この記事でわかること
- 野崎氏の遺言が問題になっている理由がわかる
- 相続の際に妻に保障される権利がわかる
- 相続権がはく奪される「相続欠格」の条件がわかる
元妻の容疑が話題となっている、紀州のドン・ファンこと野崎氏の不審死事件ですが、高額な遺産の行方も世間の注目を集めています。
野崎氏の遺産総額は13億円以上あるようですが、「市へ全額寄付する」と書かれた遺言についても訴訟が提起され、事件の全容解明にはまだ時間がかかりそうです。
ところで、一般的な相続では配偶者の生活保障が手厚くなっており、他の相続人より多めに財産を取得できますし、相続税を低くする制度も充実しています。
男性の平均寿命から考えると、近い将来、野崎氏の元妻はほとんど相続税を払うことなく大金を手にできたわけですが、有罪になれば状況は一変するでしょう。
今回は相続の際に保障される妻(配偶者)の権利に焦点を当て、元妻の須藤早貴容疑者が遺産を相続できるのか検証してみます。
市へ全財産寄付の意向が無視され泥沼裁判へ
野崎氏の事件を時系列にすると、以下のような経緯になっています。
- ・2013年2月:野崎氏が遺言を作成(田辺市へ全財産を寄付するという内容)
- ・2018年2月:野崎氏と須藤容疑者が入籍
- ・2018年5月:野崎氏死亡
- ・2019年9月:和歌山家裁田辺支部が遺言に法的効力があると判断
- ・2020年4月:野崎氏の兄弟が遺言を無効として和歌山地裁に提訴
- ・2021年5月:和歌山地検が、殺人と覚醒剤取締法違反の疑いで須藤容疑者を起訴
野崎氏の遺産は一旦田辺市へ遺贈され、その後の遺留分請求(相続人に最低限保障されている取り分)に応じ、1/2が元妻へ返還される予定でした。
遺言が無効になれば元妻の取り分は遺産の3/4、兄弟は1/4になりますが、立証の難しい裁判としてすでに泥沼化しているようです。
元妻は遺産を受け取れる?法律上の配偶者の権利とは
法律で定められた相続人を法定相続人といい、亡くなった方(被相続人)の配偶者は常に法定相続人となります。
法定相続分として遺産の分割割合も定められており、配偶者は他の相続人よりも優遇されています。
【法定相続分】
相続人が配偶者と子の場合 | 配偶者1/2、子1/2 |
---|---|
相続人が配偶者と親の場合 | 配偶者2/3、親1/3 |
相続人が配偶者と兄弟姉妹の場合 | 配偶者3/4、兄弟姉妹1/4 |
また配偶者には、「配偶者の税額軽減」という特別な措置があり、元妻が法定相続分の範囲内で相続していれば、相続税は1円もかかりません。
つまり野崎氏が寿命によって亡くなった場合、元妻は10億円以上の財産を非課税相続できたわけです。
遺言が有効でも元妻には5億円の遺留分がある
一定範囲の相続人には「遺留分」が保障されており、これは遺言内容に関係なく、必ず取得できる取り分です。
遺留分は「法定相続分の1/2」なので、野崎氏の遺言どおり田辺市へ全財産が寄付されたとしても、遺留分の侵害額請求によって元妻は約5億円を取り戻せます。
ところが野崎氏の兄弟4人には遺留分がないため、遺言が実行されると遺産は田辺市と元妻だけのものになってしまいます。
遺言が無効になれば、兄弟は法定相続分として1/4を取得できるため、3億3,750万円を4人で分け合うことになります。
相続税を差し引いても1人あたり3,800万円以上の金額になるため、遺産配分の観点からみた場合は兄弟にとって元妻の容疑以上に重要な問題でしょう。
実刑であれば相続権のはく奪「相続欠格」に該当
法定相続人であっても、以下の事由に該当すれば「相続欠格」となり、相続権がはく奪されます。
- ・被相続人や他の相続人を死亡させた、または死亡させようとした
- ・被相続人が殺害された事実を知りながら告訴、告発をしなかった
- ・被相続人による遺言の作成・撤回・取消し・変更を、脅迫や詐欺によって妨げた
- ・脅迫や詐欺により、遺言の作成・撤回・取消し・変更をさせた
- ・遺言書を偽造・変造・破棄・隠匿した
野崎氏の元妻に実刑判決が下れば、被相続人を死亡させた者として相続欠格になり、相続権が回復することは二度とありません。
ただし、相続欠格は当人だけに適用されるため、野崎氏と元妻の間に子どもがいれば、元妻の代わりとして相続人に繰り上がる「代襲相続」が発生します。
野崎氏に直系の子がいれば、莫大な財産とともに事業も承継できていたかもしれません。
まとめ
今回は各メディアの情報から野崎氏の事件をまとめてみましたが、注目度の高さは何といっても元妻の容疑でしょう。
55歳の年齢差、結婚後わずか3ヶ月で夫が死亡、莫大な資産や覚醒剤など、重要なキーワードを並べるだけでも不審な点はかなり多いようです。
無罪であれば資産家、有罪ならば相続欠格なので、今後の人生に天と地の差が出てしまいます。
一方では遺言書の種類や内容も注目度が高く、野崎氏はなぜ遺言を公正証書にしなかったのか、不思議に思う方もおられるでしょう。
野崎氏が残した遺言は自筆証書遺言ですが、内容はとても簡素であり、まるで相続開始後のトラブルを誘発しているようにもみえます。
本人亡き後のトラブルを防止するため、公正証書遺言や自筆証書遺言の保管制度なども活用するべきだったと言えます。
こういったトラブルを防ぐためにも、遺言をどの種類で残すかについてはよく検討しておきましょう。
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