遺言書パーフェクトガイド|メリット・種類・作成方法・検認まで

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遺言書パーフェクトガイド|メリット・種類・作成方法・検認まで

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遺言書というと、一部の特別なお金持ちだけが書くものだと思っていませんか?しかし、ごく平均的な家庭の人でも遺言書を残したことの効果が大きく発揮されるケースのほうが多いでしょう。
まずは遺言書があるとどのようなメリットがあるのかを理解し、それぞれの遺言の種類と作成方法、検認までの手続をみていくことにしましょう。

目次

1 遺言書の4つのメリット

特定の相続人に遺産を残せる

続財産には不動産、預貯金、株式、自動車などさまざまな種類のものがあり、それらすべてを法定相続人(民法で定められた範囲の相続人)に法律の決まり通りに分けることが適切なわけではありません。
それぞれの家庭により、誰にどの財産をどのくらい相続させたいかという考え方は異なっていて当然なのです。しかし、基本的に民法では被相続人(亡くなった人)との関係によって相続分が決められており、それを覆すには遺言書で指定する、遺産分割協議をする、誰かが相続放棄をするかといった限定的な方法となります。
それらの中で、確実に「この人に相続させたい」という被相続人の意思を反映させるには遺言書が最も適しているのです。

相続人以外の人に遺産を残せる

法定相続人が遺産を相続することが必ずしも適切でないこともあります。たとえば実の子供は実家をまったく顧みなかったが、同居していた長男の嫁が何十年も自分たちの世話をして介護まで担ってくれたようなケースでは、そちらに遺産を残したいと思うのも自然な感情でしょう。
ただ、嫁との間に養子縁組をしておくか、遺言書で「嫁の誰々にこの財産を遺贈する」。といった形の遺言書を作っておかなければ法律上は1円も渡らないのです。こういった事情での相続紛争も実際に多くの家庭で起きていますので、世話をしてもらった親の側が、意識レベルのはっきりしているうちに遺言書作成を検討するべきでしょう。遺言書は認知症により意思表示がしっかりできなくなっていたらもはやすることはできませんから、少し早いかな?と思うくらいの時期に作ることが大切です。

子供の認知や相続人の廃除ができる

「実は婚外で子供を作ってしまったけれど、生前に認知すると妻との関係が崩壊してしまう」とか、「子供から度重なる暴力を振るわれていたので一切の財産を渡したくない」などの事情がある人は、遺言による「認知」「廃除(相続人から外すこと)」をすることができます。遺言によりこのような行為をする場合、本人はもういないわけですから遺言執行者(遺言内容を実現するための手続きをする人)が家庭裁判所への届出や申立てをすることになります。つまり、遺言執行者を遺言書の中で定めておくことが基本になるのです。
ただ、万一被相続人の子供ではないのに認知がされたような場合であれば、それを覆すために子や子の母親は認知の無効を主張できます。また、廃除についても、相続人としての最低限の権利である「遺留分(たとえ遺言書で他の相続人に相続させるとされていても主張できる取り分)」を奪ってしまう行為ですから、客観的に見て「廃除することが妥当」と思われる事情が必要ということは覚えておかなくてはなりません(実際それほど簡単に裁判所に認められるわけではないということです)。

遺産トラブルを避けることができる

遺言書を残すことの一番の効果というのは「遺産分割協議をしなくてよい=無駄な紛争がなくなる」「遺言執行者がいればその人だけで手続きできるため簡単」ということでしょう。とりわけ、紛争防止の効果は絶大です。
遺産をめぐるトラブルの原因の多くは「被相続人の生前の意思がはっきりしない」ことにあります。「親父は俺にくれると言っていた」「そんなことは聞いたことがない」といったやりとりから次第に泥沼化していくのです。亡くなる者が自分の残した財産をどうしたいのか、それがはっきりするだけで紛争の原因の多くは事前に取り除くことができます。子供たちの兄弟仲が良かったから大丈夫という油断はくれぐれもするべきではありません。親が生きているからこそ親に気を遣って喧嘩しないようにしていただけだったという兄弟が世の中にはたくさんいるものです。自分の希望する財産の行先を遺言書という形でしっかり残しておくことが親としての義務といえるのではないでしょうか。

2 遺言書の種類

相続をめぐる争いを避けるために最も有効な方法の1つとして「遺言書」があります。被相続人(亡くなった人)が遺言書を作ろうと思った場合、まずどのような方式があるのかを知っておかなくてはなりません。

自筆証書遺言は全文自筆で!

一般的なものといえる自筆証書遺言について見てみましょう。自筆証書遺言は、自宅で自分の準備した筆記具などで書くことができるので遺言者としてはとても手軽な方法と思えるのですが、最大の欠点は「自宅などで保存されるので改ざんのおそれがある」「見つけた人が破り捨ててしまえばなかったことになってしまう」「真に本人が書いたものかどうかで死後、争いになることが非常に多い」「法的に有効になるための条件がいくつもあるので、遺言書が見つかっても結局無効になることが多い」などです。つまり、中途半端な知識と状況で書いた自筆証書遺言は逆に相続人の争いを誘発することにすらなってしまうわけです。次に、最低限、知っておかなければならない自筆証書遺言のルールを確認してみましょう。「全文を自筆で書く(ワープロは不可)」「署名する(芸名やペンネームがあればそれでもOK)」「日付を正確に入れる(〇歳の誕生日などでも日付が特定できればOK)」「押印する(認印でもOK)」といったものがありますが、ポイントとしては書いた人、書いた日、対象の財産をきっちりと特定し、読んだ人を決して迷わせない内容にするということです。

参考:自筆証書遺言の書き方と注意点を解説!

公正証書遺言は確実でおすすめな方法

もし、数ある遺言の種類であえておすすめするのであれば公正証書遺言です。公正証書遺言は手数料こそかかりますが、公証役場で公証人の面前で面談の形式を取るため本人確認もしっかり行いますし、真に本人が望んだ遺言内容であるかということも確認してくれます。つまり、これは本当に本人が書いたものなのか、本人がこの内容を望んでいたのかという前提に関する争いをしなくて済むわけです(それでも公正証書遺言の有効性を争う事例もあります)。ただ、公証人は遺言の中身が相続人全体に対して公平なのかといったことについて保証しているわけではありませんので、遺言内容の適切さということは次の問題になってきます。しかし、遺言書自体が本物であるという保証が得られることは相続手続き全体がスムーズに進むためには非常に重大な事柄ですから、特に争いの危険がある家庭では公正証書遺言作成は必須事項といえるでしょう。

参考:公正証書遺言の書き方と注意点を解説!

あまり利用されていない秘密証書遺言

秘密証書遺言という方式は、自筆証書遺言と公正証書遺言をミックスしたような方法です。遺言書を遺言者が自ら書き、それを公証役場に持参して自分の遺言書であると証明してもらうのです。ただ、この場合は2人以上の証人の立会が必要になりますし、手数料も必要になるため、そこまでやるのであれば公正証書遺言にするという人も多く、実務的にはあまり利用されていないのが実情です。強いてメリットを挙げるのであれば、遺言書の内容を知られたくないが存在の記録を残したいという人に向いているということでしょう。
遺言書は作り方を間違えると相続人の憶測を呼んで無用な争いを招き、むしろ最初から存在しない方が良かったということすらあるのです。自分で作ると何か問題が起こるのではないかと不安になる人は文案も含めて専門家に任せた方が安心できます。

参考:秘密証書遺言とは?書き方と注意点を解説!

※特別方式遺言とは?

遺言書の作成方式には大きく分けて「普通方式」と「特別方式」の2種類があります。普通方式は日常の生活を送る中で書かれる遺言書を、特別方式は日常とは異なる状況のもとで書かれる遺言書を想定した方式です。普通方式の中には、「公正証書遺言」「自筆証書遺言」「秘密証書遺言」があり、中でも多く使われる方式が公正証書遺言と自筆証書遺言となっています。特別方式の中には、臨終の状態にあることを想定した「一般危急時(臨終)遺言」と「難船危急時(臨終)遺言」、そして隔絶された場所にいることを想定した「一般隔絶地遺言」「船舶隔絶地遺言」がありますが、特別方式はいずれも利用されることがきわめて稀であるといえます。

※普通方式遺言のまとめ

種類 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言
作成方法

全文自筆で記載、氏名・日付を自書し、押印が必須。訂正は二重線で消し、正しい記述をする。

本人及び証人2名で公証役場へ行き、本人が遺言内容を口述し、それを公証人が記述をする。

本人が証書に著名・押印した後、封筒に入れ封印して公証役場で証明してもらう。

証人 不要 証人2名以上 公証人1名・証人2名以上
家庭裁判所の検認 必要 不要 必要
遺言書の開封

遺言書に封がされている場合、家庭裁判所において相続人等の立ち合いを以って開封

開封手続きは不要

家庭裁判所において相続人等の立ち合いのもと開封

メリット

作成が簡単、費用が安価、遺言内容を秘密にできる

保管の心配必要。自分の意志に従った遺言を確実に残せる。検認手続きは不要

遺言の存在を明確にできる
遺言内容を秘密にできる

デメリット

検認手続きが必要
紛失リスク、要件不備による争いが起こるリスク

遺言内容が漏れる可能性がある。若干手間と費用がかかる

検認手続きが必要
要件不備による紛争がおこりやすい

3 遺言執行者の指定

遺言書を利用すれば被相続人(亡くなった人)の思い通りに財産を承継させることができますが、確実に手続きを進めるには「遺言執行者の指定」が重要です。

遺言執行者とは

当然のことですが、遺言者自身は自分が亡くなった後に自分の遺言書の内容を実現させる手続きをすることはできません。確実に手続きしてほしいと考える場合、必要になってくるのが「遺言執行者」という役割の人です。遺言執行者は遺言の内容を具体化するために「相続人の代理人」としての働きをすることになっています。もし遺言執行者が選任されていないと、手続きの内容によっては相続人全員に協力を求めなくてはならないことになりますが、そうなると結局誰かが協力を拒めば実質的に手続きが進まないことになり、遺言書を書いた意味があまりなくなってしまいます。

遺言執行者しかできないこと

遺言執行者が指定されていれば、その人にしかできない手続きというのもあります。これは、遺言書により「認知」をした場合や「相続人の廃除(著しい非行があったので相続人から外す手続き)」や「廃除の取り消し」をした場合です。
これらはたとえ相続人がいるとしても、遺言執行者にしかすることができないことになっています。逆に、相続財産を相続人に配分する行為などは遺言執行者がいるケースにおいて相続人がすることも差し支えありません。

遺言執行者の選任方法

遺言執行者を選任する基本的な方法は「遺言書の中で指定すること」です。しかし、もし指定がなかった場合や、指定されていた遺言執行者がいなくなった場合には、相続人や遺言者の債権者や受遺者(遺言で財産を受ける者)は家庭裁判所に申し立てることにより遺言執行者を選任してもらうことができます。

遺言執行者の解任や辞任はできる?

遺言執行者になれないとされている者(欠格事由)は「未成年者」と「破産者」の2つだけですので、選任の際にはこれらの者を避けることが必要です。そして、いったん就任している遺言執行者を解任することについてですが、遺言執行者が任務を怠る、あるいはその他正当な事由があるときなどは、利害関係にある人は遺言執行者の解任を家庭裁判所に請求することができます。同様に、遺言執行者は正当な事由があれば家庭裁判所に辞任の申し出をすることができ、認められれば辞任することもできます。
遺言執行者は遺言者の意思を実現するという意味で非常に重要な役職です。相続人の中の一人であってもよいのですが、相続開始後の手続きが円滑に進められるかどうかなども考慮して慎重に選ぶことが必要です。

4 遺言書の検認とは?手続きが必要になる場合も解説!

原則として、遺言書は相続開始後に家庭裁判所に「検認」という手続きを取らなければなりません。検認はどのような制度で、どうやって手続きをすればよいのでしょうか。

遺言書の検認とは?

遺言書は公正証書遺言の場合を除き、相続の開始後すみやかに家庭裁判所に提出して「検認」という手続きをしなければならないことになっています。検認というのは一種の証拠保全手続きのようなものであり、確かにこの日にこの状態で遺言書があったというお墨付きを家庭裁判所に与えてもらうためにするものです。必ずしも文書のタイトルが「遺言書」である必要はなく、封がされているか否かも関係ありません。また、 「覚書」や「重要書類」などという名前になっているものでも申し立てることができます。要するに、被相続人(亡くなった人)の作成名義がついており、その人の意思表明であると思われるものなら検認の必要があるわけです。具体的には、相続が開始した場所(被相続人の最後の住所地)の家庭裁判所に検認の申立書を提出して行います。遺言書1通ごとに800円の収入印紙、そして家庭裁判所の指定する郵便切手を納付するくらいですので、それほど費用はかかりません。
もし遺言書に封がしてある場合は、家庭裁判所において相続人またはその代理人の立ち会いがなければ開封することはできないとされています。そのため、封印されている遺言書の開封手続きがある場合は家庭裁判所があらかじめ期日を定めて相続人全員に検認期日を通知し、裁判所に呼び出すこととなっています(「検認期日」とよばれます)。ただ、実務的には所在不明の相続人は呼び出し不要と解されています。封がされていない遺言書については呼び出し不要と解釈することもできますが、遺言書の存在や内容などを知らしめるため、現実には呼び出しの通知がされることが通例となっています。
そして、もし相続人全員が出席できなかったとしても検認手続きそのものは有効に行うことができます。検認手続きが済んだ遺言書には家庭裁判所によって「検認済み」の表示がされ、立ち会わなかった申立人や相続人などには検認がなされた旨の通知がされる扱いになっています。

検認が必要になる遺言の種類

検認が必要になるのは、「公正証書以外」で遺言書およびそれに準じる書類が作成されていた場合です。公正証書遺言であれば、もともと公証役場に本人と証人2人が出向いて公証人の立ち会いのもとに作られているわけですから証拠能力としては十分であり、検認する必要がないのです。

勝手に開封したらどうなるのか?

もし、遺言書に封がされている場合、勝手にそれを開けてはなりませ ん。早く中身を確認したいというのは人情なのですが、もし見つけた 人が勝手に開けてしまうと 5 万円以下の過料を課せられることがあり ます。ただ、勝手に開けたからといってその人の相続権がなくなるわ けでもなく、遺言書自体が無効になるわけでもありません。開けてし まったとしてもそのままの状態ですみやかに検認を請求しなければな らないのです。

検認しても遺言書が有効とは限らない!

検認手続きが済んだからもう遺言書で揉めることはないのかというと、残念ながらそのようなものではありません。検認はあくまで遺言書がその状態で存在したということを証明するだけのことであり、その後の改ざんを防ぐ効果しかありません。つまり、遺言書の内容の適切さについては検認を受けたからといって保証してもらえるわけではなく、相続人がその内容を受け入れるか、納得がいかないようであれば話し合いや調停、裁判などで解決するしかないということになります。
検認そのものは遺言書の有効、無効を決定づけるものではありません。しかし、不動産の名義変更の手続きに自筆証書遺言を使う場合、検認がされていないものは却下されるなど、実務的には極めて重要な手続きとなっていますので忘れずに行わなければなりません。

まとめ

遺言書を残す方法として多く使われているのが「自筆証書遺言」「公正証書遺言」の2つです。ただ、自筆証書遺言の場合、保管場所が自宅などになるため隠匿や改ざんなどされるおそれが残ってしまいます。確実に作った時の状態で保存するには公証役場で作成する「公正証書遺言」がおすすめです。公正証書遺言は、公証人と証人2人の立会のもとに作成しますので、本人確認や意思確認がしっかりされる上に、ずっと原本が公証役場に保管されますから遺言の存在さえ伝えておけば確実に自分の意思を実現することができます。
このように遺言書を残すことは確実な被相続人の意思の実現や紛争の防止を中心にメリットがたくさんあります。もし後で気が変わっても作り直しができますので、最初の遺言書作成は早いに越したことはありません。税理士、司法書士といった専門家のアドバイスのもとで法的に問題のないものを作るように心がけたいものです。