成年後見制度とは?わかりやすく説明

  1. 法定後見制度
  2. 任意後見制度
  3. 任意後見制度を利用するための費用
  4. まとめ

成年後見制度とは、認知症などによって判断能力が低下してしまった人がいる場合に、その人をサポートする人を家庭裁判所から選任してもらう制度のことです。

成年後見制度には大きく分けて次の2つの種類があります。

法定後見制度
任意後見制度

大まかに言うと、法定後見制度は認知症などによって事理を弁識する能力が不十分になってしまった後、法律のルールによって後見人を指定する制度で、後見人がどのような権限を持つかについては家庭裁判所が指定することになります。

一方、任意後見制度は契約によってあらかじめ「自分がこういう状況になったときには、この人にこういう権限を与える」という内容を定めておく方法のことです。

任意後見制度では法定後見制度に比べて「どのような行為についてサポートを受けるか」について具体的に定めておくことが可能ですが、手続きを行う時点で本人に事理弁識能力があることが条件になることには注意が必要です。

以下では、これら2つの成年後見制度の内容について具体的に解説させていただきます。

法定後見制度

法定後見制度は、本人が認知症などになってしまった後に、家庭裁判所に対して「この人は自分では法律行為を行う判断能力を欠いている状態なので、財産管理などについてサポートする人を指定してください」と求めることです。

後で説明する任意後見制度とは、認知症などになった後になってから手続きを行うという点と、後見人となる人の権限の範囲を家庭裁判所が決めるという2点が異なります。

法定後見制度を利用する場合には、家庭裁判所に対して申し立てを行うことになりますが、本人の事理弁識能力についての鑑定や、家庭事情の聴取などが必要になるために手続きには3か月~4か月程度が必要になります。

審判の結果として選任される後見人としては本人の親族がなるケースが多いです(弁護士などの法律の専門家が選任されるケースもあります)

なお、実際には本人の事理弁識能力がどの程度残っているか?によって「後見」「保佐」「補助」という3つのサポート体制からいずれか1つを選ぶことになります。

「後見>保佐>補助」という順序でより手厚いサポートが行われます(後見がもっとも手厚い)

成年後見人が指定されるケース

法定後見制度の3つのサポート体制のうち、もっとも重い症状の方が利用することになるのが「後見」で、後見の制度の利用が認められると家庭裁判所によって「成年後見人」が指定されます。

成年後見人が指定されるケースとしては、具体的には植物状態となってしまった人や、家族の名前や自分のいる場所などを正確に判断できなくなってしまっている重度の認知症の方が該当するケースが多いです。

成年後見人は本人の同意を得ることなく法律行為を代理することができるほか、本人が成年後見人の同意を得ることなく行った法律行為を取り消すことが可能です(日用品の購入などは本人が単独でできます)

ただし、本人が居住してる不動産を処分するような場合については、あらかじめ家庭裁判所に申し立てをして許可を得なくてはなりません。

成年後見人が指定された場合、本人は「被後見人」と呼ばれます。同様に、次で説明する保佐人が指定される場合は「被保佐人」、補助人が指定される場合は「被補助人」と呼ばれます。

成年後見人と本人の利害関係が対立する場合は?

成年後見人には財産管理に関する行為や身上監護についての権限が幅広く認められることになりますが、成年後見人が本人の不利益になる行為をしてしまわないように、家庭裁判所は成年後見人を監督する「成年後見監督人」を選任することもあります。

家庭裁判所が性ね後見監督人を選任しない場合で、本人と成年後見人の利害関係が対立するような行為が必要な場合(例えば、本人と成年後見人の間で売買契約をする場合など)には、家庭裁判所に特別代理人の選任をしてもらう必要があります。

保佐人が指定されるケース

保佐は、日常の買い物程度のことをは問題なくできるものの、不動産の売買契約など、重要な法律行為を行う際には不安があるという場合に利用される制度です。

認知症の方の場合、その日によって認知症の症状が出たり、出なかったりという状況の方も多いと思いますが、このような場合には保佐の制度が選択されることが多いです(より重い認知症の症状がある場合には「後見」の制度が利用されます)

保佐の制度の利用が認められると、家庭裁判所によって保佐人が選任されます。

保佐人の専任と同時に、保佐人が本人の不利益になる行為をしないように監督する保佐監督人を選任してもらうことも可能です。

保佐監督人が選任されない場合には、本人と保佐人との利害関係が対立する際には臨時保佐人が家庭裁判所によって選任されます。

保佐人は「重要な法律行為」についてのみ同意や取り消しができる

保佐人が指定されると、被保佐人は重要な法律行為(借金や不動産の売買、相続人となる場合に遺産分割協議に参加することなど)を行う際には保佐人の同意が必要になります。

保佐人の同意なしに被保佐人が行った法律行為については、保佐人は後から取り消すことが可能になります。

日用品の購入などの契約については上記の「重要な法律行為」には含まれませんので、保佐人の同意は必要なく、本人が同意なしに契約をした場合にも保佐人が取り消すことはできません。

ただし、この「保佐人の同意が必要な行為」については家庭裁判所の審判によって上記の「重要な法律行為」に追加して指定してもらうことができます。

補助人が指定されるケース

軽度の認知症の方など、比較的症状が軽い人が利用することが多いのが補助の制度です。

補助の制度の利用が認められると、家庭裁判所は補助人を選任します。

注意点としては、上で説明させていただいた成年後見人や保佐人の指定のためには本人の同意は必要ありませんが、補助人の指定のためには本人の同意が必要になる点です。

補助人は「あらかじめ定められた法律行為」についてのみ同意や取り消しができる

補助人は「あらかじめ家庭裁判所が指定した行為」に限定して本人に同意したり、後から取り消したりする権限を持ちます。

そのため、補助人を選任する際には、本人のどのような行為について同意や取り消しを行う権限を持つのかを明らかにするために、「代理権付与」または「同意権付与」の審判が行われます。

他の方法(後見や保佐)と違い、補助人として指定されただけでは同意や代理の権限が発生しないことに注意が必要です(もっとも、家庭裁判所は補助人選任の審判と同時に上記の代理権付与または同意権付与の審判を行うのが普通です)

なお、補助人が本人の不利益になる行為をしないように監督する補助監督人を選任してもらったり、補助人と本人との間に利害関係が生じる場合に臨時補助人を選任してもらうことができるのは後見や保佐の場合と同様です。

任意後見制度

上で説明させていただいた「法定後見制度」は、「すでに認知症などになってしまった人」が利用できる制度です。

一方でここから説明させていただく「任意後見制度」は、「将来的に認知症などになってしまったときに備えて、あらかじめ後見人となる人を定めておく契約」のことです。

任意後見というのは一種の契約ですから、この制度を利用する際には本人に事理を弁識する能力がなくてはなりません(すでに認知症となってしまっている人と任意後見に関する契約を結ぶことはできません)

また、後見人にどのような権限を与えるか?については任意後見契約の内容によって細かく指定することになります。

任意後見制度の手続き

任意後見制度を利用するためには、まず本人と後見人となる人が「任意後見契約」を公正証書によって行います。

その後、実際に本人の事理弁識能力が低下した時点で、家庭裁判所に対して任意後見制度の効果を発生させる申し立てを行います(この申し立てができるのは本人や本人の配偶者や4親等以内の親族、後見人となる予定の人です)

家庭裁判所はこの申し立てを受けると後見人を監督する「任意後見監督人」を選任します。

任意後見監督人が選任されると、任意後見が開始することになります。

誰が後見人となるの?

後見人となるためには特に資格等は必要ありません(ただし、後で説明するように「後見人となれない人」に該当する場合には後見人となれません)

そのため、実際には本人の介護を行っている親族や、親しい友人などが後見人となるケースが少なくありません。

ただし、後見人としての事務には重要な財産の管理が含まれることが多いですから、専門的な法律知識を持った専門家(弁護士や司法書士)に後見人となってもらうことも検討してみるとよいでしょう。

後見制度は本人の財産を守るために利用する制度ですから、財産管理についての専門知識を持った人に任せるのがより適切であるといえます。

後見人となれない人

後見人となるためには特に資格は必要ありませんが、次のような条件に当てはまる人は後見人となることができません(法定後見制度、任意後見制度で基本的に共通です)

  • ・未成年者
  • ・過去に家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人、補助人
  • ・破産手続きを行っている人(免責を受けた後には可能です)
  • ・音信不通となっていて連絡が取れない人
  • ・過去に本人に対して訴訟を起こしたことがある人や、その配偶者や近親者
  • ・後見人にふさわしくない不正な行為や不行跡が過去にある人

なお、これらの条件に該当しない人であっても、家庭裁判所が後見人に選任しないという判断をする可能性はあります。

任意後見制度を利用するための費用

上でも説明させていただいたように、任意後見制度を利用するためには本人と後見人となる人が「任意後見契約」を結ぶ必要があります。

この任意後見契約は公正証書の形によって行う必要があり、さらにその契約内容は法務局で登記の手続きを行う必要があります。

そのため、任意後見契約を行うためには以下のような費用が発生します。

  • ・公正証書の作成費用:1万1000円
  • ・登記手数料:1400円
  • ・登記のための印紙代:2600円

任意後見制度は、任意後見契約の内容に基づいてどのような効果が発生するか決まりますから、契約内容は慎重に検討する必要があります。

任意後見契約を公正証書によって締結した後は、実際に本人が認知症などになってしまったタイミングで家庭裁判所に対して任意後見事務の開始の申し立てを行うことになります(医師の診断などによって当然に任意後見事務が開始するわけではないので注意しておきましょう)

まとめ

今回は成年後見制度の内容や手続き方法について解説させていただきました。

高齢化社会の進展に従い、これらの制度が利用されるケースは今後ますます増加していくものと思われます。

後見制度については法律の専門家(弁護士や司法書士など)からアドバイスを受けることができますから、「誰を後見人とすべきか?」や「後見契約の内容としてどのようなことを定めておくか?」について不安がある方は専門家への相談も検討してみてくださいね。