相続税評価額を最大80%も下げられる「小規模宅地の特例」を日本一分かりやすく解説!?

こんにちは。
相続税評論家の観音(かんのん)です。

今回、今までの相続税の取材とは比べものにならないぐらい脳みそを使うと編集部に言われて、極限までやる気を失っています。

テーマは「小規模宅地の特例」。……なにそれ?

言葉の意味も分からないし、想像もできません。なんなら漢字で書けるかどうかも怪しい。不安いっぱいのスタートですが、税理士さんがなんとかしてくれると思って、ノー準備で今日を迎えています。

●相続税の小規模宅地の特例を理解して、相続税をめいっぱい節税する

このミッションが実現できるように、今回の取材も、打者の内角高めをえぐる160km/hの直球並みの質問を投げ込んでまいります。

人物紹介

人物紹介:観音(かんのん)
税金を絶対に払いたくないと考えているフリーランスのライター。日本三大謎税である「相続税」「贈与税」「固定資産税」の謎を究明すべく、詳しい人に話を聞く。

人物紹介:近藤 洋司
ベンチャーサポート相続税理士法人のベテラン税理士。税を知り、税によって生かされている税の化身。「あまりにも税金に対して詳しすぎるため、国税庁から目をつけられている」という噂が流れているが、実際のところは不明。

近藤先生、今日もよろしくお願いします!

よろしくお願いします。
小規模宅地の特例。聞くだけで難しそうですよね!
でも、ご安心ください。
観音さんが理解できるまで丁寧に説明しますし、よくある落とし穴まで解説しますので、相続税で損をしない知識が身につくようにしっかりサポートしますよ!

おおー。心強いです。
でも、今回ばかりは、まったく何も分からない素人以下だと思いますが大丈夫でしょうか?

もちろんですよ!!

では、今日質問する内容をぜんぶ先に見ておきましょう!

  1. 1 小規模宅地等の特例って何?(概要)
  2. 2 なんでこんな特例があるの?(趣旨)
  3. 3 小規模宅地等の特例を使うとどうなるの?(効果)
  4. 4 どんな土地だと特例が利用できるの?(土地の要件)
  5. 5 どんな相続人だと特例が利用できるの?(人の要件)
  6. 6 土地の広さも関係あるの?(限度面積)
  7. 7 特例を使ったらどんな計算になるの?(計算例)
  8. 8 小規模宅地等の特例の失敗例は?(特例を利用できないケース)
  9. 9 まとめ

観音さん、ありがとうございます!
遠慮せずになんでも聞いてくださいね! 日本一分かりやすく解説してみせましょう!

1 小規模宅地等の特例って何?(概要)

じゃあ、早速ですが「小規模宅地の特例」ってなんすか?
取材の連絡があってから今の今まで、なーーんにも調べてないんですけど……。

小規模宅地等の特例とは、相続税の計算における土地の評価額を最大で80%も減額できる、納税者にとても有利な制度のことです。
 
ただし、被相続人の使用用途・相続人の生活状況・土地の面積など多くの条件をクリアしなければ利用できません。

うーん。分かったような分からないような。
ざっくり言うと「めっちゃ得だけど、その分条件は厳しい相続制度だよ!」ってことですか?

そのとおりです!

2 なんでこんな特例があるの?(趣旨)

でも、ちょっと変じゃないですか?
国は、国民から税金を取るための手段として、相続税っていう制度を作っていますよね?

はい、そうですね。

だったら、国民が得する制度は作らずに、しっかり相続税を取ればいいじゃないですか?
……ハッ!
さては! アメとムチで国民を骨抜きにする国家の陰謀ではっ!!!

(笑)
もちろん、小規模宅地等の特例という制度があるのには意味があります。ちょっと考えてみましょう。
仮に、自分の親が亡くなって、相続財産が1億円あったとして、1,220万円の相続税を納めてくださいと言われたとしますね。

はい。かなり嫌ですけど、1億円相続したのなら、余裕で支払えますね。

そう思いますよね?
でもその1億円が銀行預金ではなくて、すべて不動産だったらどうですか?

!?
1,220万円の税金って、現金でしか支払えないんですか?

はい、基本的には現金払いです。

そんなに貯金があるわけないので、絶対に支払えないです。となると不動産を売って現金化するしかなさそうですね。

そうですよね。でも、自分が親とその不動産に同居していたら……。どうですか?

!!?
自宅を売っぱらって出ていくしかないんですか?
売ったお金で税金を納めた後、手元に残ったお金で別の安い家を買うか、賃貸に引っ越すしかないですね。めっちゃ嫌ですね。

そうなんです! 相続税の支払いのために、自分の生活まで変えられてしまいますよね?
税金が、ここまで納税者の生活に影響を及ぼしてしまってはマズイというのは国も分かっているんです。国民から不満が出ますからね。

なるほど。だから自宅不動産については、税金を安くしてあげようってことですか?

はい、そういうことです。
現金で1億円持ってるんだったら相続税をきっちり払いなさい。でも、自宅土地の評価額で1億円だったら納税が大変すぎるから、相続税を安くしてあげましょう。
こう考えてできた制度が、小規模宅地等の特例なんです。

へーーーーー。ちょっと分かってきた気がします。国、やさしい。

3 小規模宅地等の特例を使うとどうなるの?(効果)

最大80%の減額ができるってことですけど、全然実感がわきませんね。ぶっちゃけ、いくらぐらい得するんでしょうか?

すごくシンプルな例で考えてみましょうか!
 
親1人子1人の家族が同居していたとします。相続税の評価額が1.2億円の自宅不動産が親の持っている唯一の財産で、その親が亡くなって相続が発生しました。子ども以外に相続人はいません。
 
1.2億円の内訳は、建物の評価額が2,000万円、土地(300㎡)の評価額が1億円だったとしましょう。

まず、小規模宅地等の特例を使わなかったとすれば、相続税はいくらぐらいかかるか、観音さん分かりますか?

いえ、さっぱり分かりませんね。

この場合、相続税は1,820万円かかります。

高い!

ただ、この財産は同居していた自宅不動産ですので、小規模宅地等の特例が受けられます。
それを加味すると、相続税はたったの40万円で済みます。

ええええーー!! ちょっと安くなりすぎですね!
1,780万円も浮いた!!

もちろん、これは例ですけどね。ただこれぐらいのインパクトがあるのが小規模宅地等の特例です。

どういうカラクリで、こんなに税金が減ったんですか?

さきほどの計算を説明すると、
 
小規模宅地等の特例により、
土地1億円のうちの80%=8,000万円の評価を減額することができました。
 
残る財産は、土地2,000万円分と建物2,000万円の4,000万円ということになります。

ただ、相続税の基礎控除という計算により、相続人が1人の場合、3,600万円までは相続税がかかりません。

でましたね! 相続税の基礎控除。

ありがとうございます(笑)。
はい。その結果、
4,000万円-3,600万円=400万円
税金がかかるのはこの400万円に対してだけです。

小規模宅地等の特例、これを覚えておかない手はありませんね!

4 どんな土地だと特例が利用できるの?(土地の要件)

近藤先生! さっきから相続税が1,000万円以上減るとか、詐欺師みたいに美味しいことばっかり言ってますけど、実は条件がめっちゃくちゃ厳しくて、まともに使えたモンじゃないとかいうオチじゃないでしょうね?

いえいえ! 確かにいろんなパターンがあってややこしい部分はありますが、そんなに使える人が少ないというものでもないですよ。

ほーー。じゃあその条件というのを挙げてみてもらいましょうか!

はい。条件には、土地の条件と、人の条件というのがありますので、まず土地の条件から説明していきましょう。
この特例を受けられるのは、居住用、事業用、貸付用の3つのうちいずれかとして使用されている宅地だけです。

むむ!?
まず「宅地」ってなんですか?

建物の敷地になっている土地ですね。上に建物が建っている土地のことです。

ほう。では、居住用、事業用、貸付用というのは?

単語にすると難しいですかね?
その土地の所有者が自分で住んでいるか、自分の事業で使用しているか、他人に貸しているか、そのどれかであれば良いということです。

逆に、土地でそれ以外の用途のものってあるんですか?

空き地とかですね。空き地の場合は特例は受けられません。

事業で使用しているって、お店とか事務所ということですよね?

はい、そうですね。

親が事業をしていたり、大家さんをしているケースって少なくないですか??

相続税がかかるぐらいの方は、不動産を他人に賃貸しているケースはよくありますけどね。たしかに事業をしているケースは、親がサラリーマンだった場合は関係ないことが多いです。

じゃあ話を分かりやすくするために、親が住んでいた時だけに絞って教えてもらってもいいですか?

なるほど、居住用の説明ですね! 確かにそのほうが、小規模宅地等の特例を理解しやすいかもしれませんね。
では、これ以上説明しませんが、貸付用の宅地だけは特例による減額割合が50%と少なくなっていることだけ覚えておいてください。

5 どんな相続人だと特例が利用できるの?(人の要件)

亡くなった人が住んでいた所の土地については、小規模宅地等の特例が受けられるということは分かりました。

はい、次は人の条件ですね。
相続によりこの土地を受け取る人が誰か? というのがポイントです。

ほう。誰だったら良いんですか?

亡くなった人の配偶者か親族が該当するのですが、
関係性により条件が変わってきますので、亡くなった人との関係性を、
 
(A)配偶者
(B)同居していた親族
(C)同居していなかった親族
 
の3つに分類して説明します。

ややこしそうですけど、けっこう広いですね。相続人だとだいたい当てはまるんじゃないんですか?

そうですね。当てはまるのは当てはまるのですが、
上記の2で説明したとおり、住んでいる場所が奪われるケースがかわいそうだという趣旨なので、そこに当てはまらない(C)については特に条件が厳しいのです。
まず(A)の配偶者が相続する場合は、無条件で特例が適用されます。

シンプルですね。

次に(B)の同居していた親族が相続する場合ですが、相続開始前から相続税の申告期限までずっと住み続けなくてはなりません。途中で売ってもいけません。

相続税の申告期限まで、っていつまでのことですか?

基本的には、亡くなった日から10カ月後のことですね。
たとえば1月7日に亡くなった方だと、相続税の申告期限は同年の11月7日です。

では、(B)の同居していた親族はその日までずっと売らずに住み続けなくてはならないということですね。

はい。まあ、亡くなってすぐに売ったり引っ越したりというのも慌ただしいので、この条件を知ってさえいれば、そんなに急がないと思いますけどね。
ただ、亡くなったことで生活環境は変わるので引っ越しなどを検討する人はいると思いますが、10カ月間は我慢しましょう、ということです。
注意してほしいのは、相続税の申告をした後は何をしてもOKなのではなくて、早く申告したとしても申告期限までは我慢する、という点です。

あ、申告が終わってもまだ動いてはいけないんですね。

はい、申告が終わると油断しがちなので注意してください。

なるほど。(B)の条件は、知ってさえいればそんなに無茶な条件ではないですね!

はい。最後に、(C)の同居していなかった親族が相続した場合の条件を説明しましょう。
 
・亡くなった人に配偶者がいないこと
・亡くなった人と同居していた相続人がいないこと
・相続開始前の3年以内に「持ち家」に住んだことがないこと
・相続税の申告期限までに売ってしまわないこと
 
以上の4つです。

むむむ! つまり配偶者や同居してる相続人がいれば、その人に相続させろ! ということですね。

小規模宅地等の特例を使いたいのであれば、そういうことになりますね。

3つ目の条件だけ、よく分からないですね。

「相続する人自身が賃貸暮らしをしていること」
と言いかえればイメージしやすいですかね?
この(C)の人に当てはまる条件のことを指して「家なき子特例」と専門的に呼ぶこともあります。

同情するなら金をくれ!! って、若い人は絶対知らないでしょうね……。

(笑)。

賃貸住まいで、持ち家がない人のための特例ということですね。

はい、だいたい合ってます。
持ち家といっても、その相続人本人が所有しているかどうかだけの判定ではないので、家なき子特例を使うための抜け道みたいなものは防止されています。

6 土地の広さも関係あるの?(限度面積)

土地の条件と人の条件を見てきましたが、小規模宅地等の特例の「小規模」というところも見ていきましょう。

あまり意識してませんでしたが、たしかになぜ「小規模」なんでしょうか?
ここまできたら大規模な宅地でもいいでしょうに。

大きな土地を持っているような資産家はそこまで優遇しない、という意味もあるんでしょうね。
ただ、その土地自体の大小を問わず、330㎡までは減額が受けられるようになっています。

それより広い土地だったらどうなるんですか?

たとえば、冒頭の例の1億円の土地が500㎡だったとしますよね。すると
1億円 × 330㎡ / 500㎡ × 80% = 5,280万円の減額
となります。

なるほど、面積の割合を使うのですね。

はい。事業用と貸付用の限度面積はまた違いますので、国税庁Webサイトのリンクを貼っておきますね。

7 特例を使ったらどんな計算になるの?(計算例)

では、実際にありそうな例を使って少し具体的に計算してみましょうか。
家族構成と財産状況がこのようだったとしましょう。

お母さんはすでに亡くなっていて、お父さんと長女が一緒に住んでいたというケースですね。

はい、小規模宅地等の特例を使うと税額が大幅に減りますので、このご姉弟の遺産分割は、なるべく自宅不動産を長女が相続したほうが良いですね。

なるほど。そうやって税金の計算だけではなく、遺産分割のアドバイスまですることもあるんですね!

はい。もちろん、本人たちの意志を尊重するのですが、決断によって相続税が増減することを事前にしっかりとお伝えしておきます。
それぞれ次のように遺産分割したとしましょう。

現預金は長男、不動産は長女という分け方ですね。

はい、小規模宅地等の特例を存分に利用できる形ですね。
観音さん、基礎控除はいくらになりますか?

基礎控除だけは手慣れたモンですよ! 相続人が2人なので、
3,000万円 + 600万円 × 2名 = 4,200万円
でしょう!?

はい、そのとおりです。
遺産総額が7,000万円となってますが、小規模宅地等の特例による評価額の減額を計算します。
4,000万円 × 330㎡ / 400㎡ × 80% = 2,640万円 減額
7,000万円 - 減額2,640万円 - 基礎控除4,200万円= 160万円
これを姉弟2人で分割して計算しなおすと2人で納める相続税の総額は16万円となります。

ちなみに、預貯金を長女、不動産を長男が相続したとして、小規模宅地等の特例が使えなかった場合はいくらぐらいの税金になるんですか?

その場合、相続税の総額は320万円ですね。
なので小規模宅地等の特例により304万円の相続税が浮いた計算になります。

304万円の節税! これは大きい!

8 小規模宅地等の特例の失敗例は?(特例を利用できないケース)

ここまで聞いてみて、小規模宅地等の特例のことは分かってきましたか?

はい、分かってきたというより、もうマスターしてしまった感があります!

それは心強い!
でも実は、小規模宅地等の特例は、税理士でも簡単にはマスターできないくらい、とても奥深いものなんです。

なぜですか?すごくシンプルで分かりやすいように思えましたが。

たとえば、亡くなる前の数カ月間は老人ホームに入っていた場合、元の自宅は居住用といえるのか? とか、一緒に住んでいた自宅不動産が二世帯住宅だった場合でも適用できるのか?とか。

な、なるほど!!
たしかに、よくありそうなのに、今日の説明だけだと全然判断つきませんね!

そうなんですよ。
他にも、同居していなかったけど住民票は移していないとか、逆に住民票は別だけど本当は一緒に住んでいたとか。

ほほーーー。やっぱり税法は難しいですね。

はい、すべてをここで伝えるのは難しいので、よくある失敗例だけ伝えておきますね!

是非お願いします!

一番もったいない失敗は、せっかく全ての条件をクリアしているのに、相続税の申告期限までに引っ越ししてしまったり、不動産を売却してしまうケースですね。

上記5で説明していただいたケースですね!

はい! 小規模宅地等の特例を使ったら、相続税の申告期限までは居住と所有に気をつける! これを絶対忘れないようにしてください。

分かりました!

次によくある失敗は、老人ホームへの入居ですね。

ご老人の一人暮らしだと、よくありそうですねー。老人ホームへ入居していたら小規模宅地等の特例は使えないのですか?

いえ、亡くなる前から老人ホームへ入居していた場合でも、次の3つの条件を満たせば、小規模宅地等の特例は使えます。
 
・死亡時点で要介護か要支援の認定を受けていること
・入居する老人ホームが一定の要件を満たすこと
・老人ホーム入居後の自宅を他人に貸したりしていないこと

2番目の、老人ホームの一定の要件というのは?

ほとんどの有料老人ホームは該当すると思いますが、念のため直接問い合わせておいたほうが間違いないでしょうね!
無認可の老人ホームなどは要注意です。

このページの3の(2)(注)1に詳細が掲載されています。

知らなければ、入居前の老人ホームにわざわざ小規模宅地等の特例のことなんて確認するわけないですね。税金おそろしや。
そういえば、さっき近藤先生が言ってた、住民票と実際に住んでいる場所が違う場合はどうなるんです?

基本的には、実際に住んでいた場所で判定します。なので、実際に同居している場合は、必ず住民票を移しておいたほうがいいですね。
逆に、小規模宅地等の特例を受けるためだけに住民票を移しても、適用は受けられません。

でも、実際にどこに住んでいたかなんて、どうやって調べるんですか? 住民票でしか分からなくないですか?

それが税務調査なんですよね。税務署の人間は、怪しいと思えばとことん調べます。電気メーターや水道メーター、近隣住民の聞き込みまですることも……。

ひえーーー。では、小手先のテクニックに走るよりも、小規模宅地等の特例を受けられる条件をしっかりと整えておいたほうが良さそうですね!

そうですね!

9 まとめ

今日は、ありがとうございました!
小規模宅地等の特例について、ずいぶん理解が進んだような気がします。

ありがとうございます!
それは良かったですね。難しい項目なので、伝わるか不安な部分はありました。

小規模宅地等の特例について最後に、今日のポイントをまとめていただけますか!?

はい、相続税の土地の評価額を最大80%も減らすことができる小規模宅地等の特例は、
・亡くなった方の居住用、事業用、貸付用の3つのうちいずれかとして使用されている宅地(居住用の場合、最大330㎡まで)だけが対象となります。
・その土地を、配偶者や同居していた親族が相続した場合だけが対象となります。
・同居していなかった親族でも「家なき子特例」と言って、賃貸住まいの場合などは対象となることもあります。

このような条件を満たせば、適用が受けられます。

ありがとうございます!
この件については、自分も親とよくよく話しておきますね(笑)。

はい、こちらこそありがとうございました!
相続税がかかりそうな場合は、ぜひ親子で相談してみてください。

 

相続税おもしろ丸分かりシリーズ
全6回