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最終更新日:2023/10/19

相続税の障害者控除とは?要件・計算方法・必要書類について解説

弁護士 水流恭平

この記事の執筆者 弁護士 水流恭平

東京弁護士会所属。
民事信託、成年後見人、遺言の業務に従事。相続の相談の中にはどこに何を相談していいかわからないといった方も多く、ご相談者様に親身になって相談をお受けさせていただいております。

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相続税の障害者控除とは?要件・計算方法・必要書類について解説

この記事でわかること

  • 相続税の障害者控除とは何かがわかる
  • 相続税の障害者控除の要件・計算方法がわかる
  • 相続税の障害者控除の申告方法と必要書類がわかる

相続を受ける人が障害者である場合、相続税の障害者控除が利用できるかもしれません。

障害者控除は相続税額から直接控除できるものなので、相続税の負担を大幅に減らすことができます。

利用するためにはいくつか要件があり、障害の重さによって控除額の計算方法も変わってきます。

この記事では、障害者控除の要件や計算方法、申告方法と必要書類について解説します。

相続人に障害者がいる場合は、障害者控除の適用を検討してみましょう。

障害者控除とは

障害者控除とは、相続人の中に障害者がいる場合、負担する相続税の額から一定の金額を減額することのできる制度です。

障害者の場合、安定した収入を得にくい状況にあり、被相続人の収入や財産で生活をしている人が少なくありません。

そのような場合、相続により収入が失われ、相続税の支払いに相続財産を使うこととなれば、相続後の生活が不安定になってしまいます。

そこで、障害者である相続人の相続税の負担が少なくなるような制度が設けられています。

障害者控除の要件

相続税の障害者控除を適用させるためには、3つの要件に当てはまらなければなりません。

  • 住所が日本国内にあること
  • 相続する人が障害者であること
  • 相続する人が法定相続人であること

1つずつ確認していきましょう。

住所が日本国内にあること

要件の1つめは、日本国内に住所があることです。

日本国内に住所のない障害者の場合は、相続税の障害者控除を適用できません

ただし、日本国籍を有しており、被相続人(今回相続される側の人)もしくは相続人のどちらかが、相続開始前5年以内に日本国内に住所があったという場合は、障害者控除を適用できます。

相続する人が障害者であること

要件の2つめは、相続や遺贈で財産を取得した時に障害者であることです。

さらに、障害者といっても、その程度や内容はさまざまであり、一般障害者と特別障害者に分けて税額の控除額が決められています。

国税庁の定めている障害者の範囲について簡単にまとめます。

一般障害者

一般障害者とは、以下の要件を満たす人を指します。

  • (1) 児童相談所、知的障害者更生相談所、精神保健福祉センター、精神保健指定医の判定により知的障害者とされた方(重度の知的障害者をのぞく)
  • (2) 精神障害等級が二級又は三級の方
  • (3) 身体障害の程度が3級から6級の方

この他、精神又は身体に障害のある年齢65歳以上の者で、精神又は身体の障害の程度が(1)または(3)に掲げる者に準ずる者として市町村長等の認定を受けている方や、戦傷病者特別援護法に基づく戦傷病者手帳を受けており、要件を満たした方も対象になります。

詳しくは、国税庁ホームページの法令解釈通達をご覧ください。

特別障害者

特別障害者とは、以下の要件をみたす人を指します。

  • (1) 重度の知的障害者の方
  • (2) 精神障害等級が一級の方
  • (3) 身体障害の程度が1級または2級の方

この他、(1)または(3)に準じる者として市町村長等の認定を受けている方、原子力爆弾被爆者のうち厚生労働大臣の認定を受けている方などが対象です。

要件にあてはまるかどうかを確認したい場合は、国税庁ホームページの法令解釈通達をご覧ください。

規定が細かいので、はっきりとわからない場合は、お近くの税務署や相続に詳しい税理士に問い合わせてみることをおすすめします。

相続する人が法定相続人であること

要件の3つめは、相続や遺贈で財産を取得した人が法定相続人であることです。

法定相続人ではない場合、控除を受けることができません

この「法定相続人ではない場合」という点がイメージしにくいため、一例を挙げます。

ある日、Aさんが亡くなりました。

Aさんは、友人のBさん(障害者)に自分の財産をあげるという遺言を残していました。

BさんとAさんには血縁関係はないので、Bさんは法定相続人ではありません。

もちろん、遺言に指定されたとおり財産を譲り受けることは可能です。

しかし法定相続人ではないので、障害者控除はありません。

さらに、間違いやすいパターンをご紹介します。

すでに配偶者を亡くしたCさんが亡くなり、Cさんの子供のDさんが相続することになりました。

Dさんの子、Eさん(Cさんからすれば孫)は障害者ですが、法定相続人ではありませんので、今回の相続について障害者控除はありません。

将来的に、Dさんが亡くなり、Eさんが相続することになれば、障害者控除が適用される可能性はあります。

障害者控除の計算方法

障害者控除は、障害の程度によって計算方法が変わります。

計算例も紹介するので、相続人の年齢や障害の程度をもとに控除額を計算してみましょう。

障害者控除の年齢の数え方

障害者控除の計算には、対象となる相続人の年齢を使います。

障害者である相続人が85歳になるまでの年数を求める必要があります。

85歳になるまでの年数は、「85歳-相続開始時の満年齢」として求めます。

ここでポイントとなるのは、相続開始時の満年齢の考え方です。

例えば、障害者が65歳11ヶ月の場合、1年未満の期間は切り捨てて、相続開始時の満年齢は65歳となります。
そのため、85歳-65歳=20年と求められます。

障害者控除の計算式

障害者控除が適用されるのは85歳未満までです。

控除額は、85歳になるまでの年数に、1年あたり10万円を掛けて控除額を求めます。

障害の程度が重い特別障害者の場合は、控除される金額も大きくなり、1年あたり20万円が控除されます。

障害者:10万円 ×(85歳 - その相続人の年齢)= 障害者控除額
特別障害者:20万円 ×(85歳 - その相続人の年齢)= 障害者控除額

納付する相続税の計算

各相続人の相続税額と障害者控除の金額が分かれば、実際に納付する相続税の計算ができます。

基本的には、「障害者である相続人の相続税額-障害者控除=納付する相続税額」となります。

例えば、相続人Aの相続税額が300万円、相続人B(障害者・65歳11ヶ月)の相続税額が250万円の場合、相続人Bの納付額は以下のようになります。

  • 障害者控除の額:10万円×(85歳-65歳)=200万円
  • 納付する相続税額:250万円-200万円=50万円

相続人Bの相続税額が100万円だった場合、障害者控除の金額の方が大きくなり、控除しきれなくなります。

このような場合は、他の相続人で障害者の扶養義務がある人の相続税額から控除することができます。

例えば、相続人Bの相続税額から控除しきれない金額が100万円ある場合、相続人Aに扶養義務があれば相続人Aの相続税から最大100万円を控除することができます。

過去に障害者控除を利用したことがある場合の計算

両親それぞれの相続など、1人の人が相続人になることは1回だけとは限りません。

それぞれの相続開始時において障害者控除の適用対象となる要件を満たす場合、過去に障害者控除の適用を受けたことがある人も、2回目以降の相続で障害者控除の適用を受けられます

ただし、過去に障害者控除の適用を受けた場合、控除額は少なくなります。

① 10万円(特別障害者は20万円)×(85歳-相続開始日の年齢)
② ①の金額+(前回の相続から今回の相続までの年数)×10万円(特別障害者は20万円)-前回の相続における障害者控除額

障害者控除の計算例

実際の相続の例を使って、障害者控除の計算の方法を解説していきましょう。
ここでは、以下のような家族構成や財産の内容で、相続税の計算をした場合をご紹介します。

【家族構成】
父(被相続人・死亡時の年齢89歳)
長男(特別障害者・相続発生時の年齢65歳4ヶ月)
長女(相続発生時の年齢62歳3ヶ月)

【相続財産】
自宅土地(相続税評価額4,000万円)
自宅建物(相続税評価額1,000万円)
預貯金(6,000万円)
有価証券(相続税評価額4,000万円)

【遺産分割の方法】
自宅土地・自宅建物と有価証券の合計9,000万円は長男が相続し、預貯金6,000万円は長女が相続する

【相続税の計算】
①課税遺産総額
相続財産の合計額1億5,000万円-基礎控除額(3,000万円+600万円×2人)=1億800万円

②相続税額の総額
課税遺産総額を法定相続割合で按分した金額5,400万円
5,400万円×30%-700万円=920万円
920万円×2人=1,840万円

➂各相続人の相続税額
(長男)1,840万円×9,000万円/1億5,000万円=1,104万円
(長女)1,840万円×6,000万円/1億5,000万円=736万円

④障害者控除の計算と控除後の金額
障害者控除の金額 20万円×(85歳-65歳)=400万円
長男の相続税額 1,104万円-400万円=704万円

障害者控除を受けるための申告方法と必要書類

障害者控除を受けるには、税務署に報告する必要があります。

控除が適用できることやどのように計算したかを適切に申告できないと控除を受けることができなくなってしまいます。

税務署への申告方法、必要書類を確認しましょう。

障害者控除が適用される手続き

障害者控除の適用を受けるには、相続税申告書を作成し、その計算書を作成する必要があります。

具体的には、相続税申告書の第6表「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」を作成し、他の書類と一緒に税務署に提出します。

原則として、相続開始の翌日から10ヶ月以内に相続税の申告を行います。

ただし、この期限を過ぎてしまった後の修正申告や期限後申告でも、障害者控除の適用を受けられます。

また、更正の請求により障害者控除の適用を受けることもできます。

障害者控除の申告に必要な書類

相続税の申告を行う際に、障害者控除の適用を受けようとする場合、相続税申告書の第6表「未成年者控除額・障害者控除額の計算書」を作成し、提出しなければなりません。

また、相続税の申告書には、障害者控除を受けられることを証明するために、障害者手帳のコピーなどの添付が必要です。

また、相続税の申告書には、被相続人のすべての相続人を明らかにする戸籍謄本と、遺言書か遺産分割協議書の写しを添付します。

まとめ

障害者が遺産を相続した場合、障害者控除で相続税の負担を減らすことができます。

障害者控除を利用するには、相続する人が障害者かつ法定相続人であるなどの要件があります。

相続人が要件にあてはまる場合は活用を検討してみてください。

控除額については、障害の程度によって計算式が異なるうえ、年齢の数え方にも注意が必要です。

もし障害者控除に関して不明な点があれば、相続に詳しい専門家に相談してみるといいでしょう。

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