遺言書パーフェクトガイド|種類・効力・書き方・検認を徹底解説!

“遺言書がなかったために・・・・”

仲が良かった兄弟姉妹が相続を巡って喧嘩してしまった

親としては、自分の財産を残すのはみんな、子供たちや孫が幸せになってもらうためです。
誰一人、相続が原因で争いや喧嘩をすることを望む人はいないでしょう。
しかし、残念ながら相続を巡って相続争い、いわゆる「争続」は非常にたくさん発生しています。
兄弟同士、親族同士だけに、感情がもつれると激しい衝突になることがよくあります。
だからこそ、きっちりした遺言書を作る必要があります。

間違った遺言書を作ってしまうと、
無効になったり、大きな相続税になったりします

  • ・決まった形式での作成や、承認を受ける手続きを間違うと無効になります。
  • ・相続税を視野に入れた遺産分割案を考えないと大きな相続税を支払うことになります。
  • ・遺留分(※)を考慮して遺言書を作成しないと、親族で裁判になることがあります。

※遺留分とは、法律で定めれらた相続人が、遺言の内容に関係なく最低限相続できる権利のことです。

遺言書パーフェクトガイドでは、遺言・遺言書についての種類・効力・書き方・検認までを徹底解説していきます。
これから遺言・遺言書を作成される方は「間違った遺言書」を作成しないように。事前にこちらをお読みいただければと思います。

目次

  1. 公正証書遺言を利用する人が急速に増えています
  2. 遺言とは
  3. 遺言の効力とは
    1. 相続人となる人を指定できる
    2. 遺産分割の割合を指定できる
    3. 遺産分割を禁止することも可能
    4. 相続人の廃除で「相続させない人」も指定できる
    5. 子どもの認知ができる
    6. 遺言執行者の指定ができる
  4. 遺言によっても指定できない内容とは?
  5. 遺言書の種類
    1. 自筆証書遺言
    2. 公正証書遺言
    3. 秘密証書遺言
    4. ※特別方式遺言とは?
  6. 遺言が無効になる具体例と注意点
  7. 遺言をめぐって生じる可能性があるトラブルの内容
  8. 遺言はどのように保管するのが良い?
  9. 遺言が無い場合にはどうなる?
  10. 遺言執行者の指定
    1. 遺言執行者とは
    2. 遺言執行者しかできないこと
    3. 遺言執行者の選任方法
    4. 遺言執行者の解任や辞任はできる?
  11. 遺言書の検認とは?手続きが必要になる場合も解説!
  12. ※検認の手続きまとめ
    1. 家庭裁判所に検認の申し立てをする
    2. 検認に必要な費用
    3. 必要な書類を準備する
  13. 家庭裁判所の検認の流れ
    1. 家庭裁判所から検認を行う日が郵便で通達
    2. 指定期日に家庭裁判所で遺言書の検認を受ける
    3. 裁判官が出席した相続人立会いのもと、遺言書を開封
    4. 遺言書の内容を執行するために「検認済証明書」の発行を申請する
    5. 検認が必要になる遺言の種類
    6. 勝手に開封したらどうなるのか?
    7. 検認しても遺言書が有効とは限らない!
  14. 不当な遺言書についての対応
  15. 遺留分以外でも不当な遺言書は最低限の権利の主張ができる
  16. その他の理由で遺言書の内容に不当を感じる場合には
  17. まとめ

公正証書遺言を利用する人が急速に増えています

まずは、近年の遺言書の作成状況の統計を見ていきましょう。

遺言書の作成状況

遺言者だけで手軽に作成できる自筆証書遺言の年間作成件数の推移は微増といったところですが、遺言書の中で最も確実性が高いと言われている「公正証書遺言」の年間作成件数の推移を見ていくと、2010年に8万件弱の作成件数だったのが2014年には10万件を超え、2015年に11万件を超えています。

「公正証書遺言の利用が急速に増えているんです!!」

日本の高齢化が進み、”遺産争続“をテーマにした映画やテレビ、雑誌等で相続問題も多く取り上げられています。。
“遺産相続”をテーマにした映画やドラマの放映もたまに見かけますよね。
まさか、自分の家族が・・・
といった、この「まさか」が自分の家族にも起きうるという認識が世間に浸透してきていることが公正証書遺言の利用増加の背景にあるようです。
また、公証人役場にしっかり有効性を保証され、保管される、確実な公正証書で遺言を行う方が増えているのも、公正証書遺言が認知されてきたといえますし、自筆証書遺言では不備になる可能性があるということも一般的に認知されてきたということも言えます。

それでは、自分の死後に財産をどのように分け与えるかを決める「遺言」についてみていきたいと思います。

遺言とは

遺言とは「被相続人の最後の意思表示」と定義されています。

死んだ後の財産処分等について自分の意思を反映していきます。民法で定められた形式により書き残さなければ法的効果が生じませんので細心の注意を払わなければなりません。
実際の相続の現場では、遺産分割について相続人間で争いが起こることもめずらしくありません。
相続が起きて、家族の争いが起こらないように遺言により、自分の財産を誰に帰属させるかを決めておくことで、自分の家族の相続によるトラブルを未然に防ぐことができます。

遺言の効力とは

遺言では自分の死後の財産の処分方法について、基本的に自由に決めることが可能になります。
例えば、「自分の死後には財産を慈善団体に寄付する」とすることも可能ですし、「愛人を相続人に指定してこれだけの財産を相続させる」といった内容にすることも可能です。
このように書くと「民法という法律で相続についてのルールが細かく定められているのは、何のためなの?」と疑問を持たれる方も多いかもしれませんね。
しかし、民法のルールはあくまでも「遺言がないときに補助的に使うもの」ですので、もし遺言の内容と法律の内容が食い違うときには遺言の内容が優先されます。
このように、相続人や遺産分割の方法は遺言によって決めるのが大原則となっているのです。
以下では、具体的に遺言で定めることができる内容についてみていきましょう。

遺言の効力1 相続人となる人を指定できる

遺言では、だれが相続人となるかを自由に決めることができます。
法律上は一定の親族関係にある人が相続人となることになっていますが、遺言で相続人を指定する場合には、こうした縛りは何もありません。
まったくの他人を相続人として指定することも可能ですし、企業や慈善団体などの組織に財産を渡す事も可能です。

メリット1 特定の相続人に遺産を残せる

相続財産には不動産、預貯金、株式、自動車などさまざまな種類のものがあり、それらすべてを法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)に法律の決まり通りに分けることが適切なわけではありません。
それぞれの家庭により、誰にどの財産をどのくらい相続させたいかという考え方は異なっていて当然なのです。しかし、基本的に民法では被相続人(亡くなった人)との関係によって相続分が決められており、それを覆すには遺言書で指定する、遺産分割協議をする、誰かが相続放棄をするかといった限定的な方法となります。
それらの中で、確実に「この人に相続させたい」という被相続人の意思を反映させるには遺言書が最も適しているのです。

メリット2 相続人以外の人に遺産を残せる

法定相続人が遺産を相続することが必ずしも適切でないこともあります。たとえば実の子供は実家をまったく顧みなかったが、同居していた長男の嫁が何十年も自分たちの世話をして介護まで担ってくれたようなケースでは、そちらに遺産を残したいと思うのも自然な感情でしょう。
ただ、嫁との間に養子縁組をしておくか、遺言書で「嫁の誰々にこの財産を遺贈する」。といった形の遺言書を作っておかなければ法律上は1円も渡らないのです。こういった事情での相続紛争も実際に多くの家庭で起きていますので、世話をしてもらった親の側が、意識レベルのはっきりしているうちに遺言書作成を検討するべきでしょう。遺言書は認知症により意思表示がしっかりできなくなっていたらもはやすることはできませんから、少し早いかな?と思うくらいの時期に作ることが大切です。

遺言の効力2 遺産分割の割合を指定できる

遺言では、相続人を指定できるだけでなく、それぞれの相続人がどれだけの割合の遺産を相続するかまで自由に決めることが可能です。
この点、民法では「配偶者は2分の1、子は残りの2分の1を人数で平等に分け合う」というように相続割合が決まっていますが、遺言でこれと異なる相続割合を指定しても問題ありません。
ただし、亡くなった人とごく近しい親族の遺留分が侵害される内容の遺言となっている場合には、その親族による遺留分減殺請求が行われる可能性があるので注意です。

遺留分に注意

法律で相続人となる権利のあるとされている人(配偶者や子供など:法定相続人と呼びます)は、遺留分と呼ばれる権利が保障されています。
遺留分とは、ごく簡単にいうと「配偶者や子供など、亡くなった人とごく近い関係にある親族が主張できる、最低限これだけは相続できるという割合」のことです。
例えば、配偶者の遺留分は遺産の総額に対して2分の1と決められています。
遺産が1億円あるときに、「愛人に遺産すべてを相続させる」という遺言があったとしても、法律上の配偶者は1億円×2分の1=5000万円は遺産の分割を要求できるということですね。

遺留分を侵害する遺言も一応有効

注意するべきなのは、遺留分を侵害する内容の遺言であっても、その遺言内容は一応有効であることです。
一応有効というのは、いったんは遺言の内容通りに遺産分割を行うが、遺留分を侵害された親族から訴えがあった時には、その遺留分の回復が検討されるという意味です。
何がいいたいかというと、遺留分を侵害する内容の遺言がある場合には、その遺留分を侵害された親族は、自分で訴えを起こさないと遺言内容そのままの遺産分割が行われてしまうということです(この訴えのことを遺留分減殺請求といいます)
実際には、遺産分割を行う段階で話し合いを行い、お互いが納得して遺産分割を行うのがトラブル回避につながるでしょう。

遺言の効力3 遺産分割を禁止することも可能

相続が発生した後、最大で5年間は「遺産分割を行ってはいけない」という内容の遺言を残すことも可能です。
例えば、「長男と次男の両方が大学を卒業するまでは、遺産分割を禁ずる」といった内容の遺言を残すことができます(ただし、この期間は5年間を過ぎることはできません)
財産が多額にある場合、遺産分割を行うことで遺族の生活が激変してしまうことも少なくありません。
相続人に未成年の人がいる場合や、病気療養中の人がいる場合には、相続が発生した直後に遺産分割協議を開始することは適切でない可能性もあるでしょう。
そのような場合には、一定期間は遺産分割を禁止する内容の遺言を残すことにも意味があるといえます。

遺言の効力4 相続人の廃除で「相続させない人」も指定できる

遺言で「この人には相続する権利を認めない」という内容を残すことも可能です。
これを相続廃除と呼び、相続廃除が認められるとその人の遺留分も認めないとすることが可能になります。
「子供から度重なる暴力を振るわれていたので一切の財産を渡したくない」などの事情がある人がこの相続廃除を遺言で指定します。
遺言に相続廃除が記されている場合には、遺言で指定された遺言執行者が家庭裁判所に対して廃除請求という手続きを行い、認められた場合にはその人は相続に関する権利を遺留分も含めて奪われることになります。
ただし、実際にこのような相続人の廃除が認められるのはレアケースといえます。
相続廃除された人は、家庭裁判所に対して異議申し立てを行うことが可能で、よほど重大な非行や虐待などの事実がない限りは家庭裁判所はこの異議申し立てを認めるケースが多いからです。

遺言の効力5 子どもの認知ができる

法律上の婚姻関係にない人との間で生まれた子(非嫡出子と呼びます)を、法律上の嫡出子と同じように扱うのを認めることを認知と呼びます。
この認知は生前の意思表示で行うのが原則ですが、遺言によって行うことも可能です。
遺言によって認知がされている場合には、遺言執行者が認知の届け出を役所に対して行います(遺言執行者が遺言で定められていない場合には、家庭裁判所に対して選任を申し立てることができます)
遺言によって認知された非嫡出子は、相続人の順位や遺産分割の権利について嫡出子と全く同じように扱われます。
平成25年の法改正以前は「非嫡出子の相続分は、嫡出子の2分の1」というルールがありましたが、現在はこのルールは削除され、嫡出子と非嫡出子の法律上の相続分はまったく同じという扱いになっています。

遺言の効力6 遺言執行者の指定ができる

遺言の内容が確実に実現されるように、遺言執行者を遺言の中で指名しておくことも可能です。
遺言執行者に指定された人は、遺産として残された金融機関の預貯金を解約したり、不動産の名義変更を行ったりといった事務を行う権限が与えられます。
遺言執行者は通常は資格を持った弁護士や、信託銀行などが指定されることが多いですね。
第1順位の遺言執行者、第2順位の遺言執行者…というように、複数の遺言執行者を定めておくことも可能です。
この場合は第1順位の遺言執行者が遺言執行の業務ができないときには第2順位の遺言執行者が、第2順位の人ができない場合には第3順位の人が…といった形で遺言執行者を定めることになります。
遺言を作成してからかなり長期間経過してから相続が発生することもありますから、遺言執行者については複数人指定することも検討しておくと良いでしょう。

遺言によっても指定できない内容とは?

ここまでは遺言で指定できる内容についてみてきましたが、遺言でも指定できない内容(つまり、遺言で指定されてあったとしても無効になる内容)もあります。
以下、遺言による方法では指定できない内容について理解しておきましょう。

①結婚や離婚に関する事項

例えば、遺言で「妻と離婚する」といったような内容を記したとしても、その内容は無効となります。
離婚の意思表示は、生前にお互いの同意のもと、離婚届を提出する形で行う必要があります。

②養子縁組

非嫡出子の認知を遺言で行うことは問題ありませんが、養子縁組については遺言で行うことはできません。
養子縁組は生前の意思表示として行う必要があるので注意しましょう。
養子縁組を行っていない人に対して遺産を相続させたい場合には、遺贈をすることが考えられます。
遺贈とは簡単にいえば遺言で相続人として指定しておくことですね。
つまり他人を相続人とする方法としては、生前に養子縁組をしておく方法と、遺言で相続人に指定する方法の2つがあることになります。
これら2つのどちらが適切か?は具体的な状況を見ながら判断する必要がありますが、遺留分や相続税の基礎控除の計算方法で違いが生じる可能性があることを理解しておきましょう。

③遺留分を侵害する形での相続割合の指定

すでに何度か触れていますが、亡くなった人とごく近しい関係にある親族には、遺留分という権利が認められています。
遺言によってもこの遺留分を侵す形の相続割合を指定することはできません。
ただし、こちらもすでに解説させていただいたように、遺留分を侵害する形の遺言も一応は有効です。
遺留分を侵された人による遺留分減殺請求があって初めて遺留分は実現されることには注意を要します。

④その他

その他、自分の死後には臓器移植をするとか、大学病院に解剖を依頼するとかいった内容は、遺言に記しても無効となります。
これらを希望する場合には、生前の意思表示として行う方法が認められていますから、そちらを検討しましょう(ドナー登録など)

遺言書の種類

相続をめぐる争いを避けるために最も有効な方法の1つとして「遺言書」があります。被相続人(亡くなった人)が遺言書を作ろうと思った場合、まずどのような方式があるのかを知っておかなくてはなりません。
遺言はどのような形で残してもOKということではなく、必ず法律上指定された方法で残さなくてはなりません。
まず、遺言は大きく「普通方式」と「特別方式」の2つに分けることができます。名前のとおり、前もって遺言を残しておく場合には「普通方式」の遺言を行います。「特別方式」の遺言は、普通方式の遺言ができない、不可能な場合に用いられる遺言方式になってきます。

遺言の3つの種類

遺言を残す方法として、具体的には次の3つの方法が認められています。
・①自筆証書遺言
・②公正証書遺言
・③秘密証書遺言
逆に言うと、これら3つの方法以外のかたちで遺言を残したとしても、それは有効な遺言とは認められませんので注意しなくてはなりません。
以下、それぞれの形式の遺言について、作成時の注意点を解説させていただきます。

自筆証書遺言

一般的なものといえる自筆証書遺言について見てみましょう。自筆証書遺言は、遺言を残す人が自筆で遺言を作成するもので、現状認められている遺言の方式としてはもっとも簡便なものとなります。
自筆証書遺言は、自宅で自分の準備した筆記具などで書くことができるので遺言者としてはとても手軽な方法と思えるのですが、最大の欠点は「自宅などで保存されるので改ざんのおそれがある」「見つけた人が破り捨ててしまえばなかったことになってしまう」「真に本人が書いたものかどうかで死後、争いになることが非常に多い」「法的に有効になるための条件がいくつもあるので、遺言書が見つかっても結局無効になることが多い」などです。つまり、中途半端な知識と状況で書いた自筆証書遺言は逆に相続人の争いを誘発することにすらなってしまうわけです。ごく簡単にいうと、「手書きで書いて、印鑑を押す」というのが自筆証書遺言ですが最低限、知っておかなければならない自筆証書遺言のルールを確認してみましょう。

パソコンではなく手書きで書く

自筆証書遺言は必ず手書きでなくてはなりません。
パソコン入力で作成して印刷したり、音声テープや動画で残したりする方法は不可です。
(注)平成30年6月現在、パソコンを使って自筆証書遺言を作成する方法を可能にする法改正が検討されています。
法改正が成立した後にはルールが変わる可能性がありますので注意してください。

遺言を書いた日付が明確にわかるようにする

遺言を作成した日付が明確にわかるような記載にしておかなくてはなりません。
例えば「平成30年6月吉日」という書き方は不可で、必ず「平成30年6月17日」といったように、日付を特定できる形で作成日を記さないといけません。

財産を明確に指定する

自筆証書遺言で遺産分割の方法を指定する財産は、正確に特定できるようにしなくてはなりません。
注意が必要なのが銀行預金や土地や建物などの不動産です。
これらは解約や名義変更を行う際に遺言の内容に基づいて行うことが多いので、正確な情報が記されていないと手続きに支障が生じる可能性があります。
具体的には、銀行預金については金融機関名と支店名、口座種類や口座番号を正確に記載しましょう。
不動産については登記されている内容を登記簿謄本を取得して確認し、その内容と同じ形で遺言に記す必要があります。

訂正や加筆の仕方

いったん作成した自筆証書遺言を、後から加筆したり訂正したりするときにも、厳密にルールが決められています。
具体的には元の文章内容がわかる形で二重線を引いて消し、新しい内容を書いたうえで、遺言で使っているものと同じ印鑑で訂正印を押します。
さらに、「本行二十字加入 十五字削除」といったように小書きをして遺言をする本人が自筆で署名をする必要があります。
このように、訂正や加筆の手続きは非常に煩雑ですので、内容を変更する場合にはいったん破棄したうえで最初から作成し直すのが良いでしょう。

公正証書遺言

もし、数ある遺言の種類であえておすすめするのであれば公正証書遺言です。
公正証書遺言は、公証人という役割の人の支援を受けながら遺言を作成する方法です。日本公証人連合会によると、平成29年度において公正証書遺言の形で遺言を残した件数は11万191件で、過去10年間で最大の件数となっています。
公正証書遺言は手数料こそかかりますが、公証役場で公証人の面前で面談の形式を取るため本人確認もしっかり行いますし、真に本人が望んだ遺言内容であるかということも確認してくれます。つまり、これは本当に本人が書いたものなのか、本人がこの内容を望んでいたのかという前提に関する争いをしなくて済むわけです(それでも公正証書遺言の有効性を争う事例もあります)。ただ、公証人は遺言の中身が相続人全体に対して公平なのかといったことについて保証しているわけではありませんので、遺言内容の適切さということは次の問題になってきます。しかし、遺言書自体が本物であるという保証が得られることは相続手続き全体がスムーズに進むためには非常に重大な事柄ですから、特に争いの危険がある家庭では公正証書遺言作成は必須事項といえるでしょう。

公正証書遺言を作成する手続き

公正証書遺言は、おおまかな遺言内容を決めておいて、公証役場で公証人と相談しながら作成していくことになります(事前に電話でアポイントをとります)
遺言で実現したい内容さえ決めておけば、必要書類などは公証人が教えてくれます。
また、以下のような書類は公正証書遺言を作成するために必ず必要になりますから、事前に役所で取得しておきましょう。

  • •遺言者の印鑑証明
  • •遺言者の戸籍謄本
  • •相続人として指定する人の住民票
  • •遺産に不動産がある場合には、登記簿謄本と固定資産税の明細
  • •証人2名の職業や名前、住所や生年月日がわかるもの

遺言の原案が固まった段階で、証人となってもらう人2名を決め、あらためて公証役場に出向きます。
その場で遺言内容を確認し、遺言者と公証人、証人2名が署名押印して遺言が完成します。
完成した公正証書遺言の正本を渡してくれますので、手数料を渡して手続きは完了ということになります。

公正証書遺言を作成するときの注意点

公正証書遺言を作成する際には、以下のような点にも注意しておきましょう。

遺言執行者を指定する

遺言の内容をより確実に実現するためには、遺言の中で遺言執行者を指定しておくことが望ましいです。
遺言執行者は、その名の通り相続が発生した後に遺言の内容を執行するべく事務を行ってくれる人です。
遺産として残された銀行口座の管理を行ったり、不動産の名義変更などの事務を行ってもらったりする人ですので、法律的な実務知識がある人を指名するのが良いでしょう。
遺言執行者に必要な資格などはありませんが、司法書士や弁護士といった法律の専門家に依頼するケースが多いです。

証人になってもらう人の選び方

公正証書遺言を作成するためには、2名の証人が必要になります。
その際、証人となる人に次のような資格を満たしているかを確認しておいてください。

  • •未成年者は不可
  • •遺言に利害関係のある人や、その親族や配偶者は不可
  • •遺言書の内容を確認できない人は不可
  • •公証人の関係者や役場の職員は不可

こちらについても、法律家に遺言執行を依頼した場合には証人2名を準備してくれることが多いです。

公正証書遺言を作成するための費用

公正証書遺言を作成するためには、公証人に対して手数料を支払う必要があります。
この手数料の金額は、遺言の対象となる財産の金額によって決まります。
具体的な手数料の金額は以下の通りです。

100万円まで 手数料は5000円
200万円まで 手数料は7000円
500万円まで 手数料は1万1000円
1000万円まで 手数料は1万7000円
3000万円まで 手数料は2万3000円
5000万円まで 手数料は2万9000円
1億円まで 手数料は4万3000円
1億円を超える場合には、5000万円増えるごとに手数料が1万3000円ずつ(3億円を超える場合は1万1000円ずつ、10億円を超える場合は8000円ずつ)増えます。

公証人は法律知識を持った専門家ですので、遺言の方式や作成内容について心配がある方は自筆証書遺言よりも、公正証書遺言を選択するのが良いでしょう。

秘密証書遺言

秘密証書遺言という方式は、自筆証書遺言と公正証書遺言をミックスしたような方法です。秘密証書遺言では、公証人と証人2名に「遺言の存在」だけを確認、証明してもらいますが、遺言の内容については本人以外の人に知らせる必要がありません。遺言の内容は誰にも知られたくないけれど、死後に遺言が発見されない…という事態は絶対に避けたいという方は秘密証書遺言を選択するメリットがあります。ただ、この場合は2人以上の証人の立会が必要になりますし、手数料も必要になるため、そこまでやるのであれば公正証書遺言にするという人も多く、実務的にはあまり利用されていないのが実情です。
また、秘密証書遺言はパソコン作成や代筆もOKという特徴があります(署名は自筆で行う必要があります)
一方で、遺言の作成形式については自筆証書遺言と同様に自分でチェックする必要がありますから、もし不備があると無効となってしまう可能性があるのには注意を要します。
秘密証書遺言は作成の手続きや手間は公正証書遺言と同じなので、あえて秘密証書遺言を選択する方は少数派といえます(年間100件程度しか利用されていません)
遺言書は作り方を間違えると相続人の憶測を呼んで無用な争いを招き、むしろ最初から存在しない方が良かったということすらあるのです。自分で作ると何か問題が起こるのではないかと不安になる人は文案も含めて専門家に任せた方が安心できます。

※特別方式遺言とは?

遺言書の作成方式には大きく分けて「普通方式」と「特別方式」の2種類があります。普通方式は日常の生活を送る中で書かれる遺言書を、特別方式は日常とは異なる状況のもとで書かれる遺言書を想定した方式です。普通方式の中には、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」があり、中でも多く使われる方式が公正証書遺言と自筆証書遺言となっています。特別方式の中には、臨終の状態にあることを想定した「一般危急時(臨終)遺言」と「難船危急時(臨終)遺言」、そして隔絶された場所にいることを想定した「一般隔絶地遺言」「船舶隔絶地遺言」がありますが、特別方式はいずれも利用されることがきわめて稀であるといえます。

「特別方式の遺言書」が認められる場合

一方で、これらの方式によって遺言を作成している時間的な余裕がない緊急事態では、「特別方式の遺言書」の作成が認められます。
具体的には病気やけがで危篤状態にある人や、船が遭難したなどの状態にあるときに、一定の人数の証人の立ち合いを求めることで遺言を有効に残すことができます。
なお、このような緊急事態から脱してから6か月以上その遺言者が生存している場合には、特別方式の遺言書は無効となります。

※普通方式遺言、3種類の遺言書のポイント

種類 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法

全文自筆で記載、氏名・日付を自書し、押印が必須。訂正は二重線で消し、正しい記述をする。

本人及び証人2名で公証役場へ行き、本人が遺言内容を口述し、それを公証人が記述をする。

本人が証書に著名・押印した後、封筒に入れ封印して公証役場で証明してもらう。

証人 不要 証人2名以上 公証人1名・証人2名以上
家庭裁判所の検認 必要 不要 必要
遺言書の開封

遺言書に封がされている場合、家庭裁判所において相続人等の立ち合いを以って開封

開封手続きは不要

家庭裁判所において相続人等の立ち合いのもと開封

メリット

作成が簡単、費用が安価、遺言内容を秘密にできる

保管の心配必要。自分の意志に従った遺言を確実に残せる。検認手続きは不要

遺言の存在を明確にできる
遺言内容を秘密にできる

デメリット

検認手続きが必要
紛失リスク、要件不備による争いが起こるリスク

遺言内容が漏れる可能性がある。若干手間と費用がかかる

検認手続きが必要
要件不備による紛争がおこりやすい

遺言が無効になる具体例と注意点

上で説明させていただいた3つの遺言の方法(特別方式の遺言を含めると4つ)に従っていれば遺言は有効に残すことができます。
しかし、一見有効な形であったとしても、内容的な不備や修正加筆の方法のミスで遺言が無効となってしまう場合は少なくありません。
以下、遺言が無効となってしまう代表的なケースについて、具体的に解説させていただきます。

①加筆や修正方法の間違い

自筆証書遺言の説明でも触れましたが、遺言の加筆や修正は法律上の要件を満たしていない場合には無効となってしまう可能性があります。
不安のある方は公正証書遺言の形で遺言を残すか、いったん作成した自筆証書遺言は破棄して新しく書き直すのをおすすめします。
また、公正証書遺言の形で残した遺言の修正や加筆をしたい場合には、原則として一から作成をやり直すことになります。
公正証書や補充証書といった形で修正加筆を行うことも考えられますが、基本的には作り直しが望ましいでしょう。
なお、作成要件として有効な複数の遺言が残されている場合には、遺言の作成日付が新しいものが優先されます。

②内容が不明確な遺言

遺言の内容は当事者が後からみて判断ができる必要があるだけでなく、金融機関や役所の手続きでも使用する必要があるので、内容は正確に記さなくてはなりません。
財産目録に記す銀行預金などは支店や口座種類、口座番号まで記し、不動産については登記簿謄本を参照しながら正確な情報を記載するようにしましょう。
不動産については遺産相続が行われた後、前の所有者から相続人への名義変更(相続登記)を行う必要があります。
その際、法務局で「遺言に基づく移転登記」であることを認めてもらうためには、遺言の内容が登記簿謄本の内容と一致していなくてはなりません。

③利害関係者が書かせたと思われる内容

遺言は、遺言者が自分の判断のもとに自書しなくてはなりません。
利害関係のある相続人の一部などが手を添えて書かせたなどの疑いが生じた場合には、その遺言は無効となってしまう可能性があります。
このような場合、筆跡鑑定などを通して厳密に調査が行われることもありますから、トラブルとならないためにも遺言者が自分で自筆することが必要です。
もし自筆するのが難しい場合には、公正証書遺言の形式を選択するようにしましょう。
公正証書遺言では公証人があなたの遺言内容を聞き取り、文書作成については代行してくれます。

④遺言能力が認められないケース

遺言は、15歳以上の人であれば単独で行うことが可能になります。
ただし、精神上の障害や認知症などによって正常な判断能力がない状態で作成された遺言と判断された場合には、その遺言は無効となってしまう可能性があります。
例えば、遺言を作成した時に認知症の症状があったかどうかが争われるケースでは医師の診断書やカルテなどをもとに裁判所が判断するといったようなことが行われます。
また、認知症などを原因に家庭裁判所の審判によって成年被後見人とされた人であっても、遺言そのものは有効に行うことが可能です。
ただし、成年被後見人が遺言をするためには、医師2名以上の立会いと事理弁識能力の保証のもと行う必要があります。
被保佐人や被補助人の審判を受けた人は、こうした制約を受けることなく遺言を残すことが可能です。

⑤複数人が共同で遺言している場合

法律上、遺言は単独の意思表示として行わなければならないとされています。
理由としては、共同で遺言をした複数人のうち、相続の発生が前後した場合に、まだ生きている人の相続の権利がどうなるのかといった問題が生じることが挙げられます。
「両親から息子へ」といったように、複数人が共同で遺言を残してもそれは無効となってしまいますから注意が必要です。

遺言をめぐって生じる可能性があるトラブルの内容

法律上の要件を満たすように注意し、厳重に保管していた遺言であっても、遺産協議の場でトラブルの原因となるケースは少なくありません。
遺言の内容や扱いをめぐって生じる可能性があるトラブルの具体的な事例についても知っておきましょう。
いざ相続が発生した後になると、遺言は強力な効力を持つため、内容に不備があった時にその解釈をめぐって争いになることも少なくありません。
どのようなトラブルが生じる可能性があるのかを知り、遺言作成時にトラブルを未然に防ぐ手立てを考慮しておくことが大切です。

①遺言書を遺族が勝手に開封してしまった

自筆証書遺言の場合、相続発生後も遺言は勝手に開封してはならず、必ず家庭裁判所による検認の手続きを経て開封しなくてはなりません。
もし家庭裁判所の検認を経ずに勝手に開封した場合には、5万円以下の過料が課せられる可能性がありますので注意してください。
なお、勝手に開封してしまった遺言についても遺言の効力そのものは有効ですが、内容に手が加えられていないか?など、遺産分割協議の場でトラブルとなる可能性がありますので絶対に遺言は勝手に開封してはいけません。
公正証書遺言や秘密証書遺言の場合には、公証役場で原本が保管されていますから、開封時に家庭裁判所の検認は必要ありません。

②遺言書が後になって出てきた

意外に多いのが、遺産分割協議が終わった後になって、遺言がひょっこり出てくるケースです。
この場合の解決方法としては2種類あり、1つは遺言の内容を実現するためにいったん遺産分割協議を白紙に戻すことです。
もう1つは、遺産分割協議に参加した相続人全員が共同で、遺言の内容は無視して完了した遺産分割協議の内容を維持することを決定することです。
ただし、遺言の中で、すでに行った遺産分割協議の相続人以外の利害関係人がいることが明らかになった場合(遺言で認知がされている場合や、法定相続人以外の人が相続人に指定されているような場合)には、その人たちの申し立てがあった場合には、遺産分割協議は無効となってしまいます。
遺言が後から出てきた場合には、遺産分割協議に参加した人だけでなく、利害関係人となる人全員に声をかけ、善後策を検討することが後のトラブル回避につながります。

③隠し子の発覚

生前には秘密にしていたけれど、遺言で隠し子(非嫡出子)の存在が告白され、認知もされている…というケースは少なくありません。
残された家族としては裏切られた気持ちになることもあるかもしれませんが、認知がされている以上、その非嫡出子の人には法律上嫡出子とまったく同じ相続の権利が認められます。
もし非嫡出子の人を排除して遺産分割協議を行ってしまうと、その非嫡出子には遺留分が当然認められますから、後から遺留分減殺請求などの形で遺産の分割をやり直すことにもなりかねません。
遺言で隠し子の存在が発覚した場合には、冷静に遺産分割協議を進めていくことが必要です。
場合によっては弁護士などの第三者の専門家に間に入ってもらうことが遺産分割協議をスムーズに進めるために役立つこともありますから、検討してみるとよいかもしれません。

④遺言に記載されている財産がない

遺言には記載されているものの、実際にはその財産がないという場合も問題になりがちです。
例えば、遺言に「○銀行の定期預金については長男に全額相続させる」というような記載があったけれど、実際に相続が発生した後に調査してみたら、その口座は解約されてお金は使い込まれていた…というケースが考えられます。
重要なのは、遺言に記載されている財産を誰が使ったのか?です。
もし遺言を残した本人(亡くなった人)がその財産を自分で使ったのだとしたら、遺言の内容はその部分について単に無効になるだけです(その部分について取り消したとみなされます:民法1023条第2項に規定があります)
遺言をした本人は遺言の内容に拘束されることはありませんから、遺言を作成した時点では存在した財産を、相続発生時までに使い切ってしまったとしてもそれは仕方のないことです。

相続人の一部が遺産に手を付けていた場合

一方で、相続人の一部が勝手に相続財産に手を付けていたような場合には問題となります。
この場合、実際にお金を使い込んだ相続人に対して、それ以外の相続人が不当利得の返還請求を行ったり、不法行為に基づく損害賠償請求を行ったりすることが考えられます。
(厳密に言うと、亡くなった人が行使できるこれらの権利を、相続人となる人が相続したという扱いになります)
多くは裁判で争うことになりますから、このような事例に遭遇した場合には弁護士に相談するようにしましょう。

遺言はどのように保管するのが良い?

せっかく残した遺言も、あなたが亡くなった後に遺族が発見してくれないと何の意味もありません。
公正証書遺言や秘密証書遺言の形で遺言を残した場合には、遺言が発見されずに放置されるという可能性はありませんが、自筆証書遺言の場合には問題となる可能性があります。
自筆証書遺言の形で遺言を残すときには、丈夫な紙に書いて封筒に入れておくとともに、家族が見当の付けられる場所に保管しておくようにしましょう(仏壇の棚や金庫など)
自宅に保管するのが心配な場合は、銀行の貸金庫を利用するか、弁護士などに依頼して保管してもらうことも可能です。
なお、平成30年の法改正においては、法務局で保管してもらう方法についても法整備が進んでいます。
今後は遺言の保管方法については選択肢が広がっていくものと思いますが、現状、不安がある場合には公正証書遺言や秘密証書遺言を利用するようにしましょう。

遺言が無い場合にはどうなる?

もし遺言が残されていなかった場合には、民法という法律のルールに従って遺産が分割されることになります。
民法のルールも一応は平等な分割となるように配慮がされていますが、例えば「配偶者は2分の1、子はそれぞれ4分の1…」というように、ごく大まかな規定があるにすぎません。
そのため、遺言がない場合には遺族同士が集まって具体的な分割の方法を細かく話し合いで決める必要が生じます。
利害関係を持つ当事者どうしが財産をめぐって話し合いを行うわけですから、どうしてもトラブルになる可能性が高くなるのが現実です。
仲の良い親族が相続協議をきっかけにいがみ合うようになる…というのは、決してドラマの中だけの話ではないのです。
遺言を残しておくことは、残された遺族が相続をめぐる話し合いを解決する際の指針となりますから、財産を所有している人は何らかの形で遺産分割の具体的な方法について遺言を残しておくことが望ましいといえるでしょう。

遺言執行者の指定

遺言書を利用すれば被相続人(亡くなった人)の思い通りに財産を承継させることができますが、確実に手続きを進めるには「遺言執行者の指定」が重要です。

遺言執行者とは

当然のことですが、遺言者自身は自分が亡くなった後に自分の遺言書の内容を実現させる手続きをすることはできません。確実に手続きしてほしいと考える場合、必要になってくるのが「遺言執行者」という役割の人です。遺言執行者は遺言の内容を具体化するために「相続人の代理人」としての働きをすることになっています。もし遺言執行者が選任されていないと、手続きの内容によっては相続人全員に協力を求めなくてはならないことになりますが、そうなると結局誰かが協力を拒めば実質的に手続きが進まないことになり、遺言書を書いた意味があまりなくなってしまいます。

遺言執行者しかできないこと

遺言執行者が指定されていれば、その人にしかできない手続きというのもあります。これは、遺言書により「認知」をした場合や「相続人の廃除(著しい非行があったので相続人から外す手続き)」や「廃除の取り消し」をした場合です。
これらはたとえ相続人がいるとしても、遺言執行者にしかすることができないことになっています。逆に、相続財産を相続人に配分する行為などは遺言執行者がいるケースにおいて相続人がすることも差し支えありません。

遺言執行者の選任方法

遺言執行者を選任する基本的な方法は「遺言書の中で指定すること」です。しかし、もし指定がなかった場合や、指定されていた遺言執行者がいなくなった場合には、相続人や遺言者の債権者や受遺者(遺言で財産を受ける者)は家庭裁判所に申し立てることにより遺言執行者を選任してもらうことができます。

遺言執行者の解任や辞任はできる?

遺言執行者になれないとされている者(欠格事由)は「未成年者」と「破産者」の2つだけですので、選任の際にはこれらの者を避けることが必要です。そして、いったん就任している遺言執行者を解任することについてですが、遺言執行者が任務を怠る、あるいはその他正当な事由があるときなどは、利害関係にある人は遺言執行者の解任を家庭裁判所に請求することができます。同様に、遺言執行者は正当な事由があれば家庭裁判所に辞任の申し出をすることができ、認められれば辞任することもできます。
遺言執行者は遺言者の意思を実現するという意味で非常に重要な役職です。相続人の中の一人であってもよいのですが、相続開始後の手続きが円滑に進められるかどうかなども考慮して慎重に選ぶことが必要です。

遺言書の検認とは?手続きが必要になる場合も解説


遺言書の検認とは?

自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合

遺言書を発見!

相続人立会いのもと家庭裁判所で開封
公正証書遺言以外の遺言は、記載方式が有効かどうか、家庭裁判所の確認=検認が必要

自筆証書遺言・秘密証書遺言の場合

検認

遺言執行者の選任

相続手続きへ

 

公正証書遺言の場合

遺言書を発見!

相続人立会いのもと家庭裁判所で開封
公正証書遺言以外の遺言は、記載方式が有効かどうか、家庭裁判所の確認=検認が必要

公正証書遺言の場合

遺言執行者の選任

相続手続きへ

原則として、遺言書は相続開始後に家庭裁判所に「検認」という手続きを取らなければなりません。検認はどのような制度で、どうやって手続きをすればよいのでしょうか。

遺言書は公正証書遺言の場合を除き、相続の開始後すみやかに家庭裁判所に提出して「検認」という手続きをしなければならないことになっています。検認というのは一種の証拠保全手続きのようなものであり、確かにこの日にこの状態で遺言書があったというお墨付きを家庭裁判所に与えてもらうためにするものです。必ずしも文書のタイトルが「遺言書」である必要はなく、封がされているか否かも関係ありません。また、 「覚書」や「重要書類」などという名前になっているものでも申し立てることができます。要するに、被相続人(亡くなった人)の作成名義がついており、その人の意思表明であると思われるものなら検認の必要があるわけです。具体的には、相続が開始した場所(被相続人の最後の住所地)の家庭裁判所に検認の申立書を提出して行います。遺言書1通ごとに800円の収入印紙、そして家庭裁判所の指定する郵便切手を納付するくらいですので、それほど費用はかかりません。
もし遺言書に封がしてある場合は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立ち会いがなければ開封することはできないとされています。そのため、封印されている遺言書の開封手続きがある場合は家庭裁判所があらかじめ期日を定めて相続人全員に検認期日を通知し、裁判所に呼び出すこととなっています(「検認期日」とよばれます)。ただ、実務的には所在不明の相続人は呼び出し不要と解されています。封がされていない遺言書については呼び出し不要と解釈することもできますが、遺言書の存在や内容などを知らしめるため、現実には呼び出しの通知がされることが通例となっています。
そして、もし相続人全員が出席できなかったとしても検認手続きそのものは有効に行うことができます。検認手続きが済んだ遺言書には家庭裁判所によって「検認済み」の表示がされ、立ち会わなかった申立人や相続人などには検認がなされた旨の通知がされる扱いになっています。

検認の手続きまとめ

検認の手続き

①家庭裁判所に検認の申し立てをする

遺言書を預かっている人、または遺言書を発見した相続人が、遺言者(故人)の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申し立てをする

②検認に必要な費用

検認の申し立てには、遺言書1通につき収入印紙800円が必要。また、家庭裁判所との連絡用に郵便切手が必要になるので、切手代は各家庭裁判所で確認を

③必要な書類を準備する

  • ・申立書
  • ・遺言者の戸籍謄本(出生から死亡までの全ての戸籍)
  • ・相続人全員の戸籍謄本

家庭裁判所の検認の流れ

家庭裁判所の検認の流れ

①家庭裁判所から検認を行う日が郵便で通達

申立書や提出書類に不備がなければ、申し立てから約1カ月後に家庭裁判所から相続人全員に検認の期日が郵送される

②指定期日に家庭裁判所で遺言書の検認を受ける

検認をうける遺言書、印鑑、その他指定物を持参

③裁判官が出席した相続人立会いのもと、遺言書を開封

遺言書の状態や筆跡、内容などを確認する

④遺言書の内容を執行するために「検認済証明書」の発行を申請する

申請には遺言書1通につき収入印紙150円と申立人の印鑑が必要

検認が必要になる遺言の種類

検認が必要になるのは、「公正証書以外」で遺言書およびそれに準じる書類が作成されていた場合です。公正証書遺言であれば、もともと公証役場に本人と証人2人が出向いて公証人の立ち会いのもとに作られているわけですから証拠能力としては十分であり、検認する必要がないのです。

勝手に開封したらどうなるのか?

もし、遺言書に封がされている場合、勝手にそれを開けてはなりません。早く中身を確認したいというのは人情なのですが、もし見つけた人が勝手に開けてしまうと5万円以下の過料を課せられることがあります。ただ、勝手に開けたからといってその人の相続権がなくなるわけでもなく、遺言書自体が無効になるわけでもありません。開けてしまったとしてもそのままの状態ですみやかに検認を請求しなければならないのです。

検認しても遺言書が有効とは限らない!

検認手続きが済んだからもう遺言書で揉めることはないのかというと、残念ながらそのようなものではありません。検認はあくまで遺言書がその状態で存在したということを証明するだけのことであり、その後の改ざんを防ぐ効果しかありません。つまり、遺言書の内容の適切さについては検認を受けたからといって保証してもらえるわけではなく、相続人がその内容を受け入れるか、納得がいかないようであれば話し合いや調停、裁判などで解決するしかないということになります。
検認そのものは遺言書の有効、無効を決定づけるものではありません。しかし、不動産の名義変更の手続きに自筆証書遺言を使う場合、検認がされていないものは却下されるなど、実務的には極めて重要な手続きとなっていますので忘れずに行わなければなりません。

不当な遺言書についての対応

亡くなった人が最低限家族に残さなくてはならない遺留分権利というものがあります。

「私の遺産はすべて愛人に相続する」
遺言書を開封したらとんでもない記載があったなんてことも考えられます。不当な遺言書が出てきた場合には最低限の権利の主張をすることができます。この最低限の権利を「遺留分」といいます。
「遺留分」というのは、相続人の中で一定範囲の人たちに一定の相続財産の取り分を保障するという制度のことです。相続人は血縁という観点から見て被相続人に近いためある程度の権利を持たせることが妥当であること、また、被相続人の亡き後にその人たちの生活を守るという意味もあります。遺留分が認められるのは被相続人から見て関係の近い人たちということになりますが、具体的には法定相続人の中の配偶者、子供、直系尊属(親、祖父母など)に与えられています。兄弟姉妹が相続人になる場合には遺留分はありません。相続人がいれば「遺留分減殺請求」といって、被相続人の死後に一定金額の取り戻し請求をすることができます。

(遺留分を主張できる親族)

遺留分を主張できる親族は、兄弟姉妹以外の法定相続人です。
具体的には、亡くなった人の配偶者と直系尊属(父母や祖父母)、直系卑属(子や孫)だけが遺留分を主張することができます。
亡くなった人の兄弟姉妹には遺留分が認められないので、例えば、法定相続人となるのが兄弟姉妹だけという状態で、遺言書に「全財産を愛人に相続させる」とあった場合には、愛人が全財産を取得することになります。

(主張できる遺留分の割合)

遺留分は法定相続分に2分の1をかけた割合となります。
例えば、亡くなった人に妻と子供2人(長男と次男)の合計3人の法定相続人がいて、愛人に全財産を相続させるという遺言書があった場合に、遺留分の主張を行なった場合の各自の相続分は以下のようになります。
妻 :法定相続分2分の1×2分の1=遺留分は4分の1
長男:法定相続分4分の1×2分の1=遺留分は8分の1
次男:法定相続分4分の1×2分の1=遺留分は8分の1
愛人:遺言による相続分(全財産)−遺留分で控除される分(2分の1)=相続分は2分の1

(遺留分は「遺留分減殺請求」がされて初めて問題となる)

家族には法律上遺留分という相続割合が認められますが、実際には「遺留分減殺請求」という手続きを行わないと自分の遺留分を確保することはできません。
遺留分減殺請求では遺言書等で相続人とされた人を相手として話し合いを行いますが、相手が話し合いに応じない場合や主張が食い違う場合には家庭裁判所に対して調停を申し立てることができます。

遺留分以外でも不当な遺言書は最低限の権利の主張ができる

遺産分割協議でもめないために、被相続人の意思である「遺言書」を残すのはとても有効な手段といえます。基本的に相続において、亡くなった被相続人の意志は何よりも尊重されるものであり、優先すべきという考えがあるためです。専門家の下でつくる「公正証書遺言」であればほぼ問題はないでしょうが、被相続人が個人で作成する「自筆証書遺言」では、ときに驚きの記述がなされていることも。法定相続分から逸脱した内容に「こんなの不当だ!」と思っても、有効な遺言書を覆すことは難しいのが現状。ただし、最低限の権利を主張することは可能です。遺言書自体は普通でも、実際に残っている遺産とかけ離れているときもあります。考えたくはありませんが、同居家族などによって使い込みや財産隠しが行われている場合もありますので、そのときは「お金の動き」を調べる必要があります。

その他の理由で遺言書の内容に不当を感じる場合には

前提として「有効な遺言書」は覆せない。ただし……
書いてある内容より遺産が少ない

遺言書が書かれた日から目減りした分は考慮されず、相続時点のもので計算します。ただし、不自然なほど減っている場合、他相続人による財産隠しや使い込みの可能性があります。
生前に聞いていた内容と違う

口約束ではなんの根拠もないため、遺言書が有効となります。書面で残しておけば、遺言書の日付よりあとの場合、新しい書面が有効となります。
書いてない遺産が出てきた!

遺言書にない通帳や金券が出てきた……ということも時にあり得ます。書かれている分は遺言書通りに分割し、新たに見つかった分はまた別に遺産分割協議を行います。
まず遺言書が有効か否かを確認しよう

 

専門家からのアドバイス

弁護士:渡邉 祐介

確実な遺言書が円満相続のカギに

遺言書を残す方法として多く使われているのが「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2つです。ただ、自筆証書遺言は保管場所が自宅などになるため、隠匿や改ざんなどがなされるおそれがあります。確実に保存するには公証役場で作成する「公正証書遺言」がおすすめです。遺言書を残すことは、確実な被相続人の意思の実現や紛争の防止を中心にメリットがたくさんあります。もし後で気が変わってもつくり直しができますので、最初の遺言書作成は早いに越したことはありません。とはいえ、突飛な内容は逆に相続人同士の紛争の種となりますので、税理士、司法書士、弁護士といった専門家のアドバイスの下で、法的にも内容的にも妥当なものをつくることが大切です。



まとめ

遺言書を残すことの一番の効果というのは「遺産分割協議をしなくてよい=無駄な紛争がなくなる」「遺言執行者がいればその人だけで手続きできるため簡単」ということでしょう。とりわけ、紛争防止の効果は絶大です。
遺産をめぐるトラブルの原因の多くは「被相続人の生前の意思がはっきりしない」ことにあります。「親父は俺にくれると言っていた」「そんなことは聞いたことがない」といったやりとりから次第に泥沼化していくのです。亡くなる者が自分の残した財産をどうしたいのか、それがはっきりするだけで紛争の原因の多くは事前に取り除くことができます。子供たちの兄弟仲が良かったから大丈夫という油断はくれぐれもするべきではありません。親が生きているからこそ親に気を遣って喧嘩しないようにしていただけだったという兄弟が世の中にはたくさんいるものです。自分の希望する財産の行先を遺言書という形でしっかり残しておくことが親としての義務といえるのではないでしょうか。
遺言書を残す方法として多く使われているのが「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2つです。ただ、自筆証書遺言の場合、保管場所が自宅などになるため隠匿や改ざんなどされるおそれが残ってしまいます。確実に作った時の状態で保存するには公証役場で作成する「公正証書遺言」がおすすめです。公正証書遺言は、公証人と証人2人の立会のもとに作成しますので、本人確認や意思確認がしっかりされる上に、ずっと原本が公証役場に保管されますから遺言の存在さえ伝えておけば確実に自分の意思を実現することができます。
このように遺言書を残すことは確実な被相続人の意思の実現や紛争の防止を中心にメリットがたくさんあります。もし後で気が変わっても作り直しができますので、最初の遺言書作成は早いに越したことはありません。税理士、司法書士といった専門家のアドバイスのもとで法的に問題のないものを作るように心がけたいものです。