相続税の非課税とは?非課税枠の活用方法

  1. 相続税の算出方法とは?
  2. 相続税の対象となる財産とは?
  3. 非課税となる財産
  4. 相続税の非課税枠、基礎控除とは?
  5. みなし相続財産の非課税枠
  6. 相続人による非課税枠
  7. 相続税の配偶者控除で相続税が非課税
  8. 未成年者控除・障害者控除で相続税が非課税になるケース(申告不要)
  9. 借金があった相続財産の非課税枠

相続税は、すべての財産にかけられるわけではなく、一定の範囲で「非課税枠」というものが決まっています。一定の範囲内の財産は非課税として支払う必要がなくなります。ここで、どのような財産が非課税となり、どこまでの財産の価値が非課税となるのかについて正確にご存知ですか。今回は、相続税の算出方法から相続税が非課税となる範囲について考えていきます。

相続税の算出方法とは?

相続税はどのように算出されるのでしょうか。相続税は、亡くなった方の相続財産に対して掛けられる税率です。この相続財産として考えられる財産は、財産の種類を分類して計算されることになります。相続財産は、現金などのプラスの相続財産からマイナスの財産、若しくは非課税となる財産などを加減して、最終的に算出された財産から相続税の基礎控除(非課税枠)を上回った範囲の財産のみに対して、課税されることになります。

STEP1プラスの財産を算出(遺産総額+みなし相続財産+相続時精算課税の対象となる贈与)

プラスの財産
遺産総額 みなし相続財産 相続時精算課税の
対象となる贈与

STEP2マイナスの財産を算出する(債務+葬式費用+非課税財産)

マイナスの財産
債務 葬式費用

STEP3正味相続財産を算出する(プラスの財産-マイナスの財産)

プラスの財産 マイナスの財産

STEP4課税価格の合計額を算出する(正味相続財産+3年以内の贈与)

正味相続財産 3年以内の贈与

最終的に算出された財産から相続税の基礎控除(非課税枠)を上回った範囲の財産のみに対して、課税されることになります。

課税遺産総額を算出する(課税価格の合計額-基礎控除)

課税遺産総額 基礎控除

基礎控除は下記の計算によって、計算します。

    基礎控除=

    3,000万円 法定相続人の数 × 600万円

相続税の対象となる財産とは?

プラスの財産

金融資産 現金、預貯金、有価証券(公社債、上場株式、投資信託など)
不動産 家屋(貸家も含む)、宅地(貸家建付地も含む)、農地、山林など
不動産上の権利 借地検、地上権など
動産 自転車、家財、黄金属、宝石、骨董品など
その他 ゴルフ会員権、リゾート会員権、特許権、著作権、商標など

マイナスの財産

借金 住宅ローンなどの借入金、未払い金など
保証債務 保証人、連帯保証人としての地位
公租公課 滞納している所得税、住民税、固定資産税、税金など
葬式費用 通常の通夜、葬儀社や寺などに支払った葬式費用一式※香典返し、初七日、四十九日などの法要の費用は除く
その他 損害賠償責務など

みなし相続財産

死亡保険金 生命保険金、損害保険金など。相続人に支払われた場合のみ、非課税枠の適用を受けられる
死亡退職金 退職金、功労金や、これに準ずる給与などで、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したもの。非課税枠の適用あり
その他 生命保険契約に関する権利、定期金に関する権利など

それでは、相続税を構成するプラスの財産とはどのようなものでしょうか。分かりやすいものでいえば、現金・預貯金・株式・不動産などの財産がこれに当たります。一方で、実はこのように単純に分かりやすいものだけがプラスの財産になるわけではありません。亡くなった方には、死亡を原因として生命保険がおりますが、これも「みなし相続財産」としてプラスの財産となることになります。更に、亡くなった方が贈与した財産も、3年以内であれば相続財産の中に含まれてしまいます。また、相続税には相続時精算課税制度により贈与した財産も加算されることになりますので、十分と注意しなければいけません。

非課税となる財産

非課税財産

日常礼拝をしているもの 生前から所有していた墓地・墓石、霊廟、仏壇、仏具など※純金製の仏壇、骨董品の仏像など高額なものは除く
寄付財産 相続税の申告期限までに国または地方公共団体や公益を目的とする事業を行う特定法人に寄付したもの
公益事業用の財産 寺社の境内地など、公益を目的とする事業に使われることが確実なもの

また財産の中には非課税財産として相続税の対象にならないものもあります。

非課税財産が定められている理由のひとつとしては、その財産の性格上、課税するのにふさわしくないものであることが挙げられます。たとえば、お墓、仏壇のような祭祀財産、お葬式の費用などです。また、相続税の納付期限までに国や地方公共団体、特定の公益法人に寄附をしたお金などについても非課税とされています。ただし、投資目的として高価な金の仏像を所有しているなどの場合、これは祭祀用というよりは投資目的といえるため、通常の動産として課税対象になります。

相続税の非課税枠、基礎控除とは?

相続税は、相続全体から見ると1割未満という限られた人に課せられる税金です。これは、相続税の趣旨が「富の再分配」という考え方であるため、相続財産が少ない人にまで税金を課すのは妥当ではないからです。
この一定範囲の非課税枠を「基礎控除」と呼んでいます。

相続税の税率は、相続財産にそのままかかるわけではありません。相続税には一定範囲の相続財産に対しては、相続税の基礎控除によりすべて非課税となる扱いとなっています。よって、相続税がかかるのは、この相続税の基礎控除を超えた範囲ということになります。それでは、相続税の基礎控除の範囲についてみていきます。

相続税の基礎控除は、「3,000万円+600万円×法定相続人の数」の計算式で算出されることになります。それでは、具体例を見ていきます。亡くなった方に、配偶者と子供が2人いたとします。この場合、「法定相続人の数」は3人となりますので、相続税の基礎控除は、3,000万円+600万円×3=4,800万円ということになります。ということで、算出された額が4,800万円を超えた場合にはじめて相続税がかかることになります。

相続人の人数ごとの基礎控除額

※相続人の人数ごとの基礎控除額
※参考 

非課税枠となる基礎控除額の改正(平成27年1月1日より)

基礎控除は、平成26年より以前は5,000万円+相続人の数×1,000万円に設定されていました。しかし、バブル崩壊後、日本の地価はどんどん下落し、それに伴ってある程度の不動産を持っている人でも相続税の基礎控除の範囲内に収まってしまうことが多くなりました。よって、相続発生件数全体に対して2%から3%程度しか相続税は課税されない状態になっていたのですが、より一層の税収を確保するために平成27年1月1日を境に、基礎控除がそれまでの6割である3,000万円+相続人の数×600万円まで引き下げられたのです。
これによって、東京や大阪などの大都市を中心として相続税の課税対象が大幅に増加しました。

みなし相続財産の非課税枠

「みなし相続財産」というのは、民法の上では遺産扱いにならない、つまり遺産分割協議の対象ではないが、税法上は相続財産とみなされる財産です。
具体的に言えば、「生命保険の死亡保険金」と「死亡退職金」の2つです。受取人が相続人の誰かに指定された保険金は、被相続人が亡くなった瞬間に相続人の「固有の財産」になりますので遺産分割の対象外です。しかし、被相続人の死亡によって承継された財産と考えることができるので相続税計算の際には財産に算入することになっています。同じようなことから死亡退職金もこのような扱いをされています。
みなし相続財産については法定相続人の数×500万円という非課税枠がありますので、これを有効に利用すれば節税もできると同時に納税資金を準備しておくこともできるという点で、非常に使い勝手の良い制度といえます。

みなし相続財産の非課税限度額の計算

生命保険の非課税限度額(非課税枠)=500万円×法定相続人の数

死亡退職金の非課税限度額(非課税枠)=500万円×法定相続人の数

相続人による非課税枠

相続税は、相続人の数によって税負担が変わってくることが上記の「基礎控除」の設定の仕方を見てもわかることでしょう。基礎控除額が増えるということのみならず、相続人の人数が多いことによって「税率」が下がるということもあります。これは、各相続人の「法定相続分に応じた取得金額」が小さくなるので適用される累進税率の区分が変わることによるものです。
「みなし相続財産」としての生命保険金や死亡退職金の非課税枠も、相続人の人数が多ければ多いほど増加します。

(単位:万円)

  法定相続人の人数
1人 2人 3人 4人 5人
基礎控除額 3,600 4,200 4,800 5,400 6,000
生命保険金の非課税限度額 500 1,000 1,500 2,000 2,500
死亡退職金の非課税限度額 500 1,000 1,500 2,000 2,500
合計 4,600 6,200 7,800 9,400 11,000

上記表のように法定相続人の人数で相続税の非課税枠は大幅に変わって来ます。
そのため、養子縁組をして相続人を増やすというスキームも節税のためにはよく使われます。ただ注意しなくてはならないのが、税法上では法定相続人に含める養子の人数に制限があり、実子がいる場合は1人、実子がいない場合は2人までと定められています。
また、養子というのは身分関係に関することですので、むやみに節税を狙って養子縁組をすると親族の間の感情的なもつれが発生する危険があることに注意しなくてはなりません。親族関係が悪くなれば遺産分割協議がまとまらない、ひいては子孫の代にまで関係の悪化が影響したり、税金面を見てもしかるべき税額軽減を受けられなくなったりする事態が考えられますので、よくそのあたりを考慮した上で縁組するべきです。

相続税の配偶者控除で相続税が非課税

「相続税の配偶者控除」を使って相続税がかからない場合

亡くなった方の配偶者の場合、「実際に受け取った遺産の金額」が法定相続分の範囲内である場合には税金がかからないというルールがあります。

実際に遺産をいくら受け取るか?は亡くなった方が遺言を残している場合には遺言が法律上ルールよりも優先されますから、実際に受け取る金額と法定相続分が異なるケースがあるのです。
この配偶者控除を使う場合には、相続税の申告期限までに、配偶者の方の相続分を計算した上で申告書を提出する必要があります。

《相続税の配偶者控除とは?》
  • 配偶者が相続する財産は、評価額1億6000万円までは税金がかかりません。
  • 実際の取得金額が1億6000万円
    又は法定相続分以下なら相続税はゼロ
  • 実際の取得金額が1億6000万円
    又は法定相続分以下なら差額部分に対して相続税が発生
  • 未成年者控除・障害者控除で相続税が非課税になるケース(申告不要)

    また、相続人の中である属性を持つ人については税額が控除されます。

    (1)未成年者控除

    1つ目は「未成年者控除」です。これは、満20歳未満の相続人(相続放棄した場合も含む。国内財産のみが課税対象となる一定の非居住者は除く)は、10万円×満20歳になるまでの年数(1年未満の端数は切り上げ)で計算した金額を控除できます。

    (2)障害者控除

    2つ目は「障害者控除」です。これは、日本国内に住所を有する障害を持つ相続人(相続放棄した場合も含む。国内財産のみが課税対象となる一定の非居住者は除く)は、通常の障害者であれば10万円×満85歳になるまでの年数なるまでの年数(1年未満の端数は切り上げ)で計算した金額を、特別障害者(特に重度の障害を持つ人)は20万円×満85歳になるまでの年数なるまでの年数(1年未満の端数は切り上げ)で計算した金額を控除することができます。

    「相続税の基礎控除は超える」
    「未成年者控除又は障害者控除を適用すると相続税はゼロになる」
    こういったケースの場合は配偶者の税額控除と異なり、申告の必要はありません。

  • 遺産の総額 >基礎控除
  • 障害者控除・未成年者控除の適用で相続税がかからない場合
  • 小規模宅地等の特例による評価減や配偶者控除の適用と異なり、相続税の申告は必要ありません
  • 未成年者控除、障害者控除という税額控除について知らなかったという人も少なくありません。
    こちらもあらかじめ考慮したうえで申告の可否を判断しましょう。

    借金があった相続財産の非課税枠

    相続財産というのは必ずしもプラスのものだけではありません。借金(負債)も含めて相続財産ですので、「事業をしていた」など事情によっては負債の部分が非常に大きいこともあります。こういった場合にもプラス財産だけ全額に相続税をかけるのは妥当ではないため、プラス財産から負債を差し引いてよいことになっています。

    相続税の課税財産を計算する上で、負債を差し引くことを忘れてはなりません。事業をやっているなどの人は特に負債金額がかなり多いこともあり、相続税の金額に大きく影響することもあるからです。負債を正しく把握することは、場合によっては「相続放棄(相続開始を知ってから3カ月以内に家庭裁判所に申述しなければならない)」の必要があるかの判断にもかかってくるため重要といえます。ただ、負債を差し引く際には、被相続人が生前に購入したお墓の未払代金など「非課税財産に関する債務」は、差し引くことができないという点にも注意しましょう。

    まとめ

    非課税枠を利用することで大幅に税額が軽減でき、場合によってはゼロになることもありますので見落としのないよう、しっかりとチェックしましょう。