自筆証書遺言の書き方と注意点を解説!

自分の死後に自分の財産を「誰に、いくらぐらい相続させるか」を決めておきたいという場合、遺言書を残しておくのが適切です。
もし遺言書がなかったとしても、あなたの財産は法律のルールに従って家族に分配されることになります。
しかし、法律のルールとは異なる分配の仕方をしたいときには遺言書を作成しておく必要があります。
ここでは遺言書の作成方法や作成するときに気をつけておくべき注意点について解説させていただきます。

目次

  1. 自筆証書遺言とは?遺言の残し方には3種類ある
  2. 自筆証書遺言ってどんな遺言?
  3. 自筆証書遺言が有効と認められるための要件
    1. ①自書に関する要件
    2. ②日付に関する要件
    3. ③署名押印に関する要件
    4. ④訂正や加筆に関する要件
    5. ⑤遺言者1名につき1枚の遺言のみ認められる
    6. ⑥その他の注意点
  4. 自筆証書遺言が無効となってしまうケース
  5. 相続財産の内容が特定されていないケース
  6. 本人が認知症等の場合
  7. 自筆証書遺言の保管方法
  8. まとめ

財産を所有していた人が亡くなった場合、その財産は相続人が引き継ぐことになります。
亡くなった人が遺言を残していない場合には法律のルールに従って相続人が財産を分け合うことになりますが、遺言が残されている場合には法律のルールよりも遺言の内容が優先されます。
つまり、自分の死後に財産をどのように分け与えるかについては、遺言を使えばほとんど自由に決めることができるというわけですね。
遺言を残す方法としては自筆証書遺言・公正証書遺言・秘密証書遺言の3種類があります。

自筆証書遺言とは?遺言の残し方には3種類ある

日本では遺言書の書き方について法律上のルールが厳格に決まっています(法律のルールに従った形の遺言書でないと、せっかく遺言書を作成しても無効となってしまいます)
遺言書の形式としては以下の3つがあり、それぞれ作成するときの形式やルールが決まっています。

自筆証書遺言
公正証書遺言
秘密証書遺言

このうち公正証書遺言と秘密証書遺言は役所に内容や存在を証明してもらう方法で、自分の死後に遺言の内容を確実に実行してもらうためにはおすすめの方法ですが、加筆修正の手続きが柔軟にできないなどのデメリットもあります。
以下では役所での手続きが必要ない自筆証書遺言の作成方法について解説させていただきます。

自筆証書遺言ってどんな遺言?

自筆証書遺言というのは遺言者が自分だけで手持ちの便箋などを使って作ることができるので、その手軽さから利用する人も多くなっています。しかし、公正証書遺言とは異なり専門家の目が入らないことが普通ですので、どうしても法律的な面での不備が多くなり、後日その有効性をめぐって争いになることもしばしばです。では、自筆証書遺言を作るにあたって必ず押さえておきたいポイントを解説していきます。

自筆証書遺言が有効と認められるための要件

自筆証書遺言が有効と認められるためには、次のような要件を満たす必要があります。
1つでも欠けてしまうとその遺言は無効となってしまいますから、作成に当たっては専門家のアドバイスを受けるのが適切です。

①自書に関する要件

自筆証書遺言は遺言をする人が手書きで作成しなくてはいけません。自分以外の人に書いてもらって本人がサインする、というような形もとることができません。
パソコンで作成した文書や音声データ、動画などの映像データで自筆証書遺言を作成することはできません。
また、本人が手を怪我していて文章を書くことができないというような場合には、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言や秘密証書遺言の方法によって遺言書を作成することになります。
遺言を書く用紙や筆記具などには特に指定はありませんが、大きな書店などに行くと遺言書の作成キットなどを購入することができますから検討してみると良いでしょう。
ただし、平成30年現在、パソコンなどで財産目録を作成して自筆証書遺言に添付することを可能とする法改正が検討されています。

②日付に関する要件

日付は「○年○月吉日」といったような書き方ではなく、「平成30年6月16日」といったように明確に日付が特定できる書き方でなくてはいけません。日付がおせる印鑑などを使うのもNGとなります。
ゴム印等を使って日付を印字するようなやり方だと無効となってしまいますから注意しておきましょう。本文と同様自筆で日付を記入してください。
(過去の判例ではこのような日付の書き方の自筆証書遺言を無効とした事例があります)

③署名押印に関する要件

自筆証書遺言には本人の署名と印鑑がないと無効になってしまいます。
この点は一般的な契約書と扱いが異なりますから注意しておきましょう(一般的な契約書は印鑑がなくても成立します:そもそも契約書も証拠書類としての意味がなく、口頭の約束であっても有効に契約は成立します)
印鑑の種類については特に指定はありません。
印鑑登録をしてある実印である必要はなく、シャチハタ以外の印鑑であれば三文判でも問題はないですが、なるべく実印を使うのが良いでしょう。
自筆証書遺言を封入する封筒にも同じ印鑑を使って封印を推しておくと良いです。
戸籍上の名前とは異なる名称を記載しても問題はありませんが、戸籍通りの名前を書いておくのが手続き上スムーズです。

④訂正や加筆に関する要件

自筆証書遺言は、本人であればいつでも修正することができますが、いったん作成した自筆証書遺言に加筆したり、一部を訂正したりするための方法は細かくルールが決まっています。
具体的には、原文に何と書いてあったかわかる形で二重線を引き、遺言書で押印したものと同じ印鑑を使って訂正印を押します。
さらに、訂正したすぐ横の部分に「本行十字加入 十二字削除」といったように付記し、遺言者本人が署名しなくてはなりません。
このように、訂正加筆を行うときには煩雑な手続きが必要になりますから、遺言全体を最初から書き直すのが安全です。

⑤遺言者1名につき1枚の遺言のみ認められる

法律上、遺言は2人以上の人が共同で残すことができません。
例えば、夫婦が共同で子供達のために遺言を残すというようなこともできませんので注意が必要です。
夫婦の場合、現金などの財産が夫と妻のどちらのものなのかが明確でないケースが少なくないために財産の混同が起きやすいです。
夫婦それぞれが自分の意思を遺言書にこめたいというような場合には内容について事前によく話し合いを行い、最終的にどちらか1名の名前で遺言書を残すようにするのが良いでしょう。

遺言執行者はできれば指定しておこう

遺言にはあなたの死後に遺言の内容を実現する役割を持った「遺言執行者」を決めておくことができます。(必須ではありません)
遺言執行者がいる場合、相続人は勝手に遺産に手をつけることができず、相続人の確定や遺産分割協議はすべて遺言執行者が行うことになります。
遺言執行者は親族である必要はなく、資格を持った弁護士などを指定しておくと遺族間でのトラブルも避けることができる可能性も高くなります。

⑥その他の注意点

その他、遺言の内容はあいまいな表現は避け、財産について指定する場合には正確な表現を用いる必要があります。
例えば、土地や建物について遺言に記す場合には登記簿謄本に記載されている内容そのままを書かなくてはなりませんし、預貯金については支店名や口座種類、口座番号までを詳細かつ正確に書く必要があります。
土地や建物については相続が行われた後、相続人が相続登記を行わなくてはなりません。
その際、手続き上「遺言書の内容に基づいて相続登記する」ことが可能ですが、もし登記簿謄本の内容と遺言書の内容が食い違っている場合には相続登記のための手続きが複雑になる可能性があります。

自筆証書遺言が無効となってしまうケース

上で解説させていただいた要件を満たしていないと、自筆証書遺言は無効となってしまいます。
以下では具体的にどのような場合に自筆証書遺言が無効となってしまうのかについて確認しておきましょう。

相続財産の内容が特定されていないケース

遺言書は簡単にいうと「私のこの財産を、この人に相続させます」という内容を書いた書類のことですから、遺言書に書いた財産が実際にどの財産を指すのかが明確にわからなくてはなりません。
例えば、「私の土地は妻に相続させる」という書き方をしたとしても、その土地がどこにあるのか?ということが読み手は把握することができません。
不動産登記簿謄本などを参考に物件の正確な所在地を記入しておきましょう。
できればあなたが所有している財産の一覧表(財産目録)を作成して、それぞれの所在地、現預金であれば口座番号や支店名をすべて記入しておくのが望ましいです。
なお、財産目録についてもパソコンなどで作ってしまうと無効になってしまいますから、必ず自分の手で記入するようにしてください。

本人が認知症等の場合

問題になりやすいのが、遺言を残した本人に認知症などの症状が見られる場合です。
遺言を残すためには、遺言書を作成する時点で正常な認識能力がなければなりませんから注意が必要です。
医師から認知症と診断されているような場合には、自筆証書遺言ではなく公正証書遺言を利用すると有効性について問題となりにくくなります。
(ただし、公正証書遺言であれば常に有効というわけではありません)
過去の裁判例ではうなずくことしかできないような状態の人が残した遺言や、複数残されていた遺言書で相互に矛盾があるような遺言の場合には無効となった事例があります。

自筆証書遺言の保管方法

自筆証書遺言は、遺言を行う人が自分で保管するか、弁護士や行政書士などの専門家に保管してもらう、あるいは銀行の貸金庫などに保管する方法があります。
また、平成30年の法改正においては自筆証書遺言を法務局で預かってもらえる制度が新しく検討されていることも知っておきましょう。
自分で保存する場合には、封筒に入れて保存し、保存場所は遺族が容易に見当をつけられる場所にしておかなくてはなりません。

まとめ

今回は、自筆証書遺言の書き方について説明させていただきました。
本文でも解説させていただいた通り、自筆証書遺言は有効と認めてもらうための要件が厳密に定められていますから、作成に当たっては細心の注意を払う必要があります。自筆証書遺言は自分の手元に保管することができ、加筆修正が簡単であるというメリットがありますが、法律上必要な形式が満たされていないと無効となってしまうというデメリットもあります。また、あなたの死後に誰も遺言書を発見できなかったような場合にはあなたの遺言は実現されないまま放置されてしまうという危険性もあります。
遺産の分配についてより正確にあなたの意思を反映するためには公正証書遺言や秘密証書遺言の形式を選択するのが安全性が高いということができます。
遺言を確実かつ安全に残すために、法律の専門家のアドバイスを受けることも検討してみてくださいね。