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最終更新日:2022/6/13

【遺言書の無効申し立て】認められた・認められなかった判例と申し立ての手続き・期限について

本間 剛 (行政書士)

この記事の執筆者 行政書士 本間剛

ベンチャーサポート行政書士法人 代表行政書士。山形県出身。

はじめて相続を経験する方にとって、相続手続きはとても難しく煩雑です。多くの書類を作成し、色々な役所や金融機関などを回らなければなりません。専門家としてご家族皆様の負担と不安をなくし、幸せで安心した相続になるお手伝いを致します。

PROFILE:https://vs-group.jp/sozokuzei/supportcenter/profilehonma/

この記事でわかること

  • 遺言書がどのような法的効力を持つか理解することができる
  • 遺言書の内容について不服がある場合の対処方法がわかる
  • 遺言書が無効となった場合とならなかった場合の違いがわかる

遺言書は、遺産分割に関する内容を財産の保有者が自ら決めることができるものであり、トラブルを避けるのに有効であるということが知られつつあるため、遺言書を作成しようかと考えている方もいることでしょう。

しかし、遺言書があれば絶対にその通りに成立するわけではなく、中には無効となることもあります。

ここでは、遺言書の効力や有効・無効になる場合の違い、また遺言書の内容に不服がある場合の対処方法について解説していきます。

遺言書の持つ法的効力

遺言書に記載することで効力が発生する内容については、その種類によって分類することができます。

ここでは、その分類や記載方法を確認していきます。

財産に関すること

遺言書の作成者が、自分の財産を相続人に相続させるだけでなく、別の方法によって処分することを遺言書で指定しておくことができます。

たとえば、法定相続人以外の人に財産を遺贈する場合があります。

孫や内縁の妻、愛人などに財産を渡したいというケースです。

法定相続人に該当しないこれらの人たちは、遺言書によって相続権が生じ、財産を引き継がせることができるのです。

また、遺言書に記載することで、誰かに相続させるのではなく、公共団体や公益法人などに寄付することもできます。

遺言書に記載されていなければ、亡くなった後に自らの意思で寄付をすることはできませんが、遺言書に記載されていれば、その効力が生じるのです。

他には、遺言書により財産を信託することもできます。

これは、相続人の中に認知症などのために自分で財産を管理することができない人がいる場合、その人に代わって財産を管理する人を指定するというものです。

相続人に関すること

遺言書に記載する内容として最もイメージしやすいのが、相続人に関することだと思います。

法定相続人である配偶者や子供に対して、法定相続割合とは異なる割合で相続するように、その割合を指定することができます

たとえば、法定相続人が妻と子供2人(長男・長女)の場合、法定相続割合は、妻が2分の1、子供はそれぞれ4分の1となりますが、遺言書で「妻、長男、長女の3人にそれぞれ3分の1ずつ相続させる」と指定することができるのです。

また、特定の財産について相続する人を指定することもできます。

たとえば、自宅を妻が相続するといった内容となります。

法定相続人の中に、生前に遺言書の作成者に対して虐待行為などを行っていた人がいる場合、遺言書によってその人の相続権をなくして、相続人から廃除することができます。

また、これとは逆に、生前に廃除していた相続人の相続権を遺言書で復活させることも可能です。

遺言書の作成者が、生前に相続人の一部の人に贈与を行い、特別な利益を得ている場合があります。

通常、このような贈与による利益は、遺産分割を行う際に相続財産に含めて計算することで、贈与を受けていない人が不利益を被らないようにします。

このことを「特別受益の持ち戻し」といいます。

遺言書によって、この持ち戻しをしなくてもよいということを指定しておくこともできます。

身分に関すること

遺言者が、遺言書に新たな相続人となる人を生じさせるような記載をすることがあります。

法律上の婚姻関係にない人との間に生まれた子供のことを「非嫡出子」といいます。

非嫡出子の場合、母親はわかっていますが、認知をしていなければ父親はいない状態となります。

そうすると、父親と呼べる人との親子関係はないこととなるため、仮に父親が誰かわかっていたとしても相続権は生じません。

しかし、非嫡出子の父親が、遺言書で子供を認知することができます

遺言書での認知も法的に有効であるため、遺言書によって親子関係が生じ、相続人となることができるのです。

この他、離婚して子供の親権者となっている人が、自分が死んでしまった後に子供が残されてしまうことに備えて、あらかじめ未成年後見人となる人を指定しておくことができます。

その他の事項

お墓や仏壇の管理などを行う祭祀承継者を指定したり、遺言書の記載内容を実行するための遺言執行者を指定したりすることができます。

また、生命保険金の受取人の指定を遺言書ですることもできます。

納得いかない場合は無効申し立ても可能

遺言書に記載されている内容は、原則として尊重され実行されるべきものです。

しかし、遺言書を作成したのが10年も前のことだったとしたら、その内容が遺言者の最後の意思といえるのか疑問に感じる人もいるでしょう。

また、遺産分割の内容が極端に特定の相続人の利益になるようなものであった場合、遺産を受け取ることのできなかった相続人が救済される方法がないのでは、あまりに理不尽で納得できないこともあります。

さらに、法定相続人でない愛人に財産のほとんどを渡してしまうような内容になっている場合、残された家族は、相続後の生活費を確保することも困難な状況となりかねません。

このように、遺言書に書かれた内容について不服がある場合には、遺言書の無効を主張したり、遺留分を請求したりすることができます

これらの手続きはすべて裁判所で行うものであるため、不服のある人は裁判所に申し立てることとなります。

もっとも、裁判所での手続きに入る前に、相続人や遺言書で財産の受取人に指定されていた人が話し合いを行って解決することがベストであるため、まずは関係者で話し合いを行う必要があります。

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遺言書が無効と認められるケース

遺言書が無効となるのは、具体的にどのようなケースがあるのでしょうか。

遺言能力がないと認められた場合

遺言能力とは、遺言書を作成することができる能力のことです。

遺言書を作成することができるのは15歳以上であり、認知症などの理由で意思能力がない場合に該当しない人です。

認知症などで意思能力がないと判断される場合には、遺言能力がないとして遺言書が無効になることがあるのです。

ただ、認知症だからといって必ず遺言能力がないとされるわけではありません。

認知症の症状や当時の行動、そして遺言書の内容の複雑さなど、幅広い観点から判断されます。

遺言書の形式に不備がある場合

遺言書の形式が法律の求める要件を満たさない場合、その遺言書は無効となります。

以下で、遺言の種類別にご説明します。

自筆証書遺言

自筆証書遺言の場合、遺言書の本文は自筆することが求められるため、パソコンなどで作成されたものは無効となります。

また、作成した日付や遺言者の署名・押印が必要とされるため、これらのうち1つでも欠く遺言書は無効となるのです。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証役場で公証人と証人の立ち合いのもと作成される遺言書です。

遺言書を作成する段階で不備があれば、基本的にその都度対応してもらえますが、中には後から不備がわかる場合もあります。

たとえば、遺言者が自分で用意した証人が親族であり、証人になることのできない人であった場合、その遺言書は無効となるのです。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、自分で作成した遺言書を公証人や証人の前に提出して、遺言書の存在を証明してもらう遺言書の作成方法です。

自筆証書遺言や公正証書遺言と比較すると、あまり広く利用されているわけではなく、自分で遺言書を作成する際に要件を満たさないことがあります。

特に遺言書に押した印鑑と封印に使用した印鑑が違うなどの理由で、秘密証書遺言としては無効となることがあります。

遺言書が無効と認められないケース


遺言書に書かれた遺産分割の方法が、特定の人だけに利益があるような内容である場合や、相続人の誰もが望んでいないような慈善団体への寄付を行うといった内容となっている場合があります。

しかし、遺言書に形式的な不備があるなど、もともと無効となるようなものでなければ、このような記載内容を理由として、遺言書が無効となるわけではありません

遺言書があっても、遺言書の内容とは異なる遺産分割協議を行うことに相続人全員が合意する場合には、遺産分割協議を行うことができます。

そのため、相続人の誰もが望んでいないような遺産の処分方法となっているのであれば、遺産分割協議を行うことができる可能性があります。

一方、遺言書で多くの遺産を相続することとされた相続人がいる場合には、他の相続人が遺産分割を行うことを望んだとしても、その相続人は、遺言書通りの遺産分割を行うことを主張するでしょうから、話し合いは平行線となる可能性もあります。

このような場合には、遺言書自体の不備を理由に無効を主張する、あるいは遺留分が認められる法定相続人であれば、その遺留分を確保するために裁判所での手続きを行う必要があります。

無効申し立てが通った判例

実際に遺言書が無効となるのは、どのようなケースなのでしょうか。

ここでは、過去の裁判例を紹介します。

自筆証書遺言の場合

自筆証書遺言が無効となるのは、その記載や作成方法に不備がある、あるいは筆跡が異なり本人が自筆で作成していないなどの理由があります。

過去の裁判でも、特定の日付を記載せずに「○○年○月吉日」と記載されていた自筆証書遺言が無効になったケース、遺言書に記載された住所と日付の関係から過去に遡った日付を記載したものとして無効となったケース、相続人の1人が添え手をしたために、本人の自筆とは認められず無効となったケースなどがあります。

また、遺言書に赤い斜線が引かれていたケースでは、その斜線により遺言書全体の効力を失わせるという遺言者の意思があると判断され、遺言書は無効とされました。

自筆証書遺言には、必ず記載しなければならない事項(遺言者の署名や作成した日付など)がある他、財産の内容をわかりやすく正確に記載すること、斜線や記号など余計なものは記載しないようにして、誤解を与えないようにするといった点に注意しなければなりません。

公正証書遺言の場合

公正証書遺言は、公証役場で作成しており、自筆証書遺言のように形式的な不備で無効になることはほとんどないといえます。

ただ、過去の裁判では公正証書遺言が無効になったケースも数多くあるのです。

公正証書遺言は、遺言者が公証人に対して財産の処分の内容などを口授して、その内容を公証人が文書にするものです。

しかし、公証人が遺言者に対して質問し、それに対する肯定・否定や挙動で公証人に意思を伝えた場合には、無効と判断されたケースがあります。

また、遺言者本人は認知症となっており、信託銀行が作成した相続の内容を公証人が読み上げ、遺言者は簡単な返事しかしなかったというケースでは、遺言者が認知症であること、そして遺言の内容が複雑であり、そのような遺言を作成する能力がなかったと判断され、遺言書が無効とされています。

多くの場合、遺言者の遺言能力の有無が、遺言書の無効を判断するポイントとなっています

ただ、認知症だと認められても必ず無効になるわけではなく、遺言書作成当時の遺言者の状況と遺言書の内容から総合的に判断して、無効になる場合と有効になる場合があります。

遺言書の無効申し立ての手順と期限

遺言書の無効を主張する場合、どのような手続きが必要となるのでしょうか。

また、その期限はあるのか、遺留分を主張する場合はどうなのかといった観点から、遺言書について争いとなった場合の手続きについて解説します。

遺言書の無効申し立ての手順

遺言書の無効を主張する場合、裁判所に「遺言無効確認請求訴訟」を起こす必要があります。

ただ、一般的にはいきなり裁判所に訴訟を起こすのではなく、まずは、家庭裁判所に他の相続人と話し合いを行うための調停を申し立てることとなります。

調停では、遺言書が無効であることを前提に相続人同士で話し合いを行うこととなりますが、話し合いに同意しない相続人がいると、調停は成立しません。

家庭裁判所での調停が成立しないと、遺言書の無効を主張する人は地方裁判所に訴訟を起こすこととなります。

遺言書の無効を主張する際には、どのような理由で無効なのかを明らかにする必要があります。

遺言書の作成当時、認知症であったために複雑な内容の遺言書を作成することはできなかったという場合もあれば、遺言書の筆跡が本人のものとは違うと主張する場合もあります。

いずれの場合でも、その主張を根拠づける書類や資料が必要となります。

遺言書の無効を主張することのできる期限

遺言書の無効を主張する場合、相続が発生してからいつまでに訴訟を起こさなければならないという期限はありません

その訴訟の内容によっては、遺言書の記載内容に基づいて行われた遺産分割が後からひっくり返されることもあるのですが、時間が経過しているからといって、特に考慮されるわけではありません。

しかし、時間が経過するほど、遺言書の無効を立証するのが難しくなると思います。

遺言者の当時の状況を知る人は減り、本人の筆跡を示す書類も処分されてしまうためです。

よって、時効はなくてもできるだけ早く訴訟を起こす方がいいのです。

遺留分侵害額請求との違い

遺言書の内容によって、法定相続分を大きく下回る財産しか相続できない、あるいはまったく相続分がないこととなった法定相続人のうち、遺留分を有する者については、遺留分侵害額請求を起こすことができます。

遺留分侵害額請求は遺言書の無効を主張する場合とは異なり、原則として相続開始から1年以内に起こさなければなりません

また、相続開始から10年を経過した場合には、相続が発生したことを知らなかった人も含めて、請求することができなくなります。

遺留分についての請求を行う時は、時効があることに注意しなければなりません。

まとめ

遺言書を作成しておけば、相続人同士で大きくトラブルになることはないはずだ、ということで遺言書を作成する人は増えています。

しかし、その内容や記載方法によっては、かえって新たなトラブルとなってしまう可能性もあるのです。

遺言書を作成する場合には、できるだけ相続人同士が揉めないような内容にすることを心がけるとともに、なぜそのような分割方法にしたのかを明らかにし、相続人に対するメッセージを残すような工夫が必要です。

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