目次
- 1 1.成年後見制度とは?
- 2 2.法定後見制度とは?
- 3 3.任意後見制度とは?
- 4 4. 成年後見制度を利用するメリットとデメリット
- 5 5. さいごに
1.成年後見制度とは?
成年後見制度とは、認知症などによって判断能力が低下してしまった人がいる場合に、その人をサポートする人を家庭裁判所から選任してもらう制度のことです。
成年後見制度には大きく分けて次の2つの種類があります。
概要 | 指定者 | |
---|---|---|
法定後見制度 | 法定後見制度は認知症などによって事理を弁識する能力が不十分になってしまった後、法律のルールによって後見人を指定する制度 | 家庭裁判所 |
任意後見制度 | 将来的に認知症などになってしまったときに備えて、あらかじめ後見人となる人を定めておく契約 | 本人 |
任意後見制度では法定後見制度に比べて「どのような行為についてサポートを受けるか」について具体的に定めておくことが可能ですが、手続きを行う時点で本人に事理弁識能力があることが条件になることには注意が必要です。
以下では、これら2つの成年後見制度の内容について具体的に解説させていただきます。
成年後見制度のデメリットを解消!成年後見よりも新しく、有利な解決法があります。
2.法定後見制度とは?
法定後見制度は、本人が認知症などになってしまった後に、家庭裁判所に対して「この人は自分では法律行為を行う判断能力を欠いている状態なので、財産管理などについてサポートする人を指定してください」と求めることです。
後で説明する任意後見制度とは、認知症などになった後になってから手続きを行うという点と、後見人となる人の権限の範囲を家庭裁判所が決めるという2点が異なります。
法定後見制度を利用する場合には、家庭裁判所に対して申し立てを行うことになりますが、本人の事理弁識能力についての鑑定や、家庭事情の聴取などが必要になるために手続きには3か月~4か月程度が必要になります。
審判の結果として選任される後見人としては本人の親族がなるケースが多いです(弁護士などの法律の専門家が選任されるケースもあります)
なお、実際には本人の事理弁識能力がどの程度残っているか?によって「後見」「保佐」「補助」という3つのサポート体制からいずれか1つを選ぶことになります。
「後見>保佐>補助」という順序でより手厚いサポートが行われます(後見がもっとも手厚い)
後見人が指定できるケースはどんなとき?
法定後見制度の3つのサポート体制のうち、もっとも重い症状の方が利用することになるのが「後見」で、後見の制度の利用が認められると家庭裁判所によって「成年後見人」が指定されます。
成年後見人が指定されるケースとしては、具体的には植物状態となってしまった人や、家族の名前や自分のいる場所などを正確に判断できなくなってしまっている重度の認知症の方が該当するケースが多いです。
成年後見人は本人の同意を得ることなく法律行為を代理することができるほか、本人が成年後見人の同意を得ることなく行った法律行為を取り消すことが可能です(日用品の購入などは本人が単独でできます)
ただし、本人が居住してる不動産を処分するような場合については、あらかじめ家庭裁判所に申し立てをして許可を得なくてはなりません。
成年後見人が指定された場合、本人は「被後見人」と呼ばれます。
同様に、次で説明する保佐人が指定される場合は「被保佐人」、補助人が指定される場合は「被補助人」と呼ばれます。
対象になる人 | 判断能力がまったく無く、普段の買い物なども難しい人 | |
---|---|---|
開始の 手続き |
申立人 | 本人、配偶者、四親等以内の親族(子、孫、兄弟姉妹、おじ、おば、いとこなど)、任意後見人、任意後見監督人、市区町村長など |
本人の 同意 |
不要 | |
医師に よる鑑定 |
原則として必要 | |
援助者 | 成年後見人 | |
権限 | 財産に関するすべての法律行為の代理権。本人が自ら契約したもので不利益なものは取り消せる |
成年後見人と本人の利害関係が対立する場合は?
成年後見人には財産管理に関する行為や身上監護についての権限が幅広く認められることになりますが、成年後見人が本人の不利益になる行為をしてしまわないように、家庭裁判所は成年後見人を監督する「成年後見監督人」を選任することもあります。
家庭裁判所が成年後見監督人を選任しない場合で、本人と成年後見人の利害関係が対立するような行為が必要な場合(例えば、本人と成年後見人の間で売買契約をする場合など)には、家庭裁判所に特別代理人の選任をしてもらう必要があります。
保佐人が指定されるケースはどんなとき?
保佐は、日常の買い物程度のことをは問題なくできるものの、不動産の売買契約など、重要な法律行為を行う際には不安があるという場合に利用される制度です。
認知症の方の場合、その日によって認知症の症状が出たり、出なかったりという状況の方も多いと思いますが、このような場合には保佐の制度が選択されることが多いです(より重い認知症の症状がある場合には「後見」の制度が利用されます)
保佐の制度の利用が認められると、家庭裁判所によって保佐人が選任されます。
保佐人の専任と同時に、保佐人が本人の不利益になる行為をしないように監督する保佐監督人を選任してもらうことも可能です。
保佐監督人が選任されない場合には、本人と保佐人との利害関係が対立する際には臨時保佐人が家庭裁判所によって選任されます。
対象になる人 | 判断能力が著しく不十分で、重要な財産の管理などが難しい人 | |
---|---|---|
開始の 手続き |
申立人 | 本人、配偶者、四親等以内の親族(子、孫、兄弟姉妹、おじ、おば、いとこなど)、任意後見人、任意後見監督人、市区町村長など |
本人の 同意 |
不要 | |
医師に よる鑑定 |
原則として必要 | |
援助者 | 保佐人 | |
権限 | 申立ての範囲内で裁判所が定める特定の行為(本人の同意が必要) |
保佐人は「重要な法律行為」についてのみ同意や取り消しができる
保佐人が指定されると、被保佐人は重要な法律行為(借金や不動産の売買、相続人となる場合に遺産分割協議に参加することなど)を行う際には保佐人の同意が必要になります。
保佐人の同意なしに被保佐人が行った法律行為については、保佐人は後から取り消すことが可能になります。
日用品の購入などの契約については上記の「重要な法律行為」には含まれませんので、保佐人の同意は必要なく、本人が同意なしに契約をした場合にも保佐人が取り消すことはできません。
ただし、この「保佐人の同意が必要な行為」については家庭裁判所の審判によって上記の「重要な法律行為」に追加して指定してもらうことができます。
補助人が指定されるケースはどんなとき?
軽度の認知症の方など、比較的症状が軽い人が利用することが多いのが補助の制度です。
補助の制度の利用が認められると、家庭裁判所は補助人を選任します。
注意点としては、上で説明させていただいた成年後見人や保佐人の指定のためには本人の同意は必要ありませんが、補助人の指定のためには本人の同意が必要になる点です。
対象になる人 | 判断能力が不十分で、重要な財産の管理などを一人で行うのが難しい人 | |
---|---|---|
開始の 手続き |
申立人 | 本人、配偶者、四親等以内の親族(子、孫、兄弟姉妹、おじ、おば、いとこなど)、任意後見人、任意後見監督人、市区町村長など |
本人の 同意 |
必要 | |
医師に よる鑑定 |
原則として不要 | |
援助者 | 補助人 | |
権限 | 申立ての範囲内で裁判所が定める特定の行為(本人の同意が必要) |
補助人は「あらかじめ定められた法律行為」についてのみ同意や取り消しができる
補助人は「あらかじめ家庭裁判所が指定した行為」に限定して本人に同意したり、後から取り消したりする権限を持ちます。
そのため、補助人を選任する際には、本人のどのような行為について同意や取り消しを行う権限を持つのかを明らかにするために、「代理権付与」または「同意権付与」の審判が行われます。
他の方法(後見や保佐)と違い、補助人として指定されただけでは同意や代理の権限が発生しないことに注意が必要です(もっとも、家庭裁判所は補助人選任の審判と同時に上記の代理権付与または同意権付与の審判を行うのが普通です)
なお、補助人が本人の不利益になる行為をしないように監督する補助監督人を選任してもらったり、補助人と本人との間に利害関係が生じる場合に臨時補助人を選任してもらうことができるのは後見や保佐の場合と同様です。
成年後見人・保佐人・補助人の違い
成年後見人 | 保佐人 | 補助人 | ||
---|---|---|---|---|
開始の 手続き |
本人の 同意 |
不要 | 不要 | 必要 |
医師に よる鑑定 |
原則として必要 | 原則として必要 | 原則として不要 | |
援助者 | 成年後見人 | 保佐人 | 補助人 | |
権限 | 財産に関するすべての法律行為の代理権。本人が自ら契約したもので不利益なものは取り消せる | 申立ての範囲内で裁判所が定める特定の行為(本人の同意が必要) |
申立てから相続までの手続きの流れ
相続を決めるためには、相続人全員で遺産分割協議を行います。
相続人の中に認知症などで判断能力を失っている人がいる場合は、どうすればいいでしょう。
高齢化が進んでいる現在では、高齢で亡くなった夫の相続に際し、妻が認知症になってしまっていることも、珍しくはありません。
遺産分割協議に参加して、夫の財産の分配を決めていくことが困難になってしまった妻には、代理する人を立てる必要があります。
代理できる人は、成年後見人と呼ばれます。
後見人を立てるためには、家庭裁判所に対して成年後見の申し立てを行います。
家族が後見人に就くこともできますが、相続となると問題がでてきます。
たとえば、子が後見人になった場合、妻と子は共に相続人です。
子は、妻の相続分を自分に有利になるように誘導することも可能な立場です。
このように共同相続人が後見人になる場合、利益が相反する立場であることから、公正な立場の人を新たに依頼しなければなりません。
この場合、後見人の子に代わって遺産分割協議に加わる人が必要な場合は「後見代理人」を、遺産分割協議だけのために代理人を立てる場合は「特別代理人」を立てなければいけないことに、注意が必要です。
成年後見人を立てるためには、家庭裁判所に申し立てを行います。
申し立てから相続までの流れを確認しましょう。
申立て
後見人を立てたい人の住所を管轄する家庭裁判所が、申し立て先です。
裁判所に出向き、後見開始の審判について書類を提出します。
申し立てができるのは、本人のほか、配偶者や4親等以内の親族などです。
基本的な費用は、手数料として収入印紙800円分、裁判所からの連絡用切手代数千円、登記手数料として収入印紙2,600円がかかります。
ただし、鑑定料として数万円必要になることもあります。
申し立てが認められると、裁判所が成年後見人を選任します。
選任された後見人は、代理で遺産分割協議に参加することになります。
公正な立場で遺産分割協議へ代理参加
公正な立場からは、遺産分割協議の際に、判断能力を失ってしまった被後見人にとって不利益な内容は認められません。
たとえば、高齢の被後見人が亡くなった場合は二次相続が発生しますが、その際の財産分割手続きや税負担を軽くするために、あらかじめ被後見人の相続分を減らし、子に多く配分するなどの対策も考えられます。
しかしながら、後見人は公正な立場で遺産分割協議に参加するため、このような対応をすることが困難になります。
なぜなら、後見人は、被後見人が不利益を被るような決定には同意できないからです。
このような事態が想定される場合は、遺言書や生前贈与などによる早めの対策を検討することも大切です。
名義変更手続き
無事に遺産分割協議が終わったあとは、遺産分割協議書に相続人全員と後見人が署名押印すれば、名義変更をして相続が終了します。
後見人は、預金通帳や不動産の名義変更手続きに関しても、本人に代わって必要書類への署名などを行います。
被後見人が死亡した後の後見人の役割
対象者の死亡によって後見期間は終了し、後見人の役割も終わります。
ただし、死後の事務を行う義務が残ります。
成年後見人の役割
後見人は、被後見人が生きている間は、生活上の様々な手続や契約行為などを本人に代わって行います。
その役割を大別すると、療養看護と財産管理に関する行為があります。
また、裁判所に対しては、実行した仕事の内容を報告する義務も負っています。
裁判所が後見人を選任する際は、専門知識の必要性や財産の多寡、親族が後見人を希望する場合はその適格性などが考慮されます。
このような条件が満たされるよう、親族の意向にかかわらず、弁護士や司法書士、社会福祉士などの専門家が選任されることも多く見られます。
療養看護
療養看護については、被後見人の住居の確保や生活環境の整備、施設の入退所契約、治療や入院の手続きなどを行います。
なお、直接の介護や施設への訪問、医療行為への同意などについては、職務ではありません。
財産管理
後見人としての第一の仕事は、被後見人の財産調査です。
後見人は、預貯金口座の出入金や金融機関からの郵便物の確認、法務局での不動産登記事項の確認などを行い、財産を把握します。
また、定期的な収入と支出、家賃の滞納の有無などについても確認を行います。
このようにして把握した財産について、後見人は、計画的で適正に管理を行います。
日常的には、年金の受領や預金口座の管理、税金や社会保険料の支払や関連する手続きなどを行います。
記録と裁判所への報告
主な作成書類として、財産目録と収支報告書があります。
後見監督人がいる場合は、確認を受けることになります。
後見人は、出納帳などの記録や扱った手続き関係の資料を常に整理し、裁判所に対して定期的に報告する義務を負います。
被後見人が死亡した時に後見人がすべきこと
被後見人が死亡した場合、後見人の任務は終了します。
その際には、3種類の手続きを行います。
一つ目は、裁判所への連絡です。
その後は、相続人などへ財産を引継ぎます。
後見人は、2か月以内に管理の計算をして、被後見人の相続人に対して管理していた財産を引き継がなければなりません。
相続人が複数いる場合は相続人の代表者と、遺言書があって遺言執行者がいる場合は、遺言執行者との間で引継ぎを行います。
もしも相続人がいない場合は、家庭裁判所において「相続財産管理人」選任申し立ての手続きを行い、選任された財産管理人に対して引継ぐことになります。
最終的に、裁判所へ結果を報告して、職責が終了します。
財産の引継ぎ
財産を引継ぐ際に、後見人は、応急処分義務と管理計算義務、財産引渡義務の3つの義務を負います。
応急処分義務
被後見人が死亡した後の、応急的な事務についての義務です。
埋葬の手配や死亡届の提出、入院治療費や住宅賃料の返済などの返済義務の履行、相続財産の保存、電気やガス、水道などの供給契約の解約などが該当します。
手続きの内容によって、裁判所の許可を要するものと、許可を要さないものがあります。
管理計算義務
後見人は、被後見人が死亡してから2カ月以内に、後見期間中の収支の決算を明らかにし、後見終了時点での後見財産を確定して財産目録を作成します。
最終的には、結果を相続人などに対して報告します。
後見監督人がいる場合は、立合いの下で行われます。
財産引渡義務
被後見人の相続人などに、財産を引き渡す義務です。
遺言がある場合には、遺言執行者に引き渡します。
すでに説明したとおり、引き継ぐ相手方は、状況に応じて代表相続人や遺言執行者、相続財産管理人となります。
引き継ぎは、裁判所への報告と同様、財産目録と収支報告書によって行われます。
後見監督人がいる場合は、同様に報告が行われます。
3.任意後見制度とは?
上で説明させていただいた「法定後見制度」は、「すでに認知症などになってしまった人」が利用できる制度です。
一方でここから説明させていただく「任意後見制度」は、「将来的に認知症などになってしまったときに備えて、あらかじめ後見人となる人を定めておく契約」のことです。
任意後見というのは一種の契約ですから、この制度を利用する際には本人に事理を弁識する能力がなくてはなりません(すでに認知症となってしまっている人と任意後見に関する契約を結ぶことはできません)
また、後見人にどのような権限を与えるか?については任意後見契約の内容によって細かく指定することになります。
任意後見制度の利用方法と手続きの流れ
任意後見制度を利用するためには、まず本人と後見人となる人が「任意後見契約」を公正証書によって行います。
その後、実際に本人の事理弁識能力が低下した時点で、家庭裁判所に対して任意後見制度の効果を発生させる申し立てを行います(この申し立てができるのは本人や本人の配偶者や4親等以内の親族、後見人となる予定の人です)
家庭裁判所はこの申し立てを受けると後見人を監督する「任意後見監督人」を選任します。
任意後見監督人が選任されると、任意後見が開始することになります。
誰が後見人となるの?
後見人となるためには特に資格等は必要ありません(ただし、後で説明するように「後見人となれない人」に該当する場合には後見人となれません)
そのため、実際には本人の介護を行っている親族や、親しい友人などが後見人となるケースが少なくありません。
ただし、後見人としての事務には重要な財産の管理が含まれることが多いですから、専門的な法律知識を持った専門家(弁護士や司法書士)に後見人となってもらうことも検討してみるとよいでしょう。
後見制度は本人の財産を守るために利用する制度ですから、財産管理についての専門知識を持った人に任せるのがより適切であるといえます。
後見人となれない人
後見人となるためには特に資格は必要ありませんが、次のような条件に当てはまる人は後見人となることができません(法定後見制度、任意後見制度で基本的に共通です)
- 未成年者
- 過去に家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人、補助人
- 破産手続きを行っている人(免責を受けた後には可能です)
- 音信不通となっていて連絡が取れない人
- 過去に本人に対して訴訟を起こしたことがある人や、その配偶者や近親者
- 後見人にふさわしくない不正な行為や不行跡が過去にある人
なお、これらの条件に該当しない人であっても、家庭裁判所が後見人に選任しないという判断をする可能性はあります。
任意後見制度を利用するための費用
上でも説明させていただいたように、任意後見制度を利用するためには本人と後見人となる人が「任意後見契約」を結ぶ必要があります。
この任意後見契約は公正証書の形によって行う必要があり、さらにその契約内容は法務局で登記の手続きを行う必要があります。
そのため、任意後見契約を行うためには以下のような費用が発生します。
発生する費用
公正証書の作成費用:1万1000円
登記手数料:1400円
登記のための印紙代:2600円
任意後見制度は、任意後見契約の内容に基づいてどのような効果が発生するか決まりますから、契約内容は慎重に検討する必要があります。
任意後見契約を公正証書によって締結した後は、実際に本人が認知症などになってしまったタイミングで家庭裁判所に対して任意後見事務の開始の申し立てを行うことになります(医師の診断などによって当然に任意後見事務が開始するわけではないので注意しておきましょう)
成年後見制度のデメリットを解消!成年後見よりも新しく、有利な解決法があります。
4. 成年後見制度を利用するメリットとデメリット
成年後見制度を利用する3つのメリット
(1)本人を法律的な被害から守ってくれること
(2)既に行った不正な契約については取り消すことが出来ること
(3)代わりに法律手続きを行ってもらえること
メリット1 本人を法律的な被害から守ってくれる
高齢者は、何かと悪質な法律トラブルのターゲットとされることがあります。
年齢を重ねることによって、昔ほどの身体機能が低下したり、判断能力が落ちることによって、正常なら乗らないような話に乗ってしまったり、騙されたりすることがあります。
例えば、近所のおばさん・おじさんが高齢者の方に優しく近づいて、「あなたの代わりに支払いをしてあげますよ」と通帳を預かるように促されて、通帳の金額を不正に使用されてしまったケースや、金銭感覚がマヒしてしまって浪費が極端に多くなったりすることもあります。
このようなトラブルから、ご本人様の利益を守るために、成年後見人は不正な法律トラブルから守ってくれるようになります。
不正な支出を勝手に行わないように財産を預けることによって、万一の際にも自分で引き出すリスクを排除できますので、財産を守ることが出来るという訳です。
メリット2 既に契約した本人に不利益な契約を取消すことが出来る
ご本人が勝手にお一人で契約したものであれば、他人がどうこう口を挟むべきものでもありません。
しかしながら、それが本来的にはご本人様にとって不利益となるような内容であれば、取り消してあげることが利益となることだって勿論あります。
その様な場合に他人が取り消しを行うことは出来ませんが、成年後見人として選任されることによって、過去の契約をなかったことにすることが出来るようになります。
成年後見人をつけるメリットとして、先程見た法律的なトラブルを予防することが出来るのみならず、このように既に発生していた法律トラブルについても取り消し等により対処することが出来る点で非常に有益な制度であるということが出来ます。
メリット3 信頼できる後見人に法律手続きをしてもらえる
成年後見制度には、法定後見制度及び任意後見制度という2つの制度がありますが、まだお元気なうちに後者を選択した場合には、ご自身が信頼できる人を自由に後見人として選ぶことが出来ますし、認知症等になり前者の法定後見制度により後見人が付く場合でも専門家が付くケースが多くなってきているため、信頼できる者が法律手続きを行って頂けるので、安心することが出来ます。
例えば、身内に相続が発生した場合には代わりに遺産分割協議書の手続きをしてくれますし、老人ホームに入退去する際にも契約手続きを行ってもらえます。
契約行為の細かい点をきちんと確認してもらうことや実印を預かってもらうことで、成年後見人がご本人様の代わりとなって滞りなく手続きが進むことになります。
成年後見制度を利用する5つのデメリット
(1)成年後見人に対して毎月報酬を支払う必要があること
(2)後見人として就任すると通常途中で辞めさせられないこと
(3)節税対策が禁止されること
(4)選任手続きに時間を要すること
(5)一定の職業等に就けなくなってしまうこと
デメリット1 毎月成年後見人に支払う報酬が発生する
成年後見制度を一度利用することを決めてしまうと、ご本人様の財産より成年後見人に対して、一定額の報酬を支払わなければいけないことになります。
まずは、成年後見をつけるための申し立て費用もばかになりません。
家庭裁判所への申請手数料を始めとして、場合によっては成年後見制度を利用すべきかの鑑定費用を要しますし、申立てを専門家に依頼する場合には30万~50万円程度の予算を見積もっておかなければいけません。
また、成年後見人がついた後の業務に対して支払う報酬としては、基本的に毎月2万円となりますが、資産を多くお持ちの方については更に上乗せして支払わなければいけません。
いずれにせよ、成年後見人に対する報酬が固定費となって発生するというデメリットが生じます。
デメリット2 一度就任されると原則として解任できない
成年後見人は一度選ばれるとなかなか辞めさせることができません。
成年後見制度の趣旨は、「本人の利益を守ること」とされています。
そうすると、例えば親族が成年後見人に対して不信感を抱いて抗議をしたとしても、成年後見人が自己の利益のために横領する等のよほどの事情がない限り辞めさせることが出来ない仕組みになっています。
デメリット3 節税対策が出来ない
成年後見人は、ご本人様の利益を守ることを目的として行動することが求められます。
したがって、ご本人様が亡くなった後の家族・親族への節税対策をすることが出来ない訳です。
ご本人様が節税対策をすることによって、得をするのはご本人様自身ではなく、残された家族・親族の方となります。
つまり、少々融通が利かないようにも思いますが、現状としては贈与の非課税枠や相続税の基礎控除の枠を増やす対策をすることは許されないことになっています。
デメリット4 成年後見人選任までに時間を要する
成年後見の手続きを今すぐに利用したいという方には、残念なお知らせとなりますが、成年後見を開始するためには、家庭裁判所に複雑な申請手続きをする必要があります。
また、申請後も審査期間を要するため、平均して申立て後3ケ月程度は見ておかなければいけません。
利用したいときに直ぐに利用できないのは、成年後見制度の欠点でもあります。
成年後見制度を少しでも検討されていらっしゃる場合には、専門家に一度相談してみましょう。
デメリット5 一定の地位に就くことを制限されてしまう
成年後見制度を利用して成年後見人をつけることで、一定の地位に就任することが出来なくなってしまいます。
例えば、成年被後見人は社長になることが出来ませんし、弁護士や司法書士などの士業等の仕事に従事することも欠格事由として制限されてしまいます。
成年後見制度を利用しなければいけない場合には、正常な判断をする能力が弱くなっているため、重要な業務を行う仕事に就くことは危険であると考えられているのです。
メリットとデメリット両方に目を向けよう
成年後見制度を利用する上で、どのようなメリット・デメリットがあるのかご理解頂けましたでしょうか。
成年後見制度は、基本理念として「ご本人様の利益を守ること」を重要視しています。
そのことによって、ご本人様の利益は確かに守られるのですが、ご本人様が意図する様な財産の処分方法についてまで成年後見人によって口を出され、制限されてしまうこともあり最近よくニュースでも目にするところではあります。
成年後見制度をきちんと利用するためにも、デメリットの側面にもしっかりと目を向けて、それらを許容することが出来るのか今一度検討してみましょう。
何か少しでも分からないことがありましたら、専門家にお気軽にご相談頂けましたら丁寧に解説させて頂きます。
成年後見制度のデメリットを解消!成年後見よりも新しく、有利な解決法があります。
5. さいごに
今回は成年後見制度の内容や手続き方法について解説させていただきました。
高齢化社会の進展に従い、これらの制度が利用されるケースは今後ますます増加していくものと思われます。
後見制度については法律の専門家(弁護士や司法書士など)からアドバイスを受けることができますから、「誰を後見人とすべきか?」や「後見契約の内容としてどのようなことを定めておくか?」について不安がある方は専門家への相談も検討してみてくださいね。
成年後見制度のデメリットを解消!成年後見よりも新しく、有利な解決法があります。