 代表司法書士 昭和62年生まれ、香川県出身。
相続登記や民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。
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弁護士:川﨑 公司

ベンチャーサポート相続税理士法人運営協力/弁護士法人ベンチャーサポート法律事務所(https://vs-group.jp/lawyer/profile/kawasaki/) 所属弁護士。
新潟県出身。
相続問題は複雑なケースが多く、状況を慎重にお聞きし、相続人様のご要望の実現、相続人様に合ったよりよい解決法をアドバイスさせていただくようにしています。
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税理士:高山 弥生

ベンチャーサポート相続税理士法人 税理士。
相続は、近しい大切な方が亡くなるという大きな喪失感の中、悲しむ間もなく葬儀の手配から公共料金の引き落とし口座の変更といった、いくつもの作業が降りかかってきます。おひとりで悩まず、ぜひ、私たちに話してください。負担を最小限に、いち早く日常の生活に戻れるようサポート致します。
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